まにわにヒーローアカデミア   作:塩谷あれる

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『私はお気に入り登録者数が500人を突破したのにも関わらずお気に入り登録者数400人突破記念番外編小説を書き上げることができませんでした』と書かれた板を首にぶら下げている
ほんとうにすまねぇ……!そんなわけで本編最新話たる今話ですが、件の二つの記念番外編小説との三連続投稿となります。明日17時より登録者数400人記念番外編、明後日18時より登録者数500人記念番外編を投稿する次第ですので、お待ちいただける場合お待ちをば!をば!


犬猿仲良かれど、時間も救いもホウレンソウもない

 任務を滞りも筋肉痛もなく無事終え、健やかな気持ちで寝付いた次の日。謹慎処分を終えて、久しぶりに学校に行くことと相成りやした、猩々でございやす。個人的に嫌いな殺し名は『天吹』と『闇口』。天吹の野郎共はしょっちゅう俺らにつっかかってきて、『存在しないはずのゴミは粛清』とかわっけわかんねぇこと言ってきやがるからですね。何がしてぇんでしょうね、彼ら。

 闇口の奴らに関しては、ちょっと連中の『お上』と揉め事があったもんで、今もバチバチ状態でございやすね。まぁ真庭(俺達)は連中を一人残さず消すまでやる所存でございやすが。負けてたまるもんですかい!

 細けぇこたぁいいとして(閑話休題)、先程も言ったように学校でございやす。一週間弱休んでやしたもんですから、大分遅れをとってそうで恐ろしい話でございやす。一応最低限の予習やら何やらはしてやしたが、そこは雄英ですし、想定外に進んでいると言うのも考えられやすからねぇ。

 

「じゃ、行ってきやす」

「うん、行ってらっしゃい。あ!そうだ、猩々ちゃん」

 

 靴を履き終え、玄関の取っ手に手をかけようとした時、狂犬さんが俺に声をかけてきやした。何でしょ一体?

 

「何ですかい?」

「実は今まで…と言うか入学した後すぐに言う予定だったんだけど、実は猩々ちゃんの身柄の安全を考えて、真庭の忍から一人、護衛役を入学させてるから、見かけても驚かないであげてね!」

「えっ」

 

 何それ聞いてないんですが!?

 


 

「はぁ……」

 

 酷く重い溜め息。心なしか足取りも重々しい、あからさまに気を沈めている隈取り顔の少年、真庭猩々は、その暗い表情を隠すことなく、雄英の敷地内を歩いていた。理由はもちろん、教室に行くためである。

 

(なぁんで狂犬さんはこう、こう……昔っから肝心なことを後の方、それも手遅れ段階な状況でいうんですかねぇ……)

 

 思い出して再びため息を一つ。鬱々とした表情は勿論学校が億劫だったからなどという俗な理由から来るものではない。いやまぁ、身内がいつの間にか同級生として学校に来てたから、という理由も、俗と言えば俗なものだったが。

 

(まぁ、狂犬さんも馬鹿じゃあない筈ですし、社会不適合者送り込むような下手な真似はしないでしょうが……)

 

 俺と同年(タメ)の奴らもまぁそこまで頭のネジが飛んだ輩はいやせんし。と思案し、猩々は1-Aの扉を開ける。

 

「おはようございやーす……」

「「「!!!」」」

 

 幽鬼のような表情を浮かべて重い足取りで教室に入っていく猩々を見た瞬間、A組の空気がザワつく。猩々は(まぁ、そうなりやすわな)と、そんなこと考えながら自分の席に行こうとした所に、切島を含め数名が声をかけてきた。

 

「よう真庭!怪我、治ったんだな!……って、そんな感じの顔してねぇけど……大丈夫か?」

「お久し振りで、切島さん……あいや、顔に関しちゃお気になさらず。怪我とは全くの別件ですんで……怪我の方はほら、ご覧の通り完全完治でございやすよ」

 

 猩々の言葉に、周りのざわつきが少し弱まり、何人かがほっ、と溜め息をつく。どうやら、猩々の謹慎は思いの外クラスの皆の心配を煽っていたようだ、と言うことを猩々は理解した。

 

(うーむ、非難の目を浴びるだろうと思ってたんですが、心配されてたのはちょっとばかし予想外ですねぇ……俺、人殺してるわけですし。……とは言え、向けられてんのは心配だけじゃなさそうですが)

 

 安堵混じりの疑惑が三つ、怒りなのか嘲りなのか、よくわからない感情が一つ。そのような感情が向けられているのを感じ取り、まぁ害はあるまいと猩々は取り敢えず無視を決行した。

 

「そっか!何はともあれよかったぜ!」

「ホントだよー!相澤先生から話聞いたときビックリしたもん!お見舞い行こうとも思ってたんだけど、面会謝絶になってたし!」

「(……面会謝絶?)いやぁ申し訳ない……要らん心配をかけやした。何はともあれ真庭猩々、完全復帰しやしたんで、これからよろしくお願い致しやす」

「お「完全復活は結構だが取り敢えず座れ」ハイ!」

 

 背後に現れた相澤に猩々や切島含む立ち上がっていた生徒は即座に自分の席に座る。

 

「はいお早う。先ずは真庭、退院おめでとう。見た所、脚も無事繋がったみたいだな」

「はい、ご心配おかけしやした」

「無事で何よりだよ。謹慎とリハビリお疲れさん。ただ、その分出遅れてるってことも自覚しとけ。……さて、クラスの仲間が全員揃った所で、改めて体育祭の話もしとこう」

 

 そう言って相澤は、簡単に雄英体育祭の話をしていく。とは言え、猩々以外の生徒にとっては二度目の話となるため、無駄を極端に省いたかなりかいつまんだ話になったが。

 さて、そんな中、ただ一人この話を始めて聞いた猩々はと言うと──

 

(雄英体育祭……あぁ、そう言えば、この辺りの時期でしたか。去年までとかは任務やら修行やら勉強やらでリアタイでも録画でも見れてやせんでしたっけ……そんな俺が参加側に回るたァ、何やら感慨深いものがありやすねェ)

 

 と、彼にしてみては珍しい“日常”じみたイベントに参加できる喜びをかつて無いほど噛み締めていた。何分、真庭の忍としての活動で忙しい猩々である。小中学のイベントを任務で休んでしまうこともままあり、満足に楽しめてはいなかったのだ。それもあってか、猩々のワクワクは普段の数倍にも達していた。それこそ、朝の狂犬によるカミングアウトのことなどすっぽり頭から抜け落ちるくらいには。

 

「……そういうわけで、あと一週間。どうしようがお前らの勝手だが、各自鍛練を怠ること無く本番に望むように。……おい真庭、大丈夫か?特にお前だぞ」

「………え?あ、はい」

 

 滅多に無いイベントに、表情には出さないもののウキウキが止まらなかった猩々は、相澤がほぼ自分に向けて言ったような最後の言葉を聞き逃し、思わず生返事をする。

 

「……ならいい。それじゃ、朝のホームルームはここまで」

 

 相澤も、「コイツ……」と言わんばかりに眼を薄めたが、取り敢えず話を締めようと号令を促し、朝のホームルームは終わった。

 


 

 時間は過ぎて昼放課。猩々は昼食を摂ろうと食堂へと向かっていた。今日食べようと思っているのは、雄英高校の食堂における伝統のタイムアタックチャレンジメニューの一つ。超激辛大盛カツカレーだ。あまりの辛さと量にリタイア者が続出し、最速記録どころかクリアさえ叶っていないという曰くつきのメニューである。何故それが未だにメニューとして残っているのか、これがわからない。

 何はともあれ、辛い物好きの猩々にとって見れば願ってもないメニューであり、折角だから挑戦してみようと思い至ったのである。

 

(体育祭まで一週間……勝ち星をあげるための景気付けにもちょうど良いかもしれやせんねェ)

 

 期待と空腹で喜色満面の猩々が、食堂まで向かう一本道へと繋がる曲がり角を通ろうとした、その瞬間、

 

「……ッつう──!?」

 

 ひゅぅん、と、頬の辺りを冷たい一陣の風が撫で、そして同時にその頬がぱくりと裂け開く。すぅ、と赤い一線が入り、猩々は驚きで眼を見開くが、すぐに忍法・骨肉細工で裂けた頬を修復させる。幸い、出血もそこまで酷いものではなく、廊下に零れると言うこともなかったが、この四月半ばに、鎌鼬というのも考えにくいものだった。

 

(……この切り味、まさか、俺の護衛に派遣された忍ってのァ……)

 

 しかし、猩々には思い当たる節があったようで、一つ小さなため息をついたあと眉間を押さえる。そして、何もない筈の水道の前に立ち、蛇口を軽く捻り水を出した。

 

「……居るんでしょう、()()。さっさとお出でなさい」

 

 猩々が蛇口から出てきた水流に向かって喋りかけると、まるで喜びに悶えるかのように水道の蛇口がいきなり回転しだし、水が流し台から溢れんばかりに流れ出した。

 

「あーあー……こら喰鮫、学校の水もタダじゃねぇんです。その位にしなさい」

 

 あと1センチ分水嵩が増えれば溢れる、といったところで猩々が叱りつけると、ピタリと水の勢いが弱まり、キュルキュルと蛇口が閉まっていく。

 そして今度は貯まった水がぐにぐにと勝手に動き出し、何やら形状を変えていき、やがて猩々と同年代の女性の姿を形作った。

 

『あぁ、あぁ、あぁ──嬉しいわ、嬉しいわ、嬉しいわ。まさか気づいて貰えるなんて──』

「寧ろ入学してからの三日間で気づけてなかった自分を恥じたい位ですよ……ったく。焦れたからって頬切るバカがいやすか」

『うふふ、ごめんなさいね、頭領さん」

 

 人の形をした水の塊は、次第にその体に色を付けていき、その質感も人の肉のものとなっていく。いつの間に着ていたのか、雄英の制服も着込み済みだ。

 

「お前が俺の護衛役ですか、喰鮫」

「えぇ、そういうことになるかしら。でも頭領さん、公共の場でその名前はダメよ?今の(わたくし)雨垣(アマガキ)鎖露女(サロメ)、そう呼んでくださいな」

 

 そう言って水の塊だった少女──真庭忍軍魚組が一人、真庭喰鮫こと雨垣鎖露女はにこりと微笑む。その笑顔は、きっとこの世の全ての男性を恋に落とす程に美しいものだった。

 

「そうでしたか、こいつァ失敬、雨垣さん」

「もう、さん付けだなんてされなくても良いのに。気軽に、なんなら名前の呼び捨てでも私は構わなくてよ?」

「一応、これが俺の『こっち』でのキャラなもんでしてね──まぁ慣れてくださいや」

「ふふ……そういうことなら、頭領さんの仰せのままに」

 

 頭領呼びも勘弁してほしいもんですけどね、と、そんなことを思いつつ、猩々は完治した頬を掻く。

 

「……で、雨垣さん、狂犬さんからはなんと伺ってやすかい?今回の任務は」

「えぇ、文字通り頭領さんの校内での警護よ」

 

 雨垣の言葉に猩々はほ、と安堵のため息をつく。何分目の前の雨垣──否、喰鮫は、現真庭忍軍きっての戦闘タイプの一人だ。各組の指揮官には劣るものの、その実力、殺傷スキルはまさしくハイエンドに達するそれである。

 そんな喰鮫に、あの猩々のこととなれば過保護に度が過ぎる狂犬が余計な命令──例えば、猩々に近づく人間は漏れなく殺せとか──を下していたとしよう。あっという間に雄英が廃校まで持っていかれることは目に見えている。そうなれば本格的に日本のヒーロー界隈の危機だ。ついでに真庭の信用もダダ下がる。

 そのため、送られた護衛役と事前に伝えられた任務内容次第では、こちらからいくつか厳重に注意事項を敷いておくか、最悪クーリングオフしなくてはいけないまであった。

 

(いやー良かった……護衛役が喰鮫で任務内容もこれだけかなり簡潔なら、まぁ曲解もありやせん。こいつなら()()()()()や今回みたいなお茶目でもなけりゃ、そうそう忍法を使って刃傷沙汰なんて起こしやせんしね!)

 


 

 場所は変わり、とある警察署。オールマイトの親友で、彼の本当の姿を知る数少ない人物の一人である塚内は、先のヴィラン襲撃事件についての調書で頭を悩ませていた。と言うのもつい先日、あの場で逮捕した数人のヴィラン達が、刑務所にて見るも無惨な姿で殺されていたのを発見したからだ。その全員が頭部に爆弾でもしかけられていたのか、と言わんばかりの酷い死に様をしており、現場を見た何人かの体調にも障ったほどだ。

 

「……一体、何の目的があってあんな事を」

 

 考えられるものとしては、あの時逃げた死柄木が、しくじった部下達を口封じに殺しに来た、という線だ。だが、何故それを昨日行ったのか。仮に口封じをするなら、捕まった時点で殺してしまう筈だ。現に、ヴィラン達の何人かは自分達にとって有力な情報をいくつか既に漏らしていた。あまりにも遅い。そのため口封じという線は薄いだろうという話になったのだ。では何故なのか。やはりわからない。

 

「……こりゃあ、大分と面倒なヤマになりそうだなぁ」

 

 塚内には他にもまとめなければいけない資料や案件もある。積もり積もる仕事に頭を掻きながら、塚内は一つため息をついた。

 


 

「あ、そうだカツカレー!急がにゃタイムアタックさせて貰えなくなっちまう!」

 

 所戻って雄英高校。安心したら空腹を思い出したらしい猩々は、超激辛カツカレーのことを思い出し、食堂の方へと急ぐ。

 

「雨垣さんも飯まだだったらどうです?久々に一緒に飯喰いやせん?」

「あら、嬉しいお誘いね。是非そうさせて貰うわ」

 

 そう言い合って二人は食堂の方へと向かっていく。本日も平常運転、何事もなく日常が過ぎていく。殆どの人が、きっと明日もそうやって日常を過ごすだろう。残りの()()は……まぁ、何だ。どこぞの海の魔物の、逆鱗にでも触れたのだろう。御愁傷様でした、そう言うことしか、我々にはできはしない。

 

 ちなみに、この後猩々が見事件の激辛メニューを何と驚愕の十分足らずで完食し、後の雄英高校史に永遠に残り続ける大記録を成し遂げたのは、全く別の話である。




はい、そんなわけで新キャラ喰鮫ちゃんを登場させつつ焼き土下座敢行です。遅筆極まり誠に申し訳ありませんです。
これからは特に大きなイベントもないし、できるだけペース良く投稿していきたいです。
あ、喰鮫ちゃんの詳細はもうちょっと後で。
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