まにわにヒーローアカデミア 作:塩谷あれる
『一時間ほど昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!!オイイレイザーヘッド飯行こうぜ!』
『寝る』
「ふぅ、やっとこさ一区切りつきやしたねぇ」
全く、半日分の疲れじゃねぇや。やっぱし無垢の両翼を序盤で切っちまったのが失敗でした。断罪円と退化論――俺の二つの真打ちほどじゃあねぇにせよ、まだ完全な体得が済んでねぇ無垢の両翼は、他の忍法に比べると体力の消費が多いですし。
あっとと、どうもこんにちは。真庭猩々でございやすよっと。なんかあれですね。俺のモノローグで始まんのも随分久々な気がしやす。おっと、まだやらにゃならんことが一つありやした。
「お三方、ちょっとこっちに来てくださいや」
俺とチームを組んでくれた三人をこっちに呼び寄せやす。まぁ雨垣は実は呼ばんでも良いんですがね。変に怪しまれてもアレですし、面倒なんで三人共呼んどきやしょう。
「ん?どしたん?」
「何だ」
「あら、私も?」
おう雨垣余計なこと言わんでよろしい。
「えぇ、騎馬戦の前にお三方にかけた『お
俺はそう言って、耳郎さん、心操さん、雨垣の順番に、右手の人差し指でお三方の額を指さし、その後、猫騙しのように両掌を叩きやした。
「「!」」
「……」
「はい、終わりやした」
すると、耳郎さんと心操さんはまるで、夢が覚めたかのように、ハッ、と目を見開き、雨垣はそれをいつも通りな風に見ていやした。よしよし、上手く
「うわ…何、これ。なんか、頭から変なモンが抜けたみたい」
「……」
俺の超能力『
テレパシーのように思考まで共有する、ってのは無理ですが、感情や知識、記憶に始まり、退化論で実証したように運動神経や個性因子まで共有が可能――まあ詰まる話、俺はお二人に、俺の持つ真庭忍としての技術を共有させたわけでございやすね。俺が騎馬を担う以上、俺の上で姿勢を維持できる技術が必要になりやすので、歩法や姿勢維持に関係する真庭の知識を伝授しやした。とはいえ流石に、敵に塩送ったままにするバカはいやせんので、今その送りつけた知識を元に戻したってわけですが。
「お三方。お体の方に変調はございやせんか?頭痛や目眩などはないです?」
「う、うん……特には大丈、夫?」
「俺もだ」
「えぇ。私も変わりないわね」
「そうですかい、そりゃ良かった」
俺の超能力は、特に相手の脳に直接作用するもんですんで、相手の脳を疲れさせて体調を崩させることも昔はよくあったんですよねぇ。同じようなことになってなくて良かった。まぁ逆に脳を変に活性化させて超能力を半人工的に生み出す――とかも可能なんですがね。
「おい、真庭」
そんなわけで用事も済みやしたところで、食堂で飯でも頂こうかとした所に、心操さんが声をかけてきやした。
「?はい、何でしょう」
「今回は助けてもらったが、こっからはまた、敵同士になる」
「「!」」
「えぇ、そうですね」
つーかどっちかって言ったら俺の方が心操さんに助けられてた気がしやすがねぇ。何分妨害と牽制双方に優秀すぎる。
「あん時お前はいなかったから、この場で一応言っておく。俺は勝つぞ。勿論、お前にもだ」
「!……宣戦布告、ってえわけですか」
「あぁ。仲間だったからって、容赦はしねぇぞ」
そう仰られる心操さんの眼は、以前のようなギラついた野心だけでなく、確固たる強い意志があるように見えやした。
「えぇ。こちらとて容赦をするつもりはありやせん」
ならばこちらも相応の礼儀を。一人の男として、正々堂々と迎え討つ事を誓いやしょう。というかそもの話。俺の腹は、あの
「良い戦いにしやしょうや。『最弱』の怖さ、存分に思い知ったらよろしい」
「……もしかしてあの時の奴、気にしてるか?」
「さて、それはどうでしょう」
いや、ホントに気にしてやせんけどね?俺が雑魚なのは事実ですし。『普通の世界』の所属者だって、やたらめったら強い人もいやすからねぇ。オールマイトや狂犬さんを始めとして、後はどこぞの大泥棒さんとか。
「んじゃま、そういうわけで飯にしやしょうや!腹が減っては戦はできぬ、午後に備えてたーんと腹を拵えときやしょうぜ?」
「……あぁ、そうだな」
「てかもう皆行っちゃってんじゃん!急がないと席取れなくなるよ!ウチ先行ってるわ!三人の席も取っとくかんね!」
そう言われてみりゃ、いつの間にかグラウンドにはもう殆ど人がいなくなってやすね。ちぃっとばかし話が込みやしたか。
「あら、私もいいの?」
「今更だって!じゃ、お先!」
そう言って先を走る耳郎さんと、更にその後に心操さんが続きやす。さて、俺も行きやしょうかね。
「あんなこと軽々しく言って良かったの?」
と、しようとしたところで雨垣ですね。
「あんなこと、たぁどういう了見で?」
「あら、白々しいこと。わかっているでしょう?」
まぁ事実
「……『良い戦い』とは言ったものの、次からの本戦で実際にぶつかるという保証はない。寧ろ、どちらかが先に敗退する可能性の方が高いまである。なのにあんなことを言ってよかったのか……まぁ、こんなとこですかい?お前ね、これくらいのことなら口で普通に言いなさいや」
「わかっているならわざわざ言う必要もないじゃない?」
「そういう問題じゃねぇでしょうバカ」
全くこいつはホントに……。勘弁してほしいもんですねぇ。感情の
「……仮に先にどっちかがやられちまったらそれはそれでしょうよ。そうなる『運命』だったってェだけの話でさ」
「思いの外ドライね」
「お前に言われたかねぇ」
「私は寧ろウェットでしょう」
「個性に絡げたつもりなら上手くねぇよ」
ドヤ顔をやめろドヤ顔を。いい年してむふーじゃねぇ。……ま、さんざ言いあってても詮無き話でございやすか。誰がどう組まされて、どういう結果をたどるなんざ、今は御天道様しか知らねぇんですし。
「ま、勝つにしろ負けるにしろ、きっとこれから心操さんは伸びやすよ。後は本人が結果に対して腐らないだけです」
「そう。まぁ、頭領さんの言う事なら、きっとそうなんでしょうね」
お、なんとなくは納得したみたいですね。じゃ、さっさと飯の時間と参りやしょう。ん……?そういやぁ、あれ?緑谷さんと轟さんの姿が見えやせんが、先もう行かれやしたっけ?
「あの……話って……何?」
騎馬戦が終わった後のこと。僕こと緑谷出久は、轟君に呼び出されていた。
「は、早くしないと、食堂すごい混みそうだし…えと……」
なんとかそんな風に言葉を出したけど、その直後轟君に睨まれる。かっちゃんのそれとは違う、冷たい威圧感。それが僕に突き刺さるように向けられている。
「……気圧された。
誓約。それはつまり、轟君の左側のことだろう。使えば有利な場面もあったのに使わなかった。僕がポイントをもぎ取った時だってそうだ。
「……最後の場面、俺はお前に、オールマイトと同様の何かを感じた。単に似たような個性だからって訳じゃない……もっと違う、本質的なもんだ」
何を根拠にしたわけじゃねぇけどな、そう言いながら轟君は自分の左手を眺め、そして、またさっきと同じ冷たい視線で僕を見て、そしてまた、口を開いた。
「なァお前さ……オールマイトの隠し子か何かか?」
思わず息が止まりそうになった。と同時に、開会式の前に、轟君が言っていた言葉を思い出す。成程、そうなるのか……!!
「違うよそれは……って言ってももし本当にそれ……隠し子だったら違うって言うに決まってるから納得しないと思うけどとにかくそんなんじゃなくて……」
咄嗟に否定するけど、多分効果は薄い気がする。自分でもびっくりするぐらいの慌てっぷりだ。これじゃそうだって言ってるようなもんだ。
「そもそもその…逆に聞くけど…なんで僕なんかにそんな……」
騎馬戦最後のあの制御だって、偶然できた最初の一回だ。初めて『人』に打った、唯一の成功例。それ以外はずっと暴発してボロボロになってばかりだ。いくら個性が似て見えるとはいえ、それだけでこんな風に、その、
「……『そんなんじゃなくて』って言い方は、少なくとも何かしら言えない繋がりがある……ってことだな。
俺の親父は『エンデヴァー』、知ってるだろ。万年No.2のヒーローだ。お前がNo.1ヒーローの何かを持ってるなら俺は……尚更勝たなきゃいけねぇ」
そうして、轟君は自身の身の上を話し始めた。
破竹の勢いでヒーローとして名を馳せたエンデヴァーは、生ける伝説であるオールマイトが目障りだったこと。
自分ではオールマイト超えを果たせないと考えた彼の次の策が『個性婚』だったこと。
そして、その成功例が轟君であること。
「記憶の中の母はいつも泣いている…「お前の左側が醜い」と、母は俺に煮え湯を浴びせた。
……ざっと話したが、俺がお前につっかかんのは見返す為だ。クソ親父の個性なんざなくたって……いや、使わず『一番になる』ことで、奴を完全否定する」
そう言う轟君の声は、まるで氷の塊みたいに重く、冷たくて、その目は、ゴムか何かを焼いたときのように、不気味な熱を灯していた。
……それに、あまりに違う世界の話で正直ビビった。目指す場所は同じでも、こうも違うのかって。何て返事をしたらいいのか、検討もつかない。コミックだったら主人公だ。それほどの背景。それに対し僕が言えることなんて……
言える、事なんて……
「……言えねぇなら別にいい。お前がオールマイトの何であれ、俺は右だけでお前の上に行く。時間とらせたな」
「僕は」
言えることなんて、ないかもしれない。でも……――
「ずうっと助けられてきた。さっきだってそうだ…僕は」
――出久、超カッコいいよ――
――「頑張れ!!」って感じで、なんか好きだ私――
――一芸だけじゃヒーローは務まらん――
――すごいわ二人とも――
――体の頑丈さと物覚えの良さだけァ、俺が唯一誇れるとこでございやして――
――あなたの事は知りませんが、立場利用させてください!!――
――緑谷、お前が追い込み生み出した轟の隙だ――
――君は、ヒーローになれる――
「誰かに救けられてここにいる」
――言わなきゃいけない。そんな気がした。
「オールマイト…彼のようになりたい。その為には、一番になるくらい強くなきゃいけない。君に比べたら些細な動機かもしれない。
でも、僕だって負けらんない。僕を救けてくれた人達に応えるためにも…!」
そう、これは宣戦布告だ。さっき受けたそれを、改めて、僕からも。
「僕も、君に勝つ!」
昼休憩が終わり、再び観客席から歓声が沸き起こる。
『さァさァ皆!楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目!!
進出4チーム、総勢16名からなるトーナメント形式!!
一対一のォ……ガチバトルだァ!!!』
なんか原作なぞっただけみたいになってしまった……。因みに心操の宣戦布告の後、景気づけに猩々はまた例のカツカレーを食いに行き、本戦前に無駄に体力使ってます。バカス。更に、騎馬戦の雪辱を果たすべく鉄哲が勝負を持ちかけて地獄を見ました。もっとバカス。