まにわにヒーローアカデミア   作:塩谷あれる

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入学→受難

「いやぁ、ついにこの日が来たね。猩々ちゃん大丈夫?手拭いとかちり紙とか持った?」

 

 吹く風もすっかり寒さを失い、柔らかい春の陽射しを感じられるようになった四月のこの頃。京都は真庭邸の玄関で、真庭狂犬はいつも以上に顔をうきうきさせていた。

 

「大丈夫ですって…というか、そう言う決戦前って感じの台詞ってもっと前…受験当日とかに言うもんじゃねぇですかね、狂犬さん」

「何言ってんのさ。こういう台詞はいつ言ったって割と様になるもんでしょ。息子同然の猩々ちゃんの晴れ舞台の始まりを見送らない狂犬ちゃんはいないもん」

「なんですかいそれ…」

 

 やたらとテンションの高い狂犬を呆れた目で見る猩々。それでも自分のことで喜んでいると言うのは分かるため、出そうになったため息を一つ飲み込み、靴紐を結ぶため下ろしていた腰をよいしょと持ち上げた。

 

「そいじゃ、いってきやす」

「うん、頑張っておいでね!あと猩々ちゃん、()()()()の方だけど、忘れてないよね?」

 

 満面の笑みの狂犬から放たれた言葉に、一瞬だけ動きを止めた猩々だったが、

 

「えぇ、忘れちゃいやせんよ」

 

 すぐにこちらも笑みを返し、そのまま学校へと向かっていった。

 


 

「いやー、はは。…雄英って、校門と言い試験会場と言い、やたらとものをでかく作りやすねぇ……」

 

 まぁ体の大きな異形型の方へのご配慮なんでございやしょうが…。と、目の前の自分の背丈の五倍はあるかと言う大きな引き戸の扉を見て、猩々は苦笑を浮かべた。

 

「ドアの取っ手も身長にあわせていくつか設置されてるわけですか。バリアフリーでやすねぇ。いやはや、流石でいやがる」

「おい、退けやチビ」

 

 扉の取っ手に手を掛けたその時、後ろからドスの効いた声が一つ。振り向いてみると、金色の爆発的に尖った髪の男子生徒が立っていた。どうやら猩々同様、ヒーロー科A組の生徒のようだ。

 

「さっきからペチャクチャペチャクチャ、独り言言ってやがってねぇでさっさと入るか退けやチビモブが」

「……おっとこいつぁ失礼いたしやした。お兄さんの迷惑も考えずにとんだ御無礼をかけたってもんだ。ささ、俺のことなんかお気になさらず。お先にどうぞ入ってくださいや」

 

 そういうと猩々はするりと扉の前を退き、その爆発少年へと先を譲った。少年ははん、と鼻をならしてズカズカと教室内へと入っていく。それを見つつも猩々も同様に教室に入っていき、自分の荷物を割り当てられた席の机へと置いた。

 

「おや、先程のお兄さんですね、こいつぁどうも。前の席とはびっくり仰天だ。あ、俺は真庭猩々と言いやす。京都から参りやした。どうぞよろしく」

「モブの名前なんざ一々覚えるかよボケが!」

「あれこりゃ手厳しい。ですがねお兄さん、机に足掛けんのぁ、流石に止した方が良いんじゃねぇですかね」

「うるせぇな黙ってろや端役!」

 

 へらへらと笑っておどける猩々に怒鳴り声をあげる爆発少年。性格的にはまさしく水と油だ。その後、後から教室に入ってきた筋肉質な眼鏡の少年──飯田天哉が爆発少年に注意をして一悶着あったりなど、クラスが騒がしくなってきたところに、

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」

 

 決して大きくはなく、されどよく通る低い声が教室内に響いた。音の方をみてみれば

 

「ここは…ヒーロー科だぞ」

 

 寝袋に包まれて教室の扉の前に横たわり、ゼリータイプの携帯食を吸い込む小汚ない男がいた。

 

(((な、なんか!!!いるぅぅ!!?)))

 

 生徒たちの疑問などどこ吹く風と言わんばかりに男はもぞもぞと動いて立ち上がり、纏っていた寝袋を脱いだ。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限…君達は合理性に欠くね……担任の相澤消太だ。よろしく」

 

(((先生!?てか担任ん!?)))

 

 未だに疑問と困惑ばかりが頭の中に渦めく生徒達は揃って唖然とするが、相澤と名乗った小汚ない男は寝袋の中から何か服のようなものを取り出す。

 

「早速だが、体操服(コレ)着てグラウンドに出ろ」

 

 何が何やら良く分かっていない生徒達は、とりあえず従っとけ、と予め購入していた体操服を持って、各自更衣室で着替えを行うのであった。

 


 

「「「はぁあああああ!!!???」」」

 

 トータル成績最下位の者は除籍。その言葉に、グラウンドに集められたA組の生徒達は皆悲鳴のように驚愕の声をあげた。その中で猩々は、

 

(除籍…除籍ときやしたかぁ……いや流石雄英、やることのスケールがデカイ……とか言ってられるような状況でもねぇや。忍法が個性にどれだけ張り合いがつくか、その再確認の舞台としゃあ申し分なし、ってところですかね)

 

 流石は忍者と言うべきなのか、楽観視と咎めるべきなのか、比較的平常心を保てていた。

 

「放課後マックで談笑したかったならお生憎。これから三年間、雄英(俺達)は全力で君達に苦難を与え続ける。──ようこそ雄英高校ヒーロー科へ。“Plus Ultra(更に向こうへ)”、全力で乗り越えて来い」

 

 反応は十人十色、悲喜交々。焦る者、滾る者、訝しむ者、嗤う者。それぞれがそれぞれの想いを持って、雄英高校ヒーロー科A組の、最初の試練が始まった。




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