本当はもっと省いてサクサク進めたいんですがね、主人公が思いっきり変わって進んでいるので細かいところも書きたいなーなんて思っている始末なんですよ……セレナさんの誕生日までにG編終わるかな……
今回は一応日常回……のはず。
──ニ課仮設本部 研究室にて
陽は沈み、すでに日付が変わった真夜中にカタカタとパソコンのキーを打つ音が沢山のコードやモニターのある研究室内に響く。そして巨大なガラスケースの前で厳重に隔離された〝ある物〟を前にして椅子に座り一人でパソコンを操作しているのは、長い茶色の髪の毛を後ろでお団子状に括り眼鏡をかけた一人の女性、櫻井了子であった。
目の前のガラスケースの中にある物のデータを解析していると研究室と通路を繋ぐ電子扉が開く音が聞こえ、振り返ってみれば弦十郎が片手に袋を持って入ってくるところであった。
「こんな時間まで起きているとは……夜更かしは女の敵ではなかったのかな?」
「弦十郎君!」
時間的に他の研究員がまだ寝ていない自分を注意しに来たと思っていた了子は意外な訪問者に驚きの声を上げる。それを見て弦十郎は軽く笑みを浮かべて了子の使っている机の横に袋を置く。中身は食堂で作って貰った軽い夜食だった。
「夜食も乙女の敵なのだけど?」
「心配するな!女性に優しいヘルシーな料理らしいぞ!」
「もう……ありがと」
ニカッと白い歯を見せる弦十郎に了子はクスッと笑みをこぼしてお礼を言い、弦十郎から袋を貰う。実際そこまで空腹を感じてはいなかったがいざ食料を貰うと腹が空くのは人間として仕方のない事だろう。それに弦十郎が来なければエナジードリンク等で夜を明かす気であったためどの道女性の肌には優しくない。
「それにしても、精が出るじゃないか」
「そりゃそうよ!未来ちゃんに助けられたんだからお礼の意味も含めて頑張らないと!」
「無理はして欲しくないのだがな。特に〝これ〟に関してはな」
弦十郎は目の前のガラスケースの中にある物、バラバラになって知らない物が見れば何なのか分からない、鉄のような素材で出来た何かの破片。その破片は
その欠片は数ヶ月前のルナアタックと呼ばれる事件の折、了子の中にいたフィーネとの戦闘で酷使し、降ってくる月の破片を破壊するために未来とクリスと奏の三人の絶唱のエネルギーを受けてバラバラに砕けたダインスレイフの欠片だった。
「確かに欠片とはいえ危険な物よ?研究員の一人が無闇に触って気が狂っちゃう程度にはまだ魔剣としての呪いは保持しているもの。完全聖遺物だった時のダインスレイフなんて触れたくないわ」
「だな。あれは俺でも触れるの躊躇する。まあ、その危険性の代わりに莫大なエネルギーを得られる可能性があるというわけだが」
月の破片を破壊した後、バラバラに砕けたダインスレイフをニ課が回収し厳重に保管。欠片になったせいかか完全聖遺物だった時には覚醒した時にしか発生しなかった周囲の人間の精神を汚染する能力が制御を失い、かなり影響は小さくなっているが常に発動状態となっている。シンフォギア装者か弦十郎のような強い精神力の持ち主ではない限り近くにいる者、特に触れた者には強い影響を及ぼす物となっていた。
「個人的には聖遺物とはいえ消滅させるべきとは思うがな」
「そこをエネルギー問題の解決の糸口になると思って多少は目をつぶって欲しいのよん!」
「分かっているともさ」
大きな危険性を持つダインスレイフだが、完全聖遺物の時に月を破壊するレベルのエネルギーをものの数分で溜めてしまうほど膨大なエネルギーを作り出していた。その事から上手くいけば欠片となったダインスレイフからでも大きなエネルギーを生み出す可能性があり、研究が上手くいけばそこから新エネルギーとして世に出せるかもしれない。そう考えた研究員たちは日夜ダインスレイフの研究を続けていた。
そして了子もその一人だった。
詰め寄る了子を宥める弦十郎だったが、急に顔を引き締めて真剣なものとなった。
「……それで、話は変わるがセレナ・カデンツァヴナ・イヴと二人の装者について分かった事はあるのか?」
真夜中ではあるが弦十郎が了子に会いに来たのは前日に未来たちと戦ったセレナと二人の装者について相談する為であった。
シンフォギアはフィーネが開発したもの。なればシンフォギア関連にフィーネが絡む可能性は高く、身体を乗っ取られていた了子なら何か情報を知っているかもしれないと思っていたのだ。
弦十郎の言葉を聞き、了子も真剣な表情を作るがすぐさま頭を振って申し訳なさそうな顔をになる。
「ごめんなさい。前にも言った通り、フィーネに乗っ取られた時からの記憶はある程度あるけど、聖遺物やシンフォギアに関しての記憶がほぼ丸々消されてるの」
フィーネに身体を乗っ取られてからのおよそ十二年間、自身の立ち位置やフィーネが行った事の一部、その他諸々の私生活に困らない程度には何故か記憶が残っていた。
しかし、乗っ取られる以前のフィーネの記憶やシンフォギアの作成や機能についての記憶はほぼ消されていて分からないのだった。
「──でも、僅かに残ってる記憶からあの謎のシンフォギアについては少し分かったわ」
「本当か!?」
「ええ。あれは古代バビロニアのシュメールの戦女神ザババが振るったとされる二刃、「紅刃シュルシャガナ」と「碧刃イガリマ」を加工してシンフォギアにした物よ。残念ながら詳しい能力や装者二人の事は分からないけどね」
フィーネの視点として記憶の奥底にあったのは何処かの研究室施設のような場所で、フィーネがその二つの名前を呟いてシンフォギアを製作していたものだった。そこから先の記憶は残念ながら無い。
「シュルシャガナとイガリマ、か。名前が分かっただけでも進歩と言えるか」
「調べたいは山々だけどまだ他にもやる事がたんまりあるのよね。だからそっちに任せて良いかしら?」
「ああ。その程度ならこちらがやろう。君も無理はするなよ」
「だ〜いじょうぶよう!私だって自分の身体の限界くらい分かってるから」
戯けるように笑う了子に弦十郎は苦笑いを浮かべる。
まだ完全に了子の中からフィーネが消えたという確証は無いものの、フィーネが最期に見せた笑みが嘘とは思えず、弦十郎は今の目の前の了子が本物だと信じている。故にニ課の職員や政府のお偉い方にも頭を下げて説得した結果、了子はここにいた。弦十郎の甘さがここでも現れたというわけだ。
「では、そろそろ俺ここで失礼する。頑張るのは良いが適度に休めよ」
「わぁかってるわよう。弦十郎君も無理しないでね」
「ああ。じゃ、また明日」
「──あー、ちょっと待ってくれるかしら」
言いたい事だけ言って弦十郎は研究室から出ようと踵を返す。だが了子はわざとらしく間を開けて足を止めさせた。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「そうじゃなくてね、えっと……」
「?」
頬を掻きながら言葉を探すように目を彷徨わせる了子。それを見て弦十郎は了子が何を言いたいか分からずただ黙って見守るしかなかったが、すぐさま了子は意を決したように弦十郎へ向き直った。
「今度の休暇にでも二人で何処か食事にでも行かない?」
「?どうしたんだね、そんな急に」
「いやね、他の研究員の子からたまには休むように言われたの。でも一人より二人の方が楽しいじゃない?それに
了子の言葉に弦十郎は何を言うべきか迷った。
十二年もの間、弦十郎の隣にいた了子は彼の知る了子ではなかった。何度か付き合い程度に共に食事をした事もあったが、それは了子を演じるフィーネであり、二人で食事は最低でもそれよりも前だ。
少し悩んだ結果、特に断る理由がないと判断した弦十郎は優しい笑みを見せながらうなずいた
「……そうだな。予定が合った時にそれも良いかもしれんな」
「そう!それじゃ時間が出来たら教えてちょうだいね!」
「あ、ああ。分かった」
食い気味の了子に弦十郎は少し引きながらも了承し、今度こそ研究室から出て行く。手を振りながら弦十郎の退室を見守った後、了子はモニターの方に向き直り、そして眼鏡を外して天井を見上げながら背もたれに体重を預けるように脱力した。
「あー緊張した!」
了子の大きな声が研究室内に響く。幸いにも研究室には了子一人しかおらず、その声が誰かに聞こえる事はなかった。
(あの声の通り勇気を出した見たけど……あの声はなんだったのかしら)
フィーネが了子の中から消えて眠りから覚める直前。夢の中のような上も下も分からない浮遊感の中で了子は女性の声が聞こえた。
まだ夢現のような状態で自分と似たような声が自分に語りかけてきた事ははっきりしていた。
「『後悔する事のない恋をおくれ』、か」
女性の悲しそうな声と言葉。それがまるで自分の事のように心にスッと落ちた感覚はいつまでも忘れられない。その声に勇気づけられて了子は僅かながらでも想いを寄せている弦十郎を食事に誘う事ができた。
「……まぁ、言われなくても私は
無機物の天井を見上げたまま、了子は何かを決意した瞳を向ける。
図らずとも先史文明の巫女の言葉は一人の女性の恋心に火をつけた事は誰も知る由は無かった。
──────────────────
──翌日 新リディアン音楽院にて。
セレナが世界に向けて宣戦布告してからおよそ一週間。その間、日本含む各国にフィーネと名乗る組織からのコンタクトやアクシデントもなく平和な日常が過ぎ去っていた。
そんな平和な時間を小日向未来は失った時間を埋めるように過ごしていた。
「ヒナ!一緒にお昼しよ!」
「安藤さん?」
「久しぶりにお話もしたいと思いましたので」
「私たち、小日向の事あんまり知らないしね!教えられる範囲で教えてほしいのよ!」
「寺島さん、板場さんも……」
時間は丁度昼時。
弁当箱を取り出していた未来に安藤創世が話しかけてくる。その後ろには寺島詩織と板場弓美がおり、いつもの三人が親しげに未来に話しかけてくる。
かつては親友であった立花響の影を追うように、未来の心に深い傷を与えた町に戻ってきた時に気まぐれに入学したリディアン。ほんの二ヶ月程度しか通っていなかったため、未来はそのまま学院に通うのを辞めようとしていたが弦十郎含む二課の職員全員に加えて奏と翼からも却下された結果、未来は病気で休学していたという理由で再びリディアンで勉学に励んでいた。
ノイズに襲われて天羽々斬のシンフォギアを纏う瞬間を目の前で見ていた創世たち三人や政府に秘密されているとはいえ未来が戦う姿を見た生徒や職員たちはそれでも未来を暖かく迎え入れた。
未来にとって今やリディアンは二課以外で心休まる場所となっているのだ。
「そうだね。うん、みんなで一緒に」
「おーい、未来ー?いるかー?」
創世の提案を受け入れて食堂に向かおうとした未来だったが、その前に教室の入り口からクリスが袋を片手に未来の名前を呼びながら頭を出した。
教室をぐるりと見渡したクリスは未来を見つけると嬉しそうに手をふるが創世たちを見て一瞬動きが止まり目を彷徨わせてしまう。
「あ、キネクリ先輩だ」
「あらあら、今日もご一緒はダメみたいですね」
「むー、色々オススメのアニメあったのに!」
「あはは……ごめんね?」
先日クリスと創世たち三人と昼食を共にした際、あまり互いを知らないため終始気遣い合うような微妙な空気が流れていた。その間にいた未来にとって耐えがたい時間であった。
少しずつとはいえ仲は良くなってはいるがまだまだ一緒に昼食をするにはクリスにはハードルが高い。そのため、用事等でクリスが未来と昼食を取れない時に共に昼食を取るようにしている。未来もその内五人で一緒にお昼を出来たら、と思ってはいるがそれはまだ難しいだろう。
「いいよ。それじゃ、また今度」
「またお話しましょうね」
「じゃーねー!」
未来とクリスを気遣って三人は離れていく。申し訳ないと思いながらも三人の気遣いを受け取って未来はクリスの元に急いで駆け寄って行った。
青空が見えるリディアン屋上にて、未来とクリスは備え付けられたベンチで二人並んで食事を取っていた。食事と言ってもクリスは何故かまたパンと牛乳だが。
「んで、身体の調子は大丈夫なのか?」
「もう、大丈夫だって何回も言ってるでしょ?了子さんも無理しなければ問題ないって言ってたし」
「でもよ……」
先日のツヴァイウィングとセレナとのコラボライブの際の事件、その時に使ったS2CAによる未来の身体のへの負荷は了子を含む研究員や医療班の想定していたものよりも低かったのだが、それでも無視できるものではなかったため当初は病院での安静を勧められていた。
だが未来は現在リディアンに通っている。それと言うのも、未来の身体の中に埋め込まれた天羽々斬の欠片の仕業なのか、異様な回復速度により既に戦闘可能レベルまで回復していた。
勿論ただ事ではないため精密検査は続けている状態ではあるが日常生活には問題無いと判断されたため今日も学園にいる。それでもクリスは毎日のように未来を案じていた。
「もうすぐ学園祭だね」
「あーそうだな」
パン屑をポロポロと落とすクリスに困ったような笑みを浮かべながら未来は話す。
リディアンが新しい校舎になって最初のイベントである学園祭が近づいていた。
既に準備を進められている中で装者としての任務があるため参加は出来ないと思っていた未来だったが、弦十郎筆頭にした二課職員たちから参加できるならした方が良いと勧められて未来も準備に追われている。今日も何もなければ放課後残る予定であった。
「クリスの方はどう?」
「さーね。あたしは未来さえいりゃ関係ないさ」
「嬉しいけどクリスはクリスでちゃんと楽しんでね?」
「……まぁ、善処はするさ」
「本当かなー?」
口元を隠して笑みを浮かべる未来にクリスは顔を赤くしながらそっぽを向く。その際クリスの頬にパン屑が付いていたのを未来はそっと手を伸ばして取ると今度は耳まで真っ赤にして慌てるクリスに未来は笑いを抑えきれず少し大きめの声で笑ってしまった。
こうして二人の楽しい昼食の時間は過ぎていくのだった。
「──ヒナとキネクリ先輩、またイチャついてるね」
「そうですね。見ているこっちが恥ずかしいですよ……」
「えっと、こういう場合キマシタワーって言えばいいのかな?」
屋上に繋がる扉の影にトーテムポールのようにして隠れた創世たち三人娘は未来とクリスの楽しそうに話す光景を遠巻きで見ていた。
実は先輩であり、いつも何処か機嫌が悪そうな雰囲気のあるクリスに中々近寄る事が出来なかった三人だが、未来と二人でいる時のクリスを偶然見かけた時のいつもと違うクリスを見て、三人同時にクリスを「主人にしか懐いていない猫」という答えに至り、その日からクリスを見る目が変わっていた。
そしていつからか未来とクリスが二人きりになる時のクリスの反応を見るのが三人の趣味となっているのだ。
そして、その趣味に目覚めたのはもう一人いる。
「ふむ。私ももう少し時間をかけて雪音と仲良くなるべきなのか」
トーテムポールのように並んだ三人娘の一番上でクリスの更に先輩である風鳴翼が二人の様子を羨ましそうに眺めていた。
「そうですね、雪音先輩は警戒心が強いのであまりグイグイ行くと逃げられるかもしれません」
「ヒナはどうやってキネクリ先輩と仲良くなったんだろ?凄く仲良さそうだし」
「風鳴先輩の場合、ちょっと近寄り難い雰囲気があるからもっとゆっくり近付かないとダメですね!」
「む、威圧しているつもりは無いのだが……それにしても可愛い反応をするな、雪音は」
「「「ですよねー」」」
いつもクールだった翼がクリスとの距離で悩んでいるのを見た三人娘はこのスポットを翼に紹介し、クリスと仲良くなるためのきっかけ探す手伝いを密かに行っていた。
まだまだ信頼関係が築いけていないと分かっている翼にとってその誘いは行幸だったのだが、それにかこつけて今は可愛い反応をするクリスを愛でるのが主になりつつある事を翼本人も気付いていなかった。
こうして、未来とクリスが知らないうちに翼と三人娘の謎の仲間意識は強くなるのであった。
話の進みがおっそいな!細かすぎなんだよ!もっと省けや!(←犯人)
本当はマリアさんの代わりとなったセレナさんと切ちゃん、調ちゃんのシャワーシーンの部分も書きたかったですがね。エロ目線ではなくて原作との差別化のために。
序盤の了子さんと弦十郎のダンナとのちょっと甘めというか軽い話はただ書きたかっただけだ。だってギャグキャラ(響)がいないからどうしてもお笑い要素入れられないんだもの!少ないギャグが更に少なく……早く切ちゃん来てくれえええ!
そしてフィーネがサムズアップしてるのが見えるのは気のせいかしら?
イガリマとシュルシャガナの事を調べたら元となってる現実の神話とは違ってるのですね。ザババ神が男神とは知らなかった。それに武器の名前じゃなくて息子の名前とも言われてますし、そもそも色に関するものも見つけられませんでした……うん、二次創作ですし深い事は考えないようにしましょうそうしましょう!
次回 ! 終焉を望む者、終焉に拒む者