親の再婚で出会った姉妹のお話

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らくがき絵使用しております。


姉妹の関係

親の再婚で小学三年生の時に同い年の妹が出来た。 誕生日が妹より早い為姉として振舞ってる。血の繋がりなんて関係ない可愛い妹。 純新無垢で、私にいつもピッタリ付いてくる妹。

 

実家を離れ二人で高校からマンションを借りて暮らし始めた時には、垢抜けた妹だったが、照れ隠しの一環でキツイ言葉をほぼ毎日放っていた。

 

大人になり、お互い社会人になった今、私は仕事でミスが続き落ち込み不貞腐れお酒を一人呑んでいた。

 

リビングで明かりもつけず一日を振り返り泣き一人叫んでいると、物音が耳に入り振り返る。

 

「電気くらいつけてよポンコツ能天気姉さん」

 

朝以来顔を合わせ発した言葉は冷たく胸に突き刺さる。 次の日になる三十分前に帰宅した妹だった。

 

「ふえぇ~~!! おかえり~花蓮ちゃんも私を見下していじめてくるよ~~!! ぐびっ!」

 

涙を流しうぇんうぇん泣いても反応せず自室に足を運びスーツから私服に着替えてきた子こそ妹の『花蓮』。

 

冷静沈着な性格、それでいて頭もいい。 見た目もボーイッシュな色気で同性から今でもモテるらしい。

 

リビングに戻ってきてからも泣きつく姉の『柚子』はボサボサになったミディアム頭を掴まれ床にキスをした。

 

「うるさい、黙れ、部屋で呑め」

「花蓮ちゃんと一緒に呑むもん!」

「……私がお酒苦手なの知ってるでしょ」

「これ買ってきたもん! じゃーん! 飲むチョコレート!!」

「場違い過ぎる。 せめてノンアルコールでしょ。 糖分はたまに摂ってるのから、それはいらない」

「お姉ちゃんは毎日飲んでるよ! それに今はバニラアイスも食べてるからストレス軽減してる!」

「そのお腹の脂肪は膨れ上がってるけどね」

 

丸顔と弛んだお腹を手で隠し恥ずかしそうに顔を真っ赤にする。

 

なんで自白したのか。 それよりもこの人と喋ると職場での口数をすぐに追い越す。

 

キッチンの傍に置いてあったカップに手際良く珈琲を注ぎ、その場で立ちながら口をつける。

 

(んっ? ……目が合ったけど逸らされた。 また…)

 

その間視線を感じ目を合わせると逸らす。 じわじわ近づき、チラチラ横目でお酒を呑む柚子の頭を、今度は力を入れて掴む。

 

「なにか…隠してるでしょ?」

 

不手際を起こした時、後ろめたい事がある時はいつも不自然な行動を取る。

 

前に買っておいたプリンを間違って食べた時も、焦りと不安からか吸いもしない妹の煙草を口に加えていた。

 

「し、知りません円っ」

「春でも寒いんだからふざけるな!」

「理不尽だよ~」

「また家でもやらかしたの? どうなの?」

 

指と指を当てモジモジする仕草にイラッとし先程いた位置に戻り、手当り次第に探る。

 

(素直に言ってくれればいいのに…)

 

ボヤキながらも結局見当たらず頭をかく。

 

と、腕に着けていた時計の針が夜の『11:55』になり次の日が近づいていた。

 

世間では明日は休日だが、出勤し溜まっている仕事を処理したい。 それの繰り返しが毎週続いてる。 帰りが早い時は月に一、二回だが、未来と今の暮らしの為だと思い込めば辛くはない。

 

柚子姉さんと一緒に過ごす時間が減った事に不満は最初はあったが、それは大人になる通過点だ。

 

……それが終わるまで体は持つのだろうか。

 

しゃがみこんでいた腰をあげ捻り、冷めた珈琲を飲み込む。 ……いつの間にか砂糖が嫌いになっている。

 

「ちょっと煙草吸う」

 

何やら丸くなる姉の背中を横切り、モヤモヤを払うついでに外の空気を吸いたくなりリビングからベランダに出ようとした時、時計の針が『0:00』を迎えた。

 

────すると、いきなり耳を破る音が部屋に響き火薬臭さが一瞬で充満する。

 

耳に手を当て音の方へ顔を向けると、満面の笑みでクラッカーを鳴らした柚子姉さんがそこいた。

 

「い、いきなり何を…」

「ハッピーバースデー! だよ!」

「誰の? 親戚のマイコー? 隣の部屋のマイコーマークツー?」

「それ誰?花蓮ちゃんの。 忘れてたの?」

「ん…あー…」

 

スマートフォンでカレンダーを開くと確かに日付で思い出す。 また癖で頭をかく。

 

…昔は姉さんが前日に準備しているのに気づいていたが、知らぬフリをして当日に知ってたと言うのが恒例だったが今回ばかりは完全に頭から抜けていた。

 

「壁に掛けてるカレンダーにも丸印だけしてたのに全然気づかないだもん。 今日も余裕の勝利だったよ」

「いや、ボロは出てたけど。 なるほど、それで今も鼻にストローさしてるのか」

 

「えっ嘘!」と顔をベタベタ触り嘘だと分かり胸を下ろす。

 

「そういう冗談言う時は照れてる証拠だね」

 

やはり何か何までお互いの行動は筒抜けの様だ。 目では見えない絆が為せる力だろう。

 

「……ありがとう柚子姉さん」

「どういたしましてっ。 さっ、冷蔵庫にケーキあるから食べよう! 花蓮ちゃんに見られなかったから良かった~」

 

先程まで珈琲を飲んでいた背後にある冷蔵庫を開け、持ってくる。 冷蔵庫を開けられたらすぐにバレていたのに自信ありげにウインクする。

 

ソファーに肩が触れる位置で、並んで座りテーブルに並べた数に目を疑う。

 

「ってホールケーキだよねこれ。 しっかも二台」

「チーズとチーズだよ! 大好きでしょ?」

「同じって……柚子姉さんの髪色が栗なんだからモンブランで良かったんじゃない。 それと、もう遅いしあし……」

 

誕生日の人よりも嬉しそうにケーキを切り分けている姿に断れずただ黙って見つめる。

 

お人好しでいつも自己犠牲をする柚子姉さんを支えたい。 守りたい一心で私は今日まで頑張ってきた。 その人との時間を大切にしなかったら、これまでの行動が全て無になる。

 

こうして表向きは姉妹に見えるかもしれない。 でも私達は……。

 

「切り分けたよ! あ、指に付いちゃってる……」

 

包丁を置いた所で肩に手を乗せ声をかける。

 

「"柚子さん"」

「た、食べてないよ!」

 

そしてつまみ食いしていた唇に自分のを重ねる。

 

甘い香りと味が、私の口に僅か残る珈琲の香りと混じり合う。

 

幾度となく交わしてきた行為だが、今日は特別な気分に駆り立てられ、

 

十秒以上静かな時間が流れ、初めは目を大きく開けていた柚子姉さんもすぐに合わせてくれた。

 

背中を叩かれ顔が離れる。

 

「い……何時にもなくいきなりだね花蓮ちゃん……」

「柚子姉さんの唇が美味しそうだったからつい」

「出来ればケーキを食べて欲しいなぁ~」

「ごめんごめん。 じゃ食べよう」

 

フォークを用意し忘れたらしく、代わりに取りに行く。 ……血の繋がりは無い。 私は柚子姉さん……柚子さんを一人の女性として受け止めている。 それは彼女も同じ気持ちだと思う。

 

初めてあの行為をした時の柚子姉さんの表情は怒ることなく、ただ微笑み今度は向こうから重ねてくれた。

 

もし、あの場面で嫌われていたら、この瞬間私はどうしていたのだろうか。 別々の道を進んでいながらもきっと、また顔は合わせていたかもしれない。 ……表面上は姉妹なのだから。

 

またモヤモヤが頭に立ち込め振り払い振り返る。

 

カップアイスで使っていたスプーンで食べているのを目撃し、聞こえる程の大きなため息を吐く。

 

「一分も待てないんですか柚子姉さん。 そのスプーンって何時に使ってたの?」

「んぼっ!? 手が勝手に!!」

 

口いっぱいに頬張り、喉に詰まらせ傍に置いていたペットボトルの水を勢いに任せ飲む動作に腹から笑いが込み上げてきた。

 

この人はきっと永遠に変わらないだろう。

 

─────────

 

深夜の二時を過ぎ一息つきながらベランダに出て電子煙草を吸っていると肩に何かを掛けられる。

 

手に触れ目で見ると柚子姉さんが冬から春にかけて着ているコートだった。

 

「ノースリーブで夜の外はまだ寒いし、風邪ひいたら大変だよ!」

 

お酒の匂いで少し気が緩んでるせいか、お礼と笑顔を渡す。

 

「ふふ、昔の花蓮ちゃんに戻ったみたい」

「貰ったらお礼は必ずしなくちゃいけないでしょ」

「か、貸しただけだよ~」

「はいはい」

 

隣に並び夜空を見上げる。 幾つもの星が光り輝く空は果てしなく遠く、無限に広がっている。

 

「ねぇ…柚子姉さん。 私は柚子さんとしてこれからも接したい……その反面関係が変わる事に怯えている。 どうしたらいいと思う」

 

電子煙草を口にあて煙を吸い顔を合わせる。

 

「両方選べばいいんじゃない? お姉ちゃんでもあり恋人として」

「げほっ! ざ、雑…」

 

考えてるフリもせず、思ったことをすぐに言えるのは羨ましく凄い。

 

「え~? 私がその立場ならそうするけどな~」

「それは相手を思いやっての行動?」

「それも勿論あるけど……気持ちを隠したまま過ごして行くのは苦しいでしょう。 花蓮ちゃんが気持ちを伝えてきてくれた時は、一人の女の子として見たと同時に、こんなに可愛い妹を尚更守らなくちゃって実感したよ」

 

こっちが恥ずかしさと気まずさを感じ胸に手を押し当てもういいと静止する。

 

「もしもの時は相談してね花蓮ちゃん。 自分を追いつけるのだけは駄目だよ?」

「分かりましたよ柚子姉さん…」

「うん! じゃあ…これ誕生日プレゼント!」

 

首の後ろに手が回り首に何か掛けられ胸元に視線を下ろす。

 

……指輪の形をしたゴールドのアクセサリーだ。

 

目の前でもう一つを自分で取り付け自慢げに見せる。

 

「お揃いだね~」

「柚子姉さんのはシルバーなんだね」

「似合うかな~?」

「胸にある脂肪に挟まれて見えないけど」

「ちゃんとここにありますー!」

 

また冗談を言いながらプレゼントを手に取り見つめ胸の奥が熱くなる。

 

まるで、恋人のやりとりでもあるこの瞬間、彼女へのお返しはどうするか。 考えるよりも先に口が動く。

 

「明日デートしましょう柚子さん」

「いいけど…んー」

 

唸りを混じえた声に首を傾げると唇に指を置かれた。

 

「まずは疲れを取ってね。 エスコートしてくれる人がクマさんも抱えてたら大変でしょ?」

 

目の下のクマの指摘をしてリビングに入り振り返る。

 

部屋明かりよりも眩しい笑顔が、疲れを吹き飛ばし邪な思考になる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

悶々とする思考を堪えながら微笑返し事なきを得た。

 

「明日の仕事はキャンセルね」

 

スマートフォンのアラームを切り、風呂場に向かった姉の後をすぐに追いかけた……。

 

 

おわり


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