東方刻銘録~鬼が出るか蛇が出るか~    作:ライラ

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安定のキャラ崩壊回?



香霖堂と刃物

「ここが香霖堂か」

 

 額に浮かんだ汗を拭って江月魁斗は目の前の建物を見上げた。

 鬱蒼とした森の外縁部にひっそりと建つ木造家屋。店名を冠した看板が掲げられているので間違いは無いはずだ。

 話に聞いていた古道具屋、というイメージには上手く合致してはいると思うのだが、何を思ってこんな辺鄙な所に店を構えているのか、その理由が思い当たらない。

 

「ま、入ればわかる事か」

 

 ぱたん、と手帖を閉じて懐にしまう。この手帖の前の持ち主が気を効かせて幻想郷の簡略な地図を書き込んでくれたのは素直にありがたかった。

 戸を押しあけて店内に足を踏み入れる。 

 

「へぇ……」

 

 なかなかいい雰囲気だ、と感想を漏らす。

 夏の日差しが硝子戸を通し、薄暗い室内に陰影のコントラストをつけていた。その加減がまた絶妙でやけに落ち着くのだ。

 店の暗がりに目が慣れると、今度は雑多な商品達に注意が向く。

 第一印象は物置だった。ひたすら押し詰められるだけモノを押し込んだイメージ。

 不可思議な形をした置き物や、使用用途のわからない置き物。小じんまりとした調度品達。

 その様がどことなくにとりの工房に似ていたからだろうか、初めて訪れたという感じはあまりなかった。

 

「しかしまあ、こうもワケのわからない道具ばっかじゃ買う側も困るんじゃないだろうか」

 

 真っ黒な箱のようなソレの表面をぺたぺたと触りながら首を傾げる。何故かその上には木彫りの熊が鎮座していた。

 

「ほほう、それに目をつけるとはお目が高い」

「のわっ」

 

 突然背後から聞こえてきた声に飛び退くように踵を返す。

 そうだ、ここが店なら当然その主が居る。というかその主の方に用があったのをすっかり忘れていた。

 触ってはいけないものだったのだろうか、と若干ビクつきながらも魁斗は顔を上げる。

 

「ようこそ香霖堂へ、僕が店主の森近霖之助だ」

 

 其処に居たのは魁斗と同じくらいの背丈の男。

 優男然とした雰囲気の、色素の薄い髪色をした店主の眼鏡の奥では金の瞳が理知的な光を放っている。

 

「これは名を『カラーテレビ』といってね、外の世界で三種の神器と呼ばれていたものだ」

 

「サンシュノジンギ?」

 

「そう、別名玉璽(ぎょくじ)とも言う、天皇が日本国を統治する上での権威の象徴だ」

 

「はぁ……そんな大層な肩書の物が古道具屋にあっていいのか?」

 

「ここに流れ着くという事は外の世界で忘れ去られたという事だ、構わないだろう。

 それに、厳密に言えば天皇家に伝わる三種の神器というのは剣と鏡と勾玉であってこのカラーテレビではない。

 これはいわば外の世界の文明の発展に伴って作られた代替品ではないかと僕は考えている。

同じ道具が数多く幻想郷に流れ着いていることからも外の世界では唯一無二の希少品というわけではないんだ。戦後の高度経済成長期に大量生産されたという記述もあるしね。

 この道具は遥か遠方と像を繋ぐ為の道具で、移動すること無く遠い地の光景を見ることが出来る。つまりその本質は『光』にある、そして光を司るといえば天照大神の領分だ。

 故にこれは天照大神の分霊を宿す神棚的な役割を持つと同時に――――」

 

 滔々と展開される店主の口上。

 なんというか、これは――――

 (………いかん、意識が朦朧としてきた)

 魁斗は必死にあくびを噛み殺して話を遮る。

 

「あの、すまないがその話は長引くんだろうか」

 

「ん、お求めの品は他に在ったのかな? 悪いが『記憶』の類はうちの品ぞろえにはないよ」

 

「どうしてそれを!?」

 

 さて、どうやって話を切り出そう、そう思った矢先だった。

 まだ名乗った覚えも無いのにこちらの事情を察しているかのような物言いを店主、森近霖之助はした。

 

「ああ、これだと誤解を招く物言いだったね。事前に断っておくと僕は君の知人ではない、天狗の新聞で記憶喪失の男についての記事を見て、偶然知っていただけの第三者だ」

 

「なんだ……紛らわしい。てか、記事に載ってたって、射命丸のやつ、いつのまに」

 

 記事になる様な面白可笑しいことなんてしただろうか、と首を捻る。

 もしくは、彼女なりに彼の事を気遣っての結果なのだろうか?

 

「普段は里の人間の依頼で迷い猫とか落とし物とか、そんな感じの情報が載っている『失せ物探し』の一角だがね。

 自分勝手なやつだらけの幻想郷でそんなコーナーに意味があるのかは不明だが、もし江月魁斗の知己がそれを読めば何かしらの反応はあるだろう」

 

「なんだよ、オレは迷い犬か何かかよ……」

 

 素直に喜べないな、と頬を掻く。

 しかし、そうした公共の場を使っての情報発信を魁斗が思いつかなかったのも事実だ、今度会ったら酌くらいは注いでやろう。

 

「君の飼い主を探す手伝い、というのはまた僕の領分ではないからね。

 商人は商人らしく品を売り買いするのが常だ。さて、そういうわけだが、今日はどういう御用件かな?」

 

 事実、こうして余計な説明の手間が省けたのも事実なのだから。

 

 ◆◇◆◇◆

 

「ふむ、まさか鬼にまで名が知れていたというのは意外だが、おおかた霊夢あたりを経由したんだろう。

 さて、それにしても冶金、鍛冶についての知識、技術だけが記憶の手掛かり、か」

 

「まあ、な」

 

ざっくりと身の上話と要件を伝え終えた魁斗は空いた椅子に腰掛けて思案に耽る店主の反応を窺っていた。

 自分でも説明できない神への憎悪については、意図的に伏せた。そうそうあけっぴろげに語って楽しい話題でもないだろう。

 誰々が誰々を恨んでいる、なんてものは当事者くらいしか普通は知らないというのもある。

 

「鉄を玉鋼に変えた、というのはそんなに珍しいことなのか?」

 

 そう、ヤマメに指摘されて初めてそれが『異常』であると気が付いた魁斗の『異能』

 目下のところ、それこそが出自を解き明かす糸口なのだ。

 難しい顔で霖之助は唸る。

 

「珍しい、というか条理の業ではないね。玉鋼は踏鞴製鉄という工程を経ねば手に入れる事は出来ない。

 鉄を精錬する過程で薪に含まれる炭素が一定量化合したものが玉鋼、と呼ばれるわけだがその土蜘蛛の言った通り、君はおそらく同じことを炉の熱と、大気中の炭素だけで再現したのだろう。

 仮に、それが可能だとするならば鉄の温度を、密度を、強度を、それら全てを瞬時に理解し、槌を振る最適解を導き出さなければならない。

間違いなく幻想の域にまで昇華された技術だ」

 

 実に興味深い、と手に持った刃を陽の光に掲げながら店主は言う。

 今彼が検分しているのは魁斗が打った包丁だ。

 実際に教えを請うにも実物を持参する必要がある、しかし刀ではかさが張るしなにより重い。というわけで製法はそのままに刃渡りだけを短くした結果が包丁というわけだ。

 

「でも、ヤマメが言うにはそれはもう五百年以上も前に失われた技術らしいが……」

 

「流石、土蜘蛛だな。名だたる名刀と対峙して来た妖怪の言葉には含蓄がある。なぜ冶金のプロや長命の鬼から一介の商人に話が及ぶのか疑問だったが、そういうわけか」

 

「どういう意味だ?」

 

「それくらいの時代に活躍した天下人たちの言葉にこういうものがあってね」

 

 かたり、と霖之助は慎重に包丁をカウンターの上に置く。

 まるで、下手をすれば台ごとその刃が己を切り裂く、とでも言わんばかりに。

 

「『刀と人は新しいものほど役に立たない』、人に関しての事の真偽はまあ置いておくとして、刀に関してはまさにその通り。

 いやはや、比べられる側にとって実に災難なことだと思うが、刀剣の製法についてはとっくの昔に極められてしまっていた、つまり新しく何かを付け足すような余裕が無かったんだ。

 鉄器とは人の営みを豊かにする技術の象徴で、武器は力の象徴、当時どれだけの人間がその領域にまで技術を昇華するために腐心したのか。不折かつ不曲、この二律背反の境地に達したのはそれこそ奇跡のようなものだよ。

 確か、土蜘蛛や鬼達をもっとも多く斃したのもその時代の刀だったかな。そりゃ彼女達の口数が減るのも仕方ない」

 

有名な鬼殺しの名刀と、土蜘蛛殺しの名刀が姉妹刀、つまり製作者を同じくするのもある意味では必然だったのかもしれない、と。

 

「そんな凄い技術があったんなら、なんでそれが途絶えたんだ?」

 

 しかし、不満げに魁斗は眉をひそめる。

 一度至高の領域に至ったのならそれを手放す理由が理解できない。

 純粋なその疑問に、僅かばかりの憂慮と過ぎし日々への回顧を込めて店主は答えた。

 

「簡単さ、人々が刀を向ける相手はもはや人智を超えた妖怪ではなく、同じ人間だったのだから。

 わざわざ人間を斬るだけなら一流の鍛冶職人が己の一生をかけて鍛え上げた一降りの刀でなくとも、見習いの打ったナマクラで事足りる。いや、それどころか人を殺すだけならば鉛玉でも可能だ。

 時は戦国時代、刀を持つ手だけは山ほどあったから求められたのは切れ味よりも生産効率だ。

 むしろ、切れ味が良過ぎるあまり後の世に妖刀と断じられて幕府に放逐された刀もある、

 ――――たしか打ち手は……千子村正と言ったかな」

 

 おそらくそれが最新の名工にして最古の技術の伝え手だったと、そう語る。

 かくして世から至高の打ち手の業は失われ、人の世は妖怪を怯える時代から隣国を憎む時代になった。

 神魔両断の一振りよりも、千振りのナマクラが人の世を動かす時代だ。

 

「なんというか……」

 

 胸糞が悪い、腹が立つ、認められない。

 魁斗の胸に真っ先に浮かんだのはそんな感情だった。

 刃とは、そうあるべきでないという是正の怒り。

 

 抗いきれない理不尽に立ち向かうために刀とはあるべきではないのか?

 

 正しきものが認められない憤りともいうのかもしれない。

 きっと、その感情も、思考も、記憶を失う前の魁斗の物。だからこそ目を背けることは許されないのだ。 

 その内心を知ってか知らずか、香霖堂の店主は肩をすくめる。

 

「しかし、悪いね。さすがの僕も刀を見ただけでどういう流派の一品か見極める力は無いんだ。

 神代……天津麻羅やトバルカインの時代から延々と輩出されてきた名工達の数なんてのはそれこそ数えきれない」

 

 審美眼には自信があるのだが、と歯噛みする様は本当に悔しそうだった。

 

「そうか、まあ突然押し掛けたのはこっちだからな。それに少しは自分がどういう奴なのか分かった気がするよ。収穫が無かったわけじゃない」

 

 もともとは酔っ払いの言をアテにしたわけだからな、と気遣う様に苦笑して魁斗は踵を返した。

 さて、全部振り出しに戻った、とまではいかないがこれでまたアテは無くなってしまった。

 

「このまま気の向くまま散歩してれば案外きっかけが見つかるかもな」

 

「おっと、それなら一度人里に出向く事をお勧めするよ」

 

「うん?」

 

 どうにも何気なく漏らしたひとりごとを聞かれていたらしい、というかまだ店内なのだから店主の耳に入るのもおかしな話ではないのだが。

 唐突な推薦に首を傾げる。

 

「伊吹萃香が僕をアテにした理由の一つは僕が『人間側の事情』に通じている商人だからだろう。

 残念ながら僕自身はあまり役に立てなかったが、それでも人間の中でそういう古い【知識】に精通している知り合いはいるんだ」

 

 そう言い、霖之助は何か包みを取り出した。

 あまり大きくはない、重くはないがその形や質感から察するに――

 

「これは……本?」

 

「ちょうどその知り合いのところに届けようと思っていた本でね。代わりに届けてくれると助かる。

 この店の前を道なりに進めば人里に着く。そこに稗田邸という大きな屋敷があるから、僕の名前を出して事情を説明すればそこの主人は力になってくれるはずだ」

 

「それは、ありがたいが。いいのか?」

 

 なんというか、世話になりっぱなしな気がする、と魁斗。

 

「出不精な店主を助けるくらいに思ってくれればいいさ。茶菓子の類も美味い筈だからそれをアテにしたっていい」

 

「なるほど、俄然興味が湧いてきた」

 

「またのご来店をお待ちしているよ」

 

 それでは、と霖之助の包みを手にとり、礼を言って魁斗は人里への道へ進む。

 足取りは軽い。

 あるかどうかすら分からない記憶のきっかけへの不安より、まだ見ぬ地への好奇心と茶菓子への興味が大きかったというのはご愛敬。

 

 ▼▼▼▼

 

「ふう、柄にも似合わず節介を焼いてしまったな」

 

 商売人としてのサービス、というには商才がない我が身としては苦しい言い訳だ。と霖之助は一息吐きながら思う。

 そもそもまともに商売をするつもりならこんな場所に店を構えるはずがない。

 単に、あの青年の出生。自分と同じ【半人半妖】として思うところがあったのだろう。

 

 人に非ず妖怪に近きもの。

 妖怪に非ず人に近きもの。

 

 両者の血が混じる故に半人半妖はどちらの生き方も選べるが、それ故に決してどちらかに近づき過ぎることは出来ない。あくまでどこまでいっても半端モノなのだ我々は。

 それが霖之助の持論だった。

 

「そうとは思っていない者もいるようだけれど」

 

 似た様な境遇ながらも人里で教師をしている半獣人の姿が脳裏を過ぎる。

 彼女の生き方もまた彼女の経験がもたらしたものだろうから反論はしない。

 どちらにせよ、半人半妖としてどういう生き方をするのか選ぶのは今を生きる彼の権利だ。

 しかし、今のままでは妖怪に拾われ、妖怪と共に暮らす江月魁斗は【人として】の生き方には縁遠い。 要はつり合いがとれていない。選択肢が狭められている。

 

 だから、少しでも人間の生活に触れさせることで天秤の釣り合いをとらせようとしているわけだ。

 記憶を失う前の彼がどういう生き方をしていたのかは知らないが、今のままでは危う過ぎる、言いかえるならば純粋過ぎる。

 ただ硬く鋭いだけの刀が容易く折れる様に、折れないためには多少のしなりが必要だ。

 

「ま、記憶が戻れば全部徒労なわけだから本当に要らぬお節介だな」 

 

 それにしても、と彼が礼代わりに置いて行った包丁を再度持ち上げてうなる。

 名工の作だと言われる刀の類なら幻想郷には真贋さえ問わねばそれなりの数が流れ着いている。それらと比べても遜色ないどころかその多くと比べても十分に勝っている出来ではないか。

 

「ただの粗鉄からでもこれだけの刃が打てるなら、しかるべき環境と材料を用意すればいったいどうなるのやら」

 

 例えば、ただの鉄ではなく刀を打つための玉鋼。いや、幻想の金属とすら言われるオリハルコンや緋々色金を用意すれば?

 例えば、ただの炉ではなくより火力を出せる炉。仙人が丹を作る様な八卦炉を用いれば?

 それこそ香霖堂の蔵の奥で眠っているかの霊剣、草薙の剣にすら匹敵する一振りを打てるのではないだろうか?

 と、そこまで思考して頭をふる。まったく馬鹿らしい。

 

「そこから先は商人の領分ではないな、まったく。餅は餅屋だ」

 

 欲を出し過ぎてもよい事はない、と己を戒めていた時だ。

 店の戸口に付けた鈴が鳴る。来客だ。

 

「あら、薬でも搗くのかしら?」

 

 不思議そうな顔をしているのはメイド服の少女(香霖堂にとっての数少ないお得意先である)の十六夜咲夜。

 幻想郷では珍しい服装ではあるが相変わらず瀟洒にそれを着こなしていた。

 

「いらっしゃい、うちはいつでも古道具屋だよ。それに、竹林の医者には逆立ちしたって叶う筈が無い。

 彼女等がいつ般若湯の商売を始めないかとビクビクしているのは酒屋だろうね」

 

「まさか、それで頭を抱えるのはお寺の住職くらいでしょうに」

 

 くすくすと銀髪を揺らして咲夜は笑う。

 般若湯、というのは禁酒の戒を破らずに飲酒をするために大昔の坊主が編み出した「これは酒ではなく薬ですよ」という屁理屈だ。

 十字架に背く吸血鬼の従者だというのにこの手のジョークにも通じている辺りが彼女の瀟洒さの所以なのだろうと霖之助は思う。

 いかなる事態にも悠然と、冷静に、最善の対応を取れる彼女の様な人材は自己主義者の多い幻想郷では貴重だ。

 

「それで、今日は何がご入り用かな。つい先日清製の茶器が入荷したばかりだよ」

 

「いえ、今日は調理器具を新調しようと思いまして………あら?」

 

 メイドの視線が霖之助の手の内の包丁で止まる。

 ほんの数瞬、その表情の裏でどのような感情が交差したのか―――

 

「店主!」

 

 若干、否、かなり食い気味に咲夜は霖之助に詰め寄った。

 

「は、はい!?」

 

 普段の彼女の様子からは考えられない豹変ぶりに狼狽する。

 いかに美女とはいえ、真紅の瞳に覗きこまれてどぎまぎするほど霖之助も若くはないが、なんというかこれはそういうのとはまた違う迫力だ。

 

「その包丁、売約手続きは? まだなら三本ほど頂きたいのだけれど、値段は惜しみません!」

 

「い、いや、これも今日入荷、したばかりだよ。しかし、何故に三本も? 実用にはこれ一本で百年は保つと思うのだが」

 

「それはもちろん、観賞用、保存用も必要だからに決まっているじゃないですか。

 こちらに来てから常々思っていましたが日本の刃物はあの反りといい刃紋といい切れ味といいまさに芸術よね。

 より流麗に、美しく、肉を断つために特化したあのフォルム。

 大きな肉を捌く時なんかすっと筋の間に入り込んで、殆ど抵抗なく切れるのならより鮮度を維持したまま労力を削減出来るし、お料理のレパートリーも増えそうで、ああもう考えるだけでも楽し……こほん、失礼」

 

 どうやら、人目があることをすっかり忘れるほど自分の世界に入り込んでいたらしい。

 恥じる様に俯く咲夜。

 人間、誰しも他人の知らない一面があるとはいえ、これは予想外だった。弾幕ごっこにもナイフを持ち出すあたりある意味『らしい』のかもしれないが。

 

「安心してくれ、客の、それもお得意様のプライバシーくらいは守るよ」

 

「……助かります」

 

「しかし参ったな、悪いが同じものを三本となると……」

 

「ここが古道具屋だと言う事も失念していました。忘れてください……」

 

「いや、そういうわけではなくてね。その包丁は作った刀工から直々に譲り受けたものなんだ。だから同じものが欲しいと言うならそちらに話を通さないと――――」

 

 爛々と目を輝かせるメイドの応対をしながら、

 しかしまあ、縁とは不思議なものだなと胸中で霖之助は呟いた。

 偶然、刃物を打つ術を身に付けていた記憶喪失の青年がその作を持ち寄ってきたその日に、これまた偶然刃物フリーク(気を悪くしそうなので直接は言わない)が店を訪れたなどと。

 ここまでくると何らかの超常の力が関与しているのではないかと疑ってしまうのは幻想郷の住人ならではだ。実際、目の前のメイドが仕えているのは運命を操る(真偽は確かめようがない)力を持つ吸血鬼なのだから。

 

 

 

 




今回は元ネタ解説、補足は特になし。

胡散臭いこーりんのウンチクを再現し切れなかったのは心残りですね。原作でも彼のウンチクは神主直々にほとんど妄想とか言われてますが、裏を返せばメタ的なネタも仕込めると言う事なので今後もちょくちょく登場するかもです。
案外ただの妄想みたいなウンチクが主人公の正体を言い当ててるかもですよ(笑)

おそらく次回からは人里回ですが、当方四月から新生活始まるので更新スペースは落ちます。すいません。
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