ラクーンシティを好奇心で進む狩人様   作:さや

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真面目にできない。ゆるゆる具合。


そこに獣が居るなら狩ろうぜ!糞共も狩る。

狩人様はいつだって疎外感に晒されているものだ。

ただ本当によそ者なので、そう強く反発もできやしない。『失せろ!』や『よそ者め!』やら『死ね!』等々の罵倒と共に殺しに掛かられても、精々返り討ちにぶち転がす程度の反応しか返せない。異邦からやって来た狩人様の立場は弱い。

 

なので現在冒涜的カリフラワーの頭部に鉛玉めり込ませた美女ことアリス。彼女に性犯罪者を見る様な厳しい視線を向けられてもめげない。

そして血の含まれない、唯の鉛玉の散弾程度ならカリフラワーはしょげない。カリフラワーでなくてもしょげないが。

なんせ普段、獣にぶち込む水銀弾をしれっと対人でも叩きこむ人種が狩人だ。なんなら大砲を一個人に向けるとか言う、意味わからない事をする種族が狩人だ。

残念な事に、一世紀程未来の性能のが上がった銃では屁でもない。

 

「それで? あなた達の言う狩人って?」

 

警戒心も露わだが、銃口を下げたアリスの胡乱な目に晒されながら狩人共もどう言ったものかと戸惑うしかない。

取り敢えずの害は無いと判断はされたが、自分達も状況が分っていない。気づいたらここに居訳で、説明をするのが難しい。

 

良く覚えて無いが、何らかの病を治したくて訪れたヤーナムで輸血をしたら勝手に狩人に成って居た、という有様だ。ほぼ不可抗力で成ってしまった上に、何の説明もなく『獣を狩れ』と言われた。ついでに自身の筆跡で『青ざめた血を求めよ』と言う、混乱しかし産まないメモ付き。それでもありとあらゆるモノを狩って居たら立派な狩人に成って居た。

現代っ子アメリカ在住アリスにそんな話をしたなら、怪しい契約書に気軽にサインをするなんて、と飽きれられそうである。だが仕方ないのだ、当時は血の医療に縋ってでも生き永らえたかったのだ。病名は忘れたので知らんが。

 

正直ヤーナムは善良な民間人からしたら、クソな組織のクソな所業が絡み合い過ぎて、クソ塗れの据えた臭気立ち込める混沌だったので何も知らない真っ当な思考の人間に説明するのは途轍もない難問なのだ。

狂人の叡智にアイアンクローを最低60回決めて、赤子の声が聞こえる様に成ってからでなければ理解して貰えそうにない。上位者の叡智なら30回でもいい。

獣性も抑えられて一石二鳥で、素晴らしい。

 

しかしそんなに手持ちが有る訳なく、ましてや狩人共も『全て』を知っている訳ではない。

なのでさっくりと、とある山間部にある医療の進んだ古都では『獣の病』という物が蔓延し、その罹患者を『処理』する人間たちが狩人だと説明する。

序に獣の病はその土地の『医療』が原因である。教会の下の方は、何も知らない純粋な医療者だったかも知れないが、上の方はもうお察しである。知って居て『聖血』をじゃんじゃんか使って居た。言い逃れの余地はなくギルティである。そうして蔓延った獣を狩る為に狩人もその医療を手段にして居ると伝える。

ちなみにミイラ取りがミイラ案件も割と発生するし、そんな狩人を狩る狩人まで用意されているのだから業が深い。

ビルゲンワースや、血族、医療教会の発足に、古い時代の人々。上位者に、檻の変態おじさんに関してまで話していてはらちが明かない。複雑にすぎる。

 

話を聞きながら、物凄く不快そうな顔でアリスは眉間に皺を寄せる。

 

「どこの世界にもロクデナシって居るのね」

 

吐き捨てる様な言葉に、狩人達も頷く。基本的に古都ヤーナムは人間性を無くした獣と、狂人の巣窟だ。そうでない者も死ぬか狂うので、最終的に獣と頭おかしい狩人と上位者を悪夢で煮詰めた闇鍋になる。むしろロクデナシしか残って居ない。

そして同意を示した狩人共も、繰り返す悪夢に残って居るので頭のおかしい輩だ。

 

「二人も獣……? に成る可能性が有る訳ね。と言うかそっちは獣とは違うの?」

 

手持ちぶたさに脳を震わせる苗床頭をジト目で見つめる。

 

「この人は別方向に突き抜けた結果で、獣ではないです。吐き気を催す外観ですが間違いなく狩人で、協力できる人間です」

 

「黙れ。吐き気を催す変態」

 

「確かに、人間らしさは有るわね。アンブレラ社とも関りは無いようだし……」

 

幾ら倫理観をかなぐり捨てた邪悪なブラック企業でも、こんなふざけた連中までは抱え込まないだろう。あの会社だって、裏の顔を知らない善良な市民も勤務して居る。目前のこれ等は目立ちすぎる。

頭の悪そうな会話をする、物理的にも頭部装備がおかしい……前言撤回。全身おかしい二人を見ながら息を吐く。

 

それにその心配は無用だ。大丈夫。もし血に酔い獣のに堕ちても、人としての尊厳を守るためしっかりと殺してくれる。悪夢を巡り続けた狩人の覚悟だ。

それはそれとして、何も無くても血の遺志とか穢れた血目当てに殺し合うのも狩人だ。あとはただ楽しいから殺し合うのも狩人だ。断じて血に溺れている訳では無く、しっかり保持した人間性から『よし殺すかー』と思い立つのだ。頭は大丈夫だろうか。

 

「自分達も聞いていいかな? この死んでるのに動くこれはなに? 亡霊とも違う。この妙な街は何が起きて居るんだ」

 

足元に散らばる腐肉を指、だか触手だか判別つきずらい手で指し示す。その微細な挙動でさえ全身の触手は震え、なんともファンシーな光景。いい夢が見れる。

 

「アンブレラ社、も知らないのよね?」

 

残念ながら、一世紀程過去の田舎街で記憶もないまま臓物と血のりを巻き散らしている奴らなので、そんなハイカラな製薬会社など知る由もない。

ついでにガソリンで走る車も知らないし、便利な通信機器も知らないし、空飛ぶ火葬サービス付き棺桶(パニックホラーのヘリ)なんてもっての他。

ウイルスなんて言葉もピンと来ないし、生物兵器という概念も違いすぎる。精々ペスト患者の死体でも放り込む位の認識だ。

聖職者の獣みたいな奴を戦場に放り込もうだなんてキチガイの発想である。……教会が脳の麻痺した大男に頭悪そうな銃を持たせようとした気がしないでもないが。成る程そういう事か。基本的にキチガイしか居なかった。

 

獣の病以上に伝播しやすく、殆どの確率で狩人の様に人間性を保持し続け内なる獣性を抑え込み力のみを利用する事が出来ず、もれなく獣になる。何という害悪。

現在Tウイルスにより狩人となったのはアリスだけの様だ。

 

火災に暴動、破壊跡。ついでに人の死体の転がるヤーナム染みて実家の様な安心感を覚える通りを、ざっくりと説明しつつ先導するアリスの後に続きながら狩人共はぼんやりと理解する。

 

何でそんな所に放り出されたのかさっぱり分からないが。

この次元のラクーンシティでは時計塔の鐘も鳴っていない。鳴って居ないというか落とされて居ない。

 

「あなた達はどうするつもり?」

 

アットホームな通りを抜けて訪れた銃砲店で、最新のちっぽけで面白みのない銃器を興味深々と物色する狩人を振り返りアリスは尋ねる。

 

古風な祭服の不審者と、最新鋭の火器。実にミスマッチ。

歩く屍が余りにも脆いので、獣狩りに使う銃はしまいっぱなし。アリスは似非聖職者が銃を握って居る場面を見て居ないので、そのちぐはぐさに違和感を抱いた。

ヤーナムでは、聖職者の格好をした血気盛んな狩人が、あっちこっちでぶっ放して居るので狩人共は一切共感は出来ない。

 

歩く屍()が溢れてるなら狩るだけだな」

 

悪夢の苗床頭は寄生虫を握って殴る派なので、銃よりもヘッドライトを弄りながら答える。残念ながら苗床カレルを刻んだ顧客を想定した商品はない。

それに熱を発しないLEDでは獣も怯まない。

 

「私達は狩人ですからね。人を襲う獣は狩ります。その方が、獣に成ってしまった人にもいい筈です」

 

旧市街の古狩人達はそうは思わなかったかも知れないが。

死んだ体と麻痺した脳で飢餓に這いまわるよりはきっと良いに違いない。

封鎖された旧市街ならまだしも、ここにはまだ正常な人間も居るはずだ。

それと、単純に聖杯を荒す予定だったので血の遺志とか欲しいし、内臓に腕を突っ込みたいというフラストレーションの解消だ。異邦の狩人様は好奇心のままに走る、欲望に忠実な奴らだ。流石にワンタッチ世界崩壊まではしないが。いや、機会が有ればやらかす狩人様が出て来るかも知れない。

 

本音は兎も角、狩人達の言葉にアリスは思い出す。

地下で共に戦った仲間も言っていた。『魂を無くして彷徨うだけの者になんか成りたくない』と。

 

そして察する。狩人を名乗る怪しい風体の二人も、延命を望んだとは言え記憶を無くし、拒否権も無いままに人では無い悍ましきモノに変えられてしまったのだ。その医療がどういう物か知らずに、たった一つの希望として縋ったのだ。

それでもこれが使命なのだと、獣を狩っていたのだろう。自分達と同じように、医療に救いを求めたのだろう人間を。せめてもと人の尊厳を失わせない為に酷く醜悪な絡繰りを全て知った後も。自我を保ち、縁も所縁もないであろうこの街でも『人間』を守ろうとしているのだ。

 

なんて、酷く人間性と善性満ちた事をアリスは考えて居るが基本的に狩人様は複雑な事は考えていない。

悪夢に飲まれた当初は、精神を軋ませながら獣狩りの夜を駆けて居たかもしれないが、ここまで来ると一回転して狩を愉しんで居る。

苗床頭など、好き好んで人でない者の姿をとって居るのだ。

 

「そういう君はどうするんだ?」

 

大型のハンドライトで自身の頭部を下から照らすなんて言う、こてこてホラー演出に興じながら、件の好き好んで異形に成ってる苗床頭が逆に聞く。

何もしないで存在するだけなら、この冒涜的カリフラワーにも慣れて来たアリスは装備を確認しながら、一つ深呼吸をする。

 

「私は……アンブレラ社の不正を暴くわ」

 

その言葉に狩人共は目から鱗の気分だった。

不正を暴く。

ヤーナムでは絶対に出来ない、というか既に手遅れ、無意味、人間の愚行なんて上位者の掌の上。そんな上位者までも利用するやべーやつ。誰が悪いか、何が悪いかと言うより、最早回帰不可能、不可逆的瓦解。糾弾されるべき人々も、人として存在しない。ただしミコおじさんは除く。そんな中ではあり得なかった発想。

 

そんな面白そうなもの、好奇心の権化たる狩人様が首を突っ込まない訳が無かった。

縁も所縁もないし、すっかり悪夢に漬かり過ぎて義憤もクソも無いけれど。胡散臭い契約書にサインした訳でも無いのに一人で狩を成そうとするアリスに協力したいと思ったのは本心だ。

 

 




聖歌隊の格好の狩人を使ってる、リアル友人が「聖歌隊とヤハグル狩人の百合が見たい。百合を出せ。殺伐血みどろ百合百合させるんだ」と謎の要求をしてきました。
これが完結出来たら考えます。多分その注文は無理ですが。
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