ラクーンシティを好奇心で進む狩人様 作:さや
正直数字にびっくりしています。途轍もなく嬉しいのですが、脳味噌サクサクにスナック菓子の様な軽さで書いて居たので、戸惑いも大きいのです…。
本当にお気に入りと評価ありがとうございます…あのこれ、私死ぬんですかね…?
そしてこのお話は相変わらずスナック菓子の様にスカスカでサクサクです。
アシュフォード博士は何よりも大切な娘を捜すべく、ラクーンシティの防犯カメラへハッキングを行っていた。
本来ならハッキングなどしなくても、アンブレラ社から与えられた権限でアクセス出来た筈なのだが、その接続は全て蹴りだされていた。
だが幸いな事に、と言うのも微妙だが子供頃から障害を抱えコンピューターの前に居る事が多かった彼には造作もなく、街中に設置された防犯カメラとデータベースを使いアンジェラ・アシュフォードを見つけ出す。
賢い彼の娘は、学校に隠れていいる。
無事とは言い難いかも知れないが生きている!
そして生存者を捜す。アンジェラを無事に地獄の様な街から連れ出す事のできる人物を。
その中で奇妙な映像が飛び込む。
ありのままを言葉にするのなら、『UMAと大型バイクに二人乗りし暴走した挙句に店舗へ突っ込み大炎上する大仰な衣装の聖職者』である。
意味が分からない。
彼の優秀な頭脳で理解出来ないのならば、誰だってその映し出された物の真理など判別付く筈がない。
むしろ理解してはいけない類のものだ。
画像の荒い防犯カメラの映像だが、明らかに人間ではない形であり、世界最大の巨大企業のお膝元で十全に発展した都市で目にする事のない様な世紀単位で古臭い姿の人間。どちらも人物認証が一致するデータは、当然の様に見つからない。というか双方顔が確認出来ない、または顔がない。
一瞬呆けた様に画面を見つめるが、そんな場合ではないとすぐさま生存者の検索に戻った。
━━・・・
目的は定まった。
それはいつも通り、獣を狩り続ける、だ。
アリスの言う『不正を暴く』と言うのは非常に楽しそうだが、具体的に何をしていいのか分からない。秘密を暴くのは大好きだが、『不正を』と付くと首を傾げてしまう。
クソ野郎共を並べて順番に腹の内を曝け出せばいいのだろうか? もちろん狩人共の言う腹の内とは臓物のことだが。
だがそれではクソ共が漏れなく挽肉になるだけなので、何も変わらない。
必要なのは、行った事への糾弾と民衆による制裁だろうか?
呪詛溜まりとか投げつけるのだろうか。
ああでも悲しい事に、糾弾される組織の中には何も知らない善心でもって働いていた善良な人々も居るのだ。
英雄と呼ばれた狩人とか。
そういった、内部の人間の証言や証拠が欲しい。とアリスは言う。
この地獄の様な騒ぎに成って自分達が加担させられていた事に気づいた社員も居るはずだ、と。
もし狩人達が獣を狩る際に、そういった人間、この事態に成れば生存者全てが証人だ。この街に安全な場所などそうそう無いだろうが、獣は全て狩るなどと言う気概が有るなら保護して欲しい。
という事らしい。要約すれば。
成る程、オドン教会とヨセフカの診療所的な。と狩人共は納得した。
後者は保護では無いだろうとか、むしろアンブレラ系列のクソだろうとかは言ってはいけない。一応命はあるし『獣には』成らない。それを言ってはオドン教会にはステルス状態で絶対孕ませるマンな上位者がいる。偽医者の様に獣に成って居ない人間なら誰でもOKな無節操では無いが、どちらにしろ正気の人間削減活動を行う。
ただ、やはりラクーンシティに安全地帯は存在しないので、狩人共が狩って狩って狩りまくるのが一番手っ取り早いだろう。もしかしたら、この街の市民皆殺しレベルの獣を狩る必要に迫られる可能性が有る訳だ。それはそれでこの街はとても清潔になるかも知れない。
やはりいつもと変わらない。
効率を考えて、狩人共は狩人で行動することにしたし、アリスもそれに異存は示さなかった。協力するとは言われても、明らかに何処かオカシイ連中とオトモダチに成る気はこれっぽっちもないのだ。
あくまで、ただの協力関係。
その為幾つかの注意事項、Tウイルスから発生した獣には噛まれても、引っ掛かれてもいけない。数時間もしないうちに奴らと同じものに成る、等を言い含められて別れた。
先程聖歌隊の皮を被った脳筋がしれっと血を舐めて居た事は黙っておくことにした。
普段から良くわからない血液だとか、汁だとか、毒だとか、色々浴びている上に、片方はへその緒3本分が含有されたボディだ。今さら変な成分がもう一つ添加されても大した問題ではない。はず。
もし脳筋に何かあれば、神秘カリフラワーが美味しく遺志とか頂いておくだけだ。悪夢は巡り続けるので、また鐘を鳴らせば会えるだろう。お礼参りとして殴り殺される可能性もあるが。
「貴女に血の加護が有りますように」
銃砲店からの別れ際、別段教会の関係者では無いけれど何か、一人で狩へ赴くアリスへ声を掛けられればと思ったカリフラワーは、まだ好青年風味に常識人ぽかった頃の友人の言葉を真似てみた。
「……それって呪い?」
当のアリスの反応はよろしく無かったが。
実際アリスは血によって狩人となり血によって狩りをする訳では無いので、血の加護も何もないから当たり前だ。
それでも激励の心算だった事は伝わった様で、あなたたちも気を付けて、と言葉を添えてくれた。
しかし狩人共は、どこまで行っても狩人だった。ナチュラルボーンサイコとの評判は伊達では無い。
ゾンビには気を付けたが、未知が沢山ある新しい面白い街で狩人共が色んな物に手を出し、爆破させたり、発狂させたり、本性現した
◆
確かに信心深い類の人間ではなかった。天国も地獄も信じては居なかった。そんな死後の世界何かよりも、日々どうよりよく生きるかの方が重要だった。如何に同期たちよりイイ服を着て、イイ車に乗り、イイ女を連れて歩くか。
そんな風に生きて居たのが、いけなかったのだろうか?
それは動く死体に追い回せれ、生きたまま食い殺される程の悪徳だっただろうか?
既に
神様、どうかこのクソなゾンビ共をどうにかしてください。
本当に虫のいい事に、天に祈りながら門の前からパニックに陥り、まともに進めない逃げ惑う人並みを掻き分け進む。
誰かの足を踏んで、誰かに突き飛ばされながら逃げ惑う。自分と身内の事しか考えられなく成った、パニックの群衆なんて危険物以外のナニモノでもない。
何とか、人の波を掻き分け脱し、安全な場所を求めて駆けだした。
人間の形は神に似ているという。では、天使とはどうだろうか?
突然そんな思考が巡ったのは、今にも死者の群れに取り込まれそうな自身の前に踊り出た姿が、あまりにも人間離れしていたから。
蒼白く冷たく気味の悪い光を内包した様な、菌類にもにたナニカ。
神々しさの欠片も無い、黒の襤褸切れから巨大な茸がにょきりと生え、それに人のような足が生え、二足歩行をし、触腕を振り回して居る。
うねる触手が薙ぎ払うのが群がるゾンビ共でなければ、間違いなくその茸人間を化け物とみなして居ただろう。
だが今は違う。
目の前の『天使』は間違いなく、自分をゾンビ共から守って居る! 何て素晴らしい! 神は間違いなく存在し、彼の贖罪を受け入れ、許し、こうして使いを送ってくださった!
そう思って見詰めれば、蒼白くくゆる光を内包したその姿は酷く神秘的で、空に輝く星々を思わせる。なんて美しい!
━━・・・
感動に打ち震える彼には今、冒涜カリフラワーの撒き散らすナメクジだって神聖なモノに映る。
そして手遅れな事に、悪夢の苗床頭にすっかり心酔してしまった。誰か鎮静剤を持ってきてやってくれ。出来ればラクーンシティの市民が飲んでも平気な奴を、だ。
効かないと分かりつつも、ある程度動きの癖がついてしまってるのでどうしても神秘汁をゲロってしまう。
名状し難き嘔吐現場にとうとう、ラクーンシティの善良でも悪辣でもない一般的な市民は感涙し拝み始めた。
恐らく発狂状態なのだろう。
すっかり周囲のゾンビが殲滅され、『神様』と足元で咽び泣く男に冒涜的カリフラワーは普通に恐怖した。
頭が、物理的にオカシイとは言え狩人様はヤーナムを訪れる前は一般人だ。
ましてや、能動的に助けようと思って狩って居ない。生きた人間が多い所には、匂い立つ血の酒を撒いた時のように、死者が群れるからそれに釣られて狩人様が寄ってきてるだけだ。安全地帯が無いのだから仕方がない。獣を狩れば、少し人間が生き延びる時間がまして、運が良ければこの街から出れるかもしれない。その程度。
そんなにありがたがれては、バツが悪い。
バツが悪いし、キモイので全力で逃げだした。苗床頭の異常者ルックと言えど、彼女は歴とした女性だ。
ヌルッとした、若干もたつく挙動だが頭部と触手濡れの全身をふゆふゆさせながら逃げ出した。
背後で誰とも知れない男が空を仰ぎ、そこに見失った『天使』の光を捜し始めていたが知ったこっちゃない。
◆
交通事故を、正しいシートベルトの着用により生還したアンジェラは、どうして良いのか分からずに学校へ戻って居た。
きっと、先生たちならこんな時どうすれば良いのか知っているに違いない。
でもそれどころでは無くなってしまった。
アンジェラが学校へ戻るのに、何処からともなく現れた顔色の悪い人たちが着いて来るのだ。いや、着いてきている訳でもないのかも知れない。
パパのお陰ですっかり他の子達と同じく歩けるようになったアンジェラを追い越して、ぞろぞろと学校内へ入って行ってしまうのだ。
その人たちは、当然の様に部外者へ注意しに来た先生たちに噛みついてしまった。驚いた彼女が慌てて先生へ話しかけても、先生は無視して、酷い顔色で立ち上がりふらふらと何処かへ行ってしまった。
それからはあっと言う間で、ふらふらと歩む彼らは次々と先生や生徒へ噛みつき、噛まれた人も皆酷い顔色で彷徨いだした。
お昼を過ぎるぐらいには、先生たちも、アンジェラの友達も嫌いな子も、知らない子も皆『お化け』に成ってしまった。
それでも『お化け』達は誰一人彼女に興味を示さなかった。
そして誰に教えられた訳でもなく、漠然と彼女理解出来てしまった。自分は最初からあの『お化け』達と同じモノなのだ、と。
それでも恐ろしいものは恐ろしくて、アンジェラは独りぼっちで学校に隠れ続けて居るのだ。
『でも、私、ずっとここにいていいのかな?』そんな考えがふと浮かぶ。そうすれば、どうするべきかも降って来る『私が迎えに行った方がいいのかな?』と。
彼女のそれは自問自答でしかなく、偶然やって来た窓の外に居る誰かへの問いかけではない。
パパが自分を置いていくなんて事は、これっぽっちも考えて居ない。
だってパパはアンジェラの事を何よりも愛しているし、アンジェラも父を何よりも愛して居る。
だからこんなに真っ暗に成るまで自分が一人で不安になっているのは、きっとパパに何かが有って迎えに来れないからだ。
彼女を連れ出した男たちが事故に遭ったように、父の方でも何か重大な問題が起きて居るのかもしれない。
よし。と一つ自分の答えを肯定する様に頷き、大切な『お弁当箱』をぎゅっと抱きしめて立ち上がる。
パパを迎えに行こう。
そう決意して、アンジェラ・アシュフォードは隠れていた学校を抜け出した。