話の中に過去作の登場人物が数名出てきます。
話の大筋を知りたい方は
「その出会いは奇跡のようなものでした」 https://syosetu.org/?mode=ss_detail&nid=224549
「運命の弾丸」 https://syosetu.org/novel/221306/1.html
のふたつをご覧下さい。
それではどうぞ
「大将〜今日もツケでお願いするわね」
そう言って常連の客さんは、今日も食べるだけ食べて店を後にして行った。
まぁだいたい月初め辺りに払ってくれてるからいいのだけども……
月末辺りになると経営がかなり厳しくなってくるのでなるべくその場で払って欲しいんだけどなぁ
「またお越しください〜」
まぁ、相手はかの異変解決者で、結界の巫女だ。そんな相手においそれと支払え!なんて肝の座ったことはできないよな…
払ってくれるんだからそれでいいや、そんなことを思いながら俺は笑顔を作るのだった。
「またお越しくださいね〜」
何度この言葉を言っただろうか、ようやく全ての客が帰ってくれた。
あとは後始末と明日の仕込みを済ませたら家に帰ることができる……と言っても、俺の家はこの店の2階なんだけどもな。
「さーてと…明日は休みだし早いとこ終わらせちまうかぁ」
あとひと踏ん張り…一日休みの為にもまぁ頑張っていきましょう。
なんて自分を鼓舞し、始末を済ませるのだった…。
翌日は予定通り休みをとった。
と言ってもやることは決まっていて、調理器具や皿などのチェックや
まぁ、今日食べる為の食材の買い出しとかだろうか。
「……あ、あんたは」
「おや…大将さん。今日はどちらへ?」
珍しい人に出会った。この人は確か……山の神社に新しく出来た神官さんだったか…
名前は………滅多に合わないもんで忘れちまった。
「いや、特に用事はないんだがね。せっかくの休みなもんで出てきちまったのよ」
「あぁ〜分かりますそれ。なにか行動しなきゃっていう使命感に狩られるんですよね〜」
「おや、経験あるのかい?」
この時代の人はみな、時間にはルーズだと思っていたのだけど。
この人は違うみたいだな……
「えぇ。とにかくなにかやらなきゃいけないんだっていう衝動に襲われるんですよ。それも何回も」
「へぇ…それでなにか変わったことは?」
「うーん…そうだなぁ……変わったことというなら…ケンカが少し強くなったくらいですよね」
あぁ……まぁそんなもんだよな。
「ケンカ………なにか習ったんです?」
「習う……まぁ独学で。本を見ながらやってましたね」
「ほほぉ…やはり神官さんは努力家なんですね」
そう言うと彼は照れくさく笑って
「そんなんじゃないですよ。あと、神官さんはやめてください。俺の名前は東風谷優也ですから。……あ、あと出来ればタメでお願いします」
あぁ……確かそんな名前だったなぁ〜!
言われてやっっと思いだした。この人の名前。
なんかフランクな感じなんだな〜と思いつつも
「職業柄言い方は統一してるんですよ。東風谷さん、また店にいらしてくださいね。それでは私はここらで」
「えぇ、是非妻とまた。それでは」
そう言って俺は彼の元を離れるのだった。
〜
「なぁ、大将?」
「どうかしましたか?」
金髪の少女が酒を片手に話しかけてくる。顔は……まだ赤くなっていないな。よっている訳ではなさそうだ。
「霊夢のやつになんでツケなんて許してるんだ?」
「そんなですか…?彼女はきちんと払ってくれるって分かっている人ですからね。
それだけの話ですよ」
「へぇ……わかんないぜ…」
それは俺の彼女に対する甘さなのか、彼女が支払いをすることに対してなのか…問いただしたいと思ったが…店に他の客も入ってきたことで
会話は打ち切られるのだった。
そうして夜も更けてきた頃…一人の執事服を纏った男が、店の垂れがけをくぐって入店してきた。
「今日も繁盛してるね」
その男はそんなことを言いながら俺の目の前に座った。
いつもなら連れ添いの女と同伴するのだが、どうやら今日は一人らしい。
「今日はどうしたんです?」
「休暇が貰えたものでね、いつかサシで話してみたいと思ってたんだ。」
男はそういうと、ニヤリと笑って酒を注文してくれた。
俺も彼とは話をしてみたいと思っていたので、注文にはないがツマミも用意して提供する。
「お、どうやらそっちも?」
「えぇ、外来の人間の話は聞いていてとても楽しいので。」
それにこの人は……噂によると殺し屋だという。
そんな裏の仕事の実態……一度は聞いてみたいと思うだろう。
「へぇ…まぁ構わないけど。何が聞きたいんだい?ツマミの礼だ、話そうじゃないか」
「そうですね…では、向こうではどんな仕事を?」
直球で聞いてみる。
彼はその問に眉ひとつ動かさずに「なに、掃除屋さ。」と答えた。
「掃除屋……?」
わざとらしく聞き返すと、彼はこちらを見て少し笑った。
「人を掃除してたんだよ。…………噂の話は本当だよ」
「へぇ……なら教えて欲しいことが沢山あるんですけど」
「教えられる範囲なら構わないさ、なんでも質問してくれたまえ」
そんな物騒な会話を、俺と彼は長く繰り広げるのだった…。
あれから何日も経った日の事だった。
「店主さん?いるー?」
準備中と書かれている扉を問答無用で開いて、彼女は入ってきた。
「いますよ、どうしましたか?」
「これ、今月の分。受け取って」
「あぁ…、どうもありがとうございます。わざわざ起こしいただいて…」
「だって……こんな時間じゃないと、いっぱい話せないでしょ?」
「…そんなにお客様に恵まれてはいませんよ。少なくとも、人の常連客に非能力者はいませんから」
「そ……。それじゃあ今度、ご馳走になりに来るからね。」
「えぇ、いつでもいらしてください。博麗の巫女さん」
博麗の巫女はそのまま店を出ていった。そうしてまた夜がやってくる…
店を訪れるのは妖怪や、人間の有力者達。力を持った存在が多く出入りしていく…。
そう、ここは人と妖怪が入り交える店。
そして、妖怪という有力者達の生き様を表す為の…俺の欲を満たすための居酒屋に過ぎない。
今日もまた、妖怪がやってくる…。その生き様という宝を引き下げて…………
好評なら続きます