まにわにヒーローアカデミア   作:塩谷あれる

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今回説明回というか、若干の蛇足回になります。多少読み苦しくなるかと思いますがご了承くださいませ。


受験の後で

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 京都府某市、真庭邸。その一室にて一人の男の絶叫が響き渡っていた。

 

「タンマ、タンマですって狂犬さん!これ以上は死ぬ、死ぬってあ゛あ゛あ゛痛ででででで!!!!」

「もー、これぐらいで悲鳴なんてあげないの。男の子でしょ?」

 

 絶叫の発生源は、雄英高校の受験を済ませてから一週間ほどたった後の猩々だった。うつ伏せの上から白髪に全身の刺青が特徴的な女性、真庭狂犬に馬乗りになられている。そこだけを切り取り見てみればあからさまに異様な光景だが、狂犬の手の動きを見るに、ただマッサージをしているだけらしい。

 

「痛てて…ひでぇ目に遭いやしたよ…」

「何言ってんのさ、自業自得でしょ?たかが試験に断罪円なんて使うから、全身筋肉痛になるんだよ」

 

 実技試験の時に使用した忍法・断罪円は、元々圧倒的な威力を誇る代わりに高い技術を要する忍法なのである。まだまだ未熟な猩々が使ったことで、体──というよりは筋肉が負荷に耐えきれず、筋肉痛を引き起こしたのである。

 

「し、仕方ねぇじゃねぇですか。0Pヴィランをバラすにゃあの忍法を使うしか方法が…」

「元々必要なかったんでしょ?それ。帰ってきてから部屋で滅茶苦茶頭抱えて後悔してたじゃん。『あそこまでする必要はなかった~』って」

「うぐ…」

 

 正論を叩き込まれ言葉に詰まる猩々。うつ伏せになっているのもあって滑稽である。やれやれ、とため息を一つついて、狂犬は猩々の背から降りて立ち上がった。

 

「ま、あたしは最終的に猩々ちゃんが真庭忍軍の後継者として、真庭忍軍を再興させてくれたらもう言うことないからね。そこに行くまでの道筋に、必要以上の口出ししたくないから別に良いけどね」

「またそれですかい…あんたぁ俺のこと、一体なんだと思ってんですか?」

「大事な我が子。可愛く愛しい大切な家族だと思ってるよ」

 

 それ以外にある?と言わんばかりの表情を浮かべる狂犬。何と言おうか若干迷った猩々の口が動こうとするその矢先に、インターホンが鳴った。

 

「はーい」

 

 狂犬が玄関に向かう。そして、配達員から何やら小包を受け取った後、猩々の元へと戻りその小包を渡した。

 

「はいこれ」

「……なんですかい?これ」

「見れば分かるよ、部屋行って確認してきな」

 

 猩々は渡された小包の裏を見、そして納得した。差出人は『雄英高等学校』。合否発表の瞬間である。

 


 

『私が投影された!!』

 

 小包の封を破き、ホログラム映写機を起動させた途端、スーツ姿の筋肉質な男が投影された。日本ヒーローランキング一位のナチュラルボーンヒーロー、『オールマイト』が映し出された。

 

「へぇ、オールマイト、今年から雄英で働くんですか」

 

 そりゃ大スクープだ、と一人ごちる猩々。その脳裏には、ビッグニュースと言う餌に生け簀の鯉か何かのように群がるマスコミ連中の姿。

 

(情報処理はしてんですかねぇ……狂犬さんや『窓口』からその手の依頼が来たって話も聞きませんし、真庭(俺達)に頼るつもりはねぇってことでしょうかねぇ。雄英の警備のランクが高いのは認めてやすが、どうなることやら)

『さて真庭少年!早速君の合否発表だが、筆記試験は合格ラインを通過している。おめでとう!そして実技試験の成績だが……』

 

 思わずゴクリ、と猩々は喉を鳴らす。空気がひりつくような、未だに慣れない、緊張と言う感情が猩々の心根を支配していた。

 

『実は実技試験は、ヴィランP制とは別でもう一つの採点を行っていたのさ!』

 

 オールマイト曰く、その名も救助活動(レスキュー)ポイント。試験か以上とは別室のモニターにて審査制で行われるそれによって、猩々はヴィランPとは別にもポイントを稼げていたと言うわけだ。

 

『ヴィランP54点!レスキューP40点!合計94点で首席合格だ!来いよ少年!雄英(ここ)が君の、ヒーローアカデミアだ!』

 

 その言葉を最後に、映写機は収録されていた内容を映しきり、活動を停止した。そしてその二秒後。

 

「……………………っはぁ~~~~~~~ぁってあ゛ぁ゛筋肉痛っだだ!?」

 

 部屋中を満たせる空気量でも溜め込んでいたのかと思われるほどの深く長いため息を吐き、背中を椅子に傾けすぎたせいで筋肉痛で悲鳴をあげる猩々がいた。

 

「あでで…ま、まぁ、受かってて良かった、と喜ぶべきでやすね、これは」

 

 良かった良かった、と笑う猩々の足元。しかしその足元に落ちてきた、映写機と一緒に内包されていた一枚の書類によって、その表情は困惑へとねじ曲げられてしまった。

 


 

「え?猩々君個性届出さなきゃいけないの?」

 

 猩々と狂犬、二人分には少々多い量の食材が所狭しと並べられた食卓で、狂犬は言った。

 

「えぇ、そうみたいなんですよ……」

「ありゃー……こんなところで最大のピンチだね。何てったって猩々ちゃん、個性ないもんね」

 

 そう、真庭猩々には個性がない。極めて希な例でこそあるが、第六世代が無個性として生まれる事例そのものは存在するのである。猩々も、その一人と言うわけだ。

 

「どうしますかねぇ……市役所には個性無しで通してますし……いや更新はできやすけど、何と偽ったら良いやら」

「真庭忍法の内のどれか──例えば、猩々ちゃんの専用忍法を個性として扱って出しちゃえば良いじゃない?それか、猩々ちゃんの親御さんたちの個性のどれかを借りてだしちゃうとか」

 

 猩々は狂犬の言葉を聞き、うへぇ、と嫌なものを思いだすかのように呻いた。と言うのは、猩々の生まれ育ちに起因する。

 猩々は元々、真庭忍軍とは何ら関わりのない家庭で生まれた。不幸なことに、両親は所謂良個性至上主義の古い思考を持つ家庭の生まれ。無個性である猩々は酷く嫌われ、満足に食事も与えられない日々を送った。当時五才。そんな彼にとっての喜びはこっそり家を抜け出して、当時近所の駄菓子屋の若き女店主だった狂犬の元へ遊びに行くことだけだった。

 彼女の店で廃棄予定のお菓子をもらったり、店の裏にあるテレビで時代劇やアニメを見たり、近所の小学生たちに一緒に遊んでもらったり。そこで過ごせる時間は小一時間ほどの限りあるものだったが、しかしそれでも、彼にとっては至福の一時だった。

 しかし、ここで猩々に転機が訪れる。彼が六歳になる年の春。猩々の両親が死亡、原因は大型車との衝突事故だった。親戚は皆両親同様に個性至上主義。無個性である猩々の引き取りを承る者は誰もいなかった。

 そんな猩々を最終的に引き取ったのは、またもや狂犬だった。駄菓子屋のお姉さんとしての姿とは別に、真庭忍軍最後の生き残りとしての裏の顔を持っていた狂犬によって引き取られた猩々は真庭の姓を与えられ、真庭忍軍の後継としての教育を受け、今に至ると言うわけである。

 

「勘弁してくださいよ……あんなクズ共の個性なんざ死んでも御免です」

「ふーん、そっか。じゃあ忍法の方で書くの?」

「そうですねぇ……つじつま合わせが面倒なことになりやすが、そうするしかなさそうですし、そうしときやす」

「おっけー。お姉さん了解よん。じゃ、さっさとご飯食べちゃいましょ。冷めちゃったらもったいないもんね」

 

 話は纏まった、と言わんばかりに狂犬は猩々に食事を促す。猩々もそれに従い、やたらと多い料理の数々を、割りと短時間で平らげるのであった。




猩々の容姿について説明してなかったなー、と思ったので説明おいておきます。

登場人物紹介㋑
真庭 猩々(まにわ せふぜふ)
年齢:15 身長:154.9㎝ 体重:50.4㎏
個性:無し
見た目:朱色の長髪と黒い瞳、目元に隈取りのような模様を持つ。背は低めだがつくところに筋肉はついている。身長に対して腕が少し長い。
備考:時代劇の町民のような喋り方をする。キャラ作りとかそういうのではなく割りとガッツリ素。内心がうるさい。

取得忍術:真庭忍法・足軽
     真庭忍法・?????
     真庭忍法・???


 狂犬さんに関してはもうちょっと後で説明することになると思います。今はまだかなー、と。
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