まにわにヒーローアカデミア 作:塩谷あれる
清々しい朝。目を背けたくなるほど眩しく暖かい日の光。いやぁ、なんって心地よい朝でございやしょうかね。
──まぁ、本当に目を背けたいのは現実なんでございやすけれどもね。あ、どうもおはようございやす、猩々です。いやはやなんともお久し振りで。……ん?お久し振り?俺ァ一体何を。
「よう坊主、リハビリも滞りなく順調、今日でめでたく退院なわけだが……わかってっとァ思うが、いきなり無理に運動なんざすんじゃねぇぞ?──つっても、真庭の次期御大将殿にゃあ釈迦に説法だろうがよ」
すいやせん、本っっっ当にすいやせん蝙蝠。釈迦に説法どころか馬の耳に念仏でございやす。なぜってそりゃ勿論──
「───ま、任務やらなんやらは暫く休んどくことだァな。お前さんは少々、そこら辺やりすぎるきらいがあっからよ」
──その任務に今日いかにゃならねぇってんですからねぇ……
「え、えぇ。そうさせていただきやすよ。そんじゃあお世話んなりやした。銅鑼倉先生」
「おう。医者として、せめてこの一言を言わせてもらうぜ。『お大事に』ってな」
……さて、こうやって送られた手前、死ぬほど気が進みやせんが、さっさと依頼を終わらせやしょう。早く終わらせりゃ体への負担も少なくできるはずですし、ええ。今回の任務自体も、普通の世界でアホやらかした暴力の世界のバカの粛清と火消し、ってだけなんでそう面倒でもありやせんからね。え?自粛処分?なんのことだかわかりやせんね!!!(迫真)
さて、そんなわけで、事前に調べが上がっていた情報から特定した、件のバカが隠れ潜んでいるらしき所に到着いたしやした。場所はなんと神奈川県は鎌倉にある、そこそこ豪華なホテルにございやす。ふむ。奴さんも馬鹿じゃありやしたがそこまで間抜けじゃあねぇようで。
「さて」
さっさとさくさく終わらせやしょう。明日からまた学校ですし、余計な負担を体に残したくありやせんからね。
「裏口裏口ーっと」
ホテルの裏口を見つけ、用務員室から清掃員の制服を盗……拝借して着替え、適当な男性の職員証を持ってきやす。そんでもって骨肉細工で顔を弄って、と。んー、この感じだともうちょい身長盛った方が良さそうですね。大体15センチくらいですか。まぁ、多少のタイムリミットがかかるだけで問題はございやせん。さっと
「あーっと、確かこのホテルの五階の……508号室でしたね」
移動の手間賃がてら、先程単語として出した『暴力の世界』や、そこら辺絡みのアレコレについてお話でもいたしやしょう。ご存知でないって方も、いないわけではございやせんでしょうしね。
この世界は、大きく分けて四つの小さな世界に分類されておりやす。普通の世界、政治の世界、財力の世界、そして暴力の世界。
普通の世界ってのァ、俺たちが暮らしてる、文字通り普通の世界でございやす。犯罪も起きやすし、ヤーさんやら何やらの犯罪組織も存在する。しかし罪に対しては正しく罰が存在し、それを管理する法が確立されている。そんな普通の世界でございやすね。
政治の世界は、比較的普通の世界に近い世界のひとつでございやす。『玖渚機関』っつうでかい組織によって運営されておりやす。現トップは玖渚直。俺と十も歳が変わるわけでもございやせんのに、世界一つを手中に納めちまうような、文句無しの傑物にございやす。
財力の世界、こいつは説明するまでもない金の世界にございやす。トップたる五つの名家によって構成される『四神一鏡』の、圧倒的な権力によって統治されておりやす。四つの世界の中で、真庭への依頼件数が最も多い界隈でもございやすね。特に檻神辺りは金払いが良いんで、うちも御贔屓させて貰ってやすよ。依頼で一緒に活動することもありやす。策師のお嬢さん、元気してらっしゃいやすかねぇ。
最後に暴力の世界。こいつが実は一番説明としちゃあ楽で、同時に一番説明したくねぇ世界でございやす。なんてったって罪がねぇ。罰もねぇ。つまり法すらねぇ。この世の理の全てを無視しきった馬鹿野郎共の巣窟、それが暴力の世界でございやす。頂点に君臨するは、殺めて七つ、呪って六つ、占めて十三名の『殺し名』と『呪い名』。先日ボコした『奇野』も、この一つ、『呪い名』は第三位に座しておりやすね。あ、そういやアイツ、警察に処置任せちまいやしたけど大丈夫ですかねぇ。鎖は処分したんで、毒が感染することァねェでしょうが。
と、そんな感じで四つの世界についてかいつまんで説明してみやしたが、真庭忍軍のように一つの世界に所属しておきながら、他三つの世界を悠々自適に動き回ったり引っ掻き廻したりする輩もいないわけではございやせん。まぁ、
──と、そんな雑談も、丁度良い具合で終わっときやしょう。目的地、到着のお時間でございやす。
「さってと……」
相手は一端のプレイヤー*1。ご丁寧にノックして入るなんて、そんなのぁ自殺行為でございやす。ではどうするのか。そりゃあ勿論──
「
「う、うわ、なんだお前!?いったいどうやってここが!!」
「うるせぇ!手前が勝手に普通の世界でお偉いさん殺したせいで登校自粛返上してんですよ!さぁ!神妙にお縄につきやがれこの野郎!!」
「登校自粛は俺関係なげふっ!?」
何か喋ろうとしたバカを速攻で蹴り倒しやす。あーあー知らねぇ!はい!さっさと鎖で縛って拘束!任務達成!
「ぐ、ぐはは、お、俺を鎖で縛ったのは間違いだったな……!拘束状態にあるこの状況こそ、俺の能力が最大限発揮される──」
「ごっちゃごちゃうるせぇってんですよ!!」
つべこべ煩わしいんで鎖で縛ってそのまま背負った状態から一本背負いかまして気絶させやした。ただでさえ時間との勝負だってのに手前に見せ場やる訳ねぇでしょう。あ、もう骨肉細工も解いてようございやすね。ここのホテル代がいくらかは知りやせんが、とりあえずコイツの財布の中の有り金全部そこのテーブルにでも置いておいて……と。さて、これで良し。さて、そんじゃあ依頼人のところにこいつを引渡しやしょう。それにしても、
「いや~……もうこんな極道日程組まねぇようにしねぇといけやせんね……」
改めて学習致しやした。……もう二度とやりやせん。
そんなわけでなんとか依頼を完遂したおれでございやすが、この後、窓口が今回の依頼のアレコレ(特に入院絡みを多大な脚色を加えて)を“業界”の至るところに吹聴したらしく、無理な依頼が一月近く絶え間なく続いたことに関しては、まぁ、ここでは関係の無い話でございやす。
いつから真庭猩々がふざけないと錯覚していた?
というわけで、普通の世界要素が周りになかったら猩々も真庭忍軍でした、という話です。次回から体育祭編、参ります。
※今回の猩々のキレ散らかしは大概自業自得です