戦姫絶唱シンフォギアIF 〜陰る陽だまり〜   作:ボーイS

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エピローグであり、絶唱しないシンフォギアであり、そしてG編突入前話であります。少しギャグを入れながらもルナアタック後の装者たちの軽〜い休息を覗いてみましょう。


……自分の作品のせいでビッキー成分が枯渇してるぅ!





閑話

 それはルナアタックからおよそ一ヶ月が経過したある日の事だった。

 

「小日向、私と手合わせしてくれないか?」

 

 現在新たなニ課の本部は新設中のため仮本部にてシンフォギアの戦闘訓練のための準備運動が終わり、訓練に入ろうとした未来の背後から青のトレーニングウェアを着た翼が歩いてくる。

 

「えっと、私でいいんですか?」

「ええ。同じ天羽々斬の装者と戦う事なんてこの先無いでしょう?同じだからこそ見えてくる自分の欠点が見えてくる気がするのだ」

 

 進歩した医療により順調に体力が戻ってきているとはいえ二年ものブランクがある翼は同じ天羽々斬の装者である未来に興味を持っていた。それに、装者としての先輩でもあるが故に本気を出してないとはいえ叔父である風鳴弦十郎をあと一歩のところまで追い込んだ未来の実力に風鳴の血が騒いでいる事もある。

 

「奏から聞いたが、小日向はかなり強いそうじゃないか」

「い、いえいえ。私なんて」

 

 翼の言葉に謙遜する未来だったが、それを遠くでベンチで頬杖をついて見ていたクリスは半眼になりながらこれまでの未来の戦歴を思い出していた。

 

 ネフシュタンの鎧を纏ったクリスを圧倒していた。

 明らかに人間離れしていた弦十郎(本気は出していない)をあと少しで倒せていた。

 ネフシュタン+ダインスレイフを使ったクリスを圧倒していた。

 暴走していたがクリスよりネフシュタンの鎧を扱う事が上手いフィーネを圧倒していた。

 赤い龍となったフィーネを一刀両断。ネフシュタンの鎧ごと破壊。

 奏も合わせた三人だったとはいえダインスレイフによる負の感情の増幅を実質一人で受け止めていた。

 

「いや、うん。かなり強いとかいうレベルじゃねぇな?」

 

 二度戦い、そしてどちらも未来に殺されかけたクリスは未来の潜在的な強さをよく知っている。それはクリスの隣にいる装者を辞めた奏もそうだった。

 

「だよなー。私なんてダンナがいなかったら確実に一回死んでるしな」

「感情がストッパーになってるとはいえ、本気で殺しに来たら勝てる気がしねぇ」

「同じく」

 

 二人がかりでいけば抑えられるとは思うが一対一になれば勝機を感じられなかった。勿論コンディションや地形にもよるが。

 

(はてさて、どうなる事やら)

 

 クリスと奏が話し合っている内に未来は紫と白、翼は青と黒のシンフォギアを纏い、互いに少し離れた場所で向かい合いっていた。そして同じ武器である刀を構えて戦闘準備に入る。

 クリスは翼の強さを知らないため未来が勝つと思っているが、奏は未来の強さを理解しながらも翼が簡単に負けるとは微塵も思っていなかった。

 

「では行くぞ、小日向」

「はい」

 

 未来の返事を合図に二人は同時に駆け出した。

 

「はあ!」

「やあ!」

 

 翼の白に一本の青いラインが入った刀と未来の白紫に輝く刀がぶつかり火花を散らす。そして二人は何度もお互いの力量を測るかのように刀を振るった。

 

(強いっ!半端に受け止めては剣ごと真っ二つにされそうだ!)

(当たらない……全部受け流されてる?)

 

 未来の当たれば終わりと思わせる力強い一撃と翼の見惚れるような華麗な技により二人の実力は拮抗していた。いや、二年もまともに動いていなかった翼が今の未来について行けている事を考えればそれだけで済ませられる話ではないだろう。

 

「マジかよ、未来と良い勝負してやがる!」

「翼も結構やるとは知ってたけど予想以上だね、こりゃ」

 

 予想外の未来と翼の戦いによりギャラリーだったクリスと奏は開いた口が閉じなかった。特に未来の放った『蒼ノ断頭』と翼が放った『蒼ノ一閃』がぶつかった瞬間の衝撃の強さと打ち負けることなく同時に消滅した事からほぼ同威力と見られる。

 

 こうしてヒートアップしすぎて訓練場が破壊される寸前、弦十郎の介入により強制的に訓練を終了させられるまでの二時間ほどの間、未来と翼は互いに同じ武器を持ち、違う戦いをする相手と何度も刀をぶつけ合うのだった。その際の訓練場の被害額は言わない方が良いだろう。

 

 弦十郎の強烈な発勁をくらいダウンした未来と翼は訓練場の端に連れて行かれるが、弦十郎の絶妙な力加減によりすぐに目を覚まし、今はクリスと奏に介抱されていた。

 

「しかし、小日向は強いな」

「いえいえ。翼さんこそ、二年も戦っていないのに凄い強かったですよ」

「ありがとう。でもまだまだ奏の代わりをするには力不足だ」

「そんな事ないんだけどなぁ」

 

 翼の言葉に奏は少し遠くを見つめていた。半暴走状態と言ってもいい初めて未来と出会い戦った時手も足も出なかった自分よりも、正気がある故にただ暴れていた時とは違う冷静な未来を相手に互角の勝負をしていた時点で完全に超えられていると思っていた。

 

「そうだ、私が貴女を鍛え「「それはダメだ」」なっ何故なんだ奏、雪音!?」

 

 まだ技術的に甘い同じ天羽々斬のシンフォギア装者である未来を翼は自身が鍛える事で更に強くなると読んで鍛えようか提案しようとするが、翼の言葉に割り込むように真剣な顔で奏とクリスは否定した。

 

「確かに小日向が強くなるのはいいかもしれないけど、でもそれは今じゃないと思うね」

 

 奏もクリスも未来がまだ立花響に関して完全に吹っ切れていないと分かっている。何が原因で再び暴走するか分からない精神状態で下手に技術を学べば、その技術と暴走した時にネフシュタンの鎧すら破壊寸前まで追い込んだ力が合わさり今度こそ手の付けられるものではなくなる。弦十郎でも殺す気で行かねば止まらない可能性すらあった。

 それは未来自身も分かっている事でもある。

 

「お気持ちは受け取ります。でも今は自分なりのやり方で鍛えたいので今は」

「そうか……鍛えて欲しくなったらいつでも言ってくれ」

 

 やんわりと断る未来に少し残念そうな顔を見せる翼。その後ろにいた奏とクリスは鍛えた未来が暴走した姿を思い浮かべて自分たちが粉微塵になる想像しか出来なかった。

 それ以降の時間は訓練場がボロボロになってしまったため訓練が続けられる無くなり、時間も遅くなったのでお開きとなった。

 

「にしても、青髪のアンタも無茶すんだな。確か明後日にはアンタと赤髪の復活ライブ?ってやつがあるんだろ?」

「うむ。そのために少しでも体力を戻しておきたいのだ。二年もファンを任せてしまったからな。最後までライブを完遂させたいのだ」

「それなのに訓練で体力使ってもいいんですか?」

「そのためにあたしと翼は明日は休みなのさ。明後日は全力で歌うためにね」

 

 二年前のライブ事件で翼が眠りにつくまでは奏と翼のコンビによる世界的有名だったツヴァイウィング。今現在は奏がソロで活動しているが翼はようやく目覚めたためツヴァイウィングは完全復活。そのサプライズライブが明後日公開となっている。

 

 勿論翼はまだ目覚めて一ヶ月なので当初は弦十郎や慎次からもせめてあと三ヶ月はリハビリするようにと言われていたが翼はそれよりも早く奏と共に歌いたいという気持ちが勝っており、必死でリハビリを行った結果どういう訳か体力はみるみると回復していった。そのため一回分のライブくらいなら問題ないと医者も判断したため、弦十郎と慎次は渋々翼がライブに出る事を許可した。

 リハビリの際の翼の驚異的な回復速度はさすが風鳴の血を引いていると言えるだろう。

 

「んじゃ明日は丸々暇なのか?」

「そうだな。本当はもっと訓練か歌の練習をしたいところなのだが」

「緒川さんが大事を取って昼からでも休めだとさ。過保護にも程があると思わない?」

 

 慎次にとっては翼はまだ病み上がりのようなものなので出来るのであればライブもあと一ヶ月は先にしたかったのだが、奏と翼に詰め寄られスケジュールを調整した結果明後日の予定となっていた。そんな苦労を二人は知る事はないだろう。

 

「それじゃ、明日は息抜きに四人でデートにしませんか?」

「「「デート?」」」

 

 ──────────────────

 

 ──翌日 AM 一〇:二〇

 

 

 まだ人が少ない公園内にある池の橋の前で変装をした奏と翼は未来とクリスを待っていた。だが二人がこの場所に来て既に三〇分が過ぎようとしている。

 

「あの子たちは何をやっているのよ!」

「まぁまぁ落ち着きなよ。っとやっと来たみたいだ」

 

 貴重な時間を浪費して少しイライラしている翼をなだめる奏の視界に急いで走ってくる二つの人影が目に入った。

 

「すみません!奏さん、翼さん!」

「遅いわよ」

「何かあったのかい?」

「クリスが目覚ましをかけ忘れて寝坊してしまって……」

「ハァ…ハァ…あ、あたしのせいかよ!」

「いやこの場合は雪音が悪いだろ」

「くっ、それでもあたしは悪くねぇ!」

 

 苦しそうに息を切らすクリスに奏はバッサリと言い切る。

 実際、四人でのお出かけを楽しみにしていたクリスはなかなか寝付けずにいたのが原因なのだが恥ずかしくてそれを認めないのがクリスだった。

 

「時間が勿体ないわ。急ぎましょ」

 

 まだ息の整っていないクリスを置いて翼はクールな顔で踵を返し先に進もうと歩き出した。

 

「えっと……翼さん、怒ってます?」

「いやいやいや。ああ見えて楽しみすぎてなかなか眠れなかったみたいだよ。眠れたのも結構遅かったみたいで目の下のクマも化粧で必死に」

「遅れた分を取り戻したいだけ!奏も余計な事言わない!」

 

 怒鳴る翼であったが顔を真っ赤にしていては説得力が無かった。

 早足になる翼を追って未来と奏は急いで走り出すのだった。

 

「……アイツもあたしとおんなじだったのかよ」

 

 奏の言葉を聞いてかクリスはポツリと呟いて三人の後を追うのだった。

 ちなみに、既に体力的に限界が来ていたクリスがまだ体力のある三人に追いつけるはずもなく、結局目的の場所に着くのに時間がかかるのだった。

 

 

 そして未来たち四人は大きなショッピングモールで遊びまわった。

 

 衣服や雑貨だけでなく、小物店で変わった形のカップを購入したり。

 

 クリスが大量のぬいぐるみを未来たちに内緒で購入したり(結局手に持って移動するのですぐバレる。むしろ購入の瞬間を三人は影で見ていた)。

 

 ゲームセンターにてパンチングマシンで奏が高得点を出し、シューティングゲームではクリスの天才的銃捌きを見て周囲に沢山のギャラリーが群がり本人は真っ赤になったり。

 

 カラオケ屋にて『逆光のフリューゲル』等のツヴァイウィングの曲のほかに奏のソロ曲である『JUST COMMUNICATION』や『RHYTHM EMOTION』などを大盤振る舞いし、翼は恋の桶狭間という渋い曲を歌ったり。

 

 途中で奏と翼の事に気づいたファンから逃げるために某蛇の軍人のように隠れて進んだり。

 

 そうやって四人は普通に生きていけば友人と共にするであろう事を今日この一日に集約するかのように遊びまわるのであった。

 

 

 ──────────────────

 

 陽が沈み始め世界が茜色に染まる。

 そんな中、未来たち四人は山に取り付けられた長い階段を登っていた。

 

「はい、と〜ちゃ〜く!」

「翼さん、クリス!もう少しですよ!」

「ふ、二人とも元気だな……」

 

 未来と奏は既に目的の場所についており後は遅れている翼とクリスだけ。翼は病み上がりのため多少遅れるのは仕方がないだろう。

 

「ゼェ、ゼェ……ウップ」

「大丈夫、クリス?」

 

 現役装者であるはずのクリスだけは顔が真っ青になっていた。

 

「お、お前らは、ゼェ、なんでそんなに、ハァ、元気なんだよ!う、ウップ」

「クリス!?」

 

 結局限界に来たクリスを未来が背負う事になったのだった。その際に先に上まで上がっていた奏は未来の背中に押しつけられて大きく形を崩すクリスのたわわな果実を見た隣の翼が、まるで絶唱のバックファイアを受けて目や耳から血が出ている幻想を見たそうだ。

 

「綺麗……」

「絶景だねぇ。お、あそこはさっきのショッピングモールじゃん」

「カラオケ屋は……多分あの辺りだけどビルで見えないね」

 

 到着した場所は小さな公園になっており、そこの近くのベンチに降ろされたクリスと介抱する未来を置いて奏と翼は鉄柵に手をつき眼下に広がる景色に心奪われていた。

 そこは先程四人で遊んだショッピングモールだけでなく茜色に染まる町が一望できる場所であった。

 

「す、すげぇ……つーか高っ!」

「ふふ。落ちたらダメだよ?」

 

 多少体力が回復したクリスも鉄柵に近づき奏たちと同じように町を見渡す。鉄柵から身を乗り出すクリスを見た未来にはかつての親友の姿が重なり、胸の奥がちくりと小さな痛みが走った。

 

「いや〜こりゃいい場所だね」

「こんな良い場所を教えてくれてありがとう、小日向」

 

 明らかにテンションが上がっている二人を見て未来も嬉しくなり笑みを見せる。そして未来自身も鉄柵に近づき町を見渡した。

 

「……実はここ、よく響と来てたんですよ」

 

 目を瞑れば思い出す。

 最初に訪れたのはまだ幼稚園の時で両家族でピクニックに来た時だった。その時から元気の有り余る幼き響は自分の足で踏破したが当たり前ながら未来には出来ず、飾ってしまった。

 それから小学、中学と何度となく響と来てはここで色んな事を話した。その時の事だけでなく、二人の将来の夢を。

 

「私はただ、みんなにもここの事を知って欲しかったんですよ。過去の思い出の場所じゃなくて、これからの思い出の場所として」

 

 ここにある楽しい思い出は今の未来には重すぎだった。

 大切な、忘れることの出来ない場所であるはずなのにここに来れば嫌でも親友の事を思い出す。そしてその思い出で涙を流し、悲しいものに変えてしまう。楽しかった思い出もすべて。

 

 だから奏、翼、クリスの三人と共に新しい思い出を作りたかった。響との思い出を塗りつぶすのではなく、響との楽しかった思い出と三人とのこれから思い出を両方持つ事できっとこの場所もいつか受け入れられる日が来ると信じて。

 

「だから、これからもよろしくお願いします」

 

 夕焼けに照らされる未来の微笑みは何処かキラキラと輝いており、ツヴァイウィングとして数々の綺麗なものを見てきた奏と翼でも一瞬見惚れてしまった。

 

(これが小日向の笑顔か。中々絵になる)

(叫んでた時とのギャップありすぎてあたしでも惚れそうだね、こりゃ)

 

 きっと良いモデルになるだろうと予想する二人。その横でクリスは身体を固まらせていた。

 

(あああああ!心臓がうるせえ!顔が熱い!つーか絶対おかしいだろ!未来は大切な友達で……)

「どうしたの、クリス?」

「ッ!!!」

 

 まだ気分が悪いのかと未来はクリスの頬に手をやる。少しヒヤリとする手により頭の熱が覚めるが、それにより荒ぶる心臓をなんとか止めようとするクリスに未来は知らずに追撃する。

 夕焼けに照らされていつもよりヤケに綺麗に見えるその顔にクリスは耐えられなかった。

 

「あああ青髪のアンタ!」

「ん?私か?」

「そう!アンタまだリハビリし足りねぇだろ!?だったらあたしとちょっとここら辺走ろうぜ!それがいい!ああその方がいい!拒否させねぇぞ!?」

「ちょ、まってくれ雪音!?」

 

 リンゴのように顔を赤くしたクリスは翼の手を引き公園の周りを走って行った。走って行ったと言っても十分未来の視界に入る程度の広さなのだが。

 

「どうしたんだろ、クリス……?」

「アンタも罪な女だねぇ……頑張れよ、雪音」

 

 首を傾げる未来を見てクリスの内情を察した奏は苦笑いを浮かべる。

 その間もクリスと翼は走っていたのであるが、まだ余裕を残している翼に対して最初に言い出したクリスは既に周回遅れであった。

 

 こうして久方ぶりの平和な一時の休息を堪能した四人は帰路に着くのであった。

 ちなみ、クリスは無理な運動のせいで全身筋肉痛になり、心配した未来と部屋で二人きりになり看病される事で眠れぬ夜を過ごす事になったのは本人だけの秘密である。

 

 

 ──────────────────

 

 ──翌日

 

 

 一ヶ月ほど前の大量のノイズの出現した事なぞ忘れて人々がいつもの暮らしに戻り、平和に暮らしている。そんな中で今日は一大イベントが行われようとしていた。

 

『ツヴァイウィング『天羽奏』のソロライブ』

 

 そう名付けられたイベントが奏のファン、そしてツヴァイウィングのファンが殺到する。ライブ開始一時間前で既に席は満席となり、会場の外でも中の様子が映し出される場外モニターに人だかりができていた。

 

 所狭しと人が集まる中二階の関係者席にて未来とクリスはツヴァイウィングのライブが始まるのを待っていた。

 

「すっげぇ。あの二人ほんとに有名なんだな」

「うん。二年前も多かったけど、今回はあの時より多いみたい」

 

 奏の事はフィーネからデータとしてしか知らず、シンフォギア装者としての奏と翼しか知らないクリスからしたら今目の前で二人を求めて集まる人だかりはあまり現実的ではなかった。特にいつもふざけてばかりの奏(主にクリスの胸を揉む等のセクハラ)を知った後であれば尚更であろう。

 

 まだライブ開始前から集まった者はまだかまだかと落ち着きがなく待っている。そしてその時は訪れた。

 

 会場の真ん中にライトが集まる。そして大量のスモークと共に中から現れるのはいつも以上に気合の入った奏の姿だった。

 会場が割れんばかりの観客の声をかき分けて最初の一曲目は未来たちとカラオケで歌った『JUST COMMUNICATION』。だがカラオケの時とは迫力が違っていた。

 

「すげぇ……!」

 

 最早語彙力が乏しくなってしまうほどクリスは同じ言葉を繰り返していた。それほどまでにクリスの知る奏とアーティストの奏は違っていた。

 

 カラオケで歌った奏は未来たちへのファンサービスを込めてはいたが、それでもその時はただの女の子としての「天羽奏」。

 そして今沢山の観客の前で歌い、そして舞うのはツヴァイウィングの片翼として世界に名を轟かすアーティストととしての「天羽奏」であった。

 

 最初の一曲目から観客はテンションがマックスになっており、仕切られた部屋にいる未来たちにもその熱気が伝わってくる。それほどまでに今はこの場にいる人間は一つになっていた。

 

 一曲目の歌が終われば更に沢山の拍手と歓声が会場に響き渡る。既にラストスパートのような最高潮の盛り上がりだがまだ始まったばかりだ。

 

『みんな!今日は来てくれてありがとう!』

 

 奏はマイクを取って観客に声を投げかける。それだけでまた会場は盛り上がり始めた。

 

『あ〜、本当はリハーサルでもっと勿体ぶるような話をして時間を稼ぐ手順になってたんだけどさ、あ、いつもならそこら辺あたしも従うからな?でも今日はもうあたしが我慢出来ねぇ!だから早速行かせてもらうぜ!』

 

「……これって予定通りなのか?」

「どうなんだろうね」

 

 勝手に話を進める奏ならクリスはこれも予定の内なのか未来には問う。勿論未来は知るはずがないのだが、扉の外ではスタッフの焦った声と足音が絶え間なく耳に入って来たのでこれは奏の独断専行だろう。

 

(後で弦十郎さんに怒られなかったらいいけど)

 

 未来の心配は現実になり、ライブ終了後弦十郎の雷と慎次の静かな圧力が奏を襲うのだがそれは別の話としよう。

 

『今日来た奴等は幸運だ!理由があって来れなかった知人がいるなら存分に自慢しろ!なんせ今日は』

 

 突然全てのライトが消えて会場内を暗闇が支配する。

 そして一筋の青いライトが天井に向かって伸びる。そこにいたのは二年間活動していなかったツヴァイウィングの片翼の姿だった。

 

『ツヴァイウィングの復活だ!』

 

 空から舞い降りる翼と幻想的に舞う白い羽。

 会場は一瞬何が起こったか分からず静まり返り、そして一瞬後まるで近くで大きな爆発が起きたかのような人々の轟音が会場を支配した。

 

 そして二年ぶりに揃った両翼揃ったツヴァイウィングの最初の歌は『逆光のフリューゲル』。この時点で歌う二人の神々しさに涙を流すものをいれば、今日この日に来れた事を神に感謝する者。酷いものはあまりにも感動しすぎて気絶する者も多々いた。

 

(そうだ、あの日もこんな風に胸を高鳴らせてたんだ)

 

 親友を失った日もツヴァイウィングの歌に胸を高鳴らせ、いつもの自分ではないかのように心を熱くさせていた。

 あの日の思い出は悲しいものであるが、歌を聞いて感じた未来の思いは嘘ではない。そして当時ツヴァイウィングの歌を聞いていた立花響は隣にいた未来でさえ眩しいと思うくらい楽しそうに笑っていたのを思い出した。

 

「お、おい!泣いてんのか!?」

「え?」

 

 クリスの焦った声に未来はそっと自分の頬に手をやる。僅かに指が涙で濡れていた。

 

 未来の中の響は楽しそうに笑っている。

 それは、響を失った事で我を忘れて復讐に燃えていた時には見えなかった楽しい思い出。

 思い出しては未来の心を傷つけて来た笑顔ではなく、幼い時から未来の荒んだ心に光を照らして来た太陽のような笑顔。それを未来はやっと思い出せたのだった。

 

「ふふ。ありがとうクリス」

「無理はすんなよ?」

「うん。それよりもほら、まだまだライブは続くよ!」」

 

 まだまだ全てを乗り越えられた訳ではない未来も少しづつ前に進めている。胸の中の大切な親友に恥ずかしくないように未来は今日という日を楽しく過ごそうとクリスと共に最後までライブを心から楽しむのであった。

 その時の未来の笑顔にクリスの理性が危うく消し飛びかけたのは本人だけの秘密である……未来に関してのクリスの秘密が増える一方である。

 

 後に今日のサプライズのツヴァイウィング復活ライブはファンの中では新たなる伝説となり、それは既に外国まで広がっていた名を更に広めるものとなるのだった。




結構陰り無くなってね?と思う方々、原作響も前期で色々覚悟を決めたというのに次期でまた新しい悩みの種を植え付けられて、って感じでしたのでうちの未来さんも似たような感じです。なんだかんだで爆弾は抱えたままですし、むしろ増えてますしね。一時的に精神が安定してるだけでちょっと小突けば爆弾なんて簡単に……これが本当のガラスのハート。

ビッキー「あのー、私の出番無いんですけど」
作者「残念ながら君はこの世界の主人公ではないんだよ。諦めなさい」
ビッキー「」

393「響に会いたい……」
作者「そんな簡単に会わせたら面白くなry(アメノハバキリー)」

奏「あたしが生きてるのはいいけどボコボコにしすぎじゃない?」
作者「だって、393の異常さを際立たせるために生贄がry(ガングニール)」

クリス「あのバカのポジションにいるような気がするんだが」
作者「ビッキーのポジションというよりサイコレズの餌ry(イチイバルー)」

翼「これからは私の出番だな?」
作者「……」
翼「おい!?」

???「G編からは」
???「私たちの出番デェース!」
???「私たちの活躍、その目に焼きつけなさい!」
作者「残念ながら一人メインメンバーから外れます」
???×3「「「!!??」」」

???「私の出番、あるのでしょうか?」
作者「(ニッコリ)」
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