今回から結構省きますよ。全部合わせて書いてたらほんと終わらねぇ(゚∀゚)!
ここを過ぎれば後半……未来さんとセレナさんはどうなるのか!
セレナさんの誕生日までに……終わらないだろうなぁ(遠い目)
新グレ響カッコイイけどストーリー重ぃ……運営も中々酷い事しますねぇ!グレ響とIF未来さんになんの怨みがあるんや!(←)
これはあれか、IFセレナさん&マリアさん実装して最終的原作装者たちじゃなくてIF装者たちが結集してIF未来さんを助けに行くパターンか?……あれ、なんか意外と有りか?IF未来さんとの関係薄いけど。
──ヘリキャリア内にて。
ウェルが帰還したことにより、セレナたちでは応急処置しかできなかったナスターシャの治療は順調に進み、ベットで横になるナスターシャの顔は目で見えるほど良くなっていった。
そしてものの数分で心肺は安定し、呼吸も落ち着いていきゆっくりと目を開けた。
「「「マム!」」」
「貴女たち……」
まだ病み上がりのナスターシャの手を切歌と調は握り、セレナは安心したのか少しふらついて近くの壁にもたれかかった。
ウェルがいない間倒れたナスターシャの看病はセレナが行っており、自分では弱っていくナスターシャを見守る事しか出来ず気が気でなかった。そのため緊張の糸が切れて力が抜けてしまうのも仕方のない事だ。
「数値は安定。年齢の割には大した体力です。それとも振り絞った気力でしょうか」
呆れながらもキチンと仕事をしたウェルでも下半身を麻痺し、病気を患っていたナスターシャが一週間もまともな治療をされずにいたというのに生きていた事に驚いていた。それこそ、今ウェル自信で言ったように気力を振り絞らねば取り返しのつかない事になっていた可能性もあるほどに。
「よかった」
「本当によかったデス!」
「無事で何よりです、マム」
今まで無理な作戦を強いらせてきた自分に向けて僅かに瞳を潤ませて口々に安堵の言葉を出す三人を見て、ナスターシャは強い衝撃を受けた。
(私はこの優しい娘たちに、いったい何をさせようとしていたのか)
世界を救うため、それはセレナたちも了承した事。多少の危険はあるのも承知の上のはずだった。だが結果は人々を不幸にし、結局セレナたち三人も不幸な目にあっている。この先作戦を進めたところで本当にセレナたちは幸せになれるのか疑問に思ってき始めていた。
(……所詮テロリストの真似事では、迫り来る災厄に対して何も抗えない事に、もっと早く気づくべきでした)
自分が目覚めた事に嬉しそうに話しかけてくる三人を見てナスターシャは自分の浅はかさを悔い、そして前まで迷っていたある事に決意を固めた。
「さて、私は神獣鏡の調整に戻ります。ネフィリムの覚醒心臓と神獣鏡が揃いました。それにフロンティアが封印された座標も発見済み。私たちの計画もとうとう佳境!既に出鱈目なパーティーの開催準備は整っているのですよ!あとは私たちの奏でる協奏曲にて全人類が踊り狂うだけ……ふふ、あはははははははは!!!」
誰も求めていない説明を独り言のように呟き、そして狂ったような笑いを浮かべながらウェルが部屋から出て行く。最後まで気持ち悪い男だった。
「気持ち悪いデスね……」
「うん。でも博士の言ってる事は事実」
「そうですね。あとは準備が整い次第、計画を最終段階に移すだけ」
ギュッと強く手を握るセレナ。その目は喜んでいるようにも、もう引き返す事が出来ず後悔しているようにも見えた。
そんなセレナを見てナスターシャは目を瞑り、ゆっくりと三人に視線を向けた。
「切歌、調。食料の調達をお願い出来ますか?」
「それくらいなら別にいいデスよマム!」
「うん」
「ならお願いします。動ける時に動かねば時間を無駄にするだけですよ」
厳しめに、だが優しさを含んだナスターシャの声に切歌と調は一瞬互いに目を合わせたが二人はうなずき、部屋から出て買い出しに向かうのだった。
そして、部屋の中にはセレナとナスターシャが残った。
「セレナ」
「?はい。なんでしょうか」
「……貴女に話があります」
──────────────────
──病院にて。
未来が調と戦闘で異常な発熱と身体が紫の結晶に覆われていく現象により、ニ課の保有する病院に運び込まれた未来は到着してすぐさま手術室に運び込まれ、体表に浮き出ていた天羽々斬と思われる紫の結晶の除去が行われた。
紫の結晶の脆く、除去自体は簡単だったが、人体に結晶が生えるというあり得ない現象に細心の注意を払いながらの作業が行われ、無事に手術が終わったのは日付が変わってかなり経った後だった。
「それで、身体の調子はどうかしら?」
「特に問題はありませんね」
「違和感とかは?」
「それも無いですね。いつも通りです」
「そう」
病室にてベットの上に触る未来に了子がいくつか質問していく。
今回は一日も経たずに目を覚ました事にクリスを含めた二課のメンバーは安堵していた。前回のように一週間も寝たきりになっていたら、特にクリスの精神が危なかっただろう。
そして一日安静にした今日、軽い診断として了子一人が未来の様子を見にきていたのだ。
「んー脈拍も問題ないみたいだし、精神的な被害もないわね。
「度々ありがとうございます。了子さん」
「いいのよぅ!これもお仕事の内だからね?そ・れ・に」
少々語気を強めに言って了子はあざとくウィンクをしながら深々と頭を下げる未来の頭を撫でて立ち上がり病室の扉に向かった歩いていく。
「そろそろ交代してあげないと、この子たちが痺れを切らして突撃してきそうだしねん」
そしておもむろにスライド式の扉の取ってを掴むとゆっくりと開ける。すると未来のを心配して聞き耳を立てていたクリス、翼、奏の三人は支えを失って病室に雪崩れ込んできた。
「クリス?それに翼さんと奏さんまで……」
三人は気まずそうに未来から顔を背ける。盗み聞きしていた事に多少なりとも罪の意識はあったのだろう。
「えっと、身体の調子はどうなんだ?」
「さっき了子さんにも言いったけど問題ないよ。軽い怪我はあったみたいだけどね」
「まぁ前よりかは無事みたいだし?よかったじゃないさ」
「私は最初から小日向なら大丈夫だと思っていたぞ!……奏、雪音。何故そんな目を向けるのだ?」
奏とクリスは胸を張る翼に何処か哀れみも篭ったジト目を向ける。
何事もなく無事だった未来を見て安心した三人は和気藹々と会話を楽しんでいた。
だがその裏では三人の心情は複雑なものだった。
既に弦十郎から未来の天羽々斬の浸食の事を伝えられている奏と翼は未来が無事では無いと知っているため、今見せている笑顔も無理をしているのかと勘繰ってしまう。そう思ってしまうのも仕方ないほど、天羽々斬の浸食は甚大なものだった。
そして影で話を聞いていたクリスもその事は知っており、未来の痛々しく見える笑顔を見て胸が痛くなるのを必死に抑えていた。
少しでも未来が健やかな時間を過ごすために、今は無理矢理でも笑顔を作らねばならない。そう思って無理に笑みを浮かべる三人だった。
「弦十郎君、ちょっといい?」
「む?」
扉の近くで楽しそうに話す四人を見守っていた弦十郎を了子は笑みを浮かべたまま、しかし真剣な目で外に連れ出す。了子の目を見た弦十郎も嫌な予感しか感じていない。
「……聖遺物の浸食が進んでいるわ」
「やはり、か」
悲痛な顔の了子から渡された資料を見て弦十郎は予想通りの答えに落ち着いていた。そして
シンフォギアを身に纏えば聖遺物の浸食が進む。それは分かっていた事である。だが分かっているならばなんとしてでも止めなくてはいけなかった。
(今回は、いや今回も未来君がシンフォギアを纏ってのは不測の事態だ。だがそれでも良しとして良いものではない。なんせ彼女の身体は……)
了子に渡された資料に書かれていたのは現在の未来の状態が細かく記載されたものであり、最後に記されたあまりにも非情で現実的な数字を見て弦十郎は自身の無力さに思わず手に力が入り資料がクシャリと歪んだ。
小日向未来
天羽々斬浸食率──六十五.八%
夢であって欲しいと本気で思った。
それは一五歳の少女が背負うにはあまりにも重い現実だった。
狂うほど大切だった親友を失い、ノイズを倒すために傷ついてきた少女がやっと安らげる場所を見つけたというのに、過去の楔がそれを許さないとでも言うのか。安らぐ時間すら与えないとでも言っているのか。
友人や仲間を守るために自身を犠牲にして守っているというのに、その仕打ちがこれなのか。と、ここが訓練場であれば弦十郎は力任せの一発を地面に叩き込んでいただろう。
「……未来君をこれ以上戦わせるわけにはいかん」
「でも、あの子のシンフォギアは翼ちゃんやクリスちゃんのとは違うわ」
翼やクリスのシンフォギアは非戦闘時はペンダントとして収納されている。だが未来はペンダントではなく聖遺物の欠片を体内に宿らせた融合症例。しかも身体の半分以上が侵食された今、医学的に取り除く事は不可能。それは、未来から戦う力を取り上げる事が出来ないと言っているようなものだ。
「しばらくはF.I.Sに関して、いや我々二課も彼女に積極的に接触するのを避ける。シンフォギアが必要な場所に近寄らせなければ未来君もシンフォギアを纏う事は無いはずだ」
クリスや翼が戦う以上、未来がそれを許容するとは思えなかったが、そんな淡い期待に賭けながらも、それしか未来を戦闘から遠ざける手段を考えつかない自分を殴りたい気分になる弦十郎であった。
──────────────────
──翌日。
高層ビルのエレベーターがゆっくりと動き、とあるフロアで止まる。エレベーターの扉が開き、中からは半自動の車椅子に乗ったナスターシャとその後ろから車椅子を押すセレナが現れ、長い廊下を歩く。
「……マム、あれはどういう意味なのですか?」
「言葉通りです」
セレナの疑問にナスターシャは即座に答えた。
ウェルの治療に目を覚ましたナスターシャがわざと切歌と調を買い出しに行かせセレナと二人になった時、ナスターシャは知らない間に少し痩せ細ったように見えるセレナに言った。
『これ以上、新生フィーネを演じる必要はありません』
その一言はセレナに大きな衝撃を与えていた。
自分を傷つけながらもフィーネを演じる事で落ちてくる月から世界を救おうとその痛みすら耐えていた。自分の決意の甘さで被害が広がるというのなら、その甘さすら捨て去ってやろうと自分に言い聞かせていた。
それを全て否定されたようなセレナは感じたのだ。
「私たちがやって来た事はテロリストの真似事でしかありません。真に為すべき事は月がもたらす災厄の被害をいかに抑えるか。違いますか?」
「……つまり今の私たちでは、
言外に言われた言葉に胸が痛くなるセレナ。
その言葉が正しいのであれば、今まで自分がやってきた事はなんだったのだろうか?大切な姉が守った世界のために自身も戦おうと決めた決意はどうすればよいのか?
自分がやりたかった事が分からなくなり、車椅子の取手に握る手に力が入った。
そうこうしていうとナスターシャの案内でセレナは現在の階層の一番奥にあった大きな自動の両開きの扉があるところまでたどり着いた。
電子音と共に扉は開かれ、導かれるようにセレナは入室する。すると目の前にはサングラスに黒いスーツを着た男たちが数人待ち構えていた。
「ッ!」
「およしなさい」
ナスターシャを守ろうと前へ出ようとしたセレナを一言で止める。
警戒した視線を送るセレナに対してナスターシャは車椅子を部屋にあった長いテーブルの元まで移動させた。
「米国政府のエージェントです。講和を求めるため私が招集しました。既にDr.ウェルには通達済みです」
「講和を?マリア姉さんを見捨てた人達に!?」
セレナは信じられないものを見る目でナスターシャに目を向けた。
自分の大切な家族が命をかけて守ったというのに、その姉すら見捨てた国の人間と講和を結ぶというナスターシャの言葉に裏切られたような、信じていたものに見放されたような感覚に陥るが、それと同時にいくら自分たちが頑張ろうとも月という巨大な敵相手に出来る事なぞたかが知れていた。
仮に計画が完成しても救えるのは僅かだと考えればここで講和を持ち込めばもしかしたら月をなんとか出来るのかもしれない。そんな考えも頭によぎる。
だが、頭で分かっていても心がそれを認めるかは別問題だ。
「さあ、これからの大切な話をしましょう」
目の前の男たちしか見ていないナスターシャには、後ろで苦悩に苦しむセレナに気づく事はなかった。
──────────────────
──同時刻 同所にて。
未来たちの住む町を一望出来るほどの高いビルその下層に設置された水族館に非番である未来とクリスは遊びに来ていた。
「ほら、クリスも早く!」
「ちょ、待ってくれよ未来!」
クリスはあまり魚に興味は無いが未来とのデートとして楽しんでいた。これが本当にデートであればどれだけよかったか。
非番とはなっているが実際は弦十郎が手配して二課から遠ざけるための詭弁であり、クリスは未来の監視の任務として付き添っていた。
昨晩、クリスは弦十郎から未来の現状を聞かされたが勿論クリスは既に知っていたため、先に未来の天羽々斬の浸食の事を言われた弦十郎は面食らったものの話はスムーズに進み、F.I.Sについて進展があるまでは未来の監視の任務を受けたのだった。
クリスはその任務を断るはずも無く承諾し、今こうやって未来と共に水族館へ来ている。これも未来を戦いから遠ざけるためだと自分に言い聞かせて。
(これ以上未来を戦わせるわけにはいかねぇ。あたしが降りかかる火の粉を振り払わねぇといけねぇ。これ以上、あたしの大切なもんを奪わせてたまるかッ!)
「──ッひゃ!?」
グッと手に力が入るクリスだったが、その頬に突然冷たい何かが押し当てられて可愛い声を上げてしまった。
振り返れば冷たい飲み物を持った未来がクリスの後ろに立って笑みを浮かべていた。
「ぼーっとして、何かあったの?」
「ふぇ!?い、いやなんでもないぞ!?」
浸食の事を考えていたとは言えるはずも無く、未来から飲み物を引ったくって一気に飲み干そうと全部飲みきる勢いで喉に通していく。あまり行儀の良いことではない。
「……ふふ、クリスは分かりやすいね」
「?」
突然の未来が優しく、そして何処か悲しそうな笑みを浮かべる。その笑みを見てクリスは訝しげな目を未来に向けた。
未来はクリスに背を向けて次の場所へ移動しようと歩き始める。その背中を追いかけてクリスも未来に近寄ろうとした時、未来は首だけ動かして視界の端にクリスが入ると、今度は諦めたような乾いた笑みを見せた。
「自分の身体の事くらい、分かってるよ」
「なッ!?それ、どう言う」
「さ〜ね?」
どういう意味か聞こうと未来に近寄るが未来はそれ以上の事は言わずに、既に答えは言っていると言うように質問をのらりくらりと全て受け流していく。それが意味する事を分からないクリスではない。
きちんと話をしたいが未来が何も言わないため話が出来ず、心にモヤがかかったようないい知れない感覚にクリスは悩まされながらもビルの展望台へ向かう未来の後ろを歩くのだった。
──────────────────
「──異端技術に関する情報、確かに受けとりました」
「取り扱いに関しては別途私が教授します。つきましては」
黒服の男たちにF.I.Sが所持する異端技術のデータの入ったチップを渡し、これでやっとセレナから重すぎた重荷を降ろせると安堵したナスターシャだったが、その考えはあまりにも軽率だった。
チップを受け取った男は懐にしまうと代わりに拳銃を取り出してセレナとナスターシャなら向けて構えた。その後ろにいた数人の黒服たちも含めて。
「貴女の歌よりも銃弾は遥か早く、躊躇なく命を奪いますよ」
セレナは急ぎシンフォギアを纏うため歌おうとするがそれを見越してなのか黒服の男は余裕の笑みでそれを制した。事実、銃弾であればセレナが歌を歌い切る前に何発の弾がその身体を貫くだろうか。
「必要な物は手に入れた。あとは不必要な物を始末するだけ」
「初めから、取引に応じるつもりはなかったのですかッ」
歯軋りをするナスターシャに黒服の男は笑みを浮かべる。男たちにとって異端技術が手に入ればあとは本国で解析すればよいだけのもの。ナスターシャの教えが無くとも時間の問題なだけで他には何もない。であるなら邪魔なナスターシャとセレナを亡き者にしても不利益にはならない。
「やっぱり、貴方たちは信じられない!信じるべきではなかった!姉さんを見捨てた人たちなんて、信じられるはずがなかった!!!」
今にでも飛びかかりそうになるセレナだったが、それよりも先に事は動き出していた。
瞬間、窓の外に何かが通るのがその場にいた全員の視界の端に入る。男の一人がそっと横目で外を確認すると、そこには地獄の死者が空を飛んでいた。
「ノ、ノイズ!?」
ノイズを確認した黒服の男が恐怖で顔を青くする。それを合図に外を飛んでいたノイズが空間をずらして窓ガラスを割らずに、まるで水の中から現れるかのように中は侵入して黒服の一人を襲う。それからは阿鼻叫喚だった。
次々と男たちがノイズに捕まり、セレナの目の前で灰になっていく。その光景を見てセレナは──
「何をやっているのです!早くここから避難しますよ!」
「──え?あ、はい!」
一瞬よぎってしまった自分でも恐ろしいと思うほど冷えた感情を否定する。自身の手を見れば何故か震えていた。
(私は今なんて思ったの?)
男たちは自分の姉を見捨てた人間の部下であり、そして先程自分とナスターシャの命を奪おうとしていた。そんなどうしようもなく、救うに値しない男たちに向かってセレナは思ってしまった。
──いい気味ですね。
と。
──────────────────
それは未来とクリスの前に突如現れた。
未来が心配でならないというクリスをなだめながら高層ビルの展望台から町を見下ろして二人は楽しんでいたが、未来は突然ノイズが現れる気配を感じてガラス窓の方に顔を向ければその予感が当たっていたと証明するように、展望台の周りを百を超える飛行型ノイズが空を飛んでいた。
飛行型のノイズの中には百メートル近い巨大な飛行型が二体も存在していた。しかもその巨大飛行型の下腹部が開き、そこから大量のノイズをばら撒いていく。ビルの周りと真下の地面は一瞬でノイズが蔓延る地獄へと変わってしまった。
「ッ何でこんなところにノイズが現れやがんだよ!?」
「……まさかソロモンの杖が?」
いきなりの出来事で困惑するクリスだが、未来は反対にノイズを目視した瞬間に焦らずに周りを確認していた。
幸いな事に周りにいた人間はノイズが現れた事に混乱して急ぎエレベーターの元に走って行ったので未来とクリスの周りには人がいない。それを確認するとシンフォギアを纏うために頭の中に浮かんだ聖詠を唱えようと胸元に手を置いた。
「──待ってくれ」
「クリス?」
歌う直前、クリスは未来の肩に後ろから手を置いて止める。何事かと振り返って見たクリスの表情はとても真剣なものだった。
「あたしが全部相手するから未来は戦うんじゃねぇ」
「何を言って」
突然現れたノイズは遠距離特化のクリスでも相当な無茶が必要な数だ。それ加えて近くにソロモンの杖があるかもしれないと考えるとこれだけでは済まない可能性もある。そんな中で対空武装のあるクリスをここで使い切るのは得策ではが、それが分からないクリスでもない。
「お願いだから……未来は戦わないでくれ……頼む」
真剣な表情のまま、辛そうに顔を歪めて懇願する。
目の前の地獄なぞクリスにとっては二の次だ。それよりも目の前にいる大切な陽だまりがいなくなってしまうかもしれないと思うと身体が震えてくる。
間違った自分に優しくしてくれた大切な人が目の前から消える方がクリスにとっては恐ろしく、耐え難いものであり、自身が傷ついてでもそれはそれだけはなんとかしなくてはならないと思うほど、クリスの中の未来は大きな存在となっている。
ならばこの地獄を一人でなんとかしなくては、これから未来を守る事なぞ不可能。
「あたしが未来を守るから……未来の分までノイズをぶっ倒すから!だから未来はこれ以上戦わないでくれ……」
今にでも泣き出してしまいそうなほど瞳にいっぱいの涙を溜めたクリスの顔を見て、未来は根負けした。
「分かった。クリスに任せるね」
「!ああ!絶対に未来に近づけさせねぇ!安心して待ってな!」
嬉しい返答にクリスは喜びを隠さずに未来に笑顔を向ける。
未来が戦わずに済む。それだけでクリスの戦意は向上していた。
ノイズの一体がガラス窓をすり抜けて展望台内に侵入しようとしてくる。それを見て、クリスは一層やる気を出して首にかけていた赤いクリスタルを握った。
──Killter Ichaival tron──
イチイバルの赤と白のシンフォギアを纏い歌を歌う。それによりノイズの相違差障壁は無くなってシンフォギアの前では有象無象の存在へと成り下がった。
侵入してきたノイズに向かってボウガン型のアームドギアを形成し、窓ガラスごと一発で貫いて灰へと変えた。
「んじゃ行ってくるから、未来も避難してな!」
「うん。無茶はしないでね?」
「はっ!あたし様を舐めんなよ?」
ニヤリと笑みを作り、今し方自分で開けた窓ガラスの穴に向かって跳躍。そのまま外へと飛び出て行った。建物で見えなくなってもボウガンのものと思われる赤い物体が次々とノイズを薙ぎ払っていくを見て未来は急ぎエレベーターの方へと駆け出した。
(……よかった、逃げ遅れた人はいないみたい)
走りながら周囲で退避に遅れた人間がいないか探していたが、ルナアタック前からあったノイズの異常発生で住人の避難はまだ多少の混乱はあるものの統率が取れたものになってる。ノイズのおかげで無事に避難できているというのは皮肉だが。
「私も早く逃げないと……っ!?」
少し走って誰も逃げ遅れていないのを確認した後未来も避難しようと近くにあった階段から下層に向かおうとした直後、足元の床が大きから軋み、ヒビ割れていくのを見て未来はその場から急ぎ飛び退く。すると今未来が立っていた場所からドリルのように回転しながら黒と黄色の配色がされた槍が床を突き破り、槍により開けられた穴から女性を抱えた一人の黒と橙色の鎧を纏い、黒いマントをたなびかせたオレンジ色の髪の女性が現れた。
「セレナさん!?」
「ッ貴女は!」
未来は目の前に現れた女性、黒いガングニールのシンフォギアを纏ったセレナに警戒の目を向ける。その声で気付いたセレナも未来の存在に気づいて驚きの声を上げた。
未来はゆっくりと距離を取りながらセレナを観察していると、セレナの纏うシンフォギアが不自然に赤く汚れているのに気づく。よく見たら持っている大槍やマントにも同じような赤い液体のようなものが付着しているのが見て取れた。それがファッションでは無い事は誰が見ても明らかだ。
「……貴女が、やったのですが?」
「ッ違」
外のノイズを指差して言う未来の言葉にセレナは否定しようとするが、視界に入った自分の左腕に赤い付着物が付いているのを見て咄嗟に未来に見えないように身体の影に隠す。だが赤い付着物が付いているのは腕だけでは無いのであまり意味はない。
「……貴女は翼さんに言ったみたいですね「正義では守れないものを守るために」って。それだけなら私は何も言いません。私では救えない人がいるのは事実ですから」
シンフォギアにより普通の人間以上の身体能力と力を手に入れて一度は世界を救っている。それ以外にもノイズという現代兵器では有効打を与えられない超常的存在を数えきれないほど屠ってきた。
たが万能では無い。守れないものは多々あると未来はよく分かっていた。
「ですがこの光景はなんですか?私たちが守る事の出来ない人たちを守る為に、他の人の命を奪うのが貴女たちのやり方なんですか?」
「それは……」
セレナが何かを言おうとするがビルの外の光景を見て何も言えなくなった。
ビルが大きな音を揺れる。それと同時に壁や天井もヒビ割れて一部が崩れ落ちてくる。外ではクリスが頑張ってノイズを掃討しているがその数に圧倒されて押され気味だった。
「貴女たちが自分たちの大切な人のために他の人の命を奪う覚悟があるのなら……私は自分の命が無くなる覚悟を持って、私の大切な人を守ります。あの子ならきっとギリギリまで戦うだろうから」
脳裏に映るのは今は亡き親友の姿。
もしここに立っていたなら、もし自分と同じ立場なら親友はきっと一般人を守るためにシンフォギアを纏うだろう。例え聖遺物に侵食されてその命が尽きる事になっても。それは親友の事を一番理解していた未来だからこそ分かる事であった。
真剣な目でセレナを睨み付ける。その目にはセレナにはない覚悟が宿っており、その圧に負けてセレナは目を逸らした。
「セレナ!今は退避を優先しなさい!」
「は、はい」
「待ちなさ、きゃ!?」
抱えられた女性、ナスターシャの言葉に目を迷わせながら頷いて未来から逃げるように背を向けるセレナに追いかけるように駆け出そうとした未来だったが、外の戦闘に耐えられなくなった足元の床が音を立てて崩れだしてしまった。
ガラガラと崩れていく足場に未来も巻き込まれて外に押し出されてしまう。下を見れば地面までかなりの距離があり、普通の人間では確実に命が無い距離だ。
「ッ手を!」
未来が落ちていく姿を見てセレナは顔を青くして急ぎ手を伸ばす。距離はあるがシンフォギアの能力があれば十分未来を救出出来る。周りにノイズいなければ。
数体の飛行型ノイズがビルの外に放り出された事を未来を認識すると身体をドリル状に変形させて襲いかかる。突撃の速さから考えればもうセレナの力では間に合わない。
「──ごめんね、クリス」
戦わないと約束したというのにものの数分で破ってしまった事への罪悪感を胸に、伸ばされたセレナの手を握らずに頭に浮かんだ聖詠を口ずさむ。
──Fellthr amenohabakiri tron──
空中で未来は紫の光に包まれ、突撃してきたノイズがその光に触れた瞬間、全て灰になる。そして光の中から現れた紫と白の天羽々斬のシンフォギアを纏った未来はすぐさま行動を開始した。
「はぁ!」
手始めに近くにいた飛行機ノイズに白紫の刀を突きつけて撃破。そのあと未来を敵と認識したノイズ数十体がまるで矢の雨のように未来に目掛けて急降下してきた。
それを見た未来はすぐさま自分の身体を抱きしめるように身を縮こませた。
『天ノ堕トシ』
縮こませた身体を思い切り開くと同時に未来を中心に無数の白紫の刀が出現し、その全てを自分に襲いかかってくるノイズに向けて射出した。
以前の未来であれば無差別広範囲に攻撃する技だったが、今の未来であれば多少のコントロールする事が出来ていた。
上空からの数十体のノイズを撃破後、身体を動かして地面の方に向き直る。もう十数秒したら地面に叩きつけられるだろう。
それを察した未来はすぐさま天羽々斬のシンフォギア脚部にあるブレード型の装甲を展開してブースターを起動させる。距離的にはギリギリだったが無事に減速して着地する事に成功した。だが、まだ終わらない。
地上には上空の巨大飛行型ノイズにより投下された無数のノイズがひしめき合っており、その光景は一般人が見ればまさに地獄だった。
それでも、未来は白紫の刀を両手で握り肩に担ぐ構えを取った。
「やあ!」
『蒼ノ断頭』
地面に叩きつけるように振り下ろした白紫の刀が地面に接触した瞬間、強力な衝撃波が生まれノイズを次々と飲み込んでいく。そして放たれた衝撃波を追うように脚部のブースターを点火させて未来はノイズの群に突撃した。
白紫の刀をもう一本創り出し、二刀によって向かってくるノイズを次々と屠っていく。その殲滅速度は凄まじく、頭はクリアなのにかつて理性を失っていた時のような一撃で木々を切り裂くような斬撃が意図せず放たれてノイズを切り裂いていく。
最後のノイズを屠ると上空で大きな爆発音が耳に入る。咄嗟に上を見上げれば巨大飛行型ノイズが爆煙と共に灰に変わっていく姿が見える。よう見れば周りの飛行型ノイズの姿もない。
「ッしま!?」
空を見上げていた未来の横から生き残っていた最後のノイズが身体ドリル状に変形させた未来に突撃してくる。油断していたため反応が遅れ、このままでは直撃してしまう。そう思った瞬間、上空からの赤い矢が未来を守るように降り注ぎ、襲ってきたノイズを貫いた。
その直後未来の上空のノイズの殲滅が終わったクリスが綺麗に着地した。
「ありがとうクリス。助かったよ」
「……」
「クリス?」
注意深く周りを警戒しながらクリスに礼を言うが、クリスはその言葉が聞こえていないかのように俯いたまま黙っていた。
「…………なんで」
心配して振り返ろうと未来だったが、その前にクリスが口を開き、未来はノイズの気配も、ノイズが出現した時の嫌な予感も消えたため白紫の刀を下ろしてはクリスに向き直る。それでも、クリスは未来に顔を向けずに俯いたまま強く拳を握っていた。
「なんで……シンフォギアを纏ってんだよ……戦わないでくれって、言ったじゃねぇか……」
「ごめんね。でも仕方がなかったから」
決して振り返ろうとしないクリスに未来は謝罪するが、それがクリスの抑えていた怒りに油を注いでしまった。
「なんで謝んだよ!未来が戦わないようにしようとしたのに、結局シンフォギアを纏わせちまう事になっちまった弱いあたしが悪いんだろ!?」
「そんな事ないよ。クリスは十分頑張って」
「それじゃ意味がねぇんだよ!!!」
遮るように大声をあげて振り返ってクリスの瞳からは既に涙が溢れ出しており、頬を伝ってシンフォギアを濡らしていた。
「分かってんだろ!?自分の身体がヤバいって、シンフォギアを纏えばどうなるのかって!それなのになんで戦うんだよ!なんで無理すんだよ!なんで……あたしを一人にしようとすんだよ……」
今にでも未来に殴りかかりそうだった語気が徐々に弱々しくなっていき、最後には地面に力無くへたり込んで嗚咽を漏らし始めてしまった。
クリスの痛々しい涙を見て未来の胸にも痛みが走るが、それを顔に出さずにしゃがみ込み、泣きじゃくるクリスを赤子を抱くように優しく抱きしめて謝罪も何も言わずに頭を撫でる。
ゆっくりビルの展望台だった場所を見上げれるが、さすがの未来でも視認する事は出来ずセレナがどこに行ったのか分からなかった。
(……本当に、セレナさんがやったのかな)
自分が外に放り出された瞬間に見せたセレナの顔は今回のような事を好んでやる人間では決して見せないような、悲痛で見てる側の方が可哀想に思ってしまうほど顔を青くしていた。
謎が深まるばかりのF.I.Sに未来は頭が痛くなりながらも、翼たちが来るまでクリスの頭を優しく撫で続けた。
決意表明、てほどのものじゃないね( 'ω')
え?原作の「切ちゃんもしかしてフィーネ!?」のあの部分はどうしたかって?いやだなぁ。他所は他所、内は内ですよ!あの万年初恋BBAの活躍はG編には無ぇ(゚∀゚)!※背後から紫の水晶の鞭に滅多打ちにされました。
セレナさんも性格が違う?でぇじょうぶだ。ただの情緒不安定なだけだ。その内元に戻る(無責任)。……来いよマリアさん。武器なんて捨ててかかってこい!※無事にアガートラームされました。
翼「原作では私も色々背負っていたはずなのだが。というより私の出番少なくないか?」
作者「奏さんが生きているため貴女は十分救済させれているので我慢してください。出番に関してまぁ……これからまだまだありますし、ね?」
響「なら私の救済は!?出番は!?」
作者「無い!……あ、まってゼロ距離の絶唱は洒落にならなーー」※防人諸共吹き飛びました。
翼「私も飛ぶんか〜い!」
次回! その手は 届く場所にあったのに
感動の再会!……になるはずもなく……ウェル博士、貴様の罪を数えろ。