戦姫絶唱シンフォギアIF 〜陰る陽だまり〜   作:ボーイS

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ガメラ……実はまともに観た事一回もないんだよなー。でも面白そうだなー。Amazon prime……有料かー。どうしよう……

さてさてぇ!始まるセレナさんVSマリアさん!
そんな簡単に正気に戻っちゃあ面白くなry(セレナアガートラーム)
というわけでセレナさんにはボコボコになってもらry(マリアアガートラーム)
未来さん?今回特に出番は無ry(アメノハバキリー)



ビッキー「私の出番は?」
作者「毎回言っててワンパターンだけど無いって何回言ったら分かって……こ、これは!破壊神ヒビキの力を宿したままシンフォギアを纏っているだとぉ!?どこの超サ○ヤ人4だry」(十倍カミゴロシーにより無事死亡)


それでは、どうぞ!


十七話

 ──フロンティア内部 ブリッジ

 

 

 ウェルとマリアが立ち去り、悲しいほど静かになったフロンティア内部のブリッジの中央にある機械の前にセレナは一人立っていた。

 

「お願い……動いて……お願い……!」

 

 必死に目の前にある機械やブリッジにある動かせそうな物の前に立ち、フロンティアを動かそうとするがなんの反応もしない。

 既にフロンティアはジェネレーターと融合したネフィリムのコアとリンクしたウェルに掌握され、ウェルからフロンティアの制御を奪うか、ジェネレーターと融合しているネフィリムのコアを剥がすしかない。

 だがウェルの隣には自分よりも強く、そして愛する姉であるマリアが常時付き添っており、ネフィリムのコアはフロンティアと融合しているため下手に手を出せばそのままフロンティアは使い物にならなくなる。

 現在、セレナはブリッジからフロンティアを操作できないか探っているが、残念ながらセレナだけではどうすることも出来ない。

 

「私は……私はこんな事をしたかったんじゃない……姉さんが救ってくれたこの命で世界を守りたかったのに……なんで、なんでこんな事に……」

 

 視界が溢れ出す涙で歪む。

 

 六年前、覚醒したネフィリムを鎮めるためにマリアは命を賭けてセレナたち当時のF.I.Sの職員や幼い切歌や調たちレセプターチルドレンの命を救った。

 その命を使って、セレナはいつか姉の代わりに世界を見て周りたいと、例えルナアタック事件で起きた月の急接近が無くとも思っていた。

 今回のテロ紛いの行いもフロンティアで月の落下による被害を最小限に留められると信じての行動だった。例え、自分に信じてついてきてくれた切歌と調を裏切り、自分の心を痛める事になっても、世界を救えるのならと信じて。

 しかし、結果はどうだろうか?

 

「私には……世界も、姉さんも……誰も救えないの?」

 

 涙が頬を伝い冷たい床に落ちて弾ける。そしてセレナは力無く目の前の機械に体重を預けるようにもたれ掛かりズルズルと床までへたり込んでしまった。

 

『セレナ、そこにいますか?』

「……マム?」

 

 誰も涙を拭う者がいないブリッジで涙を流していたセレナの耳にナスターシャの声が入ってくる。周囲を見回してもナスターシャの姿が無いため少し混乱したがナスターシャはそのまま言葉を続ける。

 

『フロンティアの情報を解析して、月の落下を止められるかもしれない手立てを見つけました。最後に残された希望、それには貴女の歌が必要です』

 

 ナスターシャが話す内容を聞いてセレナは希望が見えるのと同時に不安を覚え、ポケットの中にある傷ついた赤いクリスタルのペンダントを強く握った。

 

 ────────────────────

 

 ──ニ課仮設本部 格納庫

 

 

 未来、切歌、調の三人が出撃してから数分後、仮設本部の格納庫のトラックの前にいた弦十郎の前に奏が立っていた。

 

「どうしてもついて来ると言うのか、奏」

「当たり前さ。翼たちが頑張ってるってのにあたしだけ見てるだけなんて出来ないってーの」

「しかし……」

 

 渋る弦十郎だが、何を言っても奏は引く気を見せなかった。

 弦十郎は未来たちがノイズと戦っている間に自分たちも加勢としてフロンティアに侵入するつもりだった。

 勿論、ノイズと戦闘になれば弦十郎の勝ち目は全く無いのだが、自分一人であるなら壁を壊すなり天井を破壊するなり地面を砕くなりする事で逃走出来る自信があるためにやろうとしたのだ。だがそこに守る対象が出来てしまえば逃走する事も難しくなってしまう。

 

「奏さんは僕が守りますのでお気になさらないでください」

「慎次?」

 

 奏をどうやって納得させようか悩んでいた弦十郎の前にいつの間いたのか、気配もなく慎次が歩いてやって来る。

 

「今のままでは僕たちが行った後に走ってでも追いかけてきますよ?それなら、僕か司令が近くにいた方が安全だと思います」

「緒川さん……」

 

 弦十郎に多少鍛えられ、慎次から身を守る程度の忍術を習った奏でもシンフォギア無しにノイズが現れる可能性が高い場所に行く事のはニ課の職員全員が止めるだろう。奏自身、そうなると予想していたが意外にも慎次が味方をした事に関して強く感動した。

 過去の奏が自分の身体の限界すら無視して戦い続けていた事を考えれば、慎次自身が言ったように弦十郎と慎次が出た後走ってでも追いかける可能性が高いため事前に守れる所にいた方が良いという合理的判断だった。

 実際、奏も置いていかれたら走って追いかける覚悟だったため慎次考えは当たっていたのだが。

 

「……よぉし!なら到着後、奏は慎次と共に行動しろ。何かあれば慎次に従うんだぞ?」

「司令はどうするのでしょうか」

「俺は一人で内部を探る」

「一人でって……ダンナ一人で大丈夫かよ?」

「なぁに、一人ならノイズに会っても壁を破壊して逃げるさ」

「あー……だろうな」

 

 自信満々に胸を張る弦十郎に奏は苦笑いしながら納得する。普通なら壁を破壊するなぞ簡単な事では無いのだが、弦十郎がそれが可能である事を奏は嫌になる程その身で体験しているため不安はない。

 

 奏がついていく事に決まり、急いで三人はトラックに乗ってフロンティアに向かおうとエンジンをかけたその時だった。慎次が自身の端末になんらかの情報が入って来たのに気づいた。

 

「──司令、これを」

「……これは」

 

 慎次の端末に映し出された映像には弦十郎たちが観た事の無い、古い遺跡のような背景と見知らぬ機械のような物を背にしたセレナがフロンティアの機能を使って全世界に向けて映像を流していた。

 

 ────────────────────

 

「……私は、セレナ・カデンツァヴナ・イヴと申します。ルナアタックによって生じた月の落下の被害を最小限に抑えるためにフィーネの名前を騙った者です──」

 

 全世界に向けて語りかけながらセレナは先程聞いたナスターシャの言葉を思い出す。

 

 

 

『月は、地球人類より相互理解を剥奪するためカストディアンが設置した監視装置。ルナアタックで一部不全となった月機能を再起動出来れば公転軌道上に修正可能です……ウッ、ゴホ!』

『マム!?』

『……貴方の歌で、世界を救うのです』

 

 

 

 いつもと違う咳き込みのナスターシャの声に慌てるセレナ。それでもナスターシャのは気丈に、力強くセレナに言い聞かせていた。

 ナスターシャが命を賭けて見つけ出した世界を救う活路。それを手に入れるためにセレナは自分の中にある不安を押し殺す。

 

「全てを偽ってきた私の言葉がどれだけ届くか自信はありません。ですが歌が力になるというこの事実だけは信じてください!」

 

 

 ──Granzizel bilfen gungnir zizzl(溢れはじめる秘めた熱情)──

 

 

 世界が見ている前で聖詠を唱え、奏の纏っていたものとは異なる黒いガングニールのシンフォギアを纏うセレナ。だが、これはあくまで前段階でありこれで終わりではない。

 

「私だけの歌では、月の落下を防ぎきれません!だから貸してください!皆の歌を、届けてください!」

 

 喉が痛くなるほど気持ちを込めて歌う。かつてルナ•アタックによる落下する月の破片を未来たちが歌を力にして破壊したように、歌には世界を救う力があると信じて。

 

 だが……足りない。

 

 どれだけ力強く、どれだけ想いを込め、どれだけ自分の身を犠牲にしてもセレナ一人の歌では遥か上空にある月の遺跡の再起動に必要なフォニックゲインまでには全く及ばない。

 

 歌を歌い終えたセレナは肩で息をし、玉の汗を流すが無情にも月は無反応だった。

 

『反応無し……セレナ、もう一度月遺跡の再起動を……』

「……」

『セレナ?』

 

 反応のないセレナを心配したナスターシャが声をかけるが、今のセレナにはその声に反応する気力が無かった。

 

(……歌には、きっと力がある。小日向さんたちが月の破片を破壊したような力が、姉さんが一人でネフィリムを打ち倒したような力が)

 

 歌によって力を増幅させるシンフォギアであれど、月の破片を破壊出来るほどの出力を無理に出そうとすれば装者の命は無い。だが未来たちはシンフォギアを歌だけでなく、想いものせる事で限界を超えた。

 姉であるマリアも覚醒したネフィリムと戦うという、本来なら絶体絶命どころか確実に己が死ぬであろう時でもセレナを助けるために絶唱を歌い、見事ネフィリムを未覚醒の状態まで戻した。

 人では超えられない壁を超えたのはシンフォギアを進化と言っても良いほど昇華させた強い想いもがこもった歌にある。それをセレナは深く理解していた。

 

(でも……私は、姉さんたちのように歌えない)

 

 自分がそれほどの歌を歌えているのであればフロンティアをウェルに掌握されていないだろう。

 月自体が地球に向けて落下しているような状態にならなかっただろう。

 自分のせいで命を落とす者はいなかっただろう。

 姉を……救えていただろう。

 

 自分には世界を救う事が出来ない。そう思ってしまっている今のセレナは歌を歌う事が出来なくなっていた。

 

「──バカチンがぁ!」

「っう!?」

 

 力無く項垂れていたセレナの頬をふらつくマリアに抱えられてブリッジに現れたウェルがネフィリムの腕をつかって強く殴りつけ、セレナは倒れ伏してしまう。

 

「月が落ちてこなければ、好き勝手出来ないだろうが!」

『セレナ!』

「ああ? やっぱりオバハンか……」

 

 倒れるセレナを見下ろしながらウェルは部屋の中央にある機械にネフィリムの腕で触れる。するとセレナでは全く反応がなかった機械はあっさりと起動した。

 

『待ちなさいDr.ウェル!フロンティアの機能を使い、収束したフォニックゲインを月へと放ちバラルの呪詛を司る遺跡を再起動できれば月を元の軌道に戻せるのです!』

 

 最後までナスターシャは世界を救うために動いていた。

 自分たちがテロリストのような真似事をしていても、その根幹には世界を救うという強い使命感があり、ウェルにも少しはその心があると信じていた。

 だが。

 

「月が戻っちゃったら僕が英雄になれないでしょうがああ! そんなに遺跡を動かしたいなら、アンタが月に行ってくればいいだろ!」

 

 ナスターシャの説得を無視してウェルは触れていた機械に命令を出す。するとナスターシャのいるフロンティアの区画の一つが多く振動すると区画の下部になんらかの噴射装置があったのだろう。大きな炎をあげて月に向かって飛んで行ってしまった。

 

「有史以来数多の英雄が人類支配をなし得なかったのは、人の数がその手に余るからだ! だったら支配可能な数にまで減らせば良い! 僕だからこそ気づいた必勝法! 英雄に憧れる僕が、英雄を超える! うへははははは!」

「そんな、マム!!!」

 

 ブリッジから見える景色からは発射された区画は既にかなりの高度まで到達しており、今から行っても絶対に間に合う事はない。そして発射された区画はここに戻ってくる事もないだろう。それが意味する事を理解出来ないセレナではない。

 

「さぁて。余計な事をしてくれたようですが全部無駄になってしまいましたねぇ?次はどんな悪足掻きを見せてくれるんでしょうかぁ?」

 

 勝ち誇ったかのような不気味な笑みをセレナに向ける。

 まだ未来たちニ課の装者たちがいるがフロンティアの機能を使えば十分対抗可能。まだ掌握していない部分を使えば確実に殲滅出来る。そう思っているウェルは自分の勝利を信じていた。

 対するセレナは遥か上空の宙に向かうフロンティアの区画を見つめ、涙を流していた。

 

「……お願い、します……マリア姉さんを返して……これ以上、私の大切なものを取らないでください……」

 

 少しずつ自分の大切なものが失われていく。その事にセレナは耐えきれず、ウェルに懇願するように涙を流した。

 

 セレナにはもう限界が来ていた。

 大切な姉がいなくなり、自分を信じていた切歌と調を裏切り、世界を救うために動いたら世界の危機を招き、死んだと思っていた姉が生きていたがかつての優しい姉ではなくなっており、そしていつも頼りにしていたナスターシャがウェルの手によって打ち上げられてしまった。

 自分の行いの何もかもが裏目に出てしまい、自分だけが傷つくのならともかく大切な人たちまで傷つけてしまった。それは、根が優しいセレナでは耐える事が出来ない事だった。

 

「はぁ〜〜〜〜〜。まったく、貴女はずぅぅぅっと姉さん、姉さん、姉さんと馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返して、本当にバァカですねぇ。諦めたらどうです?そんな事よりも、今は人類を救うために動きましょうよ。ま、救う人間は僕が決めますが」

 

 マリアと会わせてからというもの、セレナはウェルに会うたびに隣にいるマリアに話しかけていた。話しかけ続ければ正気に戻ってくれると信じて何度も呼んでいた。だが、今になってもマリアは正気に戻っていない。

 結局セレナの無駄な努力だったと思っているウェルは呆れながらもさっさと次の行動に移すよう促すが、セレナは座り込んだままの状態で動かない。

 

 苛々が溜まって来たウェルはネフィリムの腕でもう一度セレナを殴りつけようとしたが、その前にある事を思いつき不気味な笑みを浮かべた。

 

「──そうですねぇ。フロンティアを手に入れた今?僕が離れない限りフロンティアは自由に動かせますし?もう近くで僕を護衛する存在も逆に目障りかもしれませんねぇ?」

「っそれじゃ!」

 

 ウェルの言葉にセレナは姉が帰ってくると希望が見えた気がして思わず笑みを浮かべて顔を上げる。だが、セレナの目映ったのはウェルの人の良さそうな、そして嘘くさい笑みを浮かべている姿だった。

 

「ええ。マリアを解放してあげましょう。ですので──頑張ってくださいね」

 

 顔を大きく歪めて笑い、いつの間にか持っていた何かのボタンを押した。

 

 

「っ!?うぐ、あ、あああああああぁぁぁぁぁ!!??

 

 

 突然マリアが両手で自分の頭を掴んで苦しみ悶え、耳を塞ぎたくなるような雄叫びを上げた。

 

「ね、姉さん!?」

 

 雄叫びと共にシンフォギアを纏ったセレナすら耐えられないような衝撃波がマリアを中心に放たれる。そして中心にいたマリアはセレナから顔が見えないように深く頭を下げて脱力したような姿で立っていた。

 バチバチと紫色のスパークが全身に走るマリアの姿は、明らかに普通ではない。

 呆然と何が起きたかわからず、マリアをじっと見つめていたセレナだったが直後身の毛のよだつような悪寒が走ると同時にマリアが少しずつ顔を上げていく。

 

「ふひひひ、ダイレクトフィードバックシステム。確かにあれは完成していましたよ。ですがシステムの性能を十全に、完璧に!活用する事は理論上()()()。なんせ人間の脳の領域には限りがありますからねぇ?無理に使おうとすれば使用者の脳領域を超過してパァン!と爆発するケースもありましたねぇ。故に使用者を守る為に嫌々ながら制限(リミッター)を付けていたんですよ。ですが、今それを外しました」

 

 ウェルはネフィリムの腕で口元を隠すが変形した手の隙間から隠せない程不気味笑みを見せていた。

 

「まぁ?制限(リミッター)状態で長く過ごしていたので多少はシステムの耐性が上がっているかもしれませんねぇ。それがどれくらい保つのか僕には分かりませんが知ったこっちゃないですがねぇ!」

 

 セレナの視界に映るのは、マリアの身に纏う神獣鏡のシンフォギアの獣の顎のようなヘッドギアの隙間から見える顔には血管が浮き上がったように痛々しく肌が隆起し、目も血走っていた。

 

「さぁ、早くしないとお姉さん…………死んでしまいますよ?」

「が、っう、ぐああ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!

「っ!?」

 

 ウェルの言葉を合図にマリアが気の狂った獣のような雄叫びをあげて右手に持ったアームドギアを振り上げ、座り込んだままのセレナに向かって最大速度で突撃する。

 セレナはギリギリで黒い大槍を横にして振り下ろされた神獣鏡のアームドギアを防ぐが、突撃の勢いを殺す事が出来ずにブリッジの壁を勢いよく破壊して二人は外に放り出され、廃れた岩場に二人は着地した。

 

「姉さん!正気に戻って!」

「ハアアアアァァァァ!!!」

 

 セレナはまだマリアが戻ってくると信じて声をあげるが、その声をマリアの雄叫びが無情にも隠してしまう。

 再びセレナに向かってマリアは走りだし、身体の捻りを加えてアームドギアを振り下ろす。それをまた黒い大槍で防ぐが、先ほどよりも威力が倍増しており、足元の地面を大きく陥没させるだけでなくセレナを守る黒い大槍にも大きなヒビが走った。

 

「し、しま、っかは!?」

 

 黒い大槍にヒビが入り思わず驚いた事により生じた隙をマリアは鍔迫り合った状態からセレナの腹部に向かって膝蹴りを食らわせる。

 腹部に生じた痛みによってセレナは前のめりによろけたが、セレナが体勢を整えるよりも先にマリアは身体を一回転させて勢いをつけ、セレナにハイキックを放つ。

 まともにマリアのハイキックを食らったセレナは地面に何度か身体を打ち付けながら大きく吹き飛ばされる。だがマリアの攻撃はそれだけでは終わらない。

 吹き飛ばされたセレナを追うように数枚の鏡を召喚し、痛みに耐えて立ち上がろうとしたセレナに向かって無数の光線を放つ。

 

「ううっ!?」

 

 痛む身体に鞭打ってその場から駆け出し、その直後先程までセレナがいた場所が穴だらけになってしまった。まともに受ければいくらシンフォギアでもタダでは済まない。

 

「姉さん!お願い!マリア姉さん!!!」

「アアアアァァァァ!!!」

 

 セレナは諦めずに何度もマリアの猛攻と鏡による援護射撃を防ぎ、回避し、時折死角から鞭のように襲い来る黒いケーブルに耐えながらアームドギア同士の鍔迫り合いを繰り返す。だが残り時間を示すかのようにマリアの顔に広がる血管のように浮き出た肌が広がっていき、その都度マリアは理性を失ったいく。

 

「もうやめてください!このままじゃ……!」

「オオオオオォォォォォ!!!」

「くうっ!?」

 

 殺気を込めたマリアの一撃がセレナを襲う。さすがのセレナも危機を感じて黒い大槍で受け止めながら後ろに飛ぶ事で衝撃を逃しながらマリアと距離を取るが、その判断は些か甘かった。

 

「なっ!?」

 

 着地後セレナの目に映ったのは、マリアが大きく手を広げて脚部の装甲から鏡のようなパネルがいくつも連なって円形を作り、背中から伸びていた黒い二つのケーブルを接続している姿だった。

 実際の火力を見たわけでは無いが、フロンティアを覚醒させるほどのエネルギーとシンフォギアに対して圧倒的有利な神獣鏡の一撃となれば、まともに受ければ命はない。

 だが今の自分の体勢と既に放つ準備が出来ているマリアを考えれば回避する事は不可能だった。

 

「オオオオアアアアァァァァ!!!」

「ッ間に合って!」

 

 

流星

HORIZON†SPEAR

 

 

 マリアが円形に展開したパネルの中心に集まったエネルギーが人一人飲み込むほどの高出力のレーザーとなりセレナに向かって放たれ、セレナは黒い大槍をマリアに向けると先端が展開され、その先から大出力のエネルギー波が放たれる。

 どちらのエネルギー波も地面を抉りながら突き進み、そして二人の間の丁度中央でぶつかった。

 

 紫色のレーザーと黄色のエネルギー波がぶつかり合う事で生まれた衝撃が周囲の岩を破壊し、二人の周囲の地形を変えていく。

 何も知らない者が見れば二人の力は拮抗しているだろう。それ程までに現実離れした強力なエネルギー波が放たれている。

 しかし、現実は違った。

 

「だめ、押し切られる!」

 

 徐々に、だがハッキリと目に見える速さでセレナが押し負け始める。

 元の戦闘能力もさることながら、セレナはLiNKERを投与しなくてはシンフォギアを纏えない。となれば投与しても時間が経てばLiNKERの効果は薄れていき、比例してシンフォギアの出力も低くなっていく。

 対してマリアは神獣鏡をウェルの作ったシステムによって無理矢理とはいえLiNKERを投与しなくとも戦い続ける事が出来る。セレナとは違いLiNKERの時間制限を気にする必要はない。

 そしてLiNKERは使用者の精神状態によって効果時間が変わっていく。かつての眠りについていた翼の代わりに一人で戦い続けていた奏がLiNKERを投与しても五分も戦えなかったのが良い例だろう。

 愛する姉がウェルの作ったシステムにより死ぬかもしれない、だが自分では助ける事が出来ない。そう思っているセレナの精神状態はまともとは言えないだろう。

 

「オオオオォォォォ!!!」

「くっ、きゃああああ!?」

 

 マリアの放つレーザーがセレナのエネルギー波を押し除けていき、そしてとうとう突破してしまう。

 辛うじて押し負けると先に予想できたセレナはギリギリでマリアの放ったレーザーを回避するが完璧には回避する事が出来ず、余波によってシンフォギアの装甲が大きく砕けた。 

 

「ねえ……さん……」

 

 神獣鏡の一撃を受けて耐えられなかったセレナは膝をつく。そして纏っていたガングニールも限界が来たのだろう。ボロボロだったシンフォギアが音を立てて消えた。

 

 身体のダメージはさほど大きくはない。多少打ち身はしてもギアの防御能力のおかげで動けないほどの痛手を負ってはいない。ギアが砕けてもいつものセレナであれば我慢できる程度の負傷だった。

 だが、セレナは動けなかった。

 

「お願い……もうやめてください!あの頃の、優しかった頃の姉さんに戻って!」

 

 何度目かの涙を流しながらのセレナの叫び。

 アーティストとして、そしてシンフォギア装者として大切な歌を歌うための喉が痛くなるほど何度も何度もマリアの名前を呼ぶセレナ。だが。

 

「ウォォォオオオオ!!!」

 

 そんなセレナの言葉を無視してマリアは自分の道を邪魔する瓦礫を砕きながらセレナに向かって一直線に突撃する。その瞳には殺意しか込められておらず、セレナを倒すべき敵としか認識していないのは明らかだった。

 

「姉、さん……」

 

 大切な姉を助ける事も出来ず、ただ世界に災厄をもたらしてしまった何も出来ない自分に絶望したセレナは立ち上がる事すら出来ず、一瞬後には襲ってくるであろうマリアの一撃を躱す気力も出なかった。

 

「ハアアアァァァ!!!」

 

 マリアがシンフォギアを纏っていない生身の身体のセレナに向かってアームドギアを大きく振りかぶり、そして残像すら残す程の速さと勢いをつけて振り下ろそうとした。

 その時だった。対峙する二人の真横の影から歌が響いた。

 

 

 ──Fellthr amenohabakiri tron──

 

 

「ッ!?」

 

 歌を、聖詠を聞いたマリアが聞こえた方に顔を向けた瞬間、すぐ近くにあった岩が砕けて砂塵が舞い視界を隠す。

 咄嗟に顔を隠したマリアの隙を狙うように紫の強力な一閃がマリアの横腹を襲った。

 

「ガッ!?」

 

 短く呻いた後マリアは突然の横からの一撃に耐えきれず、遠くの岩場まで吹き飛ばされてセレナから大きく離れ、近くにあった大岩を砕きながらぶつかった。

 セレナの目の前の砂塵が徐々に晴れていき、今し方マリアを吹き飛ばした存在を見てセレナは目を見開いた。

 

「あ、貴女はッ!」

 

 そこに立っていたのはネフィリム以上の恐怖を感じる程の殺意を秘め、自分の敵であるため助ける筋合いは無いはずの一人の少女が、紫と黒の機械的な鎧を身に纏い、右手に黒紫の刀を持っている姿だった。

 

「──間に合ったみたいですね」

 

 驚愕で目をパチクリするセレナに向かって未来は笑みを見せた。




G編も佳境。そして次回が作者的にG編で描きたかった場面、というか未来さんとセレナさんのやり取りです。うちの未来さんはビッキーのようには優しくないのよ……
ちなみにセレナさんが必死に歌を歌っている時には弦十郎さんたちは既にフロンティアに到着しております。
マリアさんの現在の戦闘力?そうですね……暴走未来さんより若干弱いくらいですかね?

さぁ!マリアさんを正気に戻すのは未来さんか!それとも……
打ち上げられたマムの運命は!
神獣鏡はどうなるのか!
奏さんが一緒に突入する事によって何が変わったのか!
セレナさんはどんな決断をするのか!
ウェルの好感度の行方は!
セレナさん、ちょっとボコボコにしすぎてごめんね!全部変態眼鏡の仕業だかry(眼鏡共々アガートラーム)


作者「てかセレナさん。貴女泣き過ぎでは?」
セレナ「誰が泣かせているのでしょうね?(満面の笑み)」
作者「私ですね、はい。謝罪するので後ろで今にも絶唱しそうな貴女の姉を止めてくれませんかねぇ!?」
セレナ「無理です(百点満点の笑み)」
作者「何故!?」
セレナ「私も歌いますので(後光が照らすほどの笑み)」
作者「なーるほどね!納得しましたわ!」※絶唱により消し飛びました。


次回! 貴女と私の違い

「姉さんはもう……手を、握ってくれない……声も、届かない……歌を、聴いてくれない……」
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