まにわにヒーローアカデミア   作:塩谷あれる

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お気に入り登録者が400人突破しました!ありがとうございます!わーい!というわけで記念に番外編を書こうと思ってます。
あ、今回後日談的何か、と言うように前話で言いましたが、その前の小休止となりました。ガバガバでごめんなさいね。


けもの(ぐみ)フレンズ(なお一名不在の模様)

「…………………知らねぇ天井、ですね」

 

 そんなお決まりの台詞を吐いて、猩々は目を覚ました。辺りを確認する。白塗りの壁に日当たりの良い窓、仰々しく備え付けられた医療器具の数々。それらは、ここが病院であることを説明するには十分すぎるほどの証拠だった。

 

「あー、えーっと………こりゃ、一体どうなって」

「目、覚ましたみたいだね、猩々ちゃん」

 

 一体どんな経緯で自分がこんなところにいるのやら、えーと確かUSJに行ってヴィラン騒動に巻き込まれて……と状況整理で頭をパンクさせる猩々の頭の上から、聞きなれた声が聞こえた。

 

「狂犬さん……」

「おはよ、猩々ちゃん。その感じだと、もうちゃんと元気そうだね。うんうん。お医者様にお礼言わなくちゃ」

「はぁ……とりあえず、おはようございやす……あー、っと、今、何時です?」

「夕方の四時。猩々ちゃん、丸二日は寝込んでたんだからね?」

「丸二日……はぁ、丸二日ねぇ……ふぅん、へぇ、成る程………………………丸二日ァア!?」

 

 思いもよらぬ事態に、思わず体を飛び起こす猩々。と、共に全身に激痛。

 

「あぁっだだだだだだだだだ!!!!!?」

「わわ、ちょっとちょっとダメだよ猩々ちゃん!せっかく足だって繋がった……というか生やしてもらったばっかでまだ病み上がりも良い処なのに急に起き上がったりしたらダメだって!」

「はぁ、す、すいやせん……って()()()()()()()()?」

 

 耳を疑う発言に狂犬はあっけらかんと頷く。

 

「うん。相当腕の良いお医者様でねー、ほら、見てごらんよ」

 

 狂犬の言葉に促され、恐る恐る自分の下半身に掛かった毛布を剥がすと、そこには、少年期よりたゆまぬ忍術修行で鍛え上げた強靭な彼の左脚が、以前と変わらぬ姿でしっかりと残っていた。

 

「………んな馬鹿な」

 

 何の間違いだ、と言わんばかりに猩々が体を少し起こして左足に触れる。しっかりと感じ取れる人肌の質感。通う血の温かさ、等間隔でリズムを刻む脈。この脚が幻やハッタリの類いでないことが、ありありと証明されていた。

 

「言ったでしょー?腕の良いお医者様だって。まぁ、無くなったものをもう一度生やしたわけだから、数日体慣らしてから退院ってことみたいだけどね」

「はぁ、そうですかい……いやぁ、甚だ信じがたい話ではありやすね……まぁ、こうもはっきり生えちまってんだ、信じるしかねぇや。しかし、そんな大した腕持ったお医者さん、良くもまぁ見つけてこれやしたね」

「まぁつれてくるのは簡単だったんだよね。身内だし」

「え?」

 

 どういう意味だ、と猩々が口を開かんとした時に、病室の扉が勢い良く開かれる。そしてそこから、背が高く四肢の痩せ細った、案山子(かかし)のような男が現れた。

 

「よお、回診のお時間なんで来たぜ坊主。外まで聞こえる声で驚き散らしやがって……きゃは、相変わらず元気なこった」

「………………なァんでてめェがこんなところにいやがるんですかねェ………!?」

 

 へらへらと笑う案山子男に、猩々は肩を震わせ驚きと、ほんの少しの怒気を表す。

 

「そう言うなよ。俺がいなきゃあお前さん、片足になってたんだぜ?ほら、奇跡って奴を喜べよ。いや、坊主風に言うんだったら、運命、かな?」

「うるせぇってんですよバカ()()!てめェには別の仕事をくれてやってた筈でしょうが!任務放棄してんじゃねぇ!」

 

 冗談を言う部下を叱りつける上司かのように怒鳴る猩々に、案山子男はまたもや一つきゃは、と笑って言った。

 

「おいおい坊主、そっちの名前を出してくれるなよ。今の俺には、銅鑼倉(どらくら)侵哉(しんや)っつー名前があんだからよ」

 

 この男こそは真庭忍軍獣組が一人、真庭蝙蝠。またの名を、銅鑼倉侵哉。()()()()フリーランスとして様々な病院を転々としながら治療を行う、外科医兼整体医である。

 


 

 あーったくもう雌羊と言い蝙蝠(コイツ)と言い!なんで獣組連中は独断専行が多いんですかね全く!?あ、どうもお久し振りです猩々です!……とは言え、結果的に俺も脚直してもらって命も救われてるわけですし、とやかく言えるような立場でもありやせんかね。ここは素直に礼を言っておきやしょう。蝙蝠なら確かに、欠損部位の再生なんざお茶の子さいさいでしょうし、納得もしやしたとも。

 

「はぁ……まぁ、助かったのは事実。ありがとうございやすとは言っておきやすよ銅鑼倉先生」

「おう、気にすんなよ坊主。つか礼言うんだったら狂犬の姐さんにしとけ。坊主がぶっ倒れたって聞いて、いの一番の大慌てで駆けつけて俺をこっちに引っ張り出してきたのァ姐さんだからよ」

「狂犬さんが?」

 

 そう言えば、さっきも連れてきたって言ってやしたっけね。また狂犬さんには迷惑かけちまいやした。

 

「すいやせん、ありがとうございやす狂犬さん」

「良いの良いの。猩々ちゃんは新時代の真庭忍軍を背負って立つことになる次期頭領だからね!猩々ちゃんの為にだったら、私はどんな手口だって使うよ!あ、蝙蝠ちゃんも、すぐ駆けつけてきてくれてありがとね!」

 

 うーむ、USJで一瞬死ぬつもりだった手前罪悪感が迸りやすね。この純粋無垢に信頼してくれてる笑顔、俺はどうにも弱いのでございやす。

 

「気になさんな、これくらいならお安いご用さ姐さん。……と、あー………坊主?ちぃっと耳貸せ」

 

 ん?なんか蝙蝠が手招きしてやすね。

 

今あんな感じで平然としてっから信じられねぇとは思うが、姐さんはマジでヤベェ手口使うつもりだったぞ。時ノ宮やら例の闇医者やら、挙げ句の果ては四神一鏡に協力仰ごうとしてたから俺が止めといたが、明らかに前よりお前さんに対する過保護っぷりは増してきてる。気ぃつけとけよ

 

 何やってんですか狂犬さん!?四神一鏡はともかく時ノ宮は絶対ダメっていうか闇医者……ってぇことはあのクソ狐じゃねぇですかバカなの!?恩売る相手を間違えちゃダメでしょ!………俺が眠ってる間に、あの人そんな暴挙冒すレベルでパニックになってたんですかい……蝙蝠、お疲れさんでございやす。任務を推してまで来てくれたみたいですし、今回の一件も不問にして上げた方が良さそうでございやすね。これ以上何か言っても死体蹴りになりかねやせんし。

 

「もー、なに話してんの?」

「あー!何でもねぇ何でもねぇぞ!あそうそう坊主!言おうと思ってたんだが、お前さん、退化論と断罪円、やるに事欠いて両方連発で使いやがったろ?あれで大分体が悲鳴あげてたからよ、取り敢えず大事をとって一週間!リハビリして筋肉正常に整えてからの退院ってことになったぞ」

 

 あ、今話しそらしやしたね。しかも医者として言わなきゃいけない案件をついでに伝えるとは、ずいぶん腕を上げたようで。

 

「一週間ですかい、長いですねぇ……」

「自業自得だろ。断罪円ならいざ知らず、退化論まで引っ張ってくるたぁ、随分本気で仕留めにかかってたみてぇだな」

「二人取り逃しちまいやしたがね……あそこで俺ァ気絶し(オチ)てやすし、個性ももう戻ってる筈……」

 

 超能力と呼ばれる類いの力は、一貫して持ち主の精神や意識に直結するもんなんだそうでございやす。俺の退化論も、同調(シンパシー)と呼ばれる超能力がその発動に一役買ってやして、同じように俺の精神状況や意識が諸に影響する、つまり、俺が寝てる状況下じゃあ丸っきり発動されねぇもんなんです。

 まぁ寝てる時でも常に神経張り巡らしてりゃ、解除させてねぇこともできなかねぇんですが、あん時ゃ俺は疲れまくっててそこまで頭回す余裕もなかったもんで、完全に忍法は解けてる筈でございやすね。奴さんの個性、中々に厄介だった筈ですし、クソ、まだまだ修行が足りねえってことですねぇ……猛省でございやす。

 と、そんなことを考えていると、狂犬さんがこちらを覗き込むように見てきやした。

 

「んー、なんか悔やんでるみたいだけどね、猩々ちゃん。猩々ちゃん変に急ぎすぎだと思うよ?」

「急ぎすぎ……ですかい?」

 

 意外でございやすね。狂犬さんがそんなことを言うとは思ってやせんでしたよ。もっと早く技術を身に付けろって側かとばっかり。

 

「そりゃ私は勿論猩々ちゃんに早く一人前になってほしいよ?成人前にそうなれば私としては最高の形。真庭忍軍を建て直すにあたって、猩々ちゃんには遅かれ早かれ、皆を纏め上げる『頭領』になってもらわなきゃ困るもんね」

 

 鳳凰ちゃんみたいな、さ。と、狂犬さんは、昔を懐かしむような、そして、未来に期待するような目をして俺の方を見やした。

 

「でもね。そのために猩々ちゃんに身も心も使い潰して貰うつもりもないし、他の事を何も考える余裕も与えないなんて狭量なこと言うつもりだって更々ないよ。

君に頭領になってほしいのは私の我儘で、それを猩々ちゃんが飲んでくれてるからってだけの話。そこに行き着くまでの猩々ちゃんの人生に文句をつけるつもりなんて一切ないし、なんならその過程も、頭領になったあとの人生も、猩々ちゃんにはとびきり楽しんでほしいと思ってる」

 

 子供に言い聞かせるようにそう俺に言う狂犬さんの表情はとても柔らかく、暖かく、俺があのクソ共から貰ったことがないような、優しい優しい感情(それ)でした。

 

「猩々ちゃんが、普段面倒臭がってるくせして頭領になるためにとっても努力してるのは、私だって蝙蝠ちゃんだって雌羊ちゃんだって、それに、虫組や鳥組や魚組の皆だってちゃーんと知ってるよ。ね?」

「あぁ。勿論だぜ」

「だから休める時くらいはゆっくり、何も考えずに休んで!あれこれ考えるのはその後だよ。休む時は休む!それが一番良いんだよ」

 

 そう言って狂犬さんは、俺の頭をふわ、と撫でやした。僅かな重みと確かな温かさが、俺の頭に乗っかってきたのです。

 

「あんまりきつく考えなくても良いんだよ?いつもいってるじゃん。猩々ちゃんは私にとって、大事な我が子。っても可愛く、底抜けに愛しい──大切な家族だってさ」

 

 染み渡るように、暖かさが心を包んでいく。目が自然と涙を流していく。家族の暖かさ、愛される幸せ。それを、改めて認識できたような、そんな気がしやした。

 


 

「きゃはは、泣いちまうなんてまだまだ子供だな坊主」

「……お恥ずかしいところをお見せいたしやした」

「良いよ良いよ!久々に可愛い猩々ちゃんが見れて狂犬ちゃんは寧ろ満足です!」

 

 ぐぐぅ……やっぱりこの二人にはいろんな意味で頭が上がりやせんね……年上の余裕と言うのかなんなのか……あ、年上で思い出した。

 

「そう言えば思い出したんですが、雌羊のアホ忍名の方でエンジニア免許の登録してたみたいなんですけど、お二人なんか聞いてやしたか?」

「「なにそれ俺(私)聞いてない(んだが/んだけど)」」

 

 この瞬間、アホ一名を除く獣組メンバー全員の心が、『羊シバく』という目的の元一つになったのは、まぁ言うまでもないことでございやす。




真庭獣組
・真庭狂犬(猩々就任までの代理指揮官、隠居済)
・真庭猩々
・真庭蝙蝠/銅鑼倉侵哉
・真庭雌羊/????(戸籍名はあるがエンジニア免許取得の時に事実上捨てている)

ちゃんとした後日談は次話に持ってきます。番外編とどっちが早いかな…?
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