戦姫絶唱シンフォギアIF 〜陰る陽だまり〜   作:ボーイS

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待っててくれた方々、遅れてすまない_(:3」z)_

原作九話はかーなーり改変する!!!何故か?主人公が響じゃないからだ!(ガングニールアッパー)

誤字報告ありがとうございます。その内一話から順に見直さねばならぬな……誰だよカエデさんって。オリキャラは出してないぞ……


十三話

 ──ヘリキャリアにて。

 

 

 米国のエージェントに殺されかけたところでいきなりノイズが現れ、なんとかビルから退避する事に成功したセレナはナスターシャを連れて既に拠点にしてあるヘリキャリアに帰還していた。

 セレナはヘリキャリアの中に入るとすぐさま悠々と研究室となっている部屋に無断で入り、篭っていたウェルに詰め寄って襟首を掴んだ。

 

「あれはいったいどういう事なのですかDr.!」

「はて、なんの事か分かりませんね」

「とぼけないでください!」

 

 襟首を掴まれたままのウェルの言葉にセレナは怒りで身体が震えて今にでも平手が飛びそうなほど怒りをあらわにしている。

 

「あの場所に行くのは私とマムと貴方しか知りません。そしてソロモンの杖を所持しているのも貴方。あのような都合の良いタイミングでノイズを召喚出来るのはDr.以外にいません!」

 

 米国側もセレナとナスターシャがビルに現れるのを知ってはいただろうが、それがエージェントたちがノイズに襲われた事とは関係ないだろう。

 ノイズがなんの予兆も無く現れた事とノイズを召喚出来るソロモンの杖の所持者であるウェルが二人の行き先を知っていた。となればノイズを召喚した犯人はウェルしかいない。

 

「どうしたんデスかセレナ!」

「いったい何が……」

 

 帰ってきてから怒りを隠しきれない形相でいきなりウェルの元へ向かったセレナを心配して切歌と調が急ぎ部屋に入り、ウェルの襟首に掴みかかっている姿を見て驚く。それも無理はない、今のセレナは二人が初めて見るくらい怒りで顔を歪ませているのだから。

 

「ノイズに沢山の人が襲われました!ノイズだけにでなく……っ!何故あのような事を!」

 

 脳裏に浮かび上がるのはノイズに組み付かれて助けを求める、自分になんの関係もないただの一般人。

 エージェントから逃げ出した時に追跡として送られた兵士の銃撃からシンフォギアを纏ってナスターシャを守る際、逃げ遅れた一般人が銃弾に倒れてその命が容易く尽きていく姿。

 銃弾に倒れた一般人を見て、頭に血が昇った自分がガングニールの大槍とマントを使駆し、追手を撃退するために払われた大槍に伝わった相手の肉がえぐれ、骨が折れるような異様な感触と飛び散る血飛沫。

 生存の確認はしていなかったが手加減はしていた。よほど当たりどころが悪くない限り死ぬ事はない。それでも自分が相手を傷つけてしまった事には変わりない。

 

 自分の手が血で汚れる覚悟はあった。だがそれは仕方のない場合であり、今回のような一般人の命がかかっている時のものでは無かった。故に、自分の手を汚させたウェルに憎悪にも似た感情が湧き上がってくる。

 

「ですがああせねば貴女もナスターシャもあの場で殺されていました。それに貴女たちも悪いのですよ?」

 

 セレナに襟首を掴まれたままでも余裕の笑みを崩さず、悠々とした態度でウェルは口を開く。

 

「十年も経たずに訪れる月の落下より、一つでも多くの命を救うという私たちの崇高な理念を、米国政府に売ろうとしたのですよ?」

「それは……」

 

 先程までの強気だったセレナがウェルの言葉に目を晒す。それがなによりも答えになったいた。

 

「マム……?」

「本当、なのデスか?」

「……」

 

 調と切歌もナスターシャに問うが当の本人は目を瞑り何も言わない。セレナの行動も合わせてウェルの言っていた事が真実だと決定付けているようなものであり、その反応を見て特に調がショックを受けた様子だった。

 

「……ごめんなさい……切歌ちゃん、調ちゃん……ごめんなさい……」

 

 今にでも殴りそうだった腕から力が抜け、セレナは二人の視線から逃げるように背中を見せる。そこにはもう先程の強気だった姿はない。

 

「それだけではありません。セレナを器に、フィーネの魂が宿ったというのもとんだデタラメ。ナスターシャとセレナが仕組んだ狂言芝居」

「セレナがフィーネじゃないとしたら、いったいフィーネは……?」

「それも含めて全部嘘だったのでしょう。僕を計画に加担させるためとはいえ、貴女たちまで巻き込んだこの裏切りはあんまりだと思いませんか?」

 

 カッコつけるようなポーズをとりながらウェルは背中向けているセレナに目を向ける。既にこの場の空気はウェルが支配していると言っても過言ではなかった。

 

 押し黙るセレナとナスターシャ、二人を心配そうに見る切歌と調を眺めていたウェルは不意に不気味な笑みを浮かべた。

 

 ──────────────────

 

 ──病院にて。

 

 何度目かになる同じ天井の病室で、未来は了子にこれまた何度目かになる検診を受けている。だが今回は最初から弦十郎と翼と奏も同じ病室にいた。

 

「──はい、これで終了っと」

「ありがとうございます。櫻井さん、じゃなくて了子さん」

「良いのよ。それに感謝なんてまだ早いし、ね」

 

 軽い検診が終わる。いつもならこれで終わりなのだが、そうは簡単に終わりそうではなかった。

 ビルでの戦闘後、シンフォギアを纏った未来はすぐさま様々な検査をされた。実際、シンフォギアを纏うと身体の中の聖遺物の侵食が促進されるため仕方のない事だ。

 

「未来君」

「分かってますよ。皆さんが言いたい事は」

 

 口を開こうとした弦十郎よりも先に未来は微笑みながら答える。

 既に未来は自身の身体があまりよろしくない状態だと感づいていた。どの程度まで天羽々斬が侵食しているかは分からなくとも、自分の身体の事が分からないはずがない。

 

「なら俺が言いたい事も分かるな?」

「はい。これ以上シンフォギアを纏うな。ですよね?」

「シンフォギアを、というよりも戦闘行為自体だな」

 

 身体の半分以上が聖遺物に侵食された今の未来の身体は、シンフォギアを纏った時ほどでは無いが、ベテランの兵士相手でも技術面はともかく、身体能力のみで数人くらいは十分相手出来る程度はあり、それは一般の女子高校生からは大きく逸脱している程だ。

 だがこれも天羽々斬の侵食によって生まれた副産物のようなものであり、下手に動いて刺激すればシンフォギアを纏わずとも侵食が進行する恐れがあった。

 シンフォギアを纏えば侵食が進み、纏わずとも激しい運動をすれば侵食が進むという、今の未来の身体はギリギリの場所を歩いていた。それを安易に許せるほど、弦十郎は馬鹿では無い。

 

「……私が、それを承諾すると思いますか?」

 

 優しく微笑む未来だがその目はハッキリとした意志があり、戦う事を辞めるつもりは無いと言外に語っていた。

 そんな未来の目を見て先に動いたのは奏だった。

 

「お前、分かってんだろ!?このままじゃ死ぬんだぞ!?いや死ぬなんてもんじゃねぇ。()()()()()()()()()()()()()()()()()!?」

 

 未来のような症例が無いためハッキリとした結果は無いが、既に半分以上人間ではない未来がこれ以上侵食が進み、完全に身体の中が天羽々斬に侵食された場合未来がどうなるか誰も分からない。

 小日向未来という人間ではなくなり、小日向未来という名前の聖遺物になるのか。

 身体が聖遺物になるだけで未来の意思は残るのか。

 それとも、完全に()と変わり果ててしまうのか。

 誰にも予想出来ないが、それが良い方向に向かう事は無いのは誰でも予想が出来る事であった。

 

「貴女は十分戦った。十分傷ついた。これ以上戦う必要も傷を負う必要もない。だから、戦うのを辞めてくれないか?」

「未来ちゃんは私を救っただけでなく世界を救ったのよ?もう誰も貴女に酷いこと言わないし言わせないわ」

 

 翼と了子も未来を説得しようと口を開く。だが未来は三人の言葉を聞いても首を縦に振らない。

 

「確かに私の命は残り僅かなのかもしれません。でも、戦う力がある限り、誰かを守る力がある限り、私は戦う事を辞めるつもりはありません。弦十郎さんもそうですよね?」

「………」

 

 未来の言葉を否定するべきなのだが、弦十郎は何も言えず押し黙ってしまう。

 仮に自分にノイズを倒せる力があれば命の危機に瀕しても諦めずに立ち向かうだろう。戦えば戦うほど死が近づいても最後まで戦うだろう。そんな自分の姿が想像出来てしまうが故に、未来の言葉を否定する事が出来なかった。

 

「…….そういえば、クリスは何処なんですか?」

 

 弦十郎が何も言わないためそこで話を打ち切り、未来は話を変えるためにいつもなら誰よりも先にいるはずのクリスが部屋にいない事を尋ねる。病院に運び込まれた時以来、その姿を見ていない。

 

「……雪音なら。小日向の検診が始まった後自分の家に帰ったわ」

「未来を守れなかったって暗い顔でぶつぶつ言ってたよ。あれは相当まいってるね」

「そう、ですか……」

 

 思い出すのは自分の腕の中で涙を流すクリスの姿。

 あのままでは落下死か、急降下してきたノイズに組み付かれて灰になっていたため仕方なくシンフォギアを纏った。そのため約束を破ったのは自分だと思っている未来だが、クリスはそうとは思っていなかったのだろう。奏と翼が見たクリスは未来を戦わせないと約束した直後だというのに戦わせてしまったことに対して責任を感じ、焦燥していた。その事に対して、翼は早まらないか心配していた。

 

「雪音の方は私たちが行くから、今日のところは家で休みなさい」

「今のアンタの身体は普通じゃないんだ。ゆっくりしときな」

「はい。お言葉に甘えさせてもらいます」

 

 さすがに疲れているのか、翼と奏の提案に素直に頷いた未来は立ち上がって帰り支度をする。本当は安静にするべきなのだが、今のところシンフォギアを纏わない限り侵食率が上がる事は無いため今回は入院する事はなく、自宅療養する事になっている。まだ融合症例となっての未確認の事柄が多いのだが下手にストレスを与えるよりかは幾分かマシという判断だ。

 

「慎次に車の用意はさせてある。それで自宅まで送ってもらいなさい」

「何から何までありがとうございます」

 

 一度お辞儀をして未来は翼と奏の後ろについて病室から出て行く。そして残ったのは弦十郎と了子のみ。

 三人の足音が遠くなっていき、病室は静まり完全に静まり返る。その中で最初に口を開いたのは真剣な表情の弦十郎だった。

 

「──結果は分かっているが、一応聞いておこう」

「そうね。下手に隠すよりマシね」

 

 了子は病室の机に置いてあった茶封筒を弦十郎に渡す。その中には前回、弦十郎に見せた今回の未来の身体状況が書かれたカルテであり、そこには前回のように侵食状況も書かれていた。

 

「やはり進行している、か」

「ええ。シンフォギアを纏うかぎりそれは仕方ないわ」

 

 予想通り未来の聖遺物侵食具合は進んでいた。

 今回はまだ短時間な上にそれほどまで出力を出した戦闘ではなかったため進行率は微々たるものだったが、侵食が進んだ事実には変わりない。

 

(ニ課から離しても、未来君は戦いから逃れられないとでも言うのか!)

 

 非番を口実に未来を二課から離しても、結局戦闘に巻き込まれてしまった。結果的に未来とクリスがビルの近くにいたため迅速にノイズの処理は出来て被害は少なくなったが、未来の事を考えれば二課にいた方が弦十郎が止めることも、クリスと共に翼が現場に向かって未来が戦う自体を避けられたかもしれない。

 

「やっぱり手の届く場所にいてもらった方が良いんじゃない?」

「だがそれでは未来君から戦いを遠ざける事はできん……」

「今回みたいに知らないところでシンフォギアを纏われるよりはマシだと私は思うのだけどね」

 

 了子の意見は至極真っ当なものだ。

 どちらに行っても戦闘が避けられないのであれば、弦十郎がすぐさま止める事が出来る近くにいた方が何倍もマシだろう。あと何回シンフォギアを纏えるのか不明な未来を戦わせるわけにいかないのであれば尚更だ。

 

 未来を戦場から遠ざけたい気持ちと、シンフォギアを纏わせないようにするには自分の近くに置くべきと言う考えに挟まれながら、二人は仮設本部に戻るのであった。

 

 その裏で、事が動き出していることを知らずに。

 

 ──────────────────

 

 ──数日後。

 

 ビルの一件からF.I.Sが目立つ行動をする事は無くなり、鳴りを潜めていた。

 未来の体調も安定。クリスも翼と奏の説得により少々何かを覚悟したかのような顔つきだったが未来に会うようにもなり、積極的に翼と戦闘訓練をしながら再び日常が戻ってき始めたある日、海中を移動中だったニ課仮設本部である新型潜水艦が突然ノイズの発現パターンを感知。その直後、近くの海上を移動中だった米国の船から救援要請が入っていた。

 

「この場所から遠くない。急行するぞ!」

「応援の準備にあたります!行くぞ雪音!」

「分かってる!」

 

 弦十郎の決断は早く、それを予想した翼とクリスはすぐさま出撃の準備をしに直令所から走って出て行った。

 それを追いかけようと未来も駆け出そうとしたが、その前に奏に肩を掴まれて止められた。

 

「アンタは待機だ」

「でも!」

「いいかい小日向。アンタはもういつどうなるか分からない身体だ。今ここで何かあったら雪音がどれだけ悲しむか……大切な人を失ったアンタなら分かるだろ?」

 

 共にフィーネを撃ち倒した事により奏は未来に絆を感じていた。その後も装者として共に戦う事が無くともクリスも合わせて仲間だと思っている。そのためどうなるか分からない身体の未来を心配した判断は至極真っ当なものである。

 

「今は二人を信じて待とう。なぁに、あの二人が簡単に負けるわけないさ」

「そう、ですよね……」

 

 奏の言葉に未来はその場で頷くが胸の天羽々斬が何故か熱くなるような感覚に未来は違和感を覚えながらも、クリスと翼の無事を祈るしか出来なかった。

 

 ──────────────────

 

 クリスと翼が仮設本部の射出口で待機している間、米国の船は突如現れたノイズにより多大な被害受けていた。

 乗っていた兵士たちは持っていた重火器で必死に応戦するが相手はノイズ。その程度で撃退出来る相手ならシンフォギアなぞ存在しなかっただろう。

 悲鳴や命乞いをする者もいたが一人、また一人とノイズに無情にも組み付かれ、容赦なくその存在を灰に変えてこの世から消えて無くなっていく。まさに、ノイズの前では人類なぞ塵芥と言っても過言ではなかった。

 

「素晴らしいですね。僕たちの存在を知らしめるデモンストレーションには十分ですよ。貴女もそう思いますよね?」

「……」

 

 眼下で無情にも命を摘み取っていくノイズを見て笑うウェルにセレナはヘリキャリアの操縦桿を握りながら唇を強く噛み過ぎて血が口元を濡らす。その瞳はウェルに対する怒りの炎が見え隠れしていたが、何も言い返そうとしなかった。

 

「さて、そろそろ二課の英雄たちが現れると思いますが……」

 

 ウェルがゆっくりと後ろを振り返ればそこには能面のような表情を表に出さず、しかし睨むような視線をセレナに送る調が立っており、その横では切歌が俯いた状態で目を晒していた。

 

 セレナとナスターシャが二人を騙していた事を知った調は酷く困惑していた様子であった。

 世界に追われながらも四人で頑張って生きてきたというのに、身近で頼りになっていた存在に裏切られた事により大きなショックを受けるのは仕方が無いかもしれない。

 だが調を支えていた切歌は二人に騙された事を知ってショックは受けたが、心の何処かでもう誰かを傷つける事をしなくても良いのかもしれないという考えが頭によぎり、安堵のため息が漏れてしまった。

 

 切歌の安心したような顔とため息を見て調はふと、切歌が未来を庇っていた時の事を思い出す。そしてそのあと化物と思っていた敵対している未来から貰ったお好み焼きを嬉しそうに見せてくる姿を見て、実は切歌は二課側の人間で自分を裏切っているのではないかと疑心暗鬼に陥ってしまったのだ。

 それからはずるずると嫌な考えに支配されていき、今では家族と思っていたセレナも切歌もナスターシャも信じられない状態になっている。セレナや切歌の声すら無視してしまうほどに。

 

 それによってなのか、調はウェルの意見に賛同してしまった。

 勿論セレナと切歌は説得したが調はそれを受け入れる事はなく、セレナたちの中で完全に二分割されてしまったのだ。

 家族である調がウェルについている以上放って置く事は出来ず、セレナは仕方なくウェルに従う形を取っている。

 

「月読さ──」

「……」

 

 話しかけようとしたセレナを無視して顔を背ける。切歌も調の様子を見て酷く辛い表情を見せるが何も出来ず、伸ばされた手が調に届くことはない。

 寄り付く島が無い調の様子にセレナは涙が出そうなるのを、弱気な所をウェルに見せないために必死で我慢する。

 そんなセレナを無視してウェルは眼下で無情にも灰に変わっていく米国の兵士を見て歪んだ笑みを浮かべていた。

 

 ヘリキャリアの上からでも見えるくらい米国の兵士たちが次々とノイズの餌食となっていく。その光景に誰よりも心を痛めているのはセレナであり、そんなセレナの姿を見て切歌が黙っているはずがなかった。

 

「……やっぱり、間違ってるデス!」

「ッ切ちゃん!?」

 

 今まで黙っていた切歌が突然声を出したかと思うとすぐさま操縦席の部屋から出て行き、後方の飛行中のヘリキャリアの扉の前に立つ。そして力強く開けると眼下には青い海が広がっていた。

 

「切ちゃん、いったい何を」

「こんなの間違ってるデス!今までみんなで協力して来たのにセレナが傷ついているデス!調も怒ってるデス!」

「それはセレナが私たちを騙してたから……」

「確かに私たちを騙してたかもしれないデス。でも、セレナはいつも私たちのために頑張ってくれた!私たちのために優しいセレナが傷ついた!世界がセレナを敵視しても私たちは味方になろうって決めたのは、そんな優しいセレナだったからじゃないデスか!?」

「ッ」

 

 瞳に涙を溜めながら切歌は調に語りかける。

 セレナの姉であるマリアがいなくなった後も健気に自分たちを励ましていた優しいセレナが一番傷ついていたのを知っている。

 誰かを傷つけるなんて事、本当は誰よりもやりたくないと思っていると知っている。

 そんなセレナだからこそ、切歌と調は世界を救うために世界に向けて宣戦布告をするという行為について来た。仮にシンフォギアが無くとも二人はセレナの後を追っただろう。

 騙されていたとはいえ、セレナに対しての信頼がそこで途切れてしまうほど、三人の関係は薄くないはずと、切歌は思っていたのだ。そこには調の存在も確かにある。

 

「……セレナが傷ついているのなら、私が助けるデス!」

「ッ切ちゃん!」

 

 調の静止に後ろ髪を引かれながらも切歌はヘリキャリアから飛び降りる。そして向かうのは米国の船の甲板。

 

 

 ──Zeios igalima raizen tron──

 

 

 落下中の切歌の身体が緑の光に包まれる。

 そして光の中から緑の大鎌を手にし、魔法使いの帽子のようなヘッドギアをつけた黒と緑のシンフォギア、〝イガリマ〟を纏った切歌は空中で大鎌を大きく振りかぶった。

 

切・呪リeッTお

 

 大鎌の刃が分裂しブーメランのように回転しながら兵士を避けて甲板にいるノイズのみを次々と灰に変えていく。

 着地後、大鎌を振り回して周囲のノイズを次々と斬り裂いていく。その殲滅速度は翼に勝らずとも劣らずだが、周りには逃げ遅れた兵士がちらほらといて、なかなか思い切り大技を放つ事が出来ず若干苦戦していた。

 

「ッ!?」

 

 僅かな隙をついて一体のノイズが切歌に向けて身体をドリル状にして突撃する。シンフォギアを纏っているため灰になる事はなくとも無視出来ないダメージを負うだろう。

 ノイズの突撃に気づいた切歌は大鎌で防ごうと身体に力を入れたが、その直前上空から飛来した無数の小型丸鋸の雨が突撃して来ていたノイズを中心に広範囲に降り注ぎ、残っていたほとんどのノイズを粉々にした。

 

「調!」

 

 切歌を追って船の甲板に着地したシュルシャガナのシンフォギアを纏った調に向かって切歌は走り出す。嬉しそうにしている切歌の顔を見て調は小さな笑みを浮かべた。

 

「切ちゃん、私……ッ!」

 

 何かを言おうとした調だったが、突如船の側面から船全体を揺らすほど海が大きく盛り上がり水飛沫を上がる。そしてその水飛沫に紛れて近くまで寄って来ていたニ課仮設本部の潜水艦の射出口から発射されたカプセルの中からシンフォギアを纏ったクリスと翼が宙を舞った。

 

 二人は調と切歌の間に向かって船の甲板に着地後クリスはボウガンで調を牽制し、翼は切歌に向かって剣を構えた。クリスにいたっては今にでも調に向かってボウガンを乱射しそうなほど敵意を向けている。

 

「投降しなさい。さもないと痛い目を見るわよ」

 

 翼も少々声のトーンを下げて、より本気を見せて剣先を切歌に向かって突き出す。それを見た切歌は慌てて顔を横に振った。

 

「ま、待つデスよ!」

「私たちに敵対する意思はない。だから話を聞いてほしい」

 

 両手を上げて敵意がないとアピールする調を追うように切歌も大鎌を持ったまま急いで両手を上げる。大鎌を持っているためアピールにはなっていないが。

 

「ハッ!今更何を言ってやがる!テメェらがやって来た事を、未来にやった事をあたしは忘れてねぇぞ……!」

「待て雪音。我々の目的は捕縛だ。倒す事ではない」

「だったらこいつらを許すっつーのかよ!?」

「そうではない。今は司令に指示を仰げと言っているのだ。だが、その前に」

 

 いまだに切歌に警戒しながらも翼は頭を動かして周囲に目をやる。切歌と調の先制強襲により数は減ってはいるが、まだまだ健在なノイズは山ほどいる上に、船の乗員の避難も済んでいない。このまま装者同士で戦えばその間にどれだけの人間が灰となってしまうか。

 

「ノイズの殲滅が最優先だ!」

「チッ、分かってるよ!」

「切ちゃん、私たちも」

「はいデス!いっちょやってやるデスよ!」

 

 その場限りの共闘として、敵対していた四人の装者は互いに背を任せあってノイズの殲滅に移ったのだった。

 

 

 

 

(切歌ちゃん、調ちゃん……)

 

 切歌と調がクリスと翼と共に甲板上のノイズの殲滅をしている姿をヘリキャリアから見ていたセレナは、ウェルに見えないような位置で笑みを作った。

 自分のせいで二人の仲に亀裂が入ってしまったと思っていたが、背中合わせで共に息の合ったコンビネーションでノイズを殲滅していく姿は前までの二人に戻っているようだった。

 

「ふむ。まさかあの二人が裏切るとは思いませんでした。いや、先に裏切ったのは貴女の方ですかね?」

「……ッ」

 

 セレナはウェルの言葉に腹を立てるが、見る限り調と切歌が和解した今ではウェルの命令を聞く必要も、共に行動する意味もない。ヘリキャリアの後方の区画にはナスターシャがいるのでそれだけが気がかりだったが、ガングニールを纏えば多少荒くなろうとも救出は可能な距離だった。

 腹が決まったセレナはウェルの隙をうかがい、いつでも操縦席から立ってナスターシャの元へ行けるようにする。ヘリは自動操縦にしているのですぐに墜落する心配もないだろう。ウェルが何かしない限り。

 

「では、傾いた天秤を元に戻すとしましょう」

 

 セレナの心情を知ってか知らずか、ウェルは自分の眼鏡をかけ直してから不気味な笑みを浮かべた。

 コックピットにあるパネルを操作しながら興奮して笑みを隠しきれないウェルの顔に、セレナは一抹の不安ととても嫌な予感を感じた。

 

「出来るだけドラマティックに、出来るだけロマンティックに!」

「Dr.、貴方はいったい何を……」

「貴女も喜んでください」

「えっ」

 

 操作し終えたウェルはその不気味な笑みのままセレナの瞳を覗き込む。

 ソロモンの杖という切り札を持っているウェルでも今の位置ではセレナが行動する方が早い。だがまるで蛇に睨まれた蛙のように身体が動かなくなるような身の震えが襲った。

 

「家族との再会を」

 

 そしてヘリキャリアの後方のハッチの開く音とも共に、ウェルの〝切り札〟が地上に向かって投下された。

 

 

 ──────────────────

 

 

 順調にノイズを殲滅していき、最後の一匹を倒したクリス、翼、切歌、調の四人の装者は切歌たちが乗っていたヘリキャリアから落下する〝それ〟を目視していた。

 遠くてよく見えないが辛うじて人型であるのが確認できる程度の〝何か〟は真っ直ぐに海に向かって落ちていく。

 

「まさか、あのネフィリムとかいうやつじゃねぇだろうな!?」

「それはない。ネフィリムはあの時倒されてコアになったまま」

「そんな簡単に復活するはずないデスよ!」

「なら、あれは……?」

 

 四人は一抹の不安を覚えながらも落下していく〝何か〟から目を離さずに各自自分のアームドギアを構えて警戒する。だが不意に、落下する〝何か〟から()()()()()()()()

 

 

 ──Rei shen shou jing rei zizzl──

 

 

 落下中だった〝何か〟が未来が自分の物にした天羽々斬の放つ光よりも濃く、禍々しさを感じる紫色の光に包まれる。それと同時に四人は背中が凍りつくような恐怖に近い予感を感じた。

 

 紫の光がゆっくりと降下していき、海面スレスレで光が弾ける。そこに立っていたのは口を開いた獣の顎のようなヘッドギアを被り、背中には二つの長いケーブルのようなもの付けた黒に近い深い紫と僅かに見える白のシンフォギアを纏い、手には先端に鏡のようなレンズが取り付けられた扇のようなアームドギアを持った()()()()()()()()()()()()()()()()が目蓋を閉じてたたずんでいた。

 

「誰だ、あいつ?」

「分からない。だが、あの気配は只者ではないぞ!」

 

 明らかに普通じゃない気配を放つ海面に浮かぶ少女に向かってクリスと翼は警戒を解かずにアームドギアを構える。敵意を向けられればそれがまともな反応だろう。だが、切歌と調は違った。

 

「嘘……」

「そんな、あれは!?」

 

 クリスと翼が感じた恐怖以上に二人は目の前のピンクの髪の少女の顔を見て驚愕の方が大きく上回った。ヘリキャリアで少女の姿を見たセレナも同じ反応をしている。

 

 それは切歌と調にとって本当の姉ように慕っていた一人の少女。

 いつも二人を優しく、暖かく抱きしめてくれていた二人にとっての将来の夢のような憧れの少女。

 

 セレナにとっては、誰よりも優しく、目の前に立ち塞がった巨大な化物と対峙しても引かずに、セレナを守るために立ち向かった勇敢な少女。

 そして世界に一人しかいない、最愛の姉。

 

 

「────マリア、姉さん……?」

 

 

 六年前、暴れるネフィリムからセレナやナスターシャを守るためにシンフォギアを纏い、命と引き換えに全力で歌った絶唱によって命を落としたと思われていたセレナの姉、マリア・カデンツァヴナ・イヴが閉じていた目をゆっくり開く。

 

 

 ──その瞳には、光はない。

 

 




さぁ!セレナファンの者どもよ!私はここだ!
マリアさんが生きていたんだ、喜べよおおおぉぉぉ_(:3」z)_

マリアさんの神獣鏡の聖詠の色が未来さんと同じなのはあれです、神獣鏡の原色(?)が紫のイメージが定着しているからです。
うちの未来さんが青の天羽々斬を纏っていたけど最終的に紫色に変わったので……気にするな(゚∀゚)

私の考えているG編残りの話の構成だとエピローグ含めて後六話くらいですかね。あくまで予定ですが。長いねぇ_(:3」z)_

作者「ということですまないセレナさん。誕生日までには無理だわ」
セレナ「(´・ω・`)ショボーン」
マリア「……」(アガートラームを研いでいる)
切歌「……」(イガリマの素振りをしている)
調「……」(シュルシャガナの手入れをしている)
作者「……ハハッ↑」(覚悟完了)


次回! 神獣鏡とフロンティア


出番ですよ。アイドル大統領ry(アガートラーム)
てか貴女、少女って表現するのはやっぱりきついry(エクスドライブアガートラーム)
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