まにわにヒーローアカデミア 作:塩谷あれる
ネタ詰まり、定期テスト、その他諸々の事情が重なりに重なりかなり間の空いた更新になってしまいました。すんまそん。
これからは頻度をあげていけたらなー、と思っていますので、気長にお待ちくださいな。
あと、今回時系列飛び飛びになっちゃってますがご了承ください。個人的な流れの都合です。
「──以上が死柄木、黒霧両名に関する情報です。決して多いとは言えませんが……」
「少ないどころか、
「早くしねぇとマズいぞ、死柄木の怪我が治ったら面倒だ」
猩々が目を覚ました当日の事。雄英高校の会議室では、職員と警察関係者によって、今回の襲撃事件についての話し合いが行われていた。各員の手元にあるのは襲撃犯達の情報。しかし、その中でも主犯格である筈の二人の情報は、二人まとめて一枚に収まる程しかなかった。
「加えて、何故か山岳ゾーンで首だけだして埋められていた男ですが、こちらも戸籍等の情報がありません。ただ金で雇われた、と供述しており、彼から情報を得ることは可能とみられます」
「糸口はあるか……だが、ヴィランの言うことだ、100%信頼できるとは限らないな。上手く主犯達の居場所や目的を割り出せれば良いが」
数少ない情報を頼りに会議を進めていくヒーロー達。その中で、スナイプがそう言えば、と話を切り出した。
「真庭はどうする?言っちまうと野暮だが、アイツには、脳無を殺しちまったってぇ前科がついちまってるだろ?」
スナイプの言葉にその場の全員が押し黙る。ヒーローにとって殺しはご法度。それを高校生の立場でありながら経験している猩々についての処分は、現状先送りの状態となっていたのだ。
「……個人的な意見を言うならば、私としては免責としてやりたい」
「オールマイト!」
オールマイトがそのギラついた両目を見開きながら言った。
「確かに、ヒーローにとって殺しは御法度。それは事実。しかし彼があの状況下で、友人を救わんとするために戦ったこともまた事実!片脚を失い、全身に傷を負いながらも!皆を守らんとした彼をヒーロー足り得んとするべきではないでしょう!」
それは、監視カメラに残っていた映像を見、そして、USJに駆けつけた時にオールマイトが目にした、猩々の痛ましい怪我の数々を目の当たりにした上での言葉だった。
「誰かのため、まだ高校生でありながらも身を呈した彼を、私はヒーローになれないと断じたくない!」
オールマイトの言葉に、教員達も首肯する。しかし殺人と言うタブーを犯してしまった以上、なんらかの処分そのものは必要だろうと言うことで、猩々には、一週間の謹慎処分が与えられ、猩々に関する処分の話は幕を閉じた。
しかし最終的に、その謹慎期間は猩々の入院期間とダダ被りとなり、実質謹慎そのものがなかったようなものとなってしまったため、教員達が苦笑いを浮かべたのだが、それはまた、この先の話とは何ら関係のないことである。
「しかし一週間か……長いですねぇ」
リハビリを兼ねた入院生活で、すっかり暇をもて余していた俺は、虫組の皆(何やら俺が眠っている間に総出で押し掛けてきてくれたとのこと。一般人への迷惑を考えてほしいところではありやすが、同時に嬉しい限りでございやす)が見舞いの品として置いていってくれたらしい果物類を頬張りつつ、そんなことを呟いておりやした。と、そんな時、
「電話……?」
棚の上の携帯から着信音が。誰からでございやしょう。
『お怪我をなさったとのことで、お見舞いのお電話を差し上げに参りましたよ』
「お掛けになった電話番号は、現在使われておりやせん。番号をお確かめになった上で二度とかけてこないで下さい」
はい即座に切って着拒。あの野郎また番号変えて私用にかけてきやがりやした。一体いくつ携帯持ってやがんですか。どうせこっちで受けても嫌味しか言いやせんし、着拒が妥当です。
ふぅ、と一息ついたところでまた着信音。今度は
『酷いではありませんか、ただ私は貴方様に労いの言葉を、と……』
「馬鹿にしに来たの間違いでしょう。いい加減にしねぇとそのお綺麗な面削ぎやすよ。幸いてめぇなら
『おやおやそれは恐ろしい……ですが、馬鹿にされる理由はご自身でわかっておられるのでは?』
「事実でございやすからね……奇野の後で体力が削られて、気が緩んでたのは否めやせん。言い訳ですが」
奇野連中の病毒は、俺達真庭には確かに通用致しやせん。しかしこと体力においては別の話。中和にも少なからず体力は持ってかれやすし、正直あの状況下で断罪円と退化論を連発できたってのは、奇跡に近いレベルで体力は削られておりやした。どちらも本来なら、フルマラソン走るくらいの体力を持っていっちまいやすからね。……まぁ、あれで体力が持ってかれてなけりゃ、なんて言うつもりもございやせんが。
「次はしくじりゃしやせんよ……ありゃあ、世に放しといて良いもんじゃねぇ……そんな気がしやす」
『忍の勘という奴ですか、成る程……所で、脚の方を怪我なさったとお聞きしていますよ』
「耳が早ぇですねぇ…ま、完治はしてますよ。腕の良い医者がいてくれたもんで」
蝙蝠の忍法は、代々その名を受け継ぐ者が会得する忍法、骨肉細工でございやす。えぇ、俺も体得済みのあれですね。ですが俺とあいつでは、少々その使い方が異なりやす。
蝙蝠は骨肉細工の、『自身の肉体を変質させる』という特性に着目し、自分の持つ個性と併用することでその術範囲の拡大を目論んだ訳でございやす。個性の名は『侵食』。触れた生物の肉体を自身と一時的に同化させることが出来るという代物でございやす。ここまで言やぁ、もうお気づきでしょう。とどのつまり蝙蝠は、他者の肉体と自身の肉体を同化させることで、骨肉細工を他者にも発動できるようになった、ってぇ訳でございやす。俺の脚を直したのもそこからでございやすね。
「ま、あと幾日かリハビリして復帰って形になると思いやすよ」
『そうですか、それはそれは。お互い幸いでしたねぇ』
……んー?お互い?
『おやお覚えでない?それは困りますねぇ……依頼のお話でございますよ、い・ら・い・の♡』
………………………………あ。
ちょっ、ま、おぉお!?そう言やこの前受注しちまってたじゃねぇですか!?え、えーっと?完遂期日は──って
『おや~?もしかして猩々様、完遂なされないなんてことはありませんよね~ぇ?』
あ゛あ゛あ゛あ゛悪魔の催促ゥ!無理なのわかって聞いてやがりますねこの外道!!い、いやここはクールに、クーゥルにィ!あくまで平成を取り繕う流れで!
「な、なんのことでございやしょう?まさかこの俺が、依頼を達成できない何てことあるわけありやせんとも!えぇ!やってやろうじゃねぇですかこの野郎!!!」
『その言葉を待っておりましたよ!成功の報告をお待ちしております、ご自愛くださいね~!』
と、人をあからさまに馬鹿にしたような声が電話口から響いたその後、通話は終了されやした。
……………………はァ、これ本気で俺、墓穴掘ったんと違いやすかねぇ?違いやせんよね知ってやすよえぇ……
時は変わり所も変わり、猩々が目を覚ました時より2日前。USJ襲撃事件終幕から数分、黒い液体に呑まれた死柄木と黒霧は、大量の配線と医療機器が所狭しと陳列されたある場所にいた。
「が……ッ!!げほ、ゴホ……あ゛あぁあ!!!クソ、クソ、クソがァアッ!!聞いてねぇぞ
「やぁ弔。いきなり済まなかったね」
自身を呑み込んだ泥を、喉の奥から掻き出すようにむせ混む死柄木。そしてその目の前には、シルエットだけを見れば、奇妙奇っ怪とさえ言えるほどの量の医療機器に繋がれた男が一人座っていた。死柄木に『先生』と呼ばれた男は、彼の剣幕を物ともせず、まず急に転移させたことだけを詫びた。
「なんなんだよあのチート……!アンタの寄越した情報には、まるで乗ってなかっただろうが!!」
「……チート、か。脳無越しに見させてもらっていたが、確かにあれは予想外だったね。脳無の体重を投げ飛ばせるパワー、あのスピード、技術。間違いなく今年の雄英入学者の中でも頭一つ飛び出た存在だろう」
「脳無に止めを刺されてしまったのも痛いのう……『先生』、あれはこっちに連れ帰ってきておらんのじゃろう?」
「あぁ。まさかの事態だったからね、全員は連れて帰れなかった。脳無も、奇野師団から金で雇った彼も」
手痛い出費だっただけに残念だよ。と付け加える『先生』。しかしその表情に、残念さは感じ取れなかった。便宜上『残念』と言っているだけだろう。
「件の彼に関しては、済まないね。私も知る由がなかった。あれだけの技術……情報がない方がおかしいくらいだが……うん、どうやらかなり上手く隠しているらしい」
「クソッ!これじゃあ今回の襲撃はまるで無駄になったじゃねぇか!オールマイトは来ねぇ、意味不明なチートは現れる!最悪だ……クソゲー過ぎる……!!」
『先生』の言葉に死柄木は首筋を爪でガリガリと掻きながらブツブツと悪態をつく。しかし、それを『先生』が止める。
「それはどうかな?」
「……はぁ?」
「無駄になった、と言うことだよ。今回の襲撃は、本当に無駄だったかな?」
『先生』は、あたかも本当の教師であるかのように、死柄木に言い聞かせるように聞く。その言い方になのか、わかりきったことを聞いてくる『先生』に嫌気が刺したからなのか、死柄木は顔を腹立たしげに歪める。
「当たり前だろ。今回の目的は何も果たせてやしなかったんだからよ」
「そうとは限らないよ。今回の一件で、少なくとも一人、次は戦力を注いで叩き潰さなきゃいけない良い相手はわかっただろ?
それにだ弔。君がそこまで執念と怒りを燃やせる相手がひとつ増えたというのは、目的を増やす意味では成功だったと言える。雄英の生徒や教師達の大体の戦闘力、個性、もろもろの対策法も、やられた他のヴィラン達から推察できる。
「……んなの結果論じゃねぇか」
「勿論さ。だがその結果には過程が伴う。例え目的の達成と言う意味では失敗だったとしても、そこに行き着くまでに至った一つ一つの過程の全てが、失敗の産物として切り捨てられるものじゃないんだ。
失敗を糧に、経験を次に活かせ!悔やんでばかりでも仕方がないだろう?生憎と、私とドクターはまだ動けない──だからこそ、君に託せる全てを工面しよう。強力な精鋭を集め、綿密な作戦を立て、君という悪の“
民衆を統率する独裁者のように語る『先生』の言葉が彼の心のどこかに突き刺さったのか、悪態をつき、床にうずくまっていた死柄木はゆらりと立ち上がり、コクリ、と一つ頷いた。その眼に宿るは暗澹とした憎悪と、どす黒い殺意。そして、その中に光る確固たる意思のような何かだった。
「よし。言うべきことも言った、治療も済んだね。ならばいつもの拠点に送ろう。また息苦しくなるかもしれないが、我慢してくれ。──あぁ、いや、黒霧。君の個性はもう使えるかな?」
「あ、いえ………はい。言われてみれば、いつの間にか」
「ふむ。と言うことは、彼の“個性”は距離か、時間経過で効果が切れるのかな?まだまだ調べの余地がありそうだね」
そんなことを言いながら、涼やかに笑う『先生』に見送られながら、死柄木と黒霧は、医療器具にまみれたこの場所から消えていった。
悪意は再び整った。死柄木という悪の芽は、猩々の頸に狙いを定め、次こそはと彼の命を狙うだろう。今このときから、この物語は一つ前へと歩き出し、またこの物語とは全く異なる
二つの物語が交錯し、この世界の全てと、この全ての世界を揺るがすとある大戦が巻き起こる日は、そう遠くはない。