戦姫絶唱シンフォギアIF 〜陰る陽だまり〜   作:ボーイS

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進む時は指が進む進む。この速さをキープしたい_(:3」z)_

生き残る人間が多い方が過酷なルート進むって、世の中理不尽ですねぇ(←犯人)。

取り敢えずまた日常回のようなもの。まぁ未来さんの状態を考えれば少々重い日常ですがね!

それでは、どうぞ!


六話

 ──エアキャリア内にて。

 

「あうっ!」

「あ。大丈夫、きりちゃん?」

「ちょっと痛いデスけど大丈夫デ〜ス!」

 

 エアキャリア内に配置された腰掛けに座る切歌に調は慣れた手つきで怪我をしている箇所を治療していた。

 

 暴走した未来との戦闘は切歌たちに予想外の大きなダメージを受けていた。

 不意打ちと廃病院に侵入した際にガスとして未来、クリス、翼の三人にアンチリンカーと呼ばれるLiNKERとは逆にシンフォギアの適合係数を低下させる薬を散布していたため、戦闘能力が低下した未来たちなら簡単に倒せると思っていた。

 しかし、結局は隠れ家にしていたアジトが見つかり、セレナ、切歌、調は無視出来ない程度のダメージを負うという敗北と言っても良い結果だった。

 辛うじて全員無事なのと重要な物の確保が出来ていたのが救いか。

 

「いやぁ、まさか二課の情報収集能力があれほどのものとは。少し甘く見ていましたね」

「ドクター……」

 

 ノックもせずに自動扉からウェルが無遠慮に部屋に入ってくる。アジトを失ったのは痛手だというのに危機感のないウェルの顔を見てセレナも眉を潜めた。

 

「お前!連中にアジトを抑えられたら計画実行まで何処に身を潜めればいいんデスか!」

 

 今回、セレナたち装者三人とマムと呼ばれた初老の女性、ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤが別行動を取る際、アジトにはウェルが残っていた。

 そしてその間、完璧と言ってよかった隠蔽工作に()()()穴が出来、その穴から慎次は僅かな情報を抜き取った結果が未来たちにアジトが見つかったのだった。

 

 ウェルを見て切歌が立ち上がり身長差を物ともせずにウェルの白衣の胸ぐら掴もうとするがその手をセレナが掴んで止めさせる。

 

「やめなさい。こんな事しても何も変わらないのですから」

「でも!」

「私はやめなさいと言ってるの。暁さん」

「うっ……」

 

 まだウェルに掴みかかろうとする切歌をセレナは柔和な顔から目を鋭くして睨んで止める。その目を見て切歌は渋々といった顔で出していた腕を降す。それを見てセレナも無言で掴んでいた手を離した。

 

「驚きましたよ。謝罪の機会すらくれないのですから」

「言い訳は結構。貴方のミスでアジトを失った事には変わりませんから」

「嫌われたものですねぇ」

 

 反省の色が無いウェルに今度は調もウェルを睨みつける。切歌にいたっては今にでも殴りつけそうだった。

 

『三人ともおやめなさい』

 

 セレナたちのいる区画に取り付けられたモニターにナスターシャの姿が映し出される。それを見て切歌はウェルを殴ろうと振り上げようとした拳を解き、調はゴミを見るような目でウェルを一瞥した後モニターの方に向く。

 

『虎の子を守りきれたのが目下の幸い。とはいえアジトを抑えられた今〝ネフィリム〟に与える餌がないのが我々にとって大きな痛手です』

「……ネフィリム」

 

 ネフィリム。それは廃病院で未来たちを襲い、セレナが回収したゲージの中にいた人型の異様な化物の名前。

 そして、セレナから大切な人を奪った存在の名前。

 その名前を聞いてセレナはナスターシャから見えない位置で強く拳を握るが、顔までは制御しきれずいつもの柔和な顔を崩して怒りを隠しきれずに目つきが鋭くなった。

 

「今は大人しくしてても、いつまたお腹を空かせて暴れだすか分からない」

 

 壁一枚挟んでいて見えないが、格納庫にて隔離したネフィリムがいつ眠りから覚めるか気が気でない。目覚めた時に餌を欲すれば暴れるのは自然の道理。それが例え普通の生物でなくとも何かを得て生きる生きているならそれは避けられない道だった。

 

「持ち出した餌こそ失えど全ての策を失ったわけではありませんよ」

『それはどういう事ですか、ドクター』

「今言っても良いのですがね、取り敢えず今日は休みませんか?貴女方も疲労が見られるようですし。今後の作戦に支障をきたしては元も子もなくなりますから」

 

 モニターに映るナスターシャの疑問に人の良さそうな笑みを浮かべるウェルだがセレナたちを見てさも「良い人」を演じるようにセレナたちを心配するような仕草をする。そんなウェルを見て切歌と調は気味悪がり嫌悪感を丸出しにした表情が出ていた。

 

『……それもそうですね。後日詳しい内容を聞かせてください』

「分かりましたよ。ナスターシャ教授」

『貴女たちも十分な休息を取りなさい』

 

 ナスターシャは表情を変えずにウェルの提案を承諾する。そしてセレナたちの方を向いて僅かに笑みを見せた後モニターが切れた。

 

「では、僕はここで失礼させてもらいますよ」

「何処へ行く気ですか、ドクター?」

 

 モニターが消えた事を確認するとすぐさまエアキャリア内にある自分の研究室へ向かおうと身を翻すウェルをセレナは強めの口調で呼び止める。

 ウェルはセレナから見えない位置で舌打ちをして再び振り返る。その時には既に貼り付けたような笑みを浮かべていた。

 

「いやなに、()()()の調整をしなければならないのでね」

「切り札……例の〝神獣鏡〟の装者の事ですか?」

「ええ、調整が甘いようでまだ上手く起動しないのでね。とは言っても、ほとんど完成しているので後は微調整ぐらいですが」

 

 セレナたちの計画要となる聖遺物、〝神獣鏡〟。光の反射等、鏡に起因するいくつかの特性を備え、 更には機体を不可視とするばかりか、振動、その他シグナルの一切を低減・遮断し、 索敵機器の目をくらませる効果がある。今セレナたちが乗るエアキャリアがニ課の索敵範囲から消えたのはその聖遺物の性能によるものでもある。

 そして、その神獣鏡の装者こそセレナたちの計画で最も重要な存在であった。

 

「……まるで機械のように扱うのですね」

「では神獣鏡に適合する装者を連れてきてください。でしたらすぐにでも辞めますよ」

 

 ウェルの言葉に嫌悪を込めてセレナは言い返すが、ウェルは用意してあったかようにすぐさま返す。

 

 神獣鏡はその特殊性から適合する装者が見つからず、最後の手段として適合係数は低いものの可能性がある女性を調()()して作り上げると言う非人道的で非道な道を取ることになっていた。

 やり方もさる事ながら、それが可能な手段を持つウェルにセレナは今すぐにでも排除したい人間として嫌悪していた。それをしないのはセレナたちの目的の為に必要な事であるからであり、そうでなければウェルと協力はしなかったであろう。

 

「……顔も見た事の無い人に興味はありません。ですが作戦を確実にするものにしてください」

「ええ。絶対に、()()()、貴女方の目的のために完璧に仕上げてみせましょう」

 

 不敵な笑みを浮かべてそう言い残したウィルは今度こそ部屋から出て行く。そして部屋にはセレナ、切歌、調の三人が残った。

 

「──セレナ」

 

 ウェルの去った自動扉を睨みつけながら拳を握るセレナの服の裾を調が引っ張る。振り向けば調とその隣に切歌が並びセレナを見上げていた。

 

「どうかしましたか。暁さん、月読さん」

 

 見上げてくる二人の瞳から目を逸らしつつ、何か言いたげにしている切歌と調の方に身体を向けた。

 

「さっきセレナ、私たちの事、昔みたいに切歌ちゃん、調ちゃんって呼んでたデスから……」

「ッ」

 

 純粋な切歌の言葉にセレナは胸が強く締め付けられるような痛みに襲われる。

 

「マリアがいた時みたいにまた「気のせいです」セ、セレナ……?」

 

 切歌の後に続こうとした調だったが、すぐさまセレナは強い口調で否定し、二人から逃げるように身を翻して部屋から出て行こうとする。それを止めようと手を伸ばすがその手を振り払うようにセレナは振り返りもせずに何も言わず急いで部屋から出て行った。

 セレナが立ち去った扉を悲しそうに見つめる切歌の手を調は強く握りしめる。切歌だけは何処にも行かないでほしいと願いながら。

 

「……もう無理、なのかな……昔みたいに戻るのは」

「調……」

 

 ナスターシャも入れて五人で幸せだった昔を思い出して嗚咽混じりの涙を流す調を切歌は強く抱きしめて自分も密かに涙を流す。

 

 残された切歌と調の嗚咽が部屋に寂しく響き渡るのだった。

 

 ──────────────────

 

 ──病院にて

 

 朝でもなく、昼には早い時間。

 ニ課お抱えの病院の一室にて、小日向未来は目を覚ました。

 

「ん、んん……ここ、は?」

 

 目を開けてすぐに見たのは何度も見た事のある天井。そして嗅ぎ慣れた病院の独特の匂い。それにより、未来は自分が今病院にいるのだと気づく。

 自分の身体を見れば左腕は包帯とギプスをされていて、頭には包帯が巻かれていた。身体も筋肉痛のようにあちこち痛みが走っている。

 

(確かウェル博士を拘束して……翼さんを追いかけて……あの子たちとまた戦って……)

 

 最後に残ったいる記憶は調の巨大な円状の刃の突撃を防ごうとしたが刀が折れて橋の防護壁に向かって吹き飛ばされ、強く背中を打ち付けたところで、その後は頭に霧がかかったように思い出せない。

 

「……そうだ、あの後クリスの声が……うん?」

 

 頭にかかった霧が薄くなるのを感じたが、その前に自身の腹部が少し重い事に気付いた。

 痛みを我慢して上半身を起こすと、そこには椅子に座った状態でベットに上半身を預けた状態で眠っているクリスがいた。

 

「んん……あぁ?」

 

 未来が動いた振動を感じたのかモゾモゾと身動ぎすると寝ていたクリスが口に涎の跡を残したまま顔を上げる。そして起き上がった未来と目がバッチリ合った。

 

「おはようクリス。ゆっくり眠れた?」

 

 愛しい大切な人であるクリスの頭を優しく撫でる。優しく微笑むその姿は何処か神々しくもあり、母親のような穏やかさがあった。

 クリスは未来に頭を撫でられながらジッと十秒ほど見つめて、そして瞳に涙を溜めた後未来を強く抱きしめた。

 

「バカやろう!心配かけさせやがって!どんだけ心配したか!」

「うん、ごめんね」

「ほんとに、ほんとに……よかったッ」

「もう、クリス泣き虫なんだから」

 

 強く抱きしめられて身体に痛みを感じながらも震えながら嗚咽を漏らすクリスの背中を優しくあやすように叩く未来であった。

 

 

 

 数十分後、未来が目覚めた事を聞きつけて弦十郎と慎次と了子、そして少し遅れて奏と翼も病室に集まる。病院にはニ課の息がかかっていたため病室が大きな部屋であったのが幸運だった。

 

「まったく、あれほど無茶はするなと言っただろう」

「すみません。でもあの時はあれしか無事に切り抜ける方法はなかったもので」

「ここにいる時点で無事とは言えんがな」

 

 ベットで上半身を起き上がらせて横になっている未来を弦十郎頭を抱えながらため息を吐く。後ろにいた奏と翼は弦十郎の言葉に何度もうなづいていた。

 

「そうよぉ?特にクリスちゃんなんて貴女がここに運び込まれた時、いつもの強気な態度は何処に行ったのか探したくなっちゃうくらい泣きじゃくって」

「そ、そんな事ねぇ!適当なこと言うんじゃねぇよ!?」

 

 了子のおちゃらけた言葉にクリスは顔を赤くして否定する。だがクリスの頬についた涙の跡と目の下に付いた見ればそれが嘘か本当かすぐ分かることだった。

 

「えっと、私どれくらい眠っていたんですか?」

「ん?そうだな、丸々二日だな」

「そんなに……」

 

 二日間も眠っていたと聞いて未来は驚きを隠せないでいた。

 実際、散布されたアンチリンカーのせいでシンフォギアへの適合率が低下した状態での戦闘とわざと半暴走状態を作り出した事への身体の負担、そこから敵対する装者の戦闘でダメージを受け、止めに暴走直前ギリギリのかつて弦十郎でさえ怯んだ怒りと殺意に塗れて我に失った状態。

 どれをとっても未来の身体に大きな負担をかけているのは誰が見ても明らかだった。

 

「学園祭は明日よ。だから今日はゆっくり休みなさい」

「え、参加してもいいんですか?」

「おうよ!なんたって一年に一回のお祭りだからな!出れるなら出たほうがいいに決まってる!まぁあたしは一般参加だけど」

 

 自分の無理で怪我をしてしまい、参加出来ないと思っていた未来だったが、意外と参加出来るならしても良いと言われて反応に困ってしまう。

 どう反応するのが正解か迷っていると了子がニッコリとしながら近づいて手に持ったカルテを未来に見せる。見方は分からなかったが、複雑骨折やら内臓の検査等の項目が所狭しに書かれており、頬がヒクヒクしてしまった。

 

「でもぉ、その後は数日は入院してもらうけどね♡」

「うっ、でっでも私、四ヶ月くらい学校に通っていないので進級が危ういのですが」

 

 天羽々斬の装者に目覚めてから弦十郎に保護されるまでおよそ二ヶ月。その後の入院で一ヶ月以上。そして落ちてくる月を破壊後の隠蔽工作のための三週間の軟禁。

 元から勉学は嫌いじゃなかったため成績は悪くなく、今では精神が安定してリディアンに通っているものの、出席日数は秘密裏に二課が操作したとはいえギリギリ。これ以上は進級出来なくなってしまう。

 そう考えていた未来だったが、その肩に翼はゆっくりと優しく手を置いて「大丈夫だ」と言った。

 

「二年間眠っていた私が進級出来ているのだ。数日くらい問題ない」

「それもそうですが……そういえば翼さん、どうやって進級出来たんですか?」

 

 前々から思っていた疑問。

 当時一年生だった翼は二年前のライブ事件からずっと眠っていた。その間、世界に名を轟かせるツヴァイウィングの方でも活動せずに、なんの知らせもなく休止していた以上退学処分となっても不思議ではない。

 だが翼は問題なく進級して三年になっている。それが不思議でならなかった。

 

 未来の質問に翼は窓の方に顔を向けて何処か遠くを見つめていた。

 

「勉学は苦手ではなかったのだが……人間、頑張れば二年間の授業内容を一週間で頭に叩き込めるものなのだ」

 

 なんとなく目が死んでいる翼の言葉に未来は咄嗟に慎次を見ようとするが、当の本人はいつの間にか音もなくその場から消えていた。

 

「ま、まぁともかく!身体に無理をさせない程度に学園祭は楽しめ。我々とて、キミに普通の日常を送って欲しいと思っている。怪我の具合から心から楽しめるかは分からないがな」

「はい。お心遣い、感謝します」

 

 翼の状態を見て話題を変えようと弦十郎は無理矢理話題変換する。少し早口になりながらも密かに楽しみにしていた学園祭に参加出来る事に未来はお礼な言葉と共にお辞儀した。

 

「さぁて!怪我人に気を遣わせるのも身体に毒だし、私たちはそろそろ帰りましょっか!」

「そうだな。それでは俺たちは仮設本部に戻る」

「奏、私たちも次の仕事が」

「やっべ!忘れてた!んじゃな小日向!」

「無理せず今日は寝てなさい。それじゃ」

 

 病室から未来を気遣って次々と出て行く。奏と翼は次の仕事があるため早歩きで去っていった。

 そして病室には未来とクリスの二人が残ったのだった。

 静かになる病室で二人は気まずい空気の中ただ黙る事しか出来ず、静かに時間が過ぎる。

 長い沈黙に耐えかねて最初に口を開いたのは未来だった。

 

「……ごめんね、心配かけて」

「……」

 

 再びクリスに謝罪するが、クリスは黙ったまま俯いて何も答えない。

 自分が悪いと自覚しているため何もいえず困っているとクリスはそっぽを向いたまま迷いながら口を開く。

 

「……んさい…あたし…しょに……」

「?ごめん、聞こえなかった。もう一回「だから!」ク、クリス?」

 

 小声すぎて途切れ途切れにしか聞こえず、聞き返そうとしたらクリスが顔を赤くして立ち上がり、やけくそのように声を張り上げた。

 

「学園祭!あたしと一緒に周ってくれるんなら許してやるっつってんだよ!」

 

 未来は大声をあげたクリスに目を丸くして驚いたが、耳まで真っ赤にして目が泳ぐクリスを見て自然と笑みが浮かぶ。

 

「ふふ。うん、それくらいならお安い御用だよ」

「言ったな!?絶対だかんな!」

「はいはい」

 

 顔を赤くしながらもクリスの背中で猫の尻尾のようなものが左右に揺れているのを幻視する未来であった。

 

 その後、まだ完全に許していないクリスの頭を撫でたり抱きしめたりして機嫌を取ろうとするが、その度にクリスは顔を赤くして強引に離れようとするため中々上手くいかず全部徒労に終わってしまう(この時既にクリスの心臓は医者が心配するレベルの心拍数であった)。

 諦めて病院の面会時間が終わるまで二人は終始笑顔が絶えず楽しそうに話し合っているのだった。

 

 

 ──────────────────

 

 二課仮設本部である潜水艦に戻る道中、車の中では弦十郎と了子は二人だけであったが、その顔はあまりにも真剣すぎていた。

 

「それで、未来君の身体の具合はどうだ?」

「現代医療だと()()()()、って言ったところね」

「そうか……」

 

 了子の言葉に弦十郎は更に深刻そうに眉をひそめる。

 

 激しい怒りと殺意によってシンフォギアの色が変わる。これがシンフォギアの特性の一つであれば問題はない。だが、それならば翼が眠りについた後の奏でも未来と同レベルとは言わずともシンフォギアの色に何か変化があったはず。だが、奏のシンフォギアは特に()()()()()()()

 だが現実問題、未来の天羽々斬のシンフォギアは未来の激しい怒りと殺意により変色を繰り返している。シンフォギアに影響を与えるほどの強い感情とも取れるが、未来は普通の装者とは違っていた。

 

「LiNKERを投与していない以上、身体へのダメージの多さは疑問すぎる。それに」

 

 言葉を切る弦十郎に合わせて了子はチラリと弦十郎に目を向ける。その視線を感じた弦十郎は胸ポケットの中からあるものを取り出す。それはビー玉程度の大きさの小さな紫の結晶だった。

 

 先日の戦闘後意識不明となった未来の近くに落ちていた謎の結晶。これを了子が調べたところ聖遺物までには届かないが、僅かながらも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それに未来はLiNKERを投与しなくともシンフォギアの能力を十全に発揮できる適合者。いくらアンチリンカーによる適合率の低下と暴走による負荷が加わった事を加味しても、身体へのダメージの多さはその身を滅ぼすシンフォギア最後の切り札である絶唱と並ぶダメージであった。それはあまりにも大きすぎだ。

 だが病院の設備で検査した結果未来の身体に問題はなしと判断された。明らかに異常なのに、だ。

 

「たんに無茶しすぎって取れるけど未来ちゃんは融合症例。翼ちゃんやクリスちゃんみたいな純粋な装者とは同じ目線で見ていいのか分からないわ」

 

 シンフォギアの変色と未来の身体へのダメージ。それが今のところ天羽々斬の欠片を心臓付近に埋め込まれ融合症例となった未来にしか見られていない現象であるため楽観視できない。

 そして未来の近くに落ちていた天羽々斬の反応がある謎の結晶。

 

「何も無ければそれで良い。俺たちの考えすぎならなお良い。だが」

 

 弦十郎の勘は言っていた。これは()()()()()()と。

 このままでは未来が危ないと囁いていた。

 

「やっぱり学園祭に行かせず検査した方がよかった?」

「……かもしれんな」

 

 通常の検査結果から違和感を覚えていた弦十郎はすぐさま未来を二課仮設本部にある医療器具と聖遺物に関する機器で未来を検査した方が良いと思っていたが、一度検査が始まれば数日は外に出歩く事が出来なくなる。そうなれば近々開かれる新しくなったリディアンの最初の学園祭に出られなくなってしまう。それを憂いた結果、学園祭が終わった後に検査するという段取りとなった。

 だが、改めて未来の身体の異常さを考えれば未来に嫌われるのを覚悟で無理矢理にでも検査させるべきだったかもしれないと若干後悔していた。

 

「セレナ・カデンツァヴナ・イヴ。シュルシャガナとイガリマの装者。フィーネ。行方不明と思われていたウェル博士。そして未来君。やらなければならない事が多すぎて頭が痛いよ」

「休暇は当分お預けね」

「ああ。今週は借りたいDVDがあったんだがな」

 

 笑いながら問題は何一つ解決していないが今は悲観してはいけないと喝を入れる弦十郎とそれを見て微笑む了子だった。




セレナさんがどんどん追い詰められていく……早く再会させてあげたいがそうは問屋が下さない。しかもこれからまだ追い詰めるとか……貴様さては鬼畜だな?(←お前だ)
変顔眼鏡野郎の言う切り札の神獣鏡の装者が誰かを知らないセレナさん……手が触れる距離にいても気づかないものは沢山あるんですよ…

次回予告が学園祭だったのに学園祭要素がない!やっちまったな!

響「未来が……未来がああぁぁ!」
作者「(やべえ、出番の無さと未来さんがNTRれ気味で狂い出して破壊神ヒビキの兆候が!?)」


次回! 学園祭と不穏な影
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