まにわにヒーローアカデミア 作:塩谷あれる
「さて、残された時間はそう多くはありやせん。有意義に使っていきやしょうか、緑谷さん」
そう言って目の前の彼──真庭君は僕、緑谷出久に向き直った。
「お互いの個性の確認、手持ちの武器や使える戦術の確認、と。そこまではお互い済ませやしたね。建物の見取り図。こちらは、お互いしっかり覚えていきやしょう。相手方との戦闘で紛失しないとも限りやせん。ですからあとは──
「敵……」
敵。あのかっちゃんが、敵。ど、どうしよう、緊張で、汗が。震えが。
「大丈夫ですかい?緑谷さん」
僕の異常を察したのか、真庭君が僕の方を見る。とは言っても、低い身長からか、下から覗き込む形になったけど。
「う、うん。だ、だ大丈夫、だよ?」
「大丈夫じゃねぇですねぇ……やはり、爆豪さんとはなにか、ただならぬ因縁がおありのご様子で」
はは、と笑みを浮かべる真庭君。因縁って、まぁ、うん。ただの知り合いって訳でもない。確かに僕とかっちゃんには、たしかに因縁めいたものがあるのかもしれない、のかなぁ?
「何が何やら、震えも止まったようでございやすね。俺の戯言、何やら効能がありやしたんならそれ幸い。さて、戦術の話をしやしょうか、緑谷さん」
真庭君の言葉で、思考が戻される。
「何にしたって前準備と対策が命。しかし
俺は頂点に立てる男だ。そこらのモブや雑魚程度なんざ、簡単に捻り潰して、今までだってトップに立ってきた。それなのに
「あのクソナードが…!」
あのなにもできねぇ“無個性”の筈のデクが、やるに事欠いてこの俺をずっと騙してきたってことに腹が立つ。それだけじゃねぇ。俺にとって、腹が立つ原因は、あのクソチビの存在もある。
『いやぁ、どうもすいやせん』
『話くらいちゃんと聞いた方が良いと思いやすがねぇ…あ、いーえいえ、喧嘩売ってるだなんてそんなのあるわけないでございやすよ』
へらへらへらへらしやがって、あの、バカにするようなにやけ顔と喋りが腹立つ。それだけじゃない。あのときの、あの発言、
『──えぇ。そのいつかが、なるだけ早くなること、期待していやすよ』
まるで自分が格上であることを、俺なんざ気にも止めちゃいねぇといわんばかりのあの言葉、あの表情。ただひたすらに腹が立つ。
だが、それだけに今日俺はツイてる。
「デクも……クソチビも……」
イラついてる相手を二人まとめて相手できる。いや、俺にとっちゃあ、相手する、なんてのも違ェよな。
「揃えて潰してやる……!」
完膚なきまでにあの二人を、全力の上から叩き潰し、俺の方が上だということを証明する。さぁ、見つけたぞ、デク。クソチビの方がどこにいるかは知らねぇが、必ず両方見つけ出して、
──ぶっ潰してやるよ。
『──一階西フロア付近でかっちゃんと遭遇!っっ飯田君の姿無し!オーバー!!』
「了解、今から潜入する、オーバー」
お、緑谷さんの伝達が入りやしたねぇ。っとと、こんな状況ではございやすが、どうも、真庭猩々でございやす。一度は行ってみたい場所は甲斐の旧真庭の里。なんてったって俺たち真庭の忍の総本山でございやすからね。壊滅からもう何百年経ってやすもんで望み薄ですが、狂犬さんが原理を説明できなかった忍法に関する古文書やら秘伝書があれば、俺の術のレパートリーも増えやすし。
さて、俺の方も仕事をするといたしやしょう。
「核のある部屋はー、と」
とりあえず見てみたところ2~4階の部屋にはありやせんでしたね。となるとあるのは五階、または一階となりやす。ふんふむ、なかなか予想通りの展開になってきやした。え?お前今どこにいるんだよって?えーと、今俺がいるのは建物の屋上です。忍法爪合わせって言いやして、真庭蟷螂さんの使ってらした忍法を応用して、壁を伝ってここに至りやす。
え?そんなことしていいのかって?いいでしょうよ、だって屋上から侵入しちゃダメとかいうルールありやせんし。どこから潜入しようが核奪取できればそれでOKでございやすからね。て言うか、最初から思ってやしたけど、この訓練ルールがザル過ぎるんですよね。“縛り”が少なすぎると言うか。ヒーロー側もヴィラン側も。
「さて、動きやしょうかね」
五階をしらみ潰しに探していきやしょう。飯田さんの性格を鑑みて、恐らく核のある部屋で核を守っている筈。緑谷さんの報告から考えれば、爆豪さんが独断専行しでかしたんでしょうし、爆豪さんも一々対敵報告をいれるタイプには見えやせん。というわけで、恐らく飯田さんは一人。その隙を頂くといたしやす。
「忍法・爪合わせ、応用編」
爪を使って俺が入れるサイズの穴を窓に空け、潜入。さーて、例の台詞、いきやすかね。
「真庭忍軍獣組候補生、真庭猩々。さぁ──」
──大手を振って、まかり通っていきやしょう。
「爆豪君!?……状況は!?どうなっているか教えたまえ!……切れた!マジか全く!」
最悪だ、とでも言うべきだろうか。僕、飯田天哉と爆豪君は予想を超えて相性が悪い。とは言え、兄の名を汚さぬため、兄のようなヒーローになるため、泣き言は言っていられない。恐らく爆豪君はヒーローチームと対敵したのだろうが、予想外の事態が起きないとも限らない。いつでも対処できるようにしなくては。そう、今僕はヴィラン、ヴィランなのだから。より極悪に、より狡賢く、ヒーローを追い詰める……!
「俺はぁ…至極悪いぞぉおお……!」
よし、中々自分でも上手くヴィランを演じられているんじゃないか!?よし、ヴィランの思考を汲み取ることができたかもしれない。この調子で何があっても対策できるようヴィランらしい思考で──と思った時、
「いやはや。水と油の相性だとは思ってやしたが、そこまで酷いとは。嬉しい誤算でございやすね」
僕の後ろから、声がした。この、声は──!
「真庭君!?」
ありえない。今、ヒーローチームは爆豪君と戦闘中の筈──
「あー、こちら真庭。飯田さんとターゲット発見。五階中央エリア。これより対処を行いやす。“時間稼ぎ”を要求、オーバー」
時間稼ぎ、その言葉を聞いて僕は、ようやく彼のしでかしたことに気づいた。
「まさか、君達は──!」
「ん?えぇ、はい。俺は上から、緑谷さんは下から。挟み撃ちの形になる──中々良い案でございやしょう?」
ヒーローチームの作戦は、恐らくこうだ。真庭君はどういう手法を使ったのかは知らないが、
チームのメンバーは、二人で一緒に行動していなければいけないルールはない。別行動で、文字通りの挟み撃ちにしたって問題はない!この授業に、“過度に危険な行為は禁止”以外の禁即事項はないからこその、ルールの裏をついた作戦!──だが!
「そんなことで、俺が屈すると思っているのかヒーロー!」
その作戦は、僕達が負ける理由にはなりはしない!
「いいえ。思っていやせんよ」
そう言って真庭君は、思いっきり息を吸い込んだ。
「真庭忍法……」
パンパンになった真庭君の腹。そして次の瞬間──
「柔球砲っ!」
その口から、卓球のピンポン玉サイズの弾が吐き出された。それこそ、大砲のごとき素早さで。
「くっ…だが、避けられない速さじゃない!」
僕の最大速度(三足)よりは遅いくらいだ。この程度のスピードなら切り抜けられる。今度はこちらから攻撃を──と思ったら
「な……!?」
「ナイスバン、でやすね」
そのまま僕の体に捕縛テープを巻き付ける真庭君。くそ、何があったんだ……!?僕は一体何をされた!?そんな風に思っているうちに、真庭君の手が、核に触れる。
『ヒーローチーム、WIIIIIIIIN!!!!!』
僕たちの敗北を、そして、彼らの勝利を告げるオールマイトのコールが鳴り響いた。
個人的な爆豪のイメージ…才能から来るプライドやら全能感やら他者軽蔑やらのごった煮or何でか知らないけどやたら貴重な高値の取扱い注意物をまとめて放り込んじゃった爆薬庫。
だからなのか、うちでは爆豪がやたら(個人的には)ヘイトガン溜めのムーブメント起こします。『いやそうじゃねぇだろ!』という方、今更ながら、ご注意とご指摘のほどよろしくお願い致します。他にも、いろんなところで『いやそれはちゃうやろ』、みたいなムーブメントするキャラが出てしまうかもしれませんが、どうか暖かい目で見てやってください。あと、是非ご指摘のほどよろしくお願いします。
忍法録・その②
真庭忍法・柔球砲
使用者:真庭猩々
分類:中近距離攻撃型
射程距離:最大10メートル前後
捕捉人数:1~5人程度
蝙蝠の手裏剣砲と、人鳥の柔球術を重ね合わせた技。今回は偶然にも背後からの攻撃に使えたが、本来は殺傷能力を大幅に減らした上で柔球の予測不能な跳弾性を利用し、相手の動きを封じる技。
とは言っても、人鳥の『致命的なまでの運の良さ』より生まれる忍法・因果崩しを持たない猩々が使うと、使い勝手は少々悪くなる。今回も猩々は内心は上手くいくかヒヤヒヤしていた節がある。なにが『ナイスバン』だ何が。
加えて手裏剣砲同様やたらと“溜め”が長いのも弱点。飯田は猩々が腹膨らませてる間にお腹ツンツンすれば技キャンできて勝率は上がってた。
数が多いほどフレンドリーファイア()を喰らう可能性が高くなるため、多くても発動に使う柔球の数は最大三つ程度で抑えている。