作者「い、いやね。仕事の合間にやってたんだけど8割くらい出来た状態で間違えて消してしまってしばらくやる気が失せてて、なんとか復元してたけど途中で『あれ、これ二つに分けれるよな?』と思って次回に分ける分をコピペしたり、付け足したり色々してたら遅れたと申しますか……」
未来「そうですか。それは仕方ないですね」
作者「(あ、あれ?今回は断罪なしか?)」
未来「でも響たちが許してくれるかは別問題ですよ?」
作者「だろうと思ったよチクショー!!!」
※拳と槍と青剣と銃と鎌と鋸と白剣×2による一斉攻撃。
虹色でとても綺麗でした(遺言)
それでは、どうぞ!(満身創痍)
「ううん……はっ!」
潜航中のニ課仮設本部である潜水艦の一室にてベットで寝かされていた切歌は目を覚ます。
目の前には知らない天井、窓の方を見れば魚が泳いでおりその魚を見た瞬間、腹の虫が小さく鳴いてしまった事に少し赤面してしまった。
「切ちゃん、起きた?」
「あ、調!」
突然話しかけられて反対側に頭を動かせばそこには切歌にとって大切な人である調が椅子に座っていた。
「無事だったんデスね!」
「うん。私も切ちゃんも怪我は無いし身体も異常はないみたい」
「そうデスか……ん?
調に怪我がなくて安心した切歌だったが、直後の調の言葉がまるで誰かに診察されたような言い方だったので疑問を持ち自身の身体を触る。僅からながらも怪我をして箇所に治療された後を見る限り自分が眠っている間に誰かが治療したのだろうと切歌でも分かる。
もう一度部屋を見渡せばそこが自分のよく知る部屋ではなく、かと言って何処かのホテル等の建物の部屋には見えない。というよりも窓の外に魚が泳いでいる時点で普通では無いのだが。
「ここは何処デスか?」
「……あの人の所属している組織の潜水艦だって」
「あの人?……未来さんですか?」
「……なんで名前言ってないのに分かるのかな、切ちゃん?」
「あれ、なんで……って目が怖いデスよ調!?」
少し頭を傾けてじ──っと見つめてくる調を見て切歌は慌てて頭を横に振りベットの端まで後ずさった。若干瞳孔が開いているように見えたのは切歌の気のせいだろう。
目覚めて間もない切歌と調が少し慌ただしく、だが互いに生きていた事を喜んでしばし会話していると部屋の扉が開き、黒いスーツを着た茶髪の男、緒川慎次が微笑みながら部屋に入って来た。
「お二人とも、目を覚ましたようですね」
突然部屋に入ってきた慎次に切歌は警戒してギアペンダントを探すが、いつも入れている衣服のポケットや首にもかかっている様子はなく近くにも置いていない。
急ぎベットから立ち上がった切歌は調を守ろうと自分の後ろに下がらせて慎次の前に立って睨みつける。そんな切歌を見て慎次は頬を掻いて困ったように眉を寄せた。
「大丈夫だよ、切ちゃん」
「調?」
警戒している切歌の肩に手を置いて調が切歌の手を下させる。
切歌は呆気に取られながらも人一倍警戒心の強い調が大丈夫だと言っているので、完全には警戒を解いてはいないが話を聞こうとする意思を見せたため慎次は人の良い笑みを浮かべた。
「ツヴァイウィングのマネージャーをやっている緒川慎次と申します。暁切歌さん。お身体の方は?」
「大丈夫デス。それよりも私たちをどうするつもりデスか」
大切な家族であるセレナとマム、そして死んだと思っていた姉のような存在であるマリアを助けるために一刻も早く動かないといけないと思っている切歌はさっさと話を切り上げようと催促するが、慎次は笑みを絶やさない。
「その事も含めて司令に会っていただきたいのです。僕についてきてください」
敵である二人に背中を見せて歩き出す慎次。その背中を見て二人は顔を合わせた。
普通の人間であれば隙だらけのよう見える慎次を襲う事も、足音を立てずに歩いて逃げる事も出来るだろう。だが後ろを見ていないというのに慎次の背中に目がついているような錯覚をした切歌と調は慎次の後ろを大人しくついていくのであった。
──────────────────
──フロンティア上空にて。
「姉さん!」
浮上したフロンティアに向かう空の道中、セレナはヘリキャリアの飛行を自動操縦に切り替え、死んだと思っていた大切な家族で、実の姉であるマリアの元に急ぎ駆け寄る。マリアの隣にはシンフォギアを解除したとはいえ今まで敵対していたクリスがいたのだが今のセレナの眼中にはなかった。
「生きている……本当に、マリア姉さんが、生きてる……」
その場で佇むマリアを見てセレナは涙を流した。
今でも六年前の景色が悪夢として夢に出てくるほど当時のセレナには深い傷を負わせたネフィリムの事件。
大切な家族の命が目の前で呆気ないほど儚く散り、そして命を賭けて守った者たちから感謝とされずに無情にも忘れ去られていったと思っていた最愛の姉。
もう二度と会う事は出来ない思っていた存在が目の前にいる。その事がこれまで生きていた中でもこれ以上無いくらい嬉しくてセレナの頬に涙が伝う。
「姉さん……私、大きくなりましたよ。色々失敗して来ましたけど、姉さんみたいになろうと沢山努力しました。天国にいる姉さんに誇れるようにって」
マリアが爆炎に呑まれた日を境にセレナの世界から色が消え去った。食べ物も味がしなくなり、これまで楽しいと思っていた事が全て虚しいものに変わり果て、無意識に毎日毎日死のうとするほど追い詰められて行った。
そんなセレナにナスターシャを始め切歌や調が懸命に話しかけて少しずつ自分の足で前に進めるようになっていき、自分の世界を取り戻して行った。それに加えて今ではほんの一時的ではあったにしろ世界的に有名なツヴァイウィングと双璧を成すほどの有名になる程努力してきた。
それも全て、亡き姉に誇れるよう自分になるためと心に決めて。
「でも姉さんは生きてた。だから、だからもう一度私の名前を呼んでください。もう一度、姉さんの歌を聴かせてください……」
思い出すのは二人並んで知っている沢山の歌を歌い合った事。
自分の名前を愛おしそうに呼びながら優しく何度も頭を撫でてくれた手の温もり。
生きていただけで喜び、嬉し涙さえ流れていたのだがその涙が少しずつ別のものに変わっていく。
「もう一度……笑って、ください……」
「……」
段々と顔が悲しみで歪み涙も悲しいものへと変わっていく。
そんなセレナの涙を見てもマリアは無機質の、本当に機械であるかのように何も反応せずに微動たりせずに立っていた。
「感動的な姉妹の再会はそこまでにして、作戦を次の段階に移しましょうか」
部屋の扉が開き、奥からウェル博士がソロモンの杖を持ったままゆっくりと姿を表す。ウェルの姿を見た途端クリスの目つきが鋭くなった事には誰も気付いてはいなかった。
ウェルはゆっくりと歩いてクリスの前に立つと人の良い笑みを浮かべて軽いお辞儀をする。ウェルの中身を知らずにその姿だけ見れば紳士として見られたであろう。
「廃病院以来ですかね。こうやって話すのは」
「……ああ。そうだな」
嘘臭い笑みを浮かべるウェルに対してクリスは特に感情を表に出す事なく淡々と答える。そんなクリスを見てウェルは笑みを崩さずにクリスの目を覗き込む。
「ですがまだ貴女を信じきれたわけではないので調子に乗らないでくださいね?」
「分かってる。信用ならないならいつでも背中から撃ちゃぁいい」
「勿論そうしますとも」
感情が抜け落ちたかのようにただウェルをジッと見つめるクリスと眼鏡を光らせて不敵な笑みを浮かべるウェルの視線が交差する。二人が何を思っているのかこの場でわかる者はいなかった。
見つめ合ってるようにも、殺意を持って睨み付けているようにも見える二人の間に突然、まだ涙で頬を濡らしたままのセレナが割って入りクリスと睨み合うウェルに詰め寄る。
「Dr.!今すぐ姉さんを元に戻してください!」
「嫌ですよ。彼女は僕を守ってもらうための盾なのですから。それに今の彼女はシステムのアシストによって動いているだけです。今システムを切れば再び植物状態に戻るだけ。貴女の望んだ結果にはなりません」
「っそれでも!」
システムを切って再びマリアが意識のない植物状態になったとしても、セレナはマリアがこの世にいない事よりも何百倍もマシであり、生きているだけで良かった。
失ったと思った大切な人が目の前で生きているのだ。それがウェルのせいで好きにされているのいうのがセレナには耐える事ができるものではないのだが、それを許容するほどウェルは善人ではない。
「話になりませんね。僕は作戦の準備を進めますので、説得できるものならやってみてください」
「な、待って……ッ!?」
不気味な笑みを作っていたウェルがセレナのしつこさに面倒になったのかため息を吐いて部屋から出ようする。それを見て急ぎ止めようとセレナは手を伸ばしたが、それよりも早くいきなり身体が重くなるような感覚が襲ってきて視界が急降下し、次の瞬間には床に叩きつけられる強い痛みと腕を締め上げる痛みが同時に襲ってくる。
痛みに耐えて首を動かし、何が起こったのか確認するとマリアが無表情のままセレナを組み押さえていた。
「言い忘れていましたが、彼女は僕に危害を加えようとした存在には迎撃するようにプログラムされています。お姉さんと戦いたくなければ僕に手荒な真似はしないでくださいね?それでは頑張ってください。健闘を祈りますよ。くくく」
組み押さえられて苦しそうに顔を歪めるセレナを見てウェルはまた不敵な笑みを浮かべて部屋から出て行く。ウェルが退出したのを確認したマリアはウェルに危険が及ぶ事はなくなったと判断したのかすぐ様セレナの背中から降り、何事もなかったかのように機械のように部屋の隅へ移動していった。
「うぅ……姉さん……私です、セレナです。思い出してください。また切歌ちゃんや調ちゃんやマムと一緒にお話しましょう?話したい事、沢山あるんです」
「……」
今し方無理矢理押さえつけられて肩を痛めたのか、右肩を押さえてフラフラとしながらもなんとか立ち上がり、部屋の端で直立不動のマリアに話しかける。
対するマリアは、ただひたすら反対側の壁をジッと見つめているだけで何の反応もしなかった。
「沢山勉強して、沢山運動をして、姉さんに守られてばかりだった私も成長して大きくなりました。切歌ちゃんや調ちゃんも凄く美人さんになりましたよ。マムもまだまだ元気です」
「…………」
必死に笑顔を作って一生懸命マリアに話しか続けるセレナの姿は痛々しく、見ている者の方が心を痛めてしまうような悲痛な光景だった。
それでも、マリアは何も言わない。
「まだまだ沢山お話ししたい事はあります。だから……だから、私を見てください……声を聞かせてください……マリア姉さん……」
「………………」
どれだけ語りかけてもピクリとも動かず、なんの反応も示さないマリアについに耐えきれなくなったセレナが膝から崩れ落ち、床に向けて大粒の涙を落として嗚咽を漏らす声が部屋に響く。
そんな痛々しいセレナの姿に耐えきれなくなったクリスが手を伸ばすがその場で留まり、何かを振り払うかのようにかぶりを振って部屋から急ぎ出て行く。
そして二人が残った部屋にはセレナの嗚咽だけが悲しく反響し続けるが、その中でもマリアが何か反応する事はなかった。
──────────────────
──ニ課仮設本部にて。
「あれがフロンティア、か」
モニターに映っている映像を睨みながら弦十郎は呟いた。
フロンティアと呼ばれた巨大な島のような形をした遺跡が浮上してから数時間経とうしていた。
得体の知れない物体が突然現れた事によって日本政府や他国が対策を講じている間、弦十郎たちは勝手な行動が出来ずにただ見張る事しか出来ずにいた。そうでなくとも、突然二課を裏切ったクリスによって残ったシンフォギア装者は軽傷とはいえ負傷した翼のみ。奏はいまだガングニールを纏えず、未来はこれ以上ギアを纏う事を弦十郎は許すつもりはない。
現場判断としてフロンティアに突入しようにも肝心な戦力が足りず、無茶をする事が出来ない状況だった。
「雪音のやつ、なんで裏切ったんだよッ!」
「……私たちでは雪音の望みを叶えられないかららしい」
「だから裏切ったってか!?あんなに楽しそうに笑ってたのが全部嘘だって言うのかよ!」
クリスが裏切った事に憤る奏は発令場の壁を強く殴る。その後ろ頭に包帯を巻いた翼は視線を自分の足元に向けていた。
装者の中ではクリスとの繋がりは薄いとはいえ何度も隣で戦い、暴走した未来を二人で協力して止めた仲だ。多少なりとも信頼関係は築けていたと思っていたのにクリスの思いに気付けなかった自分に怒りすら感じて拳を強く握った。
(クリス君の裏切りは二人に予想以上のダメージを与えているようだな……)
二人の精神状態があまりよろしく無いことを察した弦十郎だが現在自分に出来ること励ます事しか出来ないと思うと歯噛みする事しかできない。
「……未来君はどう思っているのかね?」
「何がですか?」
「勿論クリス君の事なのだが……」
奏と翼の様子を見てクリスと一番仲の良かった未来が何も無いとは思っていなかった弦十郎だったが、予想外にも未来は特に深刻に受けている様子はなく、むしろ本気で何の事か分かっていないかのように首を傾げる始末だ。
奏や翼の様子に未来は何か気付いた表情を作ると小さく笑った。
「弦十郎さんもクリスが本当に裏切った、って思ってるんですね?」
ふふふ、と小さく笑っている未来を見て弦十郎だけでなく奏や翼やその場にいたあおいと朔也も不思議そうに頭を傾けた。
「司令。二人を連れて来ました。って何かあったのですか?」
丁度タイミングよく慎次が切歌と調を連れてくるが発令場にいる全員が頭を傾けている光景を見てさすがの慎次でも困惑してしまう。
その場にいる全員が同じように分からないという顔をしているので今度は未来が困ったように頬をかいて口を開く。
「もしクリスが本当に裏切っているのなら翼さんはここにいません。それは暁さんと月読さんも同じだと思います」
「だ、だけどさ。こう、情があったとかそういうのもあるんじゃねぇのか?」
「もしそうだったとしてももっと大怪我をさせて当分戦闘が出来ないようにすると思いますよ。戦力を減らすチャンスでもあったんですから」
「……なら何故雪音はあのような事を?」
「さぁ。それは私でも分かりません。ですが」
一度言葉を切って自身の手を見る。
クリスとは最悪な出会いだったとしても、今では自分でもやりすぎてはいないかと思うほどには仲良くやっていた。
何度も手を繋ぎ、何度もクリスの頭を撫でた思い出はとても暖かく、凍りついて荒れ狂った自身の心に光を照らしてくれた。
フィーネとの戦いでクリスが自分を守るために傷ついた光景を思い出すたびにまた一人になってしまうと恐怖する自分にクリスは一人にしないと約束してくれた。
そんな優しいクリスが、何の目的も無く誰かを傷つける事はしない。そう未来は確信していた。
「私は、クリスの事を信じていますから」
暖かい笑みを作る未来の言葉の謎の説得力にその場にいた全員自然と頷いていた。
「(えっと、どういう雰囲気なんデスかね?)」
「(しー。今は黙っていた方が良いよ、切ちゃん)」
場の空気についていけずに切歌と調はその場の雰囲気に流されたがいったい何があったのか分からず困惑していた。そんな二人に気づいた弦十郎は一度咳払いすると二人に向き直った。
「突然呼び出してすまない。だが君たちには色々聞きたい事がある」
「そんな簡単に話すと思うの?」
「話さないのであればそれでも構わない。君たちがそれでよければ、だがな」
「「……」」
黙りこくる切歌と調だったが、弦十郎はモニター越しに二人が自分たちで召喚したはずのノイズを倒して米国の人間を助けているのを見ている。それに加えて戦闘中だというのに降伏の姿勢をとって「話を聞いてほしい」と言ったのだ。まだ子供である二人の話が有益か不益かの前に話を聞くべきだと思っている弦十郎は交換条件として二人から欲しい情報を聞き出そうと遠回しに言っているのだ。
切歌と調は一瞬視線を合わせて頷くと調が一歩前に出る。
「貴方たちの欲しい情報は知っている限り話す。だからお願い。セレナとマム、そしてマリアを助けて……ッ」
「捨て駒でも良いデス!セレナたちを助けられるなら戦うデス!だから!」
大切な家族を助けたいという純粋な気持ちを込めた言葉に弦十郎は笑みを浮かべると二人の頭を優しく、そして力強く撫でた。
「おうともさ!子供の願いを叶えてやるのも大人の仕事だ!それに勝手に出て行った娘っ子にも一言説教せねばならんしな」
「……手加減してあげなさいよ」
「分かっているさ。これも性分だ。クリス君にも何か事情が……ん?」
何処か懐かしいような自然な会話の雰囲気に弦十郎は今し方話したと思われる切歌に目をやるが、今回がほぼ初対面なはずのなのでそんな事は無いはずだった。当の本人もあざとく首を傾げている。
突然固まった弦十郎に不審がる未来たちの視線を感じて弦十郎は空耳だと決めつけて再度咳払いして話流れを変えようとした。
「ゴホン。ではまずだがあのフロンティアについてと七つ目のあの鏡を用いたシンフォギアについて教えてほしい」
「分かったデス」
「うん」
交渉成立した切歌と調から浮上したフロンティアの事、そしてマリアの纏っていたニ課では把握していなかった神獣鏡のシンフォギアの特性や弱点を二人が知り得るだけの情報を共有し、今後の作戦を計画するのであった。
──────────────────
──フロンティア内部にて。
暗く、長年手入れされていないフロンティア内部の山をくり抜いたような石の廊下を先頭をクリスが、その後ろをセレナとナスターシャ、最後尾にはウェルとウェルをいつでも守れるように後ろに立つマリアが歩いていた。
セレナは何度も後方を歩くマリアに眼を向けるが、マリアは機械のようにウェルの近くを歩くだけで本当に人間なのか疑ってしまうほどなんのリアクションもしない。
ヘリキャリア内で涙を流しながらも何度も何度もセレナはマリアに語りかけていた。
施設にいた時の思い出話やマリアがいなくなってから自分たちがどんな生活をしていたかの話。最近のセレナにとっての笑い話といった様々な話をマリアに聞かせていたが、マリアがセレナに何かしらの反応を示す事は無かった。
ギリギリまでマリアを正気に戻そうと話していたセレナだったが、現実は非常で結局マリアは正気に戻る事はなくフロンティア内部へ行く事になってしまったのだ。
悲しそうに俯くセレナを心配するナスターシャは何か声をかけようとしたが何を言えば分からず、何かを言うその前に目的の場所へと到着してしまった。
「……ここがジェネレータールームです」
「ならあれがフロンティアのジェネレーター……」
クリスは部屋に入った瞬間、その広さと異様さに目を見開いた。
その部屋は大きな結晶が部屋の中央にある卵のような装置の周囲を取り囲むように生えており、現代でも見る事はできない異質な部屋だった。
卵のような丸い装置に向かってウェルは急ぎ足で近づくと持って来ていたアタッシュケースを開き、その中にあった白い外骨格のようなものに覆われた赤く脈動する物体を手に持って目の前の謎の装置に当てると物体は装置に張り付き根を生やしていく。それにより、何の反応も示さなかった装置がいきなり輝き出した。
「心臓だけとなっても聖遺物を喰らい、取り込む性質はそのままなんて、卑しいですねぇ。ネフィリム」
「……エネルギーがフロンティアに行き渡ったようですね」
「そのようですね。さて、僕はブリッジに向かうとしましょうか。ナスターシャ先生も制御室にてフロンティアの面倒をお願いしますよ」
大きな結晶も装置と同じように輝きだし、ネフィリムが取り込んでいたエネルギーによってフロンティアが起動した事を確認したウェルは踵を返してフロンティアのブリッジへ向かう。その後ろをマリアは付いていく。
「……貴女も行きなさい」
「え、でも……」
ナスターシャを置いていく事に抵抗があったセレナは当然その言葉に難色を示したがナスターシャの目は有無を言わせない眼光があり、この時のナスターシャには何を言っても意味が無いと分かっているセレナは渋々とウェルとマリアの後を追っていった。
実際は今のマリアと共にいる事はセレナにとって大変辛い事なのだが、ナスターシャはそれを分かっていてセレナを自分から離れさせていた。
そして部屋に残ったのはナスターシャとクリスのみ。
「……んじゃ、あたしも行くわ」
「待ちなさい」
ここにいてもやる事は無いと判断したクリスはセレナたちを追うためにナスターシャに背を向るが、ナスターシャはクリスを止めた。
振り返って訝しげな目を向けたクリスにナスターシャは車椅子を移動させてクリスの前で止まり、クリスの手を取ると何かを握らせた。
「私は沢山の人を見てきました。感情を隠すのが上手な人でなければある程度察せる程度には観察眼もあると思っています」
「……何が言いてぇんだよ。っておい!」
あからさまに目を逸らすクリスを置いてナスターシャはウェルに言われた制御室へ向かおうとする。その後ろにクリスは少し焦り気味に呼び止めた。
「私が言える事ではありませんが、貴女なら、貴女たちならセレナとマリアを救ってくれると信じています」
ナスターシャは一度車椅子を止めると振り返らずに後ろにいるクリスに向かってそう言葉を残してウェルに言われた制御室へ向かうのだった。
遠のいて行くナスターシャの後ろ姿と握らせた物を交互に見てクリスは涙を流すセレナと機械のように佇んでいたマリアの姿を思い出し、自分のやろうとした事よりもやるべき事を見いだしたクリスは決意を胸に歩き出したのだった。
そして、のちにフロンティア事変と呼ばれる事件が動き出す。
おかしい。セレナさんを追い詰め過ぎてる気が……気のせいだよねry(背後からアガートラーム)
???「さて、原作ならそろそろ私の出番のはずだな?」
作者「だからG編には無いんだよ!と言いたいですがアンタ、少し出てただろうが」
???「……知らんなぁ」
作者「読者様にバレたらどうするんだよコノヤロウ!あ、ネフシュタンは卑怯だぞ!?」
※殴りかかったが返り討ちにあいました。
次回! これが私のケジメ
前回の次回予告と内容が違うから変更したのは内緒。