転生しても楽しむ心は忘れずに   作:オカケン

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 無印編本編最終回!


誓い

 

 

 

 

 

 

 アースラでの数日は暇を持て余す生活だった。ここには勿論俺のゲームや遊び道具なんかはなく出来る事と言えば体を鈍らせないようにトレーニングをするのみ。と言っても柔道そのものは出来ないのでさらにやれる事は限られる。

 しかも1日中ずっとやれるスタミナもあるはずもなくそれ以外の時間はボッーとしているか暇な人を見つけて雑談にふけるばかりだ。アースラの仕事を手伝えればそうしたかったのだが俺にできる事は皆無なのは分かっていたので開き直って過ごしていた。

 正直退屈すぎてずっとユーノとなのはちゃんとついでにクロノにちょっかいかけてばっかな気がした。そんな数日も過ごせばあっという間で、アースラ内の食堂でなのはちゃんとユーノと一緒にご飯を頂いているとリンディさんとクロノ、エイミィさんが同席してきた。そこでリンディさんから明日には地球に帰れるとの言葉を貰う。ちなみにユーノは自身の故郷に帰れるまでまだまだ時間がかかるそうでその間は今まで通りフェレットとして高町家の世話になるそうな。

 

「そうですか……クロノにちょっかいかけれるのも今日で最後か……」

「僕はようやく君から解放されてせいせいするよ」

 

 そんなクロノの言葉にエイミィさんが寂しいならそう言えばいいのに〜と揶揄うように口を開く。クロノは少し慌てて反応した。あれま、嬉しい反応。

 

「何だよ何だよ、嬉しいじゃないの。時間があればまたちょっかいかけにいくから寂しがんなよ〜」

「昨日もそうだが本当に鬱陶しいな君は」

「ちなみに昨日は何されたんだい?」

 

 そうユーノに聞かれたクロノはげんなりしながら

 

「…………書類作業をしてる僕の横でずっと筋トレしてんたんだこのバカは」

「だって暇なんだもの」

「だったら誰の邪魔にならないところでやらんか馬鹿者」

「親交を深めたくて」

「どうして親交を深めたいのに僕をイライラさせるんだ」

「…………ツンデレ?」

「どこにもそんな要素なかったよ慎司君」

 

 クロノの代わりに見かねたなのはちゃんがそう俺にツッコム。なぁに、ちゃんと本気で怒らせないうちに退散したよ。

 

「そっか……クロノも大変だったね」

 

 ユーノもクロノと同じようなげんなりとしてそう言う。

 

「何だユーノ?お前も慎司の被害に遭ったのか?」

 

 被害とは失礼な。ユーノもそんな顔するなよ、別に大した事してないだろうに。……してないよね?

 

「僕は……どっちかが100勝するまで終わらないエンドレスあっち向いてホイっ勝負してた」

「本当に君は何をやってるんだ」

 

 いやだから暇だったのと親交を深めたくて。いやね?最初はユーノもノリノリだったのよ?最初の10戦くらいは男同士はしゃいで楽しんでたさ。途中で遠い目をして闘ってたけど男として一度言い出した以上おわれないじゃん?

 

「全く慎司にも困ったものだ、まさかエイミィや艦長にまでちょっかいかけたんじゃあるまいな?」

「あら、心配してくれてるの?クロノ」

「揶揄わないで下さい」

 

 親子だけどちゃん公私混同しないクロノ。まぁ、ぶっちゃけ節々親子なんだなぁって思っちゃう会話何度かしてる時あるけども。

 

「えっと私はねぇ……徹夜で作業してる時に冷えピタと肩揉んでくれてたね」

「私もお茶入れてくれたりしてくれてたわよ?」

 

 リンディさんお茶に砂糖入れるからな………ようやくリンディさんが喜ぶ適量分かってきたところよ。

 

「女性には優しいんだな君は」

「待ってクロノ君、私そんな風に労ってもらってないよ」

 

 クロノの発言になのはちゃんが異を唱える。

 

「私慎司君に肩揉んでもらってないよ!」

「おい小学生」

 

 お前肩凝る歳じゃないだろ。

 

「いいじゃん!揉んでよ!」

「ほれっ」

「うにゃー!引っ張らないでよー!」

 

 しかもほっぺだしー!と言いギャーギャーするなのはちゃん。あ、今日もすべすべで触り心地最高だね。

 

「なんかあれだな……ほっぺ伸びてるなのはちゃん見てると思うんだけどさ……」

「え?何?」

「コイキングみたいだな」

「明らかにおかしいよね!?」

 

 コイキングじゃないもんっとポカポカして抗議してくるけどいかんせん。例の如く全く痛くない。

 

「不満か?ケンタロス」

「変わってるしせめて人型にしてくれないかなぁ!」

 

 そんな感じでふざけつつアースラで食べる最後の夕食を終える。今生の別れというわけではないが寂しさを感じる、数日ちょっかいかけたのも実はそんな気持ちを拭う為でもあった。いい歳こいた大人が恥ずかしいとも思ったが……気持ちには正直なっていた。

 

 

 

 

 

 一晩寝てすぐに俺となのはちゃんとユーノはすぐに地球へと帰還する事に。別れ際、アースラのスタッフの皆さんに見送られて別れの挨拶をしつつクロノがフェイトちゃんの裁判やら便宜に尽力を注いでくれると約束してくれた。俺の父さんと母さんも既に動いてくれているから心配はいらないと頼りになる事を言ってくれる。仕方のない事だがアースラにいる間、ひと目もフェイトちゃんを見る事は叶わなかったがフェイトちゃんなら大丈夫だろう。

 心配もなく俺は地球へと帰還出来そうだ。転移装置の前に立ち一歩進めば地球に帰るというところで

 

「なのはさん、ユーノ君……そして慎司君も」

 

 リンディさんの言葉が合図だったのかスタッフ全員がリンディさんがそう言い終えると綺麗に敬礼を始める。

 

「今回の事件への助力に感謝と敬意を称します。本当に……ありがとう」

 

 少々面食らったが俺達3人も拙いながら敬礼を返して地球へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球へと帰った俺達を待っていたのは平凡な日常であった。たかだか数日の出来事であったがこんなゆったりした時間を謳歌するのは何だか久しぶりに感じた。帰って早々俺がしたことといえば大会で応援に来てくれていた高町家の面々とアリサちゃんとすずかちゃんへの謝罪だった。大会を終えて、ひったくるように賞状とメダルを受け取ってからロクな説明も連絡もできずに俺はなのはちゃんの元へ飛び出してしまったため、要らぬ心配をかけてしまっていたのだ。しかし、そんな謝罪に帰ってきた返事は拍子抜けた物だった。

 

「あら、慎司君……家族との優勝記念旅行は楽しかったかしら?」

「んんっ?」

 

 桃子さんの言である。お土産ありがとうねなんて言いながら何かが入った紙袋を持ち上げる。んんっ?んんんっ?アリサちゃんとすずかちゃんも同じ反応であった。

 どうやら父さんと母さんの仕業で俺が地球にいない間は家族と遠くへ旅行に行ってたことになっていた。大会も終えてすぐに居なくなったのは父さんが飛行機の時間を間違えて早くチケットを取ってしまったからだと言うことになっていた。俺が連絡できなかったのは出先で携帯を壊してしまった事になってるという徹底ぶり。せっかく両親が用意してくれた言い訳が出来たのでそれに乗って話を合わせた。いや本当に両親には頭が上がらない。家には書き置きが置いてあってしばらく帰ってこれないようだが……帰ってきたらちゃんとお礼しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで数日ぶりに学校に顔出せばクラスメイトから優勝おめでとうとのお祝いの言葉を頂きつつ、アリサちゃんとすずかちゃんはなのはちゃんがようやく悩み事に決着がついた事を聞いて喜んでいた。ようやく、全て元どおりになったような気がして俺も笑みを零す。

 

「なのはちゃんの悩みが解決したなら……慎司君となのはちゃん、今日時間あるかな?」

 

 何だろうか、俺となのはちゃんはお互いを目を見合わせつつ別に平気だと答えた。

 

「よかった、私とアリサちゃんも今日お稽古もなくて時間あるんだ……良かったら私のお家に来ない?」

「2人ともNOとは言わせないわよ」

 

 そんなアリサちゃんの言葉に苦笑しつつ俺となのはちゃんは勿論OKと返事を返す。すずかちゃんの家かぁ……またメイドさん見れるな…。

 いいなぁ……メイドさん。

 

「慎司君、どうしたの?なんか凄く嬉しそうだけど」

「メイド服欲しいな」

「ちょっと黙っとこうか」

 

 なのはさんきっついよ。切り返しきっついよ。メイドの話になるといつも酷い目に合うからってそんなバッサリ切るなよ。

 

「あ、それと2人共大丈夫だったら夕飯もうちで食べてってよ」

「いいのか?」

「勿論だよ」

 

 今日は楽しくなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すずか邸に到着してすぐに俺もなのはちゃんはアリサちゃんとすずかちゃん背中を押されてこっちこっちと急かされ歩く。なんなんだか一体。ていうかこれから遊ぶんだろ?そっち確か食堂じゃなかったか?なんて疑問を抱きつつ食堂の扉まで到着するとアリサちゃんが俺となのはちゃんに2人で扉を開けろと指示してくる。

 何だ?何がしたいんだ本当に。2人で疑問を抱きつつ扉を開ける。飛び込んできた中の景色に心底驚いた。

 

「マジかぁ」

「わぁ……」

 

 俺となのはちゃん、2人で感嘆の声を上げる。食堂の中は少し豪勢な食事とメイドさん達が綺麗に並んで出迎えてくれていた。そして、奥の垂れ幕に

『なのはちゃん、お疲れ様&慎司君優勝おめでとうの会』

 

 と書かれていた。俺が驚いてその場に動けないでいるとアリサちゃんが隣に立ち

 

「すずかが言ってたでしょ?慎司の大会が終わって、なのはがちゃんと戻ってきたらパーティでもしようって」

 

 確かに聞いた覚えがあるがまさかこんなサプライズじみてやられるとは思わなかったので驚きを隠せない状態だ。

 

「なのはちゃんも元気に戻ってきて、慎司君も頑張って優勝出来て……本当に良かったよ!」

 

 輝くようなすずかちゃんの笑顔に俺は照れ臭くて頭を掻き、なのはちゃんは感激して少し涙ぐんでいた。

 

「驚かせちゃってごめんね?でも、びっくりさせたくて……」

「あんた達も喜んでくれるかなって思って2人で計画してたのよ……その、感謝しなさいよね」

「すっごく嬉しいよ、すずかちゃん……アリサちゃん…ありがとう!」

 

 なのはちゃんの言葉に2人は笑顔になり、そして今度は俺の方を向いてどうかな?という目で見てくる。バッカおめえ……

 

「超嬉しいに決まってんじゃねぇかよ!!」

 

 感極まって俺はアリサちゃんとすずかちゃん、近くにいたのでついでになのはちゃんも含めた3人を抱き抱える。3人とも驚いてジタバタしてるが俺はそんな事気にせず続ける。

 

「ありがとな!!本当にありがとう!」

 

 俺には、勿体ない友人達だ。そんな友人達と過ごすこの日常を……俺は大切にして行こう。前世以上に、大切に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事件もなく、ゴタゴタもなく。ただただゆっくりとした平和な日常をしばらく謳歌していた。柔道の練習にも復帰して、次の目標に向けて努力を始めている。この間の大会で優勝しても俺の柔道人生はまだ終わるはずもない、今度はもっともっと大きな大会で結果を残す為前に進んでいる。

 そんな俺の元にとある連絡が来たのは早朝、アースラのクロノからだった。え、俺の携帯に連絡できるんだすげぇなミッドの技術。なんて感心しつつ電話に出るとクロノから聞かされた話は寝ぼけた俺を目覚めさせるには十分な内容だった。

 

「本当か?クロノ」

「ああ、フェイトは今日にでも本局に移動して後に裁判を受ける事になるがほぼ間違いなく無罪になるはずだ。君の両親の信治郎さんやユリカさんが頑張ってくれたおかげで僕もスムーズに話を進められたよ」

「そうか!よかった……ありがとなクロノ」

「いいんだ、当然の事をしただけだ」

 

 それでも、ありがとうと一度伝える。地球に戻ってからもフェイトちゃんの事を考えない日はなかった。両親が頑張って便宜を図れるよう動いてくれていたのは分かっていたがそれでも心配だったのだ。

 時空管理局とやらの組織をよく知らない俺からすれば当然の事だった。父さんと母さんも先日くたびれた様子で帰ってきて、やれる事は全部やったから安心しろとは言ってくれたがこうやってクロノから正式に報告を受けてようやく心配が晴れた。

 

「それでだ、慎司……今から出られるか?」

「あ?……まぁ平気だけど」

 

 休日だから学校もねぇしアリサちゃんとすずかちゃんは用事で遊ぶ約束も出来なかったし。トレーニングでもしてからなのはちゃんの家に遊びに行こうかななんて昨日考えてはいたけど。

 

「そうか、実はな……フェイトが本局に移動する前に君達に会いたいと言っているんだ」

「………会えるのか?」

「出発までの少しの時間だけだがな」

「分かった、準備してすぐ行く!場所は?」

 

 俺は大慌てで準備して、連絡がいっているであろうなのはちゃんにも電話をして先に行ってるように伝える。俺はクロノが指定した場所には遠回りになってしまうが一度翠屋に向かって走る。途中翠屋に電話してケーキ予約をするのも忘れない。息が絶え絶えになりつつ店に飛び込むと桃子さんが驚きつつ

 

「はい、用意できてるわよ……持ってて」

「ありがとうございます!」

 

 代金を渡してケーキのセットを受け取る。よし、目当てのものゲットできた。落とさないように気をつけないとな。そう思いつつも俺は全力疾走で指定の場所に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だはぁ!着いたぁ」

「遅いぞ慎司」

 

 待っていたクロノがそう言ってくるが先に切らした息を整える。普段トレーニングしてた事が功を奏したのか思ったよりもかなり早く到着できた。綺麗な海が見渡せる海鳴臨海公園……そこが指定場所だった。既になのはちゃんとフェレット姿のユーノは到着しており、今は少し離れた所でフェイトちゃんとなのはちゃんは2人で何か話をしている。今はとりあえず2人にしておこう。ユーノとクロノ、そしてアルフは3人でまた一緒にいる所を俺が合流した形だ。

 

「よっ、アルフ。元気だったか?」

「ああ、おかげさまでね」

 

 アルフの憑物が取れたような微笑みに安心する。よかった、とりあえずは何事もないようで。

 

「あんたには本当に世話になったねぇ」

「うん?まぁ……俺がしたくてやった事だからよ」

 

 気にすんなや。

 

「でも、あのゴタゴタの後ゆっくり話すこともできなかったからさ……言わせておくれよ」

 

 トレードマークの獣耳と尻尾をバタバタさせながらアルフは言う。

 

「ありがとう慎司、フェイトを助けてくれて」

 

 面と向かって言われるとどう返事をすればいいか分からず俺は頭をかく。

 

「まぁ、とにかく……色々良いように収まってよかったよ。裁判の方は平気なんだろ?クロノ」

「あぁ、心配しなくていい」

 

 頷くクロノの一言に再び安心する。それにしてもだ。

 

「アルフ、お前またそんなセクシーな格好してんのな?」

「え?おかしいかい?」

「おかしくないよ、むしろ似合ってるけどさ……」

 

 腹出し、肩出し、太ももから下も無防備。確かにスタイルいいから似合うけども。

 

「……やっぱり痴」

「噛みつかれたくなかったからそれ以上は言わない方が身のためだよ」

「……ごめんて」

 

 そんな怒んなよ。さっきまですごい優しい顔してたやん。唐突の変化にびっくりですよ私。ていうか痴女って言葉俺のせいだろうけど気にしてたのね。ごめんなさいね。

 

「でもよでもよ、周りの目も気にした方がいいぜ?ユーノみたいにずっと胸凝視するむっつりスケベだっているんだからよ」

「ふーん?」

 

 ジト目でフェレット姿のユーノを見るアルフ。フェレット姿でも分かるくらいの大慌てぶりだ、今頃念話で慌てて違うと言ってるだろう。弁明を終えたのだろうかユーノは俺への抗議として指に噛み付いてきた。

 

「誤解は解けたかムッツリ」

「〜〜〜〜っ!」

 

 ああ、怒るな怒るな。冗談だっての。そんな風にふざけてると遠くで俺に気づいたフェイトが手を振っていた。

 

「行ってやんな」

 

 アルフに背中を押され、頷いて俺はフェイトちゃんもとへ走った。なのはちゃんと手を繋いで手を振るフェイトちゃんの顔は以前見た時とは印象が全然違う顔をしていた。明るく、年相応の可愛い笑顔だ。

 

「……ちょっとぶりだな、フェイトちゃん」

「うん、会えてよかった……慎司」

 

 ああ、俺も会えてよかったよ。

 

「なのはちゃん、フェイトちゃんとの話は終わったか?」

「まだ、話し足りないけど⋯⋯話したい事は話せたよ」

「そっか」

 

 こうやって面と向かって改めて会うと何を話したらいいのか分からない。俺は、あの時伝えたい事は全て伝えたし……フェイトちゃんはちゃんと乗り越えてここにいる。今更、俺から言うことはあまりない。そうだ

 

「ほれこれ……約束のケーキだ」

「約束?」

「言ったろ?頑張ったご褒美に翠屋のケーキ奢るってよ」

「………両親の奢りで?」

「ありゃ冗談だよ」

 

 まぁ、両親から貰ってるお小遣いだからある意味両親の奢りかね。俺が稼いだ金じゃねぇし。まぁ、どうでもいいや。

 

「あ、チョコケーキ」

「俺のお気に入りだ」

「慎司君よく頼むもんね〜」

 

 3回に一回はお店にお邪魔した時に注文する。これがうまいんだまた。

 

「嬉しい、ありがとう」

「おう、道中でゆっくり食ってくれ」

 

 その言葉で暫し沈黙。本当にこういう時何話せばいいのか分からん。照れが少々入っててうまく口が回らない。

 

「………次に会えるまでは……長くなりそうなのか?」

 

 一番気になる事を聞いてみた。まぁ、予想はついているが。

 

「うん……数ヶ月とかそんな単位じゃ済まなそうなんだ」

「そっか……」

 

 仕方ない。日本でも裁判ってやつは長くなるものだし……フェイトちゃんも無罪みたいなものとはいえ事件自体は大きな物なんだろうし。

 

「まぁでも、2度と会えなくなるわけじゃないんだよな?」

「うん……」

 

 ならいい。また会えるなら……それでいい。

 

「フェイトちゃん、君に………伝える事がある」

 

 そうだ、あの事を伝えないといけない。プレシアが最後に放ったあの言葉について。

 

「なのはちゃん………」

「うん………2人でゆっくり話してて」

 

 なのはちゃんは察して離れて俺とフェイトちゃんの2人にしてくれた。すまないな、まだ話したい事あったろうけど。

 

「プレシアのあの最後の言葉……聞こえたか?」

「うん、慎司に私の事をよろしくお願いって言ってた事だよね?」

「ああ」

 

 母親の事を思い出させるの酷だが、仕方ない事だ。話すべきだと思うから。

 

「母さんのあの言葉は……正直よく分かってないんだ」

「分かってない?」

「うん、母さんは……最後まで私の事……フェイト・テスタロッサの事を娘だと思ってなかった。ただの他人だって思ってた」

 

 俺もそう思う。プレシアの気持ちは変わらなかった筈だ。

 

「だから……どうして最後に私を想ってくれるような言葉を残したんだろうってずっと思ってたんだ」

「…………」

 

 その答えは、今もそしてこれから俺もフェイトちゃんも知る事はない。知る事が出来ないし、答えを確認する術もない。けど、俺は俺なりの答えを持つ事にしたんだ。なのはちゃんや皆んなに励まされてそう思う事にしたんだ。それを、フェイトちゃん伝えたい。

 

「……その答えはきっとずっと分からないままだ」

「…………」

「けど、俺は前を向くって決めた。フェイトちゃんやプレシアにそう生きるべきだって言ったんだから……俺だって前を向いて生きていくって決めたんだ」

 

 そんな前を向いた俺なりの考えを伝えよう。都合のいい想像でしかないけど、それでも可能性はゼロじゃない答えを。

 

「そんな前を向いた俺の考えはよ、こう思うんだ……」

 

 確かに、プレシアの心は変わらなかったかもしれない。彼女は最後までフェイトちゃんを娘としては否定した。けど、最後のあの言葉……フェイトちゃんをお願いと言ったあの言葉にはきっと複雑な感情が混ざってた筈だ。

 フェイトちゃんは娘としては認めない。そもそも、どうでもいい人形と断じたプレシアから出る言葉ではない筈だ。だが、自身の娘はアリシアだけ……その考えは変わらなかった。けど、変わったものもあったんだと思う。

 フェイトちゃんは娘じゃない、けどどうでもいい人形では無くなったんだ。少なくとも、最後のあの瞬間これからのフェイトちゃんの未来を心配してああ言ってしまうほどの情が沸いたんだ。ただのアリシアの代わりの人形からフェイト・テスタロッサという1人の女の子のこれからの未来を思っての言葉だったんじゃないかって思う事にした。都合のいい、俺にとって都合の良い答えだけど。

 

「俺は、そう思う事にしたよ……フェイトちゃんにとっては複雑かもしれないけど」

「ううん、そんな事ない。母さんがそう思って贈ってくれた言葉なら……私も嬉しい」

 

 もしそうなら、きっとフェイトちゃんの愛情と決意が動かした結果だと思う。俺はきっかけを与えただけ、フェイトちゃんの頑張りの成果だ。

 

「だったら、私も慎司みたいにしないとね」

「俺みたいに?」

「……前を向いて、これからの私の人生を歩んでいくよ。慎司やなのはみたいに……前を向いて、胸を張って」

「そうか」

 

 フェイトちゃんの口からこの言葉が聞けただけでも、俺は報われたような気持ちになる。頑張ってよかった。痛みに耐えてプレシアに言葉を紡いてよかった。

 

「本当はね、慎司に会ったらいっぱい話そうって思って色々考えてたんだけど……うまく話せなくて」

「ははっ、俺も最初はそうだったな」

「テロリスト呼ばわりされたのは衝撃だったよ」

 

 そしてその後のクリスマス云々の嘘話を信じたことも衝撃だったよ俺には。フェイトちゃんに改めて聞かれるまでネタバレしないでおこう。絶対面白い。

 

「……慎司と知り合ってからちょっとしか経ってないけど一杯慎司に助けられちゃったね」

「そう思うなら、これからも元気でいてくれよ。それが俺にとって一番嬉しいお礼になるからさ」

「うん、勿論」

 

 潮風に髪をなびかせて真っ直ぐにこっちを見つめるフェイトちゃん。あぁ、何度も思ったけど本当に強い子に変わった。公園で見かけた自信なさげなあの顔をしてたフェイトちゃんとはもう違う。

 

「慎司、色々いっぱい言いたいことがあったけどうまく言えそうもないから……一つだけ言わせて欲しい」

 

 そう言うとフェイトちゃんは太陽に照らされた輝くような微笑みを添えて

 

「ありがとう……慎司。ありがとう……私を救ってくれて」

「……………ああ」

 

 怒涛の日々だった。魔法の存在を知って、なのはちゃんも関わっていて、巻き込まれたような形だったけど関わる事に決めて。短い期間とはいえとても大変で、辛くて、悲しい事も多かったけど。その笑顔とありがとうの言葉を聞くために……俺は頑張っていたのかもしれない。報酬は、十分に貰った。報われたよ、俺は……十分、報われた。

 

「それでね?慎司、お願いがあるんだ」

「お願い?」

「……これから裁判とかそういうのでずっと会えなくなると思う。寂しいけど、仕方ない。それでね?さっきなのはと友達になれたんだ」

 

 そっかそっか、それはいい事だ。

 

「慎司が良ければ………その、裁判とか色々な事が終わってまた慎司と会える日が来たら……友達になって欲しい」

 

 その言葉に少し面食らう。お前、マジか。

 

「ダメかな?」

 

 いや、その……。まず根本的な勘違いを正そう。

 

「………とっくに友達だろ。俺達」

「え?」

「最初に公園で会った時からずっと友達だろ?」

 

 何を言ってるんだ全く。友達なんてそんな感じで出来るもんだろ。まぁ、フェイトちゃんはこれまでプレシアとアルフとしか関わってこなかったからそこら辺仕方ないのかもだけどさ。

 

「友達……だったの?」

「少なくとも俺はそう思ってたよ」

 

 あまり表情に出さないようにしているが結構あたふたしているのが分かった。結構勇気を出して友達になって欲しいと言ったのだろうか。その勇気をいやいや、既に友達だろ?なんて返されたらそりゃびっくりだわな。

 

「ははっ……まぁ、これからその辺の事も学んでけばいいだろ?友達とか、そういうのをさ」

「うん、そうするよ」

 

 フェイトちゃんの本当の人生はまだ始まったばかりだ。これから沢山の事を知って、沢山の事を体験するだろう。悲しみや苦しみに襲われる日もあるだろう。けど、喜びや楽しさを感じられる日もある筈だ。そうやって、幸せに生きて欲しい。その幸せな人生を俺も一緒に支えてあげたい。そうやって、一緒に生きていきたい。

 

『……フェイトをお願い』

 

 ああ、任せてくれプレシア。あんたのその情に免じて、あんたのこれまでの行いには目をつむって、あんたの本当の優しい母親としての姿を信じて……貴方のそのささやかな望みを叶えるよ。

 いつまで一緒にいられるか、いつの日か別れの日がくるかもしれない。人生っていうのは何が起こるか分からない。けど、せめて一緒にいられる間はフェイトちゃんの事を支え続けるよ。だから、どうか……安らかに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時間だ」

 

 その後はなのはちゃんも交えて少しばかり談笑していたがクロノのその一言で現実に引き戻される。重い空気が流れるが仕方のない事だ。仕方のない事だけど、俺にはまだフェイトちゃんとの約束を果たしていない。

 

「なぁクロノ、少しでいいんだ………どうにか出来ないかな?」

「し、慎司……」

 

 フェイトちゃんが大丈夫だからと口を開きかけるのを制してクロノを真っ直ぐに見る。

 

「僕もそうしてあげたいがこの面会も特別な処置なんだ。これ以上は……」

「頼む、少しでいい。1時間くらい欲しい」

「結構大きい要求だぞそれは」

 

 分かってる。けど、1時間くらいないとちょっと短いんだ。

 

「俺が言うのもなんだけど今回の外部協力者としてに免じてダメかな?本当に1時間有ればいいんだ。責任なら取るから………俺のパパンが」

「そこは自分って言いなよ」

 

 うるさいぞなのはちゃん。俺にそんな責任能力はねぇんだよ。父さん頼みなんですよ。そうやって頭を下げるとクロノは、はぁ…とため息を交えつつ

 

「分かった……1時間だ。1時間だけ許可しよう」

 

 少々苦笑いしながらもクロノはそう言ってくれた。苦労をかけてすまないとお礼をする、クロノは気にするなと言ってくれたが。

 

「大丈夫なのかい?」

「平気だ、1時間くらいならいくらでも言い訳がきく」

 

 アルフの問いかけにクロノはどうとでもなると言っているが俺は少々申し訳ない気持ちになる。ごめん、わがまま言ってばっかだな俺。この恩はちゃんと返そう。絶対に。が、それは後日だ。今は、せっかくクロノが与えてくれた時間、有効に使おう。

 

「よっしゃ!」

「わわっ!」

「わぁっ!」

 

 フェイトちゃんとなのはちゃんの手を取って引っ張るように走り出す。目指すはすぐそこにある公園。臨海公園は広くて遊ぶには申し分ない場所だ。ここでなら、短い時間だけど約束を果たすなら絶好の場所だ。

 

「遊ぶぞ皆んな!残り1時間休みなしでノンストップだ!」

「あ……うん!そうだね慎司君!遊ぼう!」

 

 すぐになのはちゃんは体勢を整えて俺と並走する。俺のノリにすぐ合わせられる所は付き合いの長いだけある。フェイトちゃんはまだ状況が飲み込めず戸惑うばかり。

 

「し、慎司?」

「言ったろフェイトちゃん!今度会った時はもっと話してもっといっぱい遊ぼうってよ!今度は沢山遊ぶ番だ、死ぬほど地球の遊びってやつ教えてやるよ!!」

「っ……うん!」

 

 嬉しそうに頷くフェイトちゃんも一緒になって走る。

 

「おーい!アルフ、クロノ、ユーノ!何ボッーとしてんだよ、お前らも来いよー!」

 

 全員で遊ぶんだよ!人数多い方がたのしいだろうが。

 

「お前らにも地球式に面白い遊びをしっかり教え込んでやるよ!」

 

 そう言うと3人は互いに見あってやれやれとしながらもこちらに走って向かってくる。1時間という短い時間だったけど俺たちははしゃぎにはしゃいで遊んだ。フェイトちゃんの楽しそうな笑顔を脳裏に焼き付けて、アルフの幸せそうな表情を焼き付けて、クロノの何だかんだ楽しんでくれてる笑顔も焼き付けて………それなりに長い間会えなくなるけど……それでも俺たちは笑顔を添えて別れを済ませた。あの笑顔を、脳裏に焼き付け……強くて尊い眼差しに変わった気高く優しい子。彼女のこれからの人生に……どうか幸あれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 別れを済ませた後、臨海公園には俺となのはちゃんとユーノだけが残された。何となく帰るのは寂しくて3人で海沿いの塀に座って海を眺めていた。太陽に照らされた海は輝きを放ちフェイトちゃん達の新たな旅路を祝福してるようにも感じた。

 

「行っちまったな……」

「うん……」

「それ、似合ってんぜ」

「えへへ、ありがと」

 

 別れ際、フェイトちゃんとなのはちゃんは自身が使っていたリボンをそれぞれ交換した。なのはちゃんはフェイトちゃんの黒いリボンをいつものツインテールの髪型で結んで使っている。普段使っている桃色のリボンとはかけ離れた色だけど意外と似合ってる。

 

「……………」

 

 静かに海を眺めてると何だかセンチメンタルな気分になってくる。そんな気分で色々考えてしまう。今回の事件の事、フェイトちゃん達の事、魔法の事。色々頭によぎって色々考えて俺は一つある事を思いついた。

 

「決めた……っ」

「え?何が?」

 

 俺は立ち上がって大きく息を吸い込んで海に向かって叫ぶ。

 

「救うぞ!今度こそ俺は救ってみせる!!」

 

 これからの人生、まだまだ俺を沢山の荒波が襲うだろう。苦痛や悲しみが襲いかかるだろう。今回のように手を差し伸ばしたけど助けれなかった命があったように。だから、下を向かず……前に進み続けるために誓おう。俺は、誓おう。

 

「これから起こる全ての出来事は、全部完全無欠のハッピーエンド!!そうしてみせる!それを掴んでみせる!!俺は……それができる男になってみせる!!」

 

 小さなことでも、今回の事のように大きな出来事でも俺が目指すのは完全無欠、ご都合主義上等のハッピーエンドだ。それ以外は目指さない、それ以外認めない。それを掴む事の出来る強い男になる。それをここで今誓う。

 

「俺は!荒瀬慎司は……もっともっと強くなる!頼れる男になるぞおおおおおおおお!!!」

 

 叫ぶ、在らん限りに感情をぶつけるように叫ぶ。それは悔しさもあったろう。けど、それ以上に俺は決意の感情を込めて叫んでいた。

 

「なのはも!なのはももっと強くなるよ!!」

 

 なのはちゃんも俺の隣に立って叫ぶ。一緒になって大声で叫んだ。

 

「慎司君と一緒にもっと頑張って強くなる!!」

「ああ、一緒だ。これからも一緒に頑張ろうぜ!!」

 

 子供2人、内1人は大人だが。そんな2人は周りを気にせず叫んで叫んで叫び続けた。フェレット姿のユーノはそんな様子を微笑ましげに見守っている。

 ハッピーエンドとはいかなかった今回の事件。だからこそ、同じような事が起きたのなら今度こそ俺は救うよ。ハッピーエンドを目指して救うよ。この誓いを胸に抱いて。

 俺達は忘れない、今回の事件も、フェイトちゃんの涙と笑顔も。プレシアの絶望と優しさも。俺達は忘れることはないだろう。それを抱えて、前を向いて……今日も明日に向かって進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 無印編本編はここでひとまず終了であります。次回A's編に入る前に蛇足(日常編)を数話挟みます。ひとまずはここまでお付き合いいただきありがとうございました!これからも閲覧等よろしくお願いします!

 これまで閲覧、評価や感想、誤字報告など皆様の応援に感謝を込めて。
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