まにわにヒーローアカデミア   作:塩谷あれる

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真庭が者ならこれを着ろ

「ふわぁあ…」

 

 ガタガタと揺れる電車の中、猩々は一つ、大きな欠伸をした。

 

(いやー、昨日くらいはもうちょい早く寝るべきでしたかねぇ)

 

 毎日行っている忍法・猿真似稽古によって会得した忍法の練度上昇訓練。それを普段よりも多めに行ったお陰で猩々は寝不足だった。『授業寝ないでいられやすかねぇ…』と心の中で心配する猩々のブレザーのポケットの中から

 

prrr…prrr…

 

 無機質な着信音が鳴り響いた。

 

「あ、すいやせん。失礼しやす」

 

 車内の他の乗客に一つ断りを入れ、黒いスマートフォンの液晶画面に写った『受信』をタップする。

 

「……はい」

『“窓口”です』

 

 複数の声色の混じった複合音声のような生理的嫌悪を引き立てる声がスマートフォンを通して猩々の耳に届く。それを分かっていたかのように猩々は溜め息を一つ吐く。

 

「電車内です。追って掛けますんで切りやすね」

『おやそれは失礼。ですがこちらも時間が押しています。こちらから一方的にで構いませんので依頼内容を伝達させていただきますね』

 

 猩々の口許がピク、と動くと同時に、ミシ…と言う音がスマートフォンから生まれる。見てみれば猩々の持つスマートフォンが、強く握り込みすぎたせいでヒビが入っているのが原因だった。

 

()()はメールで伝達しろと、いつも言ってんのによくもまぁ騒々しく掛けてきやがれやすね。いい加減着拒にしやすよ着拒に」

『そう仰らずに……あぁ怒らないで下さい。わかりました。では追って掛けてください。えぇ。仕方ありません。それで譲歩いたしますとも。では』

 

 そう言った後に通話は終わり、ツー、ツー、という音だけがスマートフォンから流れていた。猩々はスマートフォンをしばらく眺めたあと仕舞い、

 

なんで手前が降りたみてぇな言い方してんですかねあのトンチキ。どっかで痛い目見りゃあ良いのに……あぁ、すいやせん、ご迷惑お掛けしやした」

 

 と()()()人好きしそうなにこやかな笑顔で言ったあと、丁度降りる駅だったのか、すたこらさっさと電車を降りた。余談だが、偶然にも彼の前半の呟きを聞いてしまったサラリーマンは、「生きた心地がしなかった」と真っ青な顔で同僚に愚痴っていたらしい。

 


 

 どうも、真庭猩々でございやす。好きな漫画は『めだかボックス』。と、午前中の一般授業、昼放課の後、恐らく全ヒーロー科生徒が待ちに待ち望んだ授業の始まりでございやす。ヒーロー基礎学。我らがA組の担当教師は…

 

「わーたーしーがー普通にドアから来た!!

 

 そう、国内のヒーローランキング堂々の第一位、ナチュラルボーンヒーロー『オールマイト』でございやす。いやー、これで興奮しない方はいないでしょうや。かく言う俺も、流石に戦々恐々としておりやす。

 

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う科目だ!勿論単位数も最も多いぞ!そんでもって今日はこれ!戦闘訓練!!」

 

 戦闘訓練。その言葉にクラス中が一気に沸き立ちやす。英雄(ヒーロー)、と言えばヴィランと熾烈な戦いを繰り広げるかっこいい姿が誰の目にも思い浮かぶものでございやしょうからね。それがいの一番にできるとあればワクワクもんでしょうや。

 

「んそして!そいつにともなってこちらァ!」

 

 オールマイトが大袈裟な動作と共に手に持っていたスイッチを押しやす。すると、

 

「入学前に送って貰った『個性届』と『要望』に沿って誂えた…戦闘服(コスチューム)!!!」

 

 俺達側の壁の一部がせり出て来やした。せり出た壁にはそれぞれの出席番号が書かれたケースが。あれがコスチュームですね。

 

「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!」

「「「はーい!!!」」」

 

 全員が大きく元気に返事をし、我先にとコスチュームの入ったケースを取りに動きやす。さてさて、俺のコスチュームは…と。お、これでやすね。………ん?

 

「あー、えっと……あれぇ?」

 

 俺、こんな注文いたしやしたっけ?

 


 

「真庭……それ……」

「言わんで下さい」

「ん?入試の時の奴じゃね、それ。ちょっと色とか違うけど」

「言わんで下さいや!」

 

 えぇ、えぇ!何故かこうなりやしたとも!俺は『目立たない忍者っぽい装束(耐熱性、耐寒性、帯電性に優れた素材で、収納スペース多めで希望)』と書いた筈なのに!届いたのは見ての通りの真庭の忍装束!しかも普段の茶褐色じゃなくて割とキツめの赤にリニューアルしてあるし!どう言うことですかねぇ!……と思い制作者表記を見てみれば、

 

「……なんで居るんですかねぇ!?」

 

 『○○社、真庭雌羊』の文字。いつのまにあの女サポートアイテムのエンジニア資格なんて取得しやがったんですか!?しかも要望は何気に全部叶ってるし!それはまぁ良いんですけど!……っとと、お見苦しい姿をお見せしやした。

 真庭雌羊ってのは、まぁ真庭(うち)に所属してる忍の一人でございやす。普段はお互いの関連性を疑われないよう、俺とその保護者名義である狂犬さんを除いた全メンバーは戸籍に登録されてる名前を使っているのが現状でございやすね。雌羊もその戸籍名で登録している筈の一人だったんでございやすが、

 

「何を!馬鹿正直に!忍名使ってんですかァ!?」

 

 ……今度顔会わせたとき、ちょっと説教が必要になりそうでございやす。え?他の連中大丈夫ですよね?このアホみたいな真似してやせんよね?だ、大丈夫ですよね?……大丈夫だと信じたい。

 

「決まってるじゃないか皆…カッコいいz…ムム!?」

 

 グラウンド-βに集合した皆を一望して言うオールマイト。あ、でも緑谷さんを見た瞬間に吹き出しやしたね。まぁあの耳見りゃそりゃ吹きやすわ。同じパワー系の個性っぽいですし、リスペクトしてんでしょうねぇ。

 

「さて!気を取り直そうか!今回の授業は──屋内での()()()()()()さ!!」

 

 オールマイトの説明を簡単に言うとこんな感じですね。

 

・ヒーローチーム、ヴィランチームそれぞれ二人ずつで分かれるチーム戦を行う(今回は特例で一チームだけ三人組が成立)

・ヒーローは制限時間内にヴィランチームに名を確保まはたはターゲットである『核(ハリボテ)』を回収すれば勝利

・ヴィランチームは制限時間まで核を守るないしヒーローチーム二名の確保で勝利

 

 そんでもって俺のお相手さんは

 

「み、緑谷出久です!よ、よろしく!」

「えぇ、よろしくお願いしやすね」

 

 後ろの席の緑谷出久さんでございやした。個性把握テストでは、ボール投げの時に良い記録を出してらした方ですね。その代わりに指を痛めていたようですが。普通に考えるなら身体能力強化タイプの発動型個性ですが、自分の肉体を破壊するレベルとなると、はてさて、いったいどんな個性なのか。

 と、他にもチームごとに集まってやすね。ふむ…緑谷さんを単なるパワー型の個性と仮定すると、相性が悪いのは、中遠距離攻撃や索敵の可能な障子さん&轟さんのBチームや蛙吹さん&常闇さんのHチーム、対策がしにくい八百万さんのいるCチームですかね。あー、後は…まぁ、はい。飯田さん&爆豪さんのDチームですよねぇ…。どうやら緑谷さんは爆豪さんと中々に浅くない因縁がおありのようですし。飯田さんの個性も、実は俺の忍法との相性は良くはありやせん。さて、どうなることやら……

 

「続いて最初の対戦相手は──こいつらだ!!」

 

 取り出されたるは、それぞれAとDと書かれた二つのボール。つまり──

 

「ヒーローチーム、真庭少年、緑谷少年!ヴィランチーム、飯田少年、爆豪少年!各自移動を開始してくれ!」

 

 初手から相性最悪チームとの戦闘、と言うことになるわけでございやした。んー、窓口のクソッタレと言い雌羊の一件と言いこれと言い、俺なんかしやしたかねぇ…!?




 この主人公一人称視点ムズいな、と思った今日この頃でした。
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