今回はネフィリム戦前の山場です。オリジナル展開ですが実際は原作ビッキーVS393シーンのようなものですから軽ーい、ギャグ展開を見る気持ちで見ていてあげてください(ニッコリ)。
それでは、どうぞ!
──数分前
未来、切歌、調の三人が二課仮設本部を出てから少し時間が経っており、ひたすらフロンティアの建造物向かっていた。
「それで、月読さんはセレナさんがどこにいるのか分かってるの?」
未来の疑問はもっともな事だった。
セレナたちを助ける、と豪語したが弦十郎や了子でも存在すら知らなかったフロンティアの事を未来が知るはずがない。セレナがいる場所なぞ皆目見当がつかない。
「ううん。私たちも本物のフロンティアを見るのは初めて」
「情報なんて全くないデス!」
「ええ……」
予想はしていたが少しは期待していたため未来は思わず苦笑いを浮かべてしまった。
(さっきのもあるし、油断は出来ない……はずなんだけどなぁ)
未来たちが移動している丁度先程、フロンティアの一画が何故か宙に向かって飛んで行っていた。それが何を意味するものなのか未来たち三人は何もわからなかったが、現在フロンティアを掌握しているウェルが何かしたのは間違いない。
時間にはあまり余裕が無いが、虱潰しにフロンティア内を探索するしか無いと考えた未来だったがその前に切歌が得意げに胸を張った。
「でも、あの眼鏡がいる場所なら分かるデスよ!」
「そうなの、切ちゃん?」
「デスデス!それは……あそこデェス!」
調に掴まった状態で少し周りを見回した後フロンティア内の一番高い塔のような場所を指さした。
「悪い奴といえば高い所にいるのがお約束デス!」
「暁さん、さすがにそんな適当は……」
予想の斜め上を行った切歌の発言に未来は呆れてしまっていたが、その直後切歌が指さした場所の頂上の一画の壁が砕け、砂煙の中からガングニールのシンフォギアを纏ったセレナを押し出すように神獣鏡のシンフォギアを纏ったマリアが現れた。
「「「えっ」」」
思わず三人の声が重なる。切歌もまさか自分の言った場所が正解だったと思ってすらいなかったのか唖然としていた。
急な事に三人は空いた口が閉じなかったがセレナとマリアの姿が岩陰に隠れて見えなくなると徐々に冷静になっていく。
「調!」
「分かってるよ切ちゃん。すぐに」
「ッ!月読さん、上!」
「なッ!?」
すぐさまセレナとマリアの姿が見えなくなった場所に急行しようとした調だったが、未来の声を聞いて上を向く。すると調の視界に入ったのは無数の飛行型ノイズが身体を螺旋状に変形させて自分たちに向かって急降下してくる光景だった。
調は見事なドリフトで雨のように降ってくるノイズを紙一重で回避していく。イガリマのシンフォギアを纏っている切歌も回避出来ないノイズをアームドギアで切り払うが、ノイズは上空からだけでは無かった。
移動中だった三人の両サイドからどこに隠れていたと思えるほどのノイズが走り寄ってくる。このままいけば目的の場所に着く頃には背後は目を背けたくなるほどの数になってしまうだろう。
「……調」
「うん。分かってるよ」
切歌と何か通じ合った調は移動するのを辞める。切歌が調から手を離して地面に降りるのに合わせて未来も降り、調も移動用に展開していた巨大鋸型のアームドギアを一度収納して同じく地面に降り立つ。その間にもノイズはどんどん近づいてきていた。
「私たちがノイズを抑えてるから、貴女はセレナを助けに行って」
「なっ、二人であの数は」
「大丈夫デス!私と調が力を合わせればノイズなんてイチコロデェス!」
「それに貴女は何かシンフォギアを使えない理由があるんでしょ?ならここで私たちでやる」
大鎌型のアームドギアを展開して肩に担ぎながら自信満々に胸を張る切歌に調は油断なく襲ってくるノイズの群れから目を離さないが振り返らずに安心させるように右手でVサインを未来に送った。
「……無理はしちゃダメだよ?」
二人の手助けをしたい未来だったが、今は一刻も争う事態なため提案に乗ることを決めて二人に背を向けて先程セレナとマリアが落下したと思われる地点に向かって走り去っていく。
未来が離れていくのを確認した切歌はゆっくりとアームドギアを持ち上げてノイズの群れに向けた。
「行くデスよ調!」
「後ろは任せて、切ちゃん!」
切歌は大鎌を振りかぶり、調はツインテール部のアームドギアから大鋸を展開してノイズの群れに突撃するのであった。
────────────────────
切歌と調から離れた未来はひたすらセレナとマリアが落下したと思われる場所に向かって走っていた。
気をつけねば落下してしまいそうな高さの岩場を登ったり迂回したりと少し時間をかけながらも着実に目的の場所には近づいている。だが。
「ッまた」
再び爆音が未来の耳に入ってくる。
近づくにつれて金属と金属がぶつかり合う音と何が爆発するような爆音、そして時折空に向かって数本のレーザーが放たれていた。その場所にセレナはいるのだろうと未来は直感的に感じており、急ぐ。
一つの岩場の上でチラリと後ろを見る。さすがに切歌と調の姿は見えないが開けた場所でノイズの群れが集まっているのは見える。そこの何処かにいる二人は未来のいる方へ行かせないように今でも戦っていた。だが、数的にも二人で抑えるのには限度があるだろう。
「早くセレナさんを見つけなきゃ……!あれは!」
前方を見回した瞬間だった。少し離れてはいたが、離れた場所からでも分かるほどの巨大な紫色のレーザーと黄色のエネルギー波がぶつかっている光景が未来の視界に入った。
二つのエネルギー波は最初こそ拮抗していたが、黄色のエネルギー波が少しずつではあるものの紫色のレーザーに押し負けているのを見て未来は焦りを隠せなかった。
(神獣鏡の技が直撃したらセレナさんが危ない!)
急いで急斜面になっている岩場を降っていく。少々危険だが、天羽々斬の融合症例になった際に手に入れた身体能力を使って危なげなく下まで降りることが出来たが、走った先には今度は大岩が未来の行き先を塞いでいる。
既に二つのエネルギー波のぶつかり合いによって生まれた衝撃や破砕音が聞こえなくなっている。それはどんな結果になろうと勝負はついていることに他ならない。
先程確認した場所的には目の前の大岩の向こうにセレナがいるはずだが、迂回している時間は無いかもしれない。
「……私に力を貸して。天羽々斬」
弦十郎に厳重に注意されていたが今は非常事態。なので未来は躊躇なく自身の胸に手を当てて頭の中に浮かぶ聖詠を口ずさむ。
──Fellthr amenohabakiri tron──
走る未来の身体が紫色の光に包まれる。そして未来は
未来は目の前にまで迫っていた大岩に向けて天羽々斬のアームドギアである黒紫の刀を大きく振りかぶり、そして力一杯振り抜いた。
「やぁ!」
翼の天羽々斬よりも「斬る」ではなく「破壊」する事に特化した未来の一撃は大岩を糸も容易く粉砕し大量の砂塵が舞う。その中で未来は一瞬とはいえマリアがシンフォギアを纏っていないセレナに向かってますアームドギアを振り下ろそうとしている光景を見逃さなかった。
(間に合って!)
「──ガッ!?」
砂塵で視界が悪くなる中、未来は真っ直ぐマリアがいた場所に向かって走り、そして視界が悪くなる事で油断していたマリアの横っ腹に向けて刀の峰を強く打ちつけた。
多少セーブしていたとはいえセレナの危機を救うために急いだためそこまで勢いを殺すことはできなかったが、それでもマリアをセレナから離すことには成功した。
未来の一撃を受けてマリアは遠くの岩場まで吹き飛ばされる事によって多少の余裕は出来たが、未来の顔は冴えなかった。
(やっぱり、身体が重い)
刀を握っていない左手を何度か開く。いつも感じる身体の痛みは無いが、その代わりに身体全体が重くなっているような感覚に眉を寄せる。
今の未来はシンフォギアの出力をあえて下げる事によって自身の身体に掛かる天羽々斬の浸食を抑えている状態であり、正確な数値は分からずとも浸食がとてもゆっくりなものだと未来は感じ取れるほどだ。これなら長時間戦えるため、ノイズ相手なら未来は十分戦力になるだろう。
だが浸食を抑えた代償にシンフォギアの出力を活動出来る限界まで下げたため通常の形態と比べて戦闘能力は半分もあれば良いといったところか。
「あ、貴女はッ!」
背後からセレナの驚いた声が聞こえて未来は振り返る。かなり無理をしたのだろう。既にシンフォギアは解けており、服の合間から見える肌には目に見える怪我が見えていた。それほどの激戦をしていたのは今来たばかりの未来でもわかる。
「間に合ったみたいですね」
座り込むセレナに笑みを見せて未来は今だ砂塵の舞う岩場の方に目をやる。まだマリアの姿は見えないが、見えなくとも殺気のような濃厚な気配は衰えていない。
「何故貴女が私を……?」
「暁さんと月読さんから頼まれたんですよ。助けてくださいって」
「切歌ちゃんと調ちゃんが……無事だったんだ」
安心したのかセレナの肩から少し力が抜ける。海上での戦闘の後二人の行方を知る事なくフロンティアに来たため、心配する事しかできなかったのだから仕方がないだろう。
「……今の私ではあの人を止める事は出来ません。ですが時間は稼ぎますのでセレナさんは少しでも体力を回復してください。二人で戦えば抑えられるかもしれません」
出来るのであれば今すぐセレナと共に戦ってマリアを止めるのがベストではあるが、今のセレナのダメージの受け具合からしてすぐに戦闘させても未来の邪魔になる可能性が高い。未来自身も想定以上の身体の重さに慣れるまで、仮に慣れたとしても今のマリアには到底及ばないだろう。であるなら、今は無闇に攻勢に出ずに防御に周って時間を稼ぐのが正解だ。
未来はマリアの事をセレナの実の姉であり、切歌と調にとっても姉ような存在である事以外全く知らないが、二人のお願いでもあり、一瞬とはいえ様子のおかしいマリアを見た未来は、マリアを正気に戻すためにセレナも力を貸すだろうと少し
「……セレナさん?」
「…………」
だが帰ってきたのは沈黙。
警戒しながら視線をセレナの方に向ける。座り込んだままのセレナは驚いて呆然としているのでも、何か作戦を考えるのでもなく、ただただ力無く地面に視線を向けていた。
「オオオオオオォォォォォ!!!」
明らかに様子が変なセレナに話しかけようと未来が近寄ろうとするが、直後前から大きな雄叫びと共に先程マリアが未来に吹き飛ばされて崩れた岩場から幾つもの紫のレーザーが発射され、そしてマリアの気迫と共に瓦礫を吹き飛ばして姿を表す。かなりシステムの負荷を受けているのか、浮き出た肌の範囲が先程よりも広がり、どんどん広がっていく。あまり時間は無い。
マリアは地面を砕くほど力強く一歩を踏み出し、そして未来に目掛けて全力で跳躍するように真っ直ぐ突撃する。
「ッ隠れていてください!」
セレナを巻き込まないように未来も突撃してくるマリアに向かって黒紫の刀を構えながら走り出した。
「オオオオォォォォ!!!」
「はあぁぁぁ!!!」
マリアの扇型のアームドギアと未来の黒紫の刀がぶつかり、遠くの岩場を破壊するほどの衝撃が起こり、二人を中心に周囲の地面が僅かに陥没し、そのまま止まれば死を感じるほどのマリアの乱撃が未来に襲いかかるが、未来はそれをなんとか防ぐ。しかし、一撃の重さから油断する事は許されず反撃が出来ない。
未来の初撃はマリアを止める事が出来ないと言っていながらも、マリアを本気で戦闘不能にするつもりの全力の一撃だった。これが通常形態のシンフォギアであればマリアも少なからずダメージを負っていただろう。
その後防戦一方な状況になりながらもいつもの未来であれば耐えられないほどのものではなかった。だが未来の纏うシンフォギアは現在出力を抑えている状態。なれば結果は分かりきった事だった。
(ダメ、アームドギアが保たない!?)
そう思った頃には遅く、マリアのアームドギアと僅かに拮抗していた未来の握っていた黒紫の刀が音を立てて砕けた。
黒紫の刀を砕いたマリアのアームドギアの刃が未来を両断せんと迫り来る。だが未来は鼻先を掠めるくらいギリギリで踏ん張る事で難を逃れる事に成功した。
振り抜いたマリアのアームドギアが地面を砕き、地面から散弾銃のように襲いくる小石を未来は腕を交差させて防御する事によって辛うじて急所に当たる事は防ぐが、それ以外は防ぎきれずに戦闘不能にはならなくとも無視出来ないダメージを負ってしまう。
「ハアアアァァァ!!!」
「ッ!」
下からの攻撃に身体が少し宙に浮いた未来を狙ってマリアは身体を一回転させて勢いをつけながら未来にアームドギアを再び振り下ろそうと振りかぶる。しかし、未来も何度もそう簡単に一方的な戦況に持って行かせる気はない。
「ッまだ!」
腕を交差した状態のまま黒紫の刀を二刀作り出して両手に持ち、そのままXを描くように襲いくるマリアのアームドギアに向けて振る。
金属同士がぶつかり合う音が響くと同時に、強力な一撃同士がぶつかり合った事により生じた衝撃が再び砂塵を巻き上がらせる。刀一本が粉々に砕けてしまったが、未来自身は一度距離を取るため衝撃波に逆らわずに後方までわざと吹き飛ばされ、砂塵から離れた場所に着地した。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
玉のような汗を流しながら未来は肩で息をする。思いの外衝撃が強かったのか、それともまだ出力が低下したギアに慣れていないのか、着地後に疲れも一気に未来に押し寄せてくる。
今の未来は完全に全力だった。先程のマリアの追撃の一撃を相殺するために放った一撃も未来は
そんな未来の全力の一撃とぶつかり合ったマリアだったが、未来とは違いほとんどダメージを負っていない様子だった。システムのせいで疲れを感じさせないようになっているのかもしれないが。
(出力を上げれば……ダメ。中途半端にギアの出力を上げても届かない。全力で行かないと。でも……ん?)
今の自分ではマリアを倒せるビジョンが見えずに焦る未来だったが、ほんの数メートル後ろでセレナが先程の場所から全く動かずにただボーッと恐らくマリアがいるであろう砂塵が舞う場所を眺めている姿が未来の目に写った。
「何をやっているのですか!戦えるのなら手を貸してください!」
「……」
何度か死を覚悟する程の戦闘に未来も余裕がないため少し語気が強くなってしまうが、それでもセレナはその場から動こうとしなかった。
未来に気づいたセレナは一瞬未来に目を向けるがすぐさま目を逸らしてマリアの方に向き直り、そして口を開いた。
「姉さんはもう……手を、握ってくれない……声も、届かない……歌を、聴いてくれない……」
セレナの瞳から涙溢れ出す。
もう既に何十回もマリアを救い出そうと想いを込めて全力で手を伸ばし、名前を呼び、歌を歌った。
だがその全てがマリアに届かず、セレナの希望は見事と言えるほど綺麗に打ち砕かれてしまった。それに加えて洗脳されていたとはいえ大好きな姉から向けられた殺意はセレナには耐えられるようなものではない。
まだセレナにはマリアを「助けたい」という気持ちは残ってはいる。だがそれよりも「もう手遅れ」という気持ちが上回ってしまっていた。
「姉さんは……帰って……こない……」
心が壊れてしまったかのように、生きるのを諦めてしまった瞳から大粒の涙が地面に落ちていく。
そんな涙を流すセレナを見て未来はゆっくりと近づき、セレナの前に立つ。その顔は前髪と逆光のせいでよく見えない。
「………………いで」
「え?」
「ッふざけないで!」
蚊の鳴くような小さな声が未来の口から漏れ、聞き取れなかったセレナは顔を上げるが、未来の顔を確認するよりも先に未来は大声を上げると同時にセレナに服の襟首を掴み、自分の方へ勢いよく引き寄せた。
「手を握ってくれない?声が届かない?歌を聴いてくれない?それだけで、たったそれだけで!貴女は大切な人を諦めるのですか!?」
殺意に近い怒りを込めた瞳でセレナを射抜く。刀を握っているもう片方の手からは怒りで握りしめすぎて血が滴り落ちていた。
「その程度なんですか?あの人に対する貴女の想いはその程度なんですか!?」
「そ、そんなわけが……」
反論しようと口を開こうとするが、未来は今にでも歯が砕けてしまいそうなほど強く噛み締めセレナを睨む。
今の未来は、初めてシンフォギアを纏った時に得た強い怒りに支配されそうになっており、気を抜けばセレナを殴りつけそうな憎しみが渦巻いている。それを爆発させないようにギリギリを押さえつけながら口を開く。
「手を握ってくれないなら貴女が握ればいい!声が届かないなら届くまで声を出せばいい!歌を聴いてくれないなら聴いてくれるまで歌えばいい!貴女にはそれが出来る!だって、目の前に相手が生きてるんだから!」
「ッなんで、泣いて……」
瞳に怒りを、その身体に憎しみを纏わせる未来だが、何も知らない一般人が見れば気絶さそうな程の圧を放っているのに未来自身は今にでも崩れてしまいそうなか弱い少女のように涙を流していた。
戸惑うセレナだが、未来はそれを無視して捲し立てる。
「なんで諦めるんですか!?私がどれだけ、死んでも手に入れたいくらい欲しいチャンスが、戻ってくるはずの無いモノが戻ってくるチャンスが目の前にあるのに!なんでそんな簡単に諦めるんですか!?なんで簡単に諦める貴女のところにそんなチャンスが来るんですか!?こんなに響に会いたいと思ってるのに、なんで私よりも恵まれている貴女が!諦めるんですか!!!」
「…………」
セレナは何か言わなくてはと思いながらも何も言い返す事が出来ず、ただ呆然と涙を流す未来を見つめ返すだけ。
黙り続けるセレナに興味を失ったかのように未来は突き飛ばすように乱雑に襟首を掴んでいた手を離し、地面に座り込んだセレナを未来はゴミを見るような見下す目を一瞬だけ向けて晴れ始めた砂塵の中から現れたマリアに身体を向けた。
「もういいです。暁さんと月読さんには申し訳ないですが、私は私の大切なモノを守る為にあの人を……殺します。貴女は邪魔なので死にたくないのなら何処かに消えてください。死にたいのなら勝手にどうぞ」
そう言い残して未来はマリアの方に向かって歩き出す。対するマリアも獲物が見つかった獣のように未来を発見すると何度目かの雄叫びを上げて突進してくる。血管が隆起したような浮き出た肌の範囲もさらに広がっており、目も血走り始めていた。そしてそれに比例する様に動きも益々獣じみて来ている。
そんなマリアを見て、未来は目を閉じてゆっくりと深呼吸してセレナに向けていた怒りを少しずつ無理矢理抑えていく。
(……私の身体、お願いだから耐えてね)
「オオオオォォォォ!!!」
かなり近くまでマリアが接近してもまだ目を瞑っている無防備な未来をアームドギアに攻撃範囲に捉えたマリアは押し潰すつもりで全力振り下ろす。まともに直撃すれば未来は見るも無惨な姿に変わるであろう事は簡単に予想が出来るほどの勢いが乗った一撃が未来に襲いかかった、が。
「ッ!!??」
耳鳴りがするほどの金属同士が強くぶつかる音が荒地に響く。
今までと違う手応えに警戒したマリアはその場から一度後退し未来から離れた場所でアームドギアを構え直した。
対峙する未来はシンフォギアの形状こそ変わってはいなかったが黒かった部分が白く変色し、握っていた黒紫の刀も白紫の刀に変わっていた。
未来は今のままではマリアに勝てないと踏んで天羽々斬の浸食があるのにも関わらず、シンフォギアの出力を上げていた。それにより今の未来の全力が出せる状態だった。代償は無視できないモノだが。
(一度出力を下げて戦ったからかな。自分の身体がどんどん変化していくのがよく分かる)
身体が軽くなり、力も溢れ出すものの未来自身は自分の身体の中に強い違和感を感じており、少しずつ自分の身体が自分のモノでは無くなっていくような感覚に襲われる。
(……でも、あの人を倒す為に、クリスたちを守る為にこの力必要なら私は)
もう一度深呼吸してからマリアに向けて白紫の刀を向けて構える。マリアに向けている瞳には既に躊躇は無く、ただの敵としか写っていない。そう思わなければ倒す事が出来ない。
「……行きます!」
「ッ!?」
強く一歩を踏み出してマリアに向かって突進する。出力を通常まで上げたため先程よりも早く、一撃もマリアの放つものと同レベルまで向上していた。
時間制限があり、攻撃力も同等。機動力も大きな差異は無く、互いに相手を殺すつもりでいる。後はどちらが勝利するか見守るだけ。
「ッアアアアァァァァ!!!」
「はあああぁぁぁ!!!」
大きな金属同士がぶつかり合う音が響き、衝撃が辺りの岩場を破壊して更地にしていく程の破壊力を秘めた一撃が絶え間なく放たれる。直撃しなくともアームドギアが近くを通過した風圧だけで未来もマリアも少なからず身体が引っ張られてしまい動きが鈍くなってしまう。その隙を互いに突こうとするが、どちらもそれを許さない。この間に入ろうと者は自殺志願くらいだろう。
そんな二人の殺し合いを、セレナは少し離れた場所で見つめていた。
────────────────────
「姉さん……小日向さん……」
どちらかが死ぬまで続くと簡単に予想ができる程の激しい戦闘を前にして、セレナは先の未来の言葉に動揺を隠せないでいた。
(私と同じで大切な人を失って、辛い日々を送って、でも支えてくれる人がいるのに、なんで私とあの子でこんなにも違うの……?)
自分は全てを諦めて絶望し、動けなくなっているのに対して未来は生きる事を諦めずに戦っている。同じ境遇のはずなのに何故ここまで差が出てしまったのかセレナには理解できなかった。
未来の事は翼と奏とのコラボライブ前に資料として簡単に知っている程度だった。
大切な人を失って心の真ん中に大きな穴がポッカリ空いてしまったような感覚はマリアを失ったと思っていたセレナにもよく理解できる事だ。今もまさにその絶望を味わっているのだから。
『なんでそんな簡単に諦めるんですか!?』
未来の先の言葉がセレナの胸の奥に深く突き刺さる。
(諦めたいわけじゃない。諦めたくない!でも……)
もう一度顔を上げてマリアを見る。暴走する獣と化してる今のマリアに昔の優しかった面影は全く無い。
助け出せるはずがない。
助け出せるとしても、それは自分の手ではないだろう。今の自分はあまりにも脆弱でひ弱で惰弱すぎる。こんな状況を作り出してしまった一因でもある自分が助ける事なんて出来るはずがない。
「痛ッ」
何も出来ない無力な自分に絶望して身体から力が抜けていく途中、胸元のポケットから何が刺さったような痛みに顔をしかめる。
自然とセレナは胸元のポケットに入っている物を取り出すと、それは今にでも壊れてしまいそうな大きな傷の入った赤いクリスタルのペンダントだった。
「これは、姉さんの……」
それはセレナがいつもお守りとして持っていた、六年前覚醒したネフィリムを鎮めるためにマリアが纏ったシンフォギア「アガートラーム」のシンフォギアペンダントだった。
セレナの知るマリアは少し厳しいところもあったが、年下の施設の子供たちには母親のように思われていたほど優しかった。それはセレナにとっても同じだ。
嘘が下手で、叱る時も優しさが滲み出て怖くなく、それで無償の優しさを与えてくれた最愛の姉。
そして自分よりも何倍も大きい巨大のネフィリムに恐怖するもセレナを助ける為に死ぬ覚悟を持って対峙するほど大きな勇気を持った、自分の憧れであり将来自分も隣で胸を張って歩けるような人間になりたいと思う尊敬するの姉。
それほど愛していた姉が今の自分を見たら何を思うのだろうか。
(きっと姉さんなら許してくれる。よく頑張ったって頭を撫でてくれる。姉さんは優しいから)
「でも……それじゃ私は姉さんにとってずっと妹でしかない。守られる存在じゃなくて姉さんと同じ守る存在に私はなりたかった。妹としてではなく、マリア姉さんの隣にいたかったんだ……」
なら、今ここで座り込むしか出来ない自分はなんだ。
今の自分は姉の隣を歩くのにふさわしいと自信を持って言えるのか。
「言えるはず……ありませんよね」
苦笑いを浮かべてからギアペンダントを強く握り、力が抜けて立ち上がれなかった自分の足に力を入れ、まるで産まれたての子鹿のように震えるながら立ち上がる。
「小日向さんが言った通り、マリア姉さんは生きてる。手を握ってくれなくても、声が届かなくても、歌を聴いてくれなくても……そこに確かにいて息をして生きてる。なら手を握ってくれるまで、声が届くまで、歌を聴いてくれるまで!諦めるわけにはいかない!」
熱くなり白い光を放つギアペンダントに目もくれずセレナは殺意が振り撒く未来とマリアの元に決意を抱いて踏み出した。
────────────────────
幾度もの殺意を込められた未来とマリアの二人のぶつかり合いにフロンティアの大地が大きく削られてき、元から岩だらけだった荒地も更地どころか戦争でもあったかのようにいくつもの小さなクレーターや未来の斬撃によって大地が割れ、マリアの神獣鏡の技によって地面が抉られていた。
それでも二人の決着はまだついていない。
「ハアアアアァァァァ!!!」
「くうッ!?」
マリアの大振りな一撃を未来はギリギリで白紫の刀で防ぐが衝撃に耐えられず折れてしまう。全力を出し始めてこれで六回目だ。
地面に着地して七本目の刀を作り出して構えようとした時、身体に鋭い痛みが走り顔を顰めてしまう。だがそれも仕方のない事だろう。
ただでさえ未来はシンフォギアを纏えば天羽々斬の浸食が進んでしまう身体だというのに今は全力な上に何度もアームドギアを折られてその度に創り出している。その際にシンフォギアの力を使う為余計に未来の身体を浸食しているのだ。
それでもマリアを倒す事が出来ず、むしろマリアは身体が限界に近づけば近づくほどシンフォギアの出力が上がっていき未来の全力ですら敵わないレベルになっている。
「アアアアァァァァ!!!」
「くっ!」
マリアがアームドギアの先端を未来に向けるように構えた瞬間、先端に深い紫色の球体が生まれた急速に巨大化していく。それを見て未来も白紫の刀を肩に担ぐような格好を取った。
『暗恐』
『蒼ノ断頭』
マリアの放った紫色の球体は通った地面をそこには何もなかったかのように消滅させながら未来に接近し、対する未来は今の未来が使える一番強い技を使って迎撃した。
蒼の斬撃と紫の球体が衝突した瞬間、僅かな拮抗の後大型爆弾でも爆発したかのような大きな爆発と衝撃が未来とマリアを襲った。
マリアは受け身を取る事はできずに近くの岩場まで吹き飛ばされ、未来は空中に浮かんだ身体を無理矢理捻って体勢を整えて、刀を地面に刺して勢いを殺して遠くに吹き飛ばされることを防ぐが、それでもダメージは多い。
「はぁ、はぁ、はぁ……う、かはっ!?」
再び襲ってきた身体の痛み未来は耐えられず少し吐血してしまう。
未来自身の戦う意思は消えなくとも身体は既に危険なレベルにまで消耗していた。このままでは未来も完全に天羽々斬に浸食されてしまう。だが。
「ウオオオオォォォォ!!!」
それでもマリアは倒れていない。
(何があったか分からないけど、なんであそこまで戦えるの?)
戦闘が始まって未来が不思議に思っていた事。
今のマリアは暴走した自分のように我を失っているような状況だと未来は思っていたが、戦い続ける間に何か違和感を感じ始めていた。
ただ目の前の敵を排除しようとしているはずなのにそこには何かしらの強い意志がある。殺意が込められた一撃も、かつて自分がノイズに負けていた殺意とは違う何かが混ざっていたが未来はそれが何か答えを見つけられないでいた。
ボロボロになり、シンフォギアも所々砕けていても戦い続けようとするマリアに、未来は違和感を感じながらも痛みが走る身体を無理矢理動かして立ちあがろうした瞬間、目の前に人影が立ち塞がった。
人影が誰かを確認しようと顔を上げて視界に入ったのは、さっきまでマリアを助ける事が出来ないと諦めていたセレナの姿があった。
「……今更何をしようと言うのですか?」
セレナの表情が見えず、未来は少し自分にないチャンスがあるにも関わらずそのチャンスをドブに捨てようとしたセレナに苛々を隠さずに強めの口調で話しかけるがセレナは微動だにしなかった。
「姉さんを助けます」
何も言わなかったセレナだったがポツリと、しかし絶対に譲らないというという強い意思を込めてそう言った。そこに先程までの絶望して悲観していた弱々しさはない。
「何か良い案があるのですか?」
「ありません。そもそも本当に助けられるかも分かりません。ですが」
セレナはゆっくりと膝をつく未来に振り返り、優しい笑みを向けた。
「マリア姉さんは……生きていますから」
たったそれだけの言葉。
だがその言葉が何を示しているのか、未来には分かった。
特に何かを言ったわけではなく、だがそれでも互いに何を言いたいのか理解した未来は安心した笑みを返したあとシンフォギアを解いて私服に戻ると力尽きたように地面に座り込んだ。
「でしたら、あとは任せても良いですよね?」
「はい。貴女は休んでいてください。ここからは私の
そう言い残してセレナは白い光を放ち続けるギアペンダントを握り締めながらマリアのいる方に向き直り歩み始める。
「ッアアアアァァァァ!!!」
マリアはセレナを視界に入れると大きな砂煙をあげながらセレナに向かって突進する。
生身でシンフォギアの一撃を受ければ常人では命はない。
それでもセレナは歩みを止めない。
もう数メートルまでマリアが近づいた瞬間、セレナの握るギアペンダントの放つ白い光が一際強く輝いた。
「私が!マリア姉さんを、助けるんだ!」
──
頭の中に浮かんだ聖詠を口ずさんだ瞬間、辺りを白く包み込むほどの強い光がセレナを中心に放たれる。
そして光が収まる頃には白を基調として、かつてマリアが使った時の騎士のような外見とは一転し、各部装甲に花びらのような意匠を持ち、妖精を彷彿とさせる姿となったセレナが立っていた。
「──行きます!」
セレナはマリアを救い出す為、白銀の短剣の形をしたアームドギアを手に待ち、マリアに向かって走り出した。
天羽々斬は技量というか機動力が売り、神獣鏡はどちらかと言うと後方支援的な役割なのになんで未来さんも現在のマリアさんも脳筋のようにパワー全開なんry「「貴方のせいでしょ?」」あ、はい。すみません。
これまでセレナさん酷い目に合わせましたが、実際マリアさんが生きている時点で未来さんよりだいぶん幸運なんですよ。狂うほど大切な親友を亡くして心が一度壊れた未来さんを前にして、生きているマリアさんの救出を諦めようとするセレナさんにキレるのも仕方ない。
アガートラームを纏ったセレナさんはそのままXDUの大人セレナさんをイメージしてもらえれば幸いです。やっぱり資料があるのはいいですねぇ!でも私の考えだと未来さんとビッキーとクリスちゃんは……おっとネタバレだな。
え?なんで未来さんはシンフォギアの出力を簡単に変えられるのかって?……自由自在とまでは行かなくとも簡単に出来ちゃうくらい浸食が……ね。
奏さんもガングニールの出力落としたら身体に掛かる負担が減って戦えるのではないかって?出力落とした代わりに戦闘能力が半分以下になるため、比べたら今はまだLiNKER使ってた頃の方がぶっちゃけ強いです。
393「私の本音が出てきましたが、どう思います?(ニッコリ)」
作者「すまねえ……本当にすまねえ……(五体投地土下座)」
ビッキー「でも私の出番は?」
作者「無いねぇ……本当に無いねぇ……」
393&ビッキー「「言い残す事は?」」
作者「助けくだry」※月の形がドーナツ型になりました。
次回! 姉妹
ようやく姉妹は再会を果たす!※土星を通過中