戦姫絶唱シンフォギアIF 〜陰る陽だまり〜   作:ボーイS

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さぁ、ここから少しずつ未来さんが……

またちょいやりすぎ回です。多分二話にわけれたなー。無理に一話にする事なかったデスの。

原作と別れた陰るG編が始まる。


それでは、どうぞ!


五話

 ──夜半 廃病院付近にて。

 

 陽は沈み、暗闇が街を覆う時間。

 未来とクリスと翼は街からあまり離れていない場所にある廃病院を見張るように建物の影に潜んでいた。

 

『いいか、今夜中に終わらせるつもりで行くぞ!』

『明日も学校があるのに夜半の出動を強いてしまい、すみません……』

「気にしないでください。これが私たち、防人の勤めです」

『ほんと、翼は真面目だねぇ。肩の力を抜きな』

「分かっているわ、奏」

 

 通信機から聞こえる弦十郎と慎次の声に翼は真剣な表情で返す。奏も緊張している翼を心配しているが、翼は年長者である自分が狼狽ではならないと叱咤して落ち着いていた。

 

 慎次が極秘にセレナたちの動向を調査した結果、未来たちの目の前にあるずっと昔に閉鎖された廃病院に二ヶ月ほど前からなんらかの物資が搬入されている事を掴んでいた。

 だがそれも確定した情報では無く、不確定な上にこれ以外の情報は慎次の力を持ってしてもまだ掴めていなかった。

 

「尻尾が出てないのなら、こちらから引きずり出すまでだ!」

「クリス、あんまり無茶しちゃダメだよ?」

「分かってるよ!未来も無理すんじゃねぇぞ!」

「二人とも、イチャつくのは後だ。行くぞ!」

「イチャついてねぇよ!?」

 

 顔を赤くして反応するクリスを置いて走る翼を追いかけるようにクリスも後を追う。その後ろを微笑を浮かべながら未来も追いかけて行った。

 

 

 

 病院内に入ると既に閉鎖しているというのもあって明かり一つ付いていない。その中を三人はひたすら走っていた。

 

「……何か、不気味だね」

「ああ。空気が重いつーか、変な感じだ」

「うむ。やはりここには何かあるようだな」

 

 先に進めば進むほど三人の身体に纏わり付くような異様な雰囲気が強くなっていく。クリスや翼その雰囲気に未来は嫌な予感を感じながらも歩みを止めず進む。

 どれくらい進んだのか、現在地が判断出来なくなりつつある中で廊下の曲がり角を曲がろうとした時、ヤツらは姿を現した。

 

「意外と早い出迎えだぞ!」

 

 通路の奥から耳障りな足音を響かせながら悪夢のような存在であるノイズが未来たち目掛けて迫ってくる。無作為に人を襲うはずのノイズが隊列を組むように前進している時点で何者かに操られており、以前セレナがノイズを操っていた事からフィーネを名乗る組織か、それに準ずる何かがあると確定した。

 

「行くぞ!小日向、雪音!」

「はい!」

「いっちょ暴れてやらぁ!」

 

 敵が目の前にいる事を確認したクリスと翼はギアペンダントを強く握り、未来は自分の胸に手を当てて頭に浮かぶ聖なる歌を口ずさむ。

 

 ──Killter Ichaival tron──

 

 ──Fellthr amenohabakiri tron──

 

 ──Imyuteus amenohabakiri tron──

 

 

 ノイズを前にして聖詠が院内に木霊する。そしてその後に続くのはクリスの歌。それによりノイズの相違差障壁がなくなり、ノイズの目が痛くなるような元のカラフルな色が露出し始めた。

 未来たちはシンフォギアを纏い、目の前から襲ってくるノイズの群れと対峙してその手に持つアームドギアで次々と薙ぎ払ったいく

 

 クリスは持っていたボウガンをガドリング形態に替えてノイズを打ち抜く。そのクリスをカバーする様に未来はクリスに近づくノイズを切り払い、翼は遊撃としてノイズをその白銀の剣の灰に変えていく。

 

 ノイズが操られている事以外はいつもと同じで何も変わりないはずの戦闘。それこそ、装者三人は過剰戦力と言える程度のノイズしか確認出来ていない。ノイズ相手なら今回も一瞬で蹴りが付く戦闘のはずだった。だが。

 

「なんで、なんでこんなに手間取るんだよッ!」

 

 クリスが動揺を隠さずに声に出てしまう。

 本来であればクリスの銃弾一発、未来と翼の一閃でノイズは灰になるはずだった。

 しかし、目の前のノイズは銃弾を食らおうと、身体を両断されようとすぐさま再生して何度も何度も未来たちを襲おうと歩みを止めなかった。

 何度も攻撃すれば流石にノイズを撃破出来たが、いつもよりも一体を撃破するのに時間がかかり、徐々に押され始めてしまう。

 

「何故だ、何故ギアの出力が上がらない?」

「くそ!身体が重てぇ!」

 

 減らす速度よりも増える速度の方が早く、通路がノイズで埋め尽くされていく。そう遠くない未来(みらい)に、撃破する事が出来なくなり三人はノイズの群れに埋もれてやられてしまうかもしれない。

 

(そんな事、させない!)

 

 嫌な未来(みらい)を予想してしまった未来はクリスと翼を守るために深呼吸して気を落ち着かせながら目を瞑る。そして自身の心の中にある感情を呼び起こそうとしていた。

 

 脳裏に浮かぶのは忘れたくても忘れられない自身の中にある絶望。

 伸ばした手からスルリと抜けて、自身の命と同じくらい大切な親友が目の前で灰に変わっていく姿。

 そして自分の手の中にあるのは雷のような形をしたヘアピン。

 血溜まりに沈むもう一人の大切な人の姿。

 

 二人を囲むように立つのは未来にとって忌々しき存在であるノイズ。

 

「な、小日向のシンフォギアが黒く!?」

 

 白と紫のシンフォギアから白の部分が少なくなっていき、黒い部分が広がっていく。それに伴い、未来はまるで鬼のような形相を浮かべていた。

 

 ギアの出力が上がらないのであれば、かつての半暴走状態の時のような強大な腕力で無理矢理殲滅すれば良いと未来は思い、意図的に暴走するためにわざと辛い過去を思い起こしていた。

 その結果、幸か不幸か未来を黒い何かが蝕む代わりに望む力を手に入れた。

 

「ッあああああぁぁぁぁ!!!」

 

 喉が潰れそうになるほどの叫びと共に未来は駆け出して目の前にいるノイズを刀の一閃の元薙ぎ払う。今度は再生する事なく、呆気ないくらいあっさりと灰に変わった。

 絶え間なく現れるノイズを未来は技を忘れた力のみの斬撃で一刀両断にしていく。その剣圧だけで壁や床が次々と砕かれ、ただでさえ不気味だった病院の廊下が更に不気味に思ってしまうほどボロボロになっていた。

 遠くで見ていたクリスと翼ですら畏怖してしまうほどの濃厚な殺気を放つ未来。そしてものの数分で廊下を埋め尽くすほどの大量のノイズは未来の手によって全て排除されたのだった。

 

「うっ、はぁ、はぁ」

 

 刀を杖代わりにして身体を支える。それでも身体中に走る痛みに悶えながら気絶しそうになる。

 目の前からノイズがいなくなったためか、未来の中の激しい憎悪が少しずつ小さくなると同時にシンフォギアの黒く染まった部分が若干灰色のようになりながらも色を取り戻していく。

 

「未来!お前何やったんだよ!」

「うう……だい、じょうぶ、だよ。クリス……」

 

 瞳に涙を溜めながら心配そうに近づくクリスに未来は安心させようと必至に貼り付けたような笑みを浮かべる。それを見て今度はクリスが怒りをあらわにしながらも未来を強く抱きしめた。

 

「ッ無理すんなって言っただろ!あたしらを守ってくれるのはありがたいが、未来に何かあったらあたしは、あたしは!」

「クリス……ごめんね」

 

 嗚咽を漏らすクリスを落ち着かせようと背中を優しく叩く。

 身体の痛みも引いてきて落ち着いてきた頭が自分が何をしでかしたのか理解する。そのせいでクリスが涙を流している事も、下手をすればクリスと翼を手にかけてしまう可能性があった事も。

 

「はぁ。小日向、今回は貴方が悪いわよ。後で叔父様と奏に怒られなさい。特に叔父様のゲンコツくらいは覚悟した方がいいかもね」

「ははは……」

 

 訓練で弦十郎の強さを目の前で見た未来にとって弦十郎のゲンコツほど怖い物はない。

 泣きじゃくるクリスをなだめる未来に呆れたようなため息を吐く翼だったが、初めて目の前で半暴走状態とはいえ本気の殺意を見せた未来の姿に恐怖を覚えていた。

 

(聞いてはいたが小日向があれほどの殺気を放てるとは……)

 

 弦十郎から話として未来の事を聞いていた翼だったが、いざ目の前で暴れていた未来を見れば自分が甘く考えていた事を思い知らせられる。

 何度か未来と訓練をしていたが、平時の未来の一撃すらタイミングを逃せば受け流せないというのに、タイミングが合ってもその上から両断されそうな殺意の乗った圧倒的な一撃。もしさっきの未来と対峙した時、自分は無事でいられるかと問われればNoと返すだろう。

 

 クリスの横で暖かい笑顔を見せていた未来を知っている翼にとって、それほどまでの殺意を植え付け、力を与えた一つの原因がかつての弱かった自分にあると考えると後悔しかない。

 

 影で剣を握る手に力を込める翼を他所に未来はクリスに抱きつかれたまま立ち上がろうとする。だが案の定抱きつかれたままでは立ち上がる事は出来ない。

 

「っと。もう大丈夫だから泣かないで。ね、クリス?」

「いやだ」

「雪音。小日向も困っているのだからそろそろ離してやれ」

「……無茶すんなよ?」

「うん。ありが…ックリス!」

 

 未来に抱きついたまま駄々をこねるクリスだったが、翼の言葉で未来から離れた瞬間、通路の奥から高速で得体の知れない人型の()()が無防備になったクリスの背中に向かって飛びかかってきた。

 

 それをいち早く気づいた未来は痛む身体に喝をいれて白紫の刀でその()()受け止めて弾き返す。だが人型の()()は弾き返されながらも天井に張り付き、そのまま天井を蹴って再び襲いかかってくる。だが今度は翼でも反応できた。

 

「はあぁ!!!」

 

 ギアの出力が落ちていようと体重の乗った白銀の剣の一刀が()()の頭部を捉えて振り下ろす。だが()()はノイズと違い灰に変わる事なくそのまま通路の方へ吹き飛ばされていった。

 

「アームドギアで迎撃したんだぞ!?」

「なのに何故炭素と砕けない!」

 

 先程はギアの出力が低下していたため再生されたが、ノイズであれば例外なくシンフォギアの力によって炭素となり崩れる。だが目の前で地面に倒れ伏す頭部の後ろが異様に伸び、碗部や脚部が異様な形状をしている謎の人型は炭素化する事なくそのまま立ち上がろうとしていた。となれば、答えは一つ。

 

「ノイズじゃ、ない……?」

「じゃぁあの化物はなんだってんだ!」

 

 得体の知れない人型の化物を前に三人は臆せず手に持つ武器を構える。

 未来は身体を動かす事すら困難で合ったがそれを秘密にして油断なく敵を見据えていると化物の後ろからパチパチと拍手をする音が聞こえて来る。

 

「なかなか聡いではないですか。装者の皆さん」

「貴方は確か、ウェル博士か!」

「んな馬鹿な!博士は岩国基地が襲われて行方不明になったんだぞ!?」

 

 通路の影から現れたのは、先日岩国基地へソロモンの杖を輸送する際に同行し、その後のノイズの襲撃で行方不明なったはずの眼鏡をかけた白髪の研究者の男、ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスだった。

 

「なるほど、つまりノイズの襲撃は全て貴方の仕業だったという事か!」

「その通りです。まぁ、僕の事に気づいていた人が一人いるようですが」

 

 謎の化物を大きめなゲージの中に誘導して中に入れながら翼の言葉に笑顔でウェル博士は肯定する。そして僅かに目を開いて刀を構えたままの未来をジッと見つめ、未来は油断する事なく口を開く。

 

「……仮にノイズを操る何か他の聖遺物があるのなら、わざわざソロモンの杖を奪う意味はありません。複数所持すれば色々と有利に事を運べるという考えもありますが、奪うならもっと別に方法があったはず」

 

 ソロモンの杖の輸送の際、未来が感じていたら疑問。

 シンフォギアがない限りノイズに対抗する手段は存在していない。となればノイズを操れるソロモンの杖かそれに準ずる別の何か聖遺物があれば世界征服すら難しい事ではない。

 有利になるとはいえ、それほどの物なら一つあれば十分。無理をしてソロモンの杖を狙う必要はない。

 

 では輸送の際に未来たちを襲ったノイズはなんだったのか?

 そもそも本当にソロモンの杖以外にノイズを操る聖遺物があるのか? 

 

「それなのにノイズを使って狙った。というより本当に他にノイズを操る聖遺物があるのかとを考えた場合、あの時ソロモンの杖を持っていた博士が一番怪しかったです。ソロモンの杖を使えば自分が助かるように襲わせる事も可能ですしね」

 

 偶然にしては明確な目的があるように列車を執拗に襲っていた事を考えれば何者かに操られているのは明白だった。

 

 そして、基地に着き博士とソロモンの杖を基地預けた途端、ノイズが現れてウェルとソロモンの杖が消えた。

 勿論、別の誰かの犯行が偶然重なった可能性は十分あったのだが、その答えは今目の前ある。

 

「くくく、ええそうですよ。あの時既にアタッシュケースの中にソロモンの杖は無く、コートの内側に隠し持っていたのです。あとは貴方が言ったように僕に被害が出ないように襲わせたわけだ」

 

 ウェルはそっと隠し持っていたソロモンの杖をとりだす。そしてソロモンの杖に付けられた宝玉を地面の方に向けると緑の光が放たれ、そこからノイズが次々と現れた。

 

「バビロニアの宝物庫よりノイズを呼び出し制御する事を可能にするなど、この杖を置いて他にありません。そしてこの杖の所有者は今や自分こそが相応しい!そう思わないですかねぇ!?」

「チッ思うかよ!」

 

 再び現れたノイズをウェルは未来たち向けて進行するように命令する。

 クリスはギアの腰部アーマーを展開してミサイルをウェルと向かってくるノイズに向けて放った。だがその瞬間、クリスの身体に鋭い痛みが駆け巡った。

 

「ぐ、ああああ!?」

「クリス!」

「雪音!?」

 

 突然走った痛みで叫ぶクリスを他所に放たれたミサイルはウェルに向かって飛来し、そのままノイズと周囲の壁を破壊した。

 普通であればノイズは当たり前だが生身の人間もただではすまない。だがそれをウェルはノイズを自身を守るように展開して盾とする事で爆風すら防いでしまった。

 

 ウェルを追いかけて瓦礫を切り裂いた未来と傷を負ったクリスに肩を貸す翼が廃病院から姿を表す。ボロボロの三人対してウェルはまだ余裕を持っていた。

 

「くっそ、なんでこっちがズタボロなんだよ……ッ」

(ギアの出力が低下したという事は適合係数も低下したという事。出力が大きい技を使えばバックファイアを受け止めきれず、最悪身に纏ったシンフォギアに殺されかねないか!)

 

 悔しさで顔が少し歪む翼だが、外に出た事によって徐々に身体が軽くなっていくのを感じる。本来の力を取り戻してはいないが、今更ウェルがノイズを召喚しても対応できる程度には力が戻っていた。

 未来も力が戻るのを感じてウェルに油断なく白紫の刀を向けるが、何を思ったのかウェルは余裕の笑みを持ったまま両手を上げて降参のポーズを取った。

 

 突然のウェルの行動に警戒する未来だったが視界の端で何かが空を飛んでいるのに気づいた。

 目を向ければ、それはウェルが新たに召喚した飛行型ノイズが大きなゲージを持って何処かに連れて行くところであった。

 

「あれは……さっきの!」

「く、小日向はその男の確保を!雪音を頼むぞ!」

 

 翼は悪いと分かっていても未来にウェルの確保と負傷したクリスを任せて飛行型ノイズに向かって走る。

 先程戦った感触からして、あの化物を放っておくのは得策ではないのは明らかだった。

 

(私の天羽々斬の機動性なら……いや、足りないか!)

『そのまま飛べ、翼!』

「叔父様!?」

 

 回復した通信機から弦十郎の声が響く。

 今翼は既に使用されなくなった海橋を走っている。だが今ノイズに向かって飛んだところで距離が足りない。

 徐々に端の先端が見えてくるがその先は海だけであり何も設置されていなかった。

 

『海に向かって飛べ!どんな時でも翼は!』

 

 弦十郎の言葉が理解出来なかったが、直後に入った奏の言葉に決心を決めて橋の先から現在のシンフォギアの出力を使って大きく飛ぶ。予想通りノイズの元にはまだ距離が足りない。

 

『今だ!仮設本部、急速浮上!』

 

 弦十郎の言葉を合図に翼の真下の海が大きく盛り上がり、そこから大型の潜水艦が現れた。

 未だ新しいニ課の本部が出来ていないため、新たな本部施設の完成までの期間、 新造された次世代型潜水艦内に仮設される事となった現在のニ課の本部。

 その潜水艦の先端に翼は着地、すぐさまノイズに向かってもう一度跳躍する。今度は剣の射程範囲でノイズを捉えた。

 翼の洗礼された斬撃により飛行型ノイズは灰に変わり、何処かへ運ぼうとしていた謎の化物が入ったゲージが海に向けて落下して行く。

 

(とどけ!)

 

 天羽々斬のシンフォギアには飛行能力も潜水能力もないが、今はウェルが何処かへ運ぼうとしていた化物の確保を優先して海へ落下するゲージに向かって手を伸ばす。

 あともう少しで手が届くという時、()()は空から無防備な翼を襲った。

 

「ッうあ!?」

「翼さん!」

 

 空から飛来した()()()()が手を伸ばしていた翼を斬り裂き吹き飛ばす。その光景を追いついたウェルを拘束した未来とクリスが悲鳴と共に見ていた。

 

 海に落ちる翼を他所に黒い大槍は海面を浮遊し、その上に黒いマントをはためかせて何者かが降り立って落ちてくる化物の入ったゲージをキャッチした。

 

「あいつは……」

 

 夜が明け始め朝日が顔を出す。その光に照らされて顔がはっきりと現れた黒い大槍の上に立つセレナを見てクリスは身体の痛みを堪えてボウガンを構えようとした。

 

「時間通りですよ。〝フィーネ〟」

「フィーネ、だと……!?」

 

 ウェルが漏らした言葉にクリスは動きが止まる。

 忘れもしない。それは自分を騙して世界をしようとしたかつての敵の名前であり、激戦の末この世からいなくなったはずの女の名前なのだから。

 

「ええ、終わりを意味する名は、我々の象徴であり彼女の二つ名でもある」

「んじゃ、あいつが!」

「そう!新たに目覚めし、再誕したフィーネですよ!」

 

 朝日を背にするセレナはただジッと未来たちを厳しい目付きで見つめている。それだけで威圧するほど、今のセレナは戦闘態勢に入っていた。

 

輪廻転生(リンカーネイション)。遺伝子にフィーネの刻印を持つ者を魂の器として永遠の刹那を生き続ける輪廻転生システム。それに選ばれたのがセレナ・カデンツァヴナ・イヴ」

「なら歌っていたあの女は!」

 

 フィーネが数千年もの間生きてきたのは何度も魂のみを転生させていたためであった。その際に器となった身体の魂はフィーネによって消されて完全にフィーネとなる。前回使っていた櫻井了子はただただ運が良かっただけであり、本来であれば翼がシンフォギアを起動させた十二年前にその魂は消えている。

 そして今回選ばれたのはツヴァイウィングに並ぶほどの人気を見せていたアーティスト、セレナ・カデンツァヴナ・イヴだとウェルは言い放ったのだった。

 

「……まぁ、それは自分も気になるところですが」

「え?」

 

 ウェルが漏らした言葉を近くにいた未来は聞き取る。どういう意味か聞こうとするが事は待ってくれない。

 

「甘く見ないでもらおうか!」

 

 僅かな漂流物を台に、海にいた翼がセレナに向かって跳躍して白銀の剣を振るう。その剣をセレナは余裕を持って躱した。

 

「甘くなんて見ていません!」

 

 翼の攻撃を躱したセレナは変幻自在のマントを操って翼を捕まえ、そのまま浮上したニ課仮設本部に向けて叩きつけるように放り投げる。

 

「だからこそ、私は全力で戦っています!」

 

 セレナもゲージを持ったまま翼を追って跳躍し、同じく仮設本部に着地する。そして海の上で浮遊した黒い大槍を自分の元へ引き寄せ、その場にゲージを置いてそのまま翼に向かって振るう。

 

 黒い激槍と白銀の剣が火花を散らしてぶつかり合う。しかし、槍に加え攻防優れたマントとの同時攻撃により手数で足りない上に、未だギアの出力が完全に戻っておらず、それに加えて先の不意打ちによるダメージもあって今の翼では太刀打ち出来ずどんどん押されていく。

 

「チッ、なら白騎士様のお出ましだ!」

 

 状況が不利と分かるや否や翼や奏、弦十郎のような戦闘に対して潔癖では無いクリスは不意打ちに上等というように倒れ伏す翼を見下すセレナに向けてボウガンの照準を合わせる。

 

 距離はあるがクリスの射撃の腕なら不可能な距離ではなく、ギアのアシストにより完全にセレナを照準を合わせた。その時だった、クリスの背中目掛けて幾つもの小型の丸鋸が襲いかかって来たのだ。

 

「クリス!」

「ッ!?」

 

 ウェルを拘束していた未来は一早くそれに気づくとウェルを放っておいてクリスの元へ走る。そして白紫の刀で自身に当たるものは無視してクリスに当たる小型丸鋸を切り落としていく。

 

「なんと、イガリマぁ!」

 

 いつの間にか近くまで接近していた魔法使いの帽子のようなヘッドギアをかぶった緑色のシンフォギアを纏う切歌と呼ばれていた少女が緑の大鎌を振りかぶり、未来とクリスに向かって振り下ろす。

 二人は飛来する小型丸鋸の合間を見て振り下ろされた大鎌を回避する。コンクリートの地面は大きく砕かれたところを見れば直撃していれば怪我では済まなかっただろう。

 

「時間ぴったりの到着です。おかげで助かりました」

「……助けたのは、お前の為じゃないデス」

「これは手厳しい」

 

 地面を砕いた切歌はウィルの横に移動しウェルを守るように未来とクリスと対峙するが、その顔は煩わそうに嫌悪感を隠さない顔していた。

 

「ちぃ!何処から出てきやがった!」

 

 突然現れた切歌に警戒しながら向けてボウガンを構えるクリス。その後ろには背中合わせの状態で未来が後方から現れたツインテールの少女、月読調に向けて白紫の刀を向けた。

 

「大人しくするデス!」

「今の貴女たちじゃ私たちには勝てない」

 

 警戒する切歌と調は無傷に対して未来とクリスは廃病院内でシンフォギアが何故か不安定になり、不必要なダメージを負っている。クリスにいたってはバックファイアにより戦闘続行は困難レベルだ。

 それでも、二人の瞳には諦めの色はない。

 

「だからって!簡単に負けられっかよ!」

「ッはあ!」

 

 クリスが切歌に向けてボウガンを放つのを合図に調に向かって未来は走り出す。

 

 未来の斬撃を調はツインテール部のアームドギアの装甲から伸びたアームの先端に取り付けられた大型丸鋸で迎撃する。いつもの未来であれば容易とは言わずとも跳ね除けるはずの一撃もシンフォギアの出力が落ちた今では防ぐ事は難しい。反撃しようにも今技を撃てばクリスの二の舞になるのは明白だった。

 

 ギアはボロボロになり、大型丸鋸の猛攻を防いでいた白紫の刀に大きなヒビが入るのを確認した未来は後ろに跳躍して調と距離を取るが、調は未来を逃がさない。

 

非常Σ式 禁月輪

 

 未来と距離が離れた調は空中で一回転したのち、アームドギアから巨大な円状の刃を形成し、内側に乗り高速で移動しながら未来に向けて突進し追尾する。通過した場所のコンクリートが回転する刃によって綺麗な傷跡が出来ていた。

 

「ぐううッ!」

「無駄!」

 

 調の猛攻により橋の防護壁まで押しやられた未来は白紫の刀を横に構えて巨大な円形の刃を防ぐ。だが既に限界が来ていた白紫の刀は耐えることができず、大きな音を立てて刀身が折れてしまった。

 

「う、ああッ!」

 

 防ぐ手段を失った未来は調の突撃をまともにくらい、大きく吹き飛ばされて橋の反対側の防護壁まで吹き飛ばされて壁に叩きつけられてしまう。

 

「諦めて。偽善者の貴女じゃ私には勝てない」

「く、うう……」

 

 未来を見下ろすように立つ調。未来は立ち上がろうにも折れて元の半分ほどの長さになった白紫の刀を杖にして倒れないようにするのが精一杯だった。

 

「ぐあッ!?」

「クリス!」

 

 切歌と戦っていたクリスの方から鈍い音と共にクリスの短い呻き声が未来の耳に入る。振り返れば大鎌の柄の部分がクリスの腹部に深々とめり込んでいた。

 切歌はその場で大鎌を振るい、先の一撃で動きが鈍くなったクリスにもう一度強打を与えて吹き飛ばした。

 

「ずるい気はするデスが勝ちは勝ちデス!」

「諦めて帰るならこれ以上は……?」

 

 コンクリートの地面に倒れ伏すクリスとギアの端々が砕かれているボロボロの未来を見て切歌と勝ちを確信して余裕の笑みを作り、調も油断はしていないが切歌と同じく勝ちを確信していた。

 しかし、未来は二人を無視して倒れ伏したまま起き上がらないクリスを悲壮な顔で見つめていた。

 

「ああ……」

 

 起き上がらないクリスを見て、未来はかつて油断した自分を守るためにフィーネの一撃を受けたクリスが血溜まりに沈んだ姿が重なる。

 心臓が早鐘を打ち、息が荒くなる。そして胸の奥底で鋭い痛みと共に忘れていた黒い感情が浮かび上がってくるのを感じた。

 

「……さない……」

「「!?」」

 

 先程まで感じなかった強い殺気を受けて二人は焦ってアームドギアを構える。

 未来は片手に白紫の刀を持ったまま両手をだらりと脱力させた状態で二人の前に立ち、そして押さえつけられていた殺意が爆発する。

 

「絶対に……許さないいいいい!

 

 廃病院で使った時とは打って変わり、未来の纏うシンフォギアから白の部分が消えて二課に保護される前、ネフシュタンの鎧を纏ったクリスを圧倒していた頃と似た紫と黒のシンフォギアに変わる。そして白紫の刀もギアの変色に伴い黒紫の刀に変わった。

 

「ギアの色が変わったデス!?」

「でもそれくらいで──」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

 調の声をかき消す大声をあげた未来は地面を砕くほど強く踏み込み、黒紫の刀を大きく振りかぶって二人に遅いかかる。

 嫌な予感を感じた切歌と調は防御する事を辞めてその場から離れる。そこに振り下ろされた未来の斬撃は二人のいた場所を大きく破壊し、その衝撃は遠くで二課仮設本部である潜水艦の甲板で戦闘をしていた翼とセレナの元まで届いた。

 

「なん、だ、あれは……」

 

 翼の知る未来からは想像出来ないほどおぞましい殺気を放ち、殺意のこもった目を二人の装者に向ける。その目を遠目で確認した翼は思わず一歩後ろに下がってしまった。

 先程感じた恐怖とは比較にならないほどの恐怖に翼は目の前にいるセレナと戦っていた事を忘れてしまう。それほど、目を離したくても離した瞬間に殺されるかもしれないという恐怖が勝っていた。

 

「ッ切歌ちゃん、調ちゃん!」

 

 セレナも未来の異常を感じとって恐怖したが、仲間の二人の危機を感じ翼を放っておいて二人の元に駆けて行った。

 その後ろを翼は追いかけることもせず、ただただその背中を見つめるしか出来なかった。

 

 

 

 セレナが異常に気付いて急ぎ切歌たちの元に向かう間、二人は未来の猛攻に回避する事しか出来ずにいた。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

「こいつ、気でも狂ったのデスか!?」

「ッ切ちゃん危ない!」

「およ!?」

 

 調の声に切歌は身体を無理矢理捻り、振り下ろされた斬撃を回避した。

 一閃により橋の鉄柱を両断し、地面を破壊して穴だらけにする。

 一撃でももらえばシンフォギアの防御能力を簡単に突破し、その下の生身すら無慈悲に切り刻んでしまうほどの重い斬撃。それをギリギリで回避するも反撃する隙はない。

 

 逃げる二人と殺意を持った未来だったが、その間に緑の光が割り込むとそこに無数のノイズが現れて二人を守るように壁になった。

 

「なぁにをやっているのです!早くここから、ひっ!?」

 

 ソロモンの杖を使って二人を援護したウェルだったが、その方法は火に油を注ぐようなものだった。

 

 現れたノイズを見た未来の脳裏には、未来から大切な親友を奪った悲しくて辛くて忌々しい過去が蘇る。

 

「ノイズ……?ノイズううううあ゛あ゛あ゛あ!!!」

「もっとヤバくなったデス!?」

「しまった、博士が!」

 

 二人を無視してノイズを召喚したウェルに向かって怒りに支配された未来は黒紫の刀を構え、進路にいるノイズを簡単に灰にしていく。

 

「ひ、ひいいいい!?」

 

 錯乱するようにノイズを次々と召喚するウェルだが、未来は片っ端からノイズを倒してどんどんウェルに近づく。そしてほんの僅かな時間で未来の黒紫の刀の射程範囲にウェルを捉えた。

 ウェルの身体を両断する刀の軌道。それを未来の後を追いかけて来た切歌と調はウェルの身体が真っ二つになる光景が目に浮かぶ。だがその光景は現実にならなかった。

 

 振り下ろされた斬撃を遮るように黒いマントがウェルと未来の間に割り込み、黒紫の刀を包む事で斬撃を受け止めたのだ。

 

「間に合った!」

「「セレナ!」」

 

 刀を封じたと見たセレナは未来に向かって黒い大槍の突きを放つ。

 未来が刀を離して回避するために距離を取るという計算で放たれた突きのため、それなりの威力と速度があり生身で受け止めたら戦闘続行は困難になるほどの突き。だったが、

 

「う、そッ」

 

 セレナは目の前のあり得ない光景に声を漏らす。

 当たれば幸と思って放たれた強力な突きを未来は空いていた左手で先端を掴むことで受け止めていたのだ。

 急いで大槍を引き戻そうとするが、今の未来の方が力が強いのか大槍はピクりともせず、逆に大きな隙を与えてしまうことになった。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

 叫びながらセレナに向かって殺意のこもった斬撃を放とうとマントの強力な拘束能力から黒紫の刀を無理矢理引き抜き、片手で大きく振りかぶる。防御は間に合わない。

 

「「させない(デス)!!」」

 

 振り下ろされる黒紫の刀を横からセレナを守るように大鎌と巨大な丸鋸が交差して止める。その瞬間、切歌と調は足元のコンクリートが砕けて足がめり込むほどの衝撃が走り二人の身体が悲鳴を上げた。

 未来は一人の腕力だけで切歌と調と拮抗する。いや、むしろ二人の方が押し負けつつあった。

 

「ッ重、すぎるデスッ!」

「これが天羽々斬の……ううん、この女の力ッ!?」

 

 ピキリ、と何かにヒビが入るような音が二人の耳に入る。

 見れば巨大丸鋸がついたアームと大鎌に小さな、だが目視出来るヒビが入り始めている。このままいけば二人のアームドギアは破壊されて未来の凶刃の元にどちらか、もしくは二人同時に命を奪われるかもしれない。仮に破壊された直後生き残っても追撃により確実な死が待っているそんな予感を感じた。

 

「二人はやらせない!」

 

 セレナはガングニールのマントを操って未来に向かって襲いかかり、ガラ空きだった腹部に強烈な一撃が入る。

 防御をせずにまともに入った一撃を受けて未来はゴムボールのように身体を何度も地面に打ち付けながら三人から遠く離れた場所まで吹き飛ばされ、橋の防護壁が砕けるほど強く背中を打ち付け、砂煙が未来の姿を隠した。

 

「はぁ、はぁ……なんなんデスかあれは!」

「これは、予想以上……」

「化物と思っていましたが、それでは生温いかもしれませんね」

 

 ほんの数回ぶつかり合っただけで感じてしまうほどの未来の異常なほどの戦闘力と異常性。

 コラボライブで見た未来もかなりの戦闘能力があると見ていたセレナは自分の観察力の甘さに奥歯を噛み締める。

 

「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

 突如大きな咆哮と共に防護壁の瓦礫を押し除けてボロボロになったシンフォギアを纏い、頭から血を流している未来が現れる。そんな状態でも、未来の瞳から戦闘の意思は消えていない。

 

「なッ!?」

「まだ立ち上がるデスか!?」

「なら立てなくなるまで……くうッ!?」

 

 立ち上がる未来に向けて黒い大槍を構えようとしたセレナだったが、先程まで軽々と振り回していた大槍が急激に重く感覚にバランスを崩しかけた。

 

(そんな、もうLiNKERが切れたの!?)

 

 どんどん重くなっていく大槍と目の前の敵を目の前に、セレナは目の前の怪物を相手に死を感じて絶望を隠せないでいた。

 

 油断なくアームドギアを構えるセレナたち三人ではあったが少しずつ力が抜けていき、先と同じ斬撃を放たれれば次は確実にアームドギアは破壊され、自身の身も血溜まりに沈むだろうと予感しながらもゆっくりと近づいてくる未来に対抗するしか生き残る術はなかった。

 

「殺す……敵は全部……ッ!?ごふっ!?」

 

 セレナの強烈な一撃を受けても戦闘の意思が消えていなかった未来が突然吐血し、大量の血が口からポタポタと流れ始め地面に膝をつく。

 痛みを我慢して立ち上がろうとする未来だったが、そう思えば思うほど身体がそれを阻止するかのように激痛が走り、更に吐血する。

 いまだ肌をチリチリと焦がすような殺気を感じながらも仕留めるなら今しかないと思った調が前に出ようとした瞬間、足下に赤いクリスタルのような矢が数本刺さり、それ以上進めなくなる。

 

「はぁ、はぁ、これ以上未来を痛めつけるってんなら、今度はあたしが相手になってやる!」

 

 切歌の一撃を受けて動けなくなっていたクリスが左腕を力無く垂らしながら無事な右手にボウガンを持ち、三人に向けて油断なく照準を合わせているた。

 

「ど、どうするんデスかセレナ!」

「さっきので私たちもかなりのダメージを負ってる。これ以上は今後に差し支えちゃう」

「分かっています。でも逃げる方法も……」

 

 未来たちもセレナたちも互いに戦闘続行が困難になるダメージを負い、このままでは死者が出るレベルに迫って来ていた。

 二課仮設本部である潜水艦の甲板にも人型の化物が入ったゲージを置いて来てしまっている。それを回収しに行こうにも動けばクリスに狙い撃ちにされる状況。

 

 どうにか撤退する方法を模索していたセレナだったが、突然空から聴き慣れたプロペラの駆動音が耳に入った。

 

「──大丈夫。どうやら間に合ったみたいです」

「な、あれは!?」

 

 セレナの言葉と同時に、突然クリスの上空からエアキャリアが姿を現したのだ。

 

『セレナ!ゲージの回収を!』

「分かっています!」

 

 通信機から聞こえたマムと呼ばれた女性の声に、セレナは再び橋の上から海に向かって飛び込み、漂流物を足場に急ぎ潜水艦の方に戻る。切歌と調はウェルとソロモンの杖を即座に回収してエアキャリアから伸ばされたロープに跳躍しながら掴んでいた。

 

「ぐっ、逃す、ッかはっ!?」

「未来!?」

 

 逃すまいと立ち上がろうとする未来だが、身体を動かした途端再び吐血し今度こそ地面に倒れ伏して気絶する。それを真横で見ていたクリスはロープに捕まる二人を撃ち落とすチャンスを捨てて未来の元へ近寄っていった。

 

 潜水艦の甲板に到着したセレナは化物の入ったゲージが無事な事にホッとし、すぐさま回収して頭の上まで来ていたエアキャリアから伸ばされたロープを掴かもうと手を伸ばした。

 

「ま、待て!」

 

 ロープを握る瞬間、後ろから呼び止められてセレナは振り向く。そこにはゲージを回収するチャンス、未来とクリスの援護をしに行くチャンス、潜水艦の甲板に到着してゲージを回収するまでの僅かな間無防備だったセレナを取り押さえるチャンス。その全てを未来の殺意に当てられて動けず、棒に振った翼が顔を青くしてそこにいた。

 

「……お前たちは、いったい何のために戦う?」

 

 前のライブでに戦った時に感じたちょっとした小さな疑問。その答えにセレナは。

 

「──正義では守れないものを守るために」

 

 それだけを残してセレナはエアキャリアに回収されてその場を離れていく。そしてセレナたちを乗せた謎のエアキャリアは突然視界から消え去りレーダーからも姿を消した。

 その後ろ姿を、翼はただ呆然と見ている事しかできなかった。

 

「おい!誰か聞こえるか!?」

 

 橋の上でクリスが泣きながら通信機に向けて声を張り上げる声が翼の耳に入る。声の方に目を向ければクリスの腕の中でシンフォギアが解けた未来が口から血を流して倒れていた。

 

『どうした、クリス君!』

「未来が目を開けなくて、血が流れてて!それで、それで!」

『落ち着け!すぐに救護班を向かわせる!」

「早くしてくれ!じゃないと未来が死んじまう!」

 

 混乱したクリスを宥めるように話す弦十郎だったが、自分の手の中で目を開けない大切な人を見れば落ち着けるはずがない。

 自分を愛してくれた両親が突然目の前から消えてように、未来も離れていくような幻想が脳裏によぎり、クリス余計にまともに思考するとが出来なくなっていく。

 

「死ぬな、お願いだから!生きてくれ!未来ううう!」

 

 クリスは自分が血で濡れる事を気に止めず、救護班が来るまでただ未来を抱き抱える事しか出来なかった。

 

 その近くに、ビー玉程度の大きさの紫の結晶が落ちている事には気づいていない。




原作より切ちゃんたち強くね?と思う方々、それは全体的に現状のうちの装者たちの戦闘力は原作よりも低いためです。特に翼さんは眠っていたため二年分の経験値が丸々ない状態ですし。未来さんにいたっては現時点の響と戦闘能力は同じでも精神面で雲泥の差があります。事前に自傷技のようなもの使ってますしね。クリスちゃんだけが辛うじて同レベルかな?

潜水艦と橋の距離近すぎるように感じますが気のせいだ。気にしたらダメだ!

そして暴走を操るとか、イグナイト必要あるん?と思う方々。ある程度暴走を操れるからイグナイトなんて簡単に制御出来る……なんて甘い話は無いのですよ……GX編までまだ先ですがどんどん未来さんがいろんな意味でヤバァイ事になりますよ……

ちょいネタバレ?になりますがセレナさんの「切歌ちゃん」「調ちゃん」呼びは誤字ではないのであしからず。

……これでG編序盤てマ?

次回! 学園祭

明るい話題!になるはずもなく……
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