あの夜以降、カドヤさんと接してきて分かったことが幾つかある。カドヤさんは自分自身に対しての価値観がとんでもなく低い。いや、無頓着と言った方が正しいのだろうか?とにかく自分のことは二の次という感じの考えを持っているようなのだ。これに関しては、フーちゃんが俺にしてくれたように何度も話しかけたり、ご飯を一緒に食べたり、訓練をしてきてた事で感じるようになったことだ。事実、イカズチも同じように感じたとのことなので、恐らくこれは間違いでは無いはずだ。他にも分かったことは幾つかあるけど、これは置いておこう。因みに言うと、今現在わかったこともある。それは──
「あ、カドヤさん!ちょっと待っ」
「はい、上スマ」
『GAME SET』
この人、スマブ○のスティー○くそ上手い(白目)。ラーちゃんたちとスマブ○をやっている所にちょうどカドヤさんがやってきたので、彼も入れてやってみると扱いが難しいことで有名なスティー○でラーちゃんたちと互角に渡り合い、そして俺はボコボコという程の腕前を見せた。
「か、カドヤさんやっぱり上手いですね……」
「いや、こればっかりはヤマトが弱すぎると思うんだが」
「ゔっ」
容赦がない。いや、こればっかりは俺の周りの人が強すぎるせいだと思うんだ。メッちゃんなんてコンボ以外だと基本先端ズバシャアだし……。
「まあ、子犬ちゃんが弱すぎるってことに関しては私も同感ね」
「ボクも同じく」
「ごめん、ヤマト。私もそう思う」
「お兄ちゃん、ごめん」
「……ゴメンネヨワクッテ」
「その……すまんな。まさかここまで言われるとは思わんかった」
ここまでフルボッコ言われるとは思わなかったのか、カドヤさんは申し訳なさそうな顔で謝罪してくる。……何も悪いことをしてないはずなのに罪悪感を抱いてしまうのは何故だろうか?
因みにこの後俺がドクターに呼ばれるまでTAありのチーム乱闘やアイテムありの何でもありの乱闘をやったけど、やっぱり全く勝てなかった……
****
「大変だねぇ、調査ってのも」
「まぁそうだけど‥気が抜けすぎじゃない?」
「警戒はしてるからへーきへーき」
木にもたれかかって最低限の警戒をした状態でリラックスしているカドヤさんに目を向けつつも、先日ドクターと会話した内容を思い出す。あの時の会話の内容は例のポイントについてだった。俺らの報告書とカドヤさんの証言から、向こうの世界からメフィストがこちら側に来てしまった可能性が濃厚であるため再度捜査をするということ。その捜査には俺やイカズチ、カドヤさんも含めそれなりの人数で行うとのこと。そしてもう1つはカドヤさんのフォローだ。
カドヤさんは敵を倒せるならば無茶を必ずする。そしてこれはあくまでドクターたちの予想だが、恐らく彼は俺との模擬戦に見せたあの超高速戦闘よりも更に反動がある形態を持っている可能性が高い。だから、俺の役目を正確に言えば俺はカドヤさんが無茶しないようにすること、場合によっては殴り倒してでも止めて後方へ下げることだ。
けど、俺は本当にそれが出来るだろうか?勿論、彼のことは一人の人間としては好感が持てるし無茶をして欲しくないのは本音だ。けど、もしそれが出来ないほど切羽詰まった状況になった時は?彼の無茶を黙認した方が状況を打破出来る、あるいは解決の糸口になるとなった時は?
……本当に心底自分のことが嫌いになる。こうやって人の命を数で計算してしまう自分が本当に嫌いだ。
「全く‥野生の動物の一匹や『ガァァァァァァァ!』‥おいでなすったか」
が、そんな思考もカドヤさんとの会話の中で急に聞こえてきた獣では100%ないものの、人間が出すとは思えないような咆哮が耳に入りすぐに切り替えられた。
「これって‥!」
「多分あってると思う‥行くぞヤマト」
『アーツライド ブレイズ』
カドヤさんも俺と同じ考えに至ったのか、アーツドライバーをを使ってチェンソーを出して手に持ち、お互いに交戦を開始した。
****
戦況としては若干こちらが押されてはいるものの、奇襲を受けた割には思ってる以上には被害は出ていない。これにはドクターの指揮や今回捜査にきたオペレーターの練度が高いということもあるには思うけど、それ以外の要因としてはやはりカドヤさんの戦闘力もある。
今俺らを襲っている寄生兵はとんでもない硬さと再生能力を持っている。これを倒すためにはその硬さを突破した上で確実に殺しきらないとならず、人によっては傷をつけるだけで精一杯という程に倒すのには手間がかかる。その点、カドヤさんは色んな人のアーツや武器が使えるため、寄生兵に対して有効な攻撃手段を多く持っている。現に彼はブレイズさんのアーツと武器を使って寄生兵を次々と倒しており、後ろに下がるのが遅れたオペレーターたちを助けているというのを先程走ってこちらへ走ってきたオペレーターから聞いた。
「本当なら、カドヤさんの援護に回りたいんだけど……っ!」
後ろに気配を感じ、右足を軸に振り返りながら後ろ回し蹴りを放ち背後の寄生兵の体制を崩すと同時に合体剣をバットを振るかのようにフルスイングし首を跳ね飛ばす。と同時に他の寄生兵と交戦している重装オペレーターの方に圧縮したアーツの斬撃を飛ばして援護しつつ、その寄生兵との距離を詰めて跳躍、すれ違いざまに首を斬り落とす。
──このようにカドヤさんの援護に行けるほどこちらも余裕が無い。しかも近くにはドクターやケルシー先生もいるため余計にだ。……ケルシー先生に関しては護衛なんていらない気がするのだけれども。
『ヤマト、10時の方向の敵の対処!それが終わり次第カドヤのフォローに回って!』
「分かりました」
無線で入ったドクターからの指示に対して了解の意を示したところで、早くカドヤさんの援護に向かうためにすぐに敵の処理へと動きだそうとしたところで、丸太のようなものがこちらに飛んでくるのが視界に入る。
「ちっ!」
気づくのが遅れてしまったせいでギリギリ躱す形となったためか僅かに掠ってしまい、その直後に甲高い音が耳に入った。
「……トランシーバーがやられたか」
掠ったところをみれば、そこにしまっていたトランシーバーは一目で壊れていると判断できるほど無惨な状況となっており、ため息を出したい気持ちに駆られるも、それを抑えて耳のインカムを外して懐にしまい合体剣を構える。
「……始末書書くの、あんまり得意じゃないんだよなぁ」
愚痴を少し零しつつも、こちらに投擲物で攻撃してきた下手人がいるであろう位置に向かって俺は駆け出した。
****
「はあっ!」
敵と交戦を始めて暫くたった頃、ドクターの指揮や他のオペレーターの尽力によって襲撃してきた敵の数は確実に減っていた。こちら側の被害としては負傷者こそそれなりにいるものの死亡者は0らしく、奇襲を受けた割には被害は少ないと考えるべきだろう。
「お疲れぃ」
「あ、お疲れ‥って!怪我してるじゃないか!」
「うん?‥あぁ、ほんとだ」
戦闘が終わったのか、声をかけてきたカドヤさんの方を見るとお腹から血を流しており怪我をしていた。全くこの人は……!
「ちょっと大人しくして!今止血するから!」
「いや別にい「良いから!」お、おう」
有無を言わさずにカドヤさんを座らせ、ポーチから携帯応急処置キットを取り出し彼の服を捲る。怪我自体はそこまで大きいものでは無いものの、普通であれば痛覚をはっきりと感じるほどの負傷。医療関係は齧っている程度の知識しかないけども、少なくとも放っておけば傷口が化膿して悪化するのは明白だからこの段階で気づけてよかった。
「‥はい!これで一時的に大丈夫!早く医療所に行くよ!」
「うーい‥っ!伏せろ!」
「えっ!?うわっ!」
応急処置を終えて、早速本格的な治療をしてもらうためにカドヤさんとその場を離れようとした直後、何かに気がついたカドヤさんの警告に少し遅れて自身の直感が反応しすぐに伏せる。そして伏せてから1秒もなく頭上をとてつもない風圧と共に拳が通り過ぎた。威力的にも、当たっていたら2人仲良く頭を破裂させていただろう。すぐに体勢を直して顔を上げると──
「あらら……多いもんだねぇ」
カドヤさんの呟きの通り、そこには先程相手していた寄生兵より大きいサイズのタイプが軽く見積もっても10数体以上そこに立っていた。接近に気づかなかったのはもう過ぎてしまったことだからそのことについては後で考えるとして、この最悪な状況を抜けるために頭を働かせる。
正直な話、2人だけでこの大群を殲滅するのは不可能に近い。いや、正確に言えばカドヤさんが俺の安否を全く気にすることなく暴れ回れば殲滅は可能だ。これは単なる勘ではあるけども、カドヤさんはこの大群を自身の命を削ることを代償にすれば殲滅できるほどの力を隠し持っている。勘ではあるものの、1度だけこの人と剣を合わせた俺だからこそこの勘は外れてないという確信はある。だが、恐らくカドヤさんの性格を考えれば俺を巻き込むのを避けるために使う可能性はほぼないと見ていい。仮に援軍を来るまで持ちこたえる、というのも先程確認した限りでは連絡手段を失っている俺とカドヤさんだとドクター達が気づくまで持ちこたえるという博打になるため消去していい。そのため2人で共闘するというのは取るべき手段ではない。そうすると取れる手段は1つ、どちらかを囮にしてもう片方が応援を呼ぶのみだ。
「ヤマト、ちと増援頼むわ」
そして問題のどちらが残るか、という問題で自分が残ると言う前にカドヤさんは戦闘態勢を整えた状態であっけらかんとそんなことを言ってきた。
「か、カドヤさんは!?」
「ここに留まる、安心しなよ、時間稼ぎぐらい出きる」
「駄目だよ!危険すぎ「早く」‥っ!怪我しないでね!?」
説得する時間さえ惜しい状況のため、心苦しいもののカドヤさんに一言だけ告げて急いでドクター達の元へ駆け出す。いくらカドヤさんといえど、数が数だ。恐らくそう長くは保てないと判断していい。だからもっと早く、早く走らないと!
「っ!?」
そう走り出してそんな時間も経たぬうちに前方に1つの人影が見えて止まる。遠目からでも分かるほどに発達した源石、特徴的な角、そして手に持っている巨大な剣。あれは──
「サルカズの魔剣士!?」
俺が相手のことを認識したと同時に向こうもこちらに気がついたらしく、おたけびをあげながらこちらに突っ込んでくるのが目に見え避けるのは無理だと判断して合体剣でガードの構えを取る。
「くっ!?」
──重い!?
予想以上の速さと剣圧に気を取られたけど、すぐに切り替えて受け流し鍔迫り合いを拒否すると同時に距離をとる。あの剣士は特徴からして恐らく寄生兵の一種と見ていいかもしれない。だが、報告書で見たことないことを踏まえると新しいタイプの寄生兵であり、普通の魔剣士よりも耐久力、パワーは上とみていい。普通であればゆっくりと対処したいところだけども。
──今回は時間が無いから被弾覚悟で特攻するしかない。
「邪魔するな!!」
俺は合体剣の刃にアーツを凝縮させて纏わせてサルカズに突進した。
****
あの調査から数日がたった。あの日、増援を連れて戻ってきたらカドヤさんはレユニオンの元リーダーであるタルラさんのアーツを使って対処していた。けど、やはり無理をしていたのか緊急手術を行わければならないほどの重症であり、確率的には死ぬ可能性の方が高かった程の大怪我だったそうだ。だが、大変だったのはここからで元とはいえレユニオンのリーダーであったタルラさんのアーツを使えたことに関して色々疑問に思ったオペレーター達が出てきてしまい、仕方なく全員にカドヤさんの事情を説明することになった。反応としては悲嘆な顔をうかべる人、複雑な表情を浮かべる人、納得できなさそうな人だったりと様々であり、そちらのメンタルケアを追って実施することも決定した。
そして俺とイカズチに新しく任務として言い渡されたのは、カドヤの監視と護衛であった。彼のことだから起きたら絶対安静という状況下でもベッドから抜け出すのは予想できるためそれを止めること、そして彼に危害を加えようとする人が出た場合の対処、というのが理由であった。
「カドヤさん、お見舞いに来ました」
そして今日、俺はカドヤさんが寝かされている病室まで足を運んでいた。彼には呼吸器が付けられており、所々包帯まみれであり彼の怪我の具合が見ただけでよく分かる。
「……あの時、俺が残ってれば貴方はこんな怪我をおわなくてよかった」
……俺にもっと力があれば、彼がこんな怪我を負わずにすんだ。彼の世界の友人たちには謝っても謝りきれない程のことを俺はしてしまった。
「……早く起きて、とはいいません。今だけはゆっくりと休んでください」
自身の無力さに苛立ちを覚えながらも、自分のことを顧みないどうしようもないこの人が少しでも休んでくれるように、彼の穏やかな寝顔を見ながら俺は願った。
今回でた寄生サルカズ魔剣士はオリジナル敵です。
キャラ紹介は今回は割愛させてください……本当に申し訳ございません……
オリジナル敵紹介
寄生サルカズ魔剣士:何者かのチカラによって体を支配されたサルカズの魔剣士。源石が血液中に流れている彼らは粗末な改造を施されたアーツの巨剣をも扱えるが、元の剣術などは全く使えず自身の力を周りにぶつけるような戦い方しかできない。まさかこの様な生物が存在し戦場で戦うことになるとは。