少し前から執筆を再開していたのですが、自分自身この話の細かな設定を確認するため読み返していたり、推敲に割く時間が取れれなかったため投稿が遅れました
前回からの続きで、ナザリックに対抗するため周辺国家を纏めた同盟づくりを行っている中、同盟参加の最難関である王国の話です
「クソ! なぜこうなった!」
リ・エスティーゼ王国王位継承権第一位であるバルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフはヴァランシア宮殿内の自室にて、怒りとともにテーブルに拳を叩きつけた。
鍛えられた体躯から繰り出される一撃を喰らった木製のテーブルが、ミシリと音を立ててひび割れる。
いつもであれば怒りを発散するにしても、もう少し自制が利いたのだが、今回ばかりはそうもいかなかった。
今バルブロはかつてないほど追いつめられている。
王国内に於いて、悪評が広まり続けているせいだ。
それも王家そのものや、自らの義父が盟主を務める貴族派閥に関する悪評ではなく、バルブロ個人に対するものなのだから、堪ったものではない。
噂の殆どは事実無根であるため、下らないと一笑した上で、噂を流した者を不敬罪で死刑にしてやりたいところだが、一つ問題がある。
複数流れている噂の一つにある、王国内部に深く根を張る犯罪組織、八本指からバルブロが金を受け取っているという噂。
他の噂と異なり、これだけはデマではないことだ。
八本指の一部門である麻薬部門。その長である女から、バルブロは多額の金銭を受け取っていた。
個人的な領地を持たないバルブロは、自由に使える資金を殆ど持っていない。
歳費という形で国から引っ張ってくることはできるものの、歳費の流れは王である父、ランポッサⅢ世に把握され、場合によっては使い方に口出しをされてしまう。
そのため、自由に使える金を得る手段として、八本指と繋がりを持ったのだ。
八本指が王国全土に根を張る犯罪組織だと知ってはいたが、最優先すべきはバルブロが王となることなので、自分にとって益がある限りは見逃してやる。
受け取った金は、その口止め料でしかない。こんなことは誰でもやっていることだ。
だからこそ、納得がいかない。
「何故俺だけが!」
再度、拳に怒りが漲る。
事実として王国の大貴族と呼ばれる者たちの中で、八本指と繋がりを持たない貴族はほぼ存在しない。
それほど八本指は、王国内部に深く入り込んでいるのだ。
バルブロだけでなく他の貴族と八本指との繋がりに関しても噂は流れているが、その中でも明らかに自分との繋がりだけが、大々的に広められている。
一刻も早く噂を払拭しなくてはならないのだが、件の麻薬部門の王都に於ける本拠地から、バルブロとの繋がりを示す証拠を含め、撤収してからでないと万が一のことがある。
「だいたい。なぜ貴族どもは俺を助けない」
今できることがないという苛立ちが、貴族たちへの罵声となって漏れ出る。
人前であれば、素直な感情を晒すなど愚か者のすること。と取り繕うこともできるが、ここは自室だ。愚痴をこぼしても、外に漏れることはない。
「こんなときこそ次期王である俺への忠誠を示す絶好の機会だというのに。どいつもこいつも」
この噂が立ったことで、あろうことかバルブロを推していた貴族たちの間で意見が揺れ始めていた。
これは非常に大きな問題である。
そもそもバルブロが八本指から得た金は、義父であるボウロロープ侯率いる貴族派閥との会合や関係強化で使われるものも多い。
無能な貴族たちはその恩も忘れて、次王の座を争っている競合相手、第二王子のザナックに近づき始めているのだ。
今は表だって動くことはできないが、そうした者たちにも必ずや裏切りの代償を払わせてやる。
「しかし。こうなるとやはり今回の件を仕組んだのは、奴の可能性が高いか」
思考のついでに出てきた弟の冴えない顔を思い出す。
小太りで見栄えが悪く、剣の腕もからきし。
王としての威厳など欠片も持ち合わせていないザナックだが、小癪なことに頭が回る。
奴ならば、こうした卑怯な手段を使っても不思議はない。
いや、使うに決まっている。
小賢しい策を弄して、こともあろうに兄である自分を貶めるとは。
疑念は確信に変わり、ザナックに対する噴火がごとき怒りがこみ上がる。
仮にも血の繋がった兄弟だ。
自分が王に成った後、どこぞの馬鹿貴族たちの旗頭になるようなことでもなければ、殺そうとまでは考えていなかったが、こうなると話は違う。
いっそのこと、ザナックを始末してしまえば自動的に自分が次の王に──
「いや。彼奴もいるか」
王位継承争いをしているのは自分とザナックだけではない。
第一王女を娶り、最近になって父親から家督を継いだ六大貴族の一人、ペスペア侯も候補の一人だ。
血筋的には自分とザナックより遙かに劣り、支援している貴族も数だけは多いが、他の六大貴族をはじめとした大貴族から支援はないこともあって、大して気に留めていなかった。だが、仮にバルブロがザナックを殺し、その件が知られるようなことになれば、現在流れている噂と合わせ、ぺスペア侯が王位継承争いのトップに躍り出てくるかもしれない。
「となるとやはり手柄だ。こんなつまらん噂を吹き飛ばすほどの手柄を、俺自ら挙げるしかない」
以前から考えていたことではあるが、その思いはますます強くなった。
悪評が立ったからと言って、長子にして第一王子であるバルブロが即座に王位継承争いから落ちることはない。
せいぜい全員が横並びになった程度のはず。
だからこそ、今なのだ。
この状況下で他の候補者たちではできない大手柄をあければ、優柔不断な父王といえど、自分に王位を譲るに違いない。
その手柄の内容もすでに考えてある。
「おい! 手紙を送る。早馬の準備をするよう衛兵に伝えろ!」
声を張り上げ、隣室のメイドに告げた後、執務机に腰を下ろす。
以前の会議ではザナックと軍務尚書に邪魔されて実現しなかった作戦を、今こそ実行に移すときだ。
「俺の手でエ・ランテルを奪還する」
王家の直轄領を、次期国王であるバルブロ自らが軍を率いて奪還する。
これ以上の手柄など存在するはずがない。
「これで俺が王だ」
ニヤリと笑みを浮かべ、バルブロは自らの手足となる軍を集めるため、ペンを取った。
・
銀級冒険者チーム漆黒の剣のメンバーであるニニャは、いつものように帝都の冒険者組合に待機していた。
現在ペテルとダインは買い物に出かけており、組合に来たのはニニャとルクルットだけだが、そのルクルットも入って早々に酒を取りに行ってしまった。
一人残されたニニャは、組合内に併設された酒場の一角から、組合全体を観察する。
軍が強い力を持っている帝国では、他国に比べ冒険者組合の地位が低いとされている。
実際ニニャたちが初めてここを訪れたときは、エ・ランテルの冒険者組合と比べて活気がないような気がした。
しかし、今は違う。
そのエ・ランテルの冒険者組合に所属していた冒険者が、大量に移籍してきたためだ。
急激に冒険者が増えると仕事の奪い合いに発展しかねないが、件のエ・ランテルでの騒動の影響が、カッツェ平野のアンデッド討伐任務にも現れているため、むしろまだ人手が足りないようだ。
そんな中、漆黒の剣は組合には訪れるものの仕事を受けることはなく、情報収集という建前で暇な時間を過ごしている。
漆黒の剣はモモンたち漆黒と共に、竜王国から王女ドラウディロンを護衛するという依頼を受けたことで──もちろん、本命はモモンたちであり、漆黒の剣は補佐でしかないのだが──懐も温まっており、急いで仕事を受ける必要がないのだ。
加えてモモンから直々にしばらく帝都に残り、王国や帝国を含む各地の情報を集めてほしいと頼まれたことも理由の一つだ。
自分たちの命の恩人にして、真なる英雄であるモモンから直々に頼まれた事実に他のメンバーは、その依頼を快諾した。
しかし、その場では口にしなかったが、ニニャ個人としては情報収集をするにしても、帝都ではなくエ・ランテルに近いカッツェ平野で情報を集めた方が良いと考えていた。
三国の情報拠点でもあったエ・ランテルが壊滅し、近づくこともできなくなったことで、この帝都にも殆ど情報は流れてこなくなり、来たとしても真偽も不明なものばかりだからだ。
中には、例のアンデッドがそのまま王国を攻め始め、王都近くまで侵攻しつつあり、王国そのものの滅亡が近いなどという噂まである。
この短期間でそんなことがあるはずがない。
そう笑い飛ばしたいのは山々だが、あのアンデッドの大群と、英雄譚の中でしか見たことがないような、強大な魔法合戦を繰り広げた者たちを実際に目撃したことで、絶対にないとは言い切れなくなっていた。
「まーだ仏頂面してんのかよ」
酒を取りに行っていたルクルットが戻ってくるなり、ニニャの顔をのぞき込む。
「そんなことありませんよ」
「……お前の気持ちも分からないでもないけどよ、今はどうしようもないだろ」
ニニャの返事は無視して話を進める。
暢気に酒を飲んでいるルクルットに、ニニャも一つため息を落とした。
「ルクルットは心配じゃないんですか? 例の噂、聞いたでしょ?」
「王国がもう壊滅寸前ってやつか? 心配って言えば心配だけど、俺たちは冒険者だぜ? 国属意識なんてないからなぁ」
のんびりした口調のまま、頭を掻く。
冒険者にとってどこの国に住んでいるかは大した問題ではない。
エ・ランテルからやってきた大半の冒険者が、すでに帝都の組合に馴染んで生活しているのがその証拠である。
しかし、漆黒の剣は話が別だ。
「ならンフィーレアさんたちのことは? 心配じゃないって言うんですか?」
ごく短い時間とはいえ、自分たちを名指しで指名してくれたンフィーレアとリイジーは、彼の想い人であるカルネ村のエンリなる少女のことを心配して、そちらに付いて行ってしまった。
「あの坊主にはモモンさんの仲間とかいう人が一緒なんだろ? それに森の賢王も一緒だ。もう無事にエ・ペスペルに着いてるさ。カルネ村の連中は大事な情報も持ってるんだ。無碍には扱われないだろ。あそこの領主は代替わりしたばかりで若いが、なかなかの人物らしい──」
「貴族なんてみんな同じですよ」
心の奥から湧き上がる嫌悪感に支配されて、思わず吐き捨てる。
そんなニニャにルクルットは、やっぱりか。と呟くと、周囲をさっと目配せして声を落とした。
「お前の姉貴のことだろ?」
「っ!」
ズバリ言い当てられて、言葉を詰まらせた。
ニニャが自分の住んでいた村を飛び出して
貴族によってさらわれた姉を救い出す。
ただ救うと言っても、相手は腐っていても貴族。
こちらにも相応の力──権力や名声、金など──が必要となる。
ニニャが冒険者をしているのはその力を得るためであり、そのことは皆知っていることだ。
だが、銀級冒険者チームではまだまだ足りない。
姉を助け出すのはもっと先の話。そう思っていたが、状況が変わった。
「……噂を、聞いたんです」
「噂?」
「姉をさらったあの豚が、八本指と繋がっているって話です」
「八本指とってことは、例の第一王子がうんたらって奴か?」
「はい。噂は第一王子のことが殆どですけど、他にも数人八本指と繋がりのある貴族の名前が挙がってますよね? その中にあの豚も入っていたんです」
噂そのものは王家のスキャンダルが中心だったため、大した騒ぎにはなっていないが、その貴族の名前をニニャが聞き間違えるはずがない。
「それも──八本指の奴隷売買部門との繋がりがあるみたいで」
「奴隷ってお前、それ……」
絶句するルクルットに頷きかける。
「もしかしたら、あの豚、証拠隠滅のために姉を」
売ったかもしれない。とは口には出せなかった。
奴隷売買部門で売られた若い女がどんな扱いを受けるかは、冒険者としてよく知っているからだ。
姉がそんな目に遭っているなんて想像もしたくない。
もう力を付けてからなどと、暢気なことは言っていられない。
一刻も早く救い出さなくては。と気が焦っていた。
「だったら、そう言えばいいだろ。坊主のこと引き合いに出したり、回りくどいんだよ」
こちらの考えを見抜いたのだろう。ルクルットはイスの背もたれに体を預けてから呆れたように息を吐き、さらに続けた。
「どうせ、なんのかんのと理由を付けて王国に戻った後は、一人で助けに行くつもりだったんだろ?」
本当は一人でも王国に戻りたいが、今はエ・ランテル周辺が通れなくなっている以上、王国に入るにはカッツェ平野から法国を経由するか、トブの大森林を突っ切るしかない。
どちらの方法も、ニニャ一人では危険すぎる。
だから、カッツェ平野に着いた後、チームの力を借りて王国に戻りたかったが、それも王国内に入るまで。
その後はルクルットの言うように一人で行動するつもりだった。
「すみません。でも、相手は八本指です。たとえ姉を助けられたとしても、ただで済むはずがない」
王国全土に根を張る巨大犯罪組織が相手では、銀級冒険者チームなど吹けば飛ぶような存在だ。
確実に報復を受けることになる以上、そこまで迷惑は掛けられない。
「まぁ、確かに。八本指にはアダマンタイト級冒険者に匹敵する力を持った連中がうようよいるって話も聞いてるからな」
「ですから、王国まででいいんです。その後は僕が一人で──」
言い切るより早く、ルクルットの長い腕がニニャの眼前に伸び、額に鋭い痛みが走った。
「痛っ!」
「バカ言ってんじゃねぇよ。俺たちはチームだ。仲間を一人で危険な目に遭わせるわけねぇだろ。なぁ?」
「その通りです」
「うむ。違いないのである!」
「え? ペテル。ダインも。いつからそこに」
痛みを堪えて振り返った先には、残るチームメンバーの二人が立っていた。
「結構前からだよ。俺みたいに気配で察知をしろとは言わないけど、少しは周りを見ておいた方が良いぞ。大事な話をするときは特にな」
「うっ」
「そう言うなルクルット、それだけニニャもせっぱ詰まっていたってことだろう」
ペテルが慰めるように言い、ダインと共に残る二つのイスに着く。これで漆黒の剣のメンバーが全員揃った。
三人の視線はじっとニニャに注がれている。
「……本当に良いんですか? 八本指には、アダマンタイト級冒険者にも引けを取らない戦力がいるんですよ」
「それはお前も同じっつーか、お前一人の方が余計危険だろ。本気で姉貴のこと助けたいって思ってるなら、俺たちも含めて使える手は、なんでも使ってみせろよ」
軽薄なルクルットらしからぬ真剣な声に合わせて、ペテルとダインも頷いた。
ルクルットの言うとおりだ。
なにが何でも姉を救いたいと考えているのなら、ニニャはその可能性を高めるために、行動を起こすべきだった。
実際、姉を取り戻すため師匠に見いだされ、村を飛び出した直後の自分であれば、何の迷いもなかったはずだ。
しかし、彼らとチームを組み様々な冒険を繰り返し、夢を語りあった中で、ニニャにとっては彼らもまた姉同様大切な存在になっていた。
だから、なんとか自分だけで姉を救いだそうとしていたのだ。
彼らはそのことに気づいた上で、手伝うと言ってくれている。
鼻の奥がツンと痛くなり、知らず瞳から涙がこぼれ落ちた。
「姉、を。助け、たい……です」
言葉を詰まらせながらも、なんとかそれだけ告げる。
ルクルットは大きく頷き、席を立った。
「決まりだ。行くぞ」
「え? 王国に、ですか?」
これから直ぐに行くのは、流石に準備不足が過ぎる。
危険な依頼になるからこそ、冒険者として準備はしっかりと整えるべきだ。
そう言おうとしたニニャに対し、ルクルットは例のにやけ顔のまま鼻を鳴らした。
「なに言ってんだ。その前にやることがあるだろ。この都市には八本指なんか目じゃない、本物の英雄がいるだろうが」
その言葉を聞いた瞬間、漆黒の全身鎧に身を包んだ本物の英雄の姿が思い浮かんだ。
・
(うーむ。暇だ)
誰かの紹介か、身分を証明できるものがないと泊まれないという、帝国で一番の宿の
皇帝の好意でこの宿に泊まる事になったモモンガたちだったが、そもそも食事も睡眠もできないこの体では、どんな高級宿も食事も意味を成さない。
加えて、外に出るとすぐにエ・ランテルから連れてきた冒険者や帝国の騎士連中に囲まれ、これまでの武勇伝や強くなる秘訣などを問われてしまうため、こちらもまた気が休まらない。
悟から連絡がくれば動きも取れるのだが、そちらも一向に連絡がない。
とはいえ、これは悟が遅いわけではないだろう。
ドラウディロンに貸しがあり、彼女を通じて帝国の皇帝ともとんとん拍子に同盟を結ぶことのできたモモンガと異なり、悟は王国や聖王国と繋がりを持っていない。
冒険者という表向きの立場すらない状況では、ある程度時間がかかるのは仕方ない話だ。
そう分かってはいるが、いくらなんでも暇すぎる。
(いっそのこと、俺たちも悟のところに出向いて、手伝うのはどうだろう)
帝都から出ないように。と現在モモンたちを雇っているドラウディロンからそれとなく言われているが、そのドラウディロンを転移させるためにナーベラルは時々竜王国と帝国を行き来している。
ならばモモンガたちも、連絡を取れるようにしておけば、帝国を出ても問題ないのではないだろうか。
ベッドの上でそんなことを考えていると突然扉がノックされ、モモンガは驚いて身を起こす。
ナーベラルとソリュシャンは、買い物に出向いたばかりだったからだ。
出入り口ならば、ボーイか誰かがノックしてきても不思議はないが、ここは複数ある寝室の一つであり、ボーイが勝手にここまで入ってくるとは考えづらい。
ではいったい誰が。と思う間もなく外から聞き慣れた声が届いた。
「モモンガ様。宜しいでしょうか?」
「ソリュシャンか? 少し待て」
予想以上に早く戻ってきたことを訝しみつつ、モモンガはベッドを降りた。
仮とはいえ彼女たちの支配者であるモモンガが、だらしなくベッドに身を預けている姿は見せられない。
近くにあったソファに腰かけ、考えごとをしているポーズを取ってから、改めてソリュシャンに部屋へ入る許可を出した。
「失礼いたします」
「うむ。どうした? 何かトラブルか?」
「いえ。外で漆黒の剣の者たちに会いまして、モモンガ様に話したいことがあるそうなのですが、お会いになられますか?」
思いも寄らない者たちの名前が出て、モモンガは幻覚の顔を怪訝に歪めた。
「漆黒の剣? 内容は聞いていないのか?」
「はい。帝国の者に聞かれたくないということでしたので、こちらまでは連れてこずにナーベラルが足止めをしていますが、どうも個人的な頼みがあるようです」
個人的の部分に力を入れて言う。
それで彼女の言いたいことを察した。
この百年間ひょんなことから繋がりを持った現地の者たちが、こちらの力を知って、何かと頼ろうとしてくることは今までも何度かあった。
モモンガ自身は暇つぶしになるからと、度々頼みを聞くこともあったが、二人はその度に、下等生物ごときが主を利用するなど。と不機嫌になったものだ。
彼女の言い分も分かるが、現在もまた暇を持て余していることもあり、断るのは話を聞いてからでも良い。
「良いだろう。早速会いに行く。ナーベラルは今どこにいる?」
ここで会合などしては、外で見張っている帝国騎士がどう動くか分かったものではない。
そうした考えからの言葉だったが、ソリュシャンは百年間彼女と共に生活してきたモモンガで無くては分からないほど、僅かに表情を強ばらせた。
「モモンガ様、御自ら出向かなくとも、ナーベラルの転移を使えば外の者どもに気づかれることなく、奴らを連れてくることができますが……」
モモンガの考えを読んだ上での提案に、彼女の聡明さ。というよりはこんな単純なことにも気づかない──室内に監視の目が無いのは既に確認済みだ──自身の思考力の無さを改めて理解するが、今更じゃあやっぱり呼んで来て。と言うわけにも行かず、モモンガは咳払いを一つ落とした。
「も、もちろんそうするのはたやすい。しかし、私が直接出向くことに意味があるのだ」
実際はなにも考えていないが、こうして別の意図もあるのだと匂わせると、ソリュシャンは勝手に納得してくれることを分かった上での台詞だった。
「っ! 承知いたしました。私の浅慮でモモンガ様の決定に異を唱えましたこと、お詫びいたします」
「か、構わん。こちらに関してはまだどうなるか分からないからな」
思った以上に深い謝罪を受け、軽い気持ちで煙に巻こうとしたことを後悔したが、もう遅い。
(さて。なにを頼むつもりやら。せめて、悟が戻るまでの暇つぶしくらいになればいいんだが……)
これ以上ミスはしないと言わんばかりに、ソリュシャンがじっとこちらを見つめているため、ため息を落とすこともできず、別のことを考えて気を紛らわせながら、モモンガは外に出るための準備を開始した。
個人的にこの話は独自設定が多く、また誰が何を知っているのか。など細々とした部分が重要になる話ですので、今後はこれまでのように一週間に一度の定期投稿ではなく、一章書き終わるごとに一気に推敲し、まとめて投稿するスタイルにしていこうと思います
今章に関しては既に書き終わり、ある程度推敲も終わっているので、今日から最終確認をしつつ、一、二日ごとに投稿するのでよろしくお願いします