【凍結】1st Saga バタフライエフェクト   作:ジュネープ

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毎日の様に取捨選択して選ぶ選択肢。それは後に大きな変化となる。そう
バタフライエフェクトのように

全ての事柄は「私達」によって成り立っている 

「私達」は一般人に紛れている。貴方の身近な人にもいるかも知れない・・・


プロローグ
ACT:1 始まり


セミの泣き声が鬱陶しいと感じる時期、片田舎の寂れたバス停に1人の小太りの中年男性が降りてきた。カンカンと照りつける日差しから逃げるように日陰に隠れると辺りをじっくりと見渡し、ため息一つ。昨晩、家族と別居したことが原因なのか、はたまたこんな僻地に飛んだ事に対しての諦めに似た感情なのか、それは彼以外知る由もない。

 

彼を焼き焦がそうとする太陽光に抗いながらスマホの地図アプリを頼りに目的の場所に向かう。彼は黙々と歩いていたが、ふと独り言を呟いた。

 

「私をケバブにするつもりか・・・」

 

仮に彼以外の人物がいたら反応に困ることを言った後に一人でクスクスと笑う。彼自身はこの様なジョークはいける口たが、いかんせん犯罪者のように濁った瞳と目つきの悪さが、周囲から疎まれていることを彼自身知っていたので諦めている。

 

しばらく歩いていると目の前に大きな、とても大きな館が見えてきた。目的の場所はここの様で彼の歩調は喉の渇きと比例してドンドン感覚が狭まっていく。最終的には少し小走りで突き出た腹部を揺らしながらその大きな門前まで来た。彼は呼吸を整えると佇まいをキチンとして、カーンと特徴のある音のインターホンを鳴らした。

 

1分ぐらい待っただろうか、門の内側から人の気配が近づいてくるのが分かる。

門を隔てた向こう側に相手の微かな鼻息と服を直しているカサゴソっというような音が聞こえてきた。それから直ぐに扉が開き、中から初老の男性がじっとりとした目で私を射抜いた

 

「すいません。十条聡子様の依頼で来たのですが・・・」

「あぁ・・・貴方様が・・・」

 

男性は時が止まったかの様に静止すると直ぐに動く・・まるで初心者用プログラミングで使うロボットの様なぎこちない動きに若干の嫌悪感を抱きつつ屋敷の中に入っていった。

男性に通された洋風の応接間で私はこの館、十条別所の女主人である十条聡子が会釈をして座ったのを見計らい彼も用意された来客用ソファにどっかりと座り込んだ。ソファの座り心地の良さを一通り堪能した後、彼女をじっくりと観察してみた。

 

4〜50代にも見える彼女の風貌だが、昔はとても美人だったであろうと容易に想像のできる顔に、彼女自身から溢れ出る触れたら壊れそうな儚い雰囲気が私の最近衰えてきた下腹部の血液が早くなったのを感じた。それを知られたくない一心で私は彼女に自己紹介をした。

 

「十条さん。この度は私を雇ってくださりありがとうございます。改めて自己紹介を。現在フリーランスで活動している・・・いや、貴方からの社員の誘いを受けたので今は「していた」ですね。立花光雄と申します。」

「ご丁寧にどうもありがとう。当館の主をやらしてもらってる十条聡子と言います。光雄さんも長い付き合いになると思うのでどうぞ、私の名前も下の名前で読んでください。」

 

そう言うと、彼女はクスリと笑いその笑顔に私は年甲斐もなく「トキメキ」を感じた。顔が赤くなるのを隠す様に私は彼女・・・聡子さんに問いかけた。

 

「心遣いありがとうございます。では、聡子さんに質問ですが何故40手前の私を正式に採用したのですか?同業者の中には私より若い人がいると思いますが・・・それに、私はプログラミング関係で生きてきて・・その、お恥ずかしい話、生計が立てづらくなっていた時に聡子さんからの食・住が保証されている正式雇用はとても有難いのですが、何故私を雇用なされたのですか?」

 

私自身、あと少しで借金をする所まで追い詰められていたのでこの話が出た瞬間に飛びついた訳だが、来る途中考えてた疑問に彼女は魅惑的な笑みを浮かべて答えていった。

 

「それは、この屋敷に着くまでに体験したあの交通の不便な立地。それに最近の若い人が好む娯楽が一切無いこの田舎町・・・いいえ、最早限界集落と言ったところかしら。そんな場所に行きたいと思う若い人を見つけるのが難しかったのよ。そして。貴方を雇用した理由は、貴方の経歴にあるわ」

 

彼女の言葉に私は合点がいった。私も20代前半は大手IT企業「サンバイオコーポレーション」に勤めていた経歴がある。私はそこで経験を積み数年後に独立、今までやってこれたのは「サンバイオコーポレーション」のネームバリューあってこそだったのだ。

 

「確かに私は「サンバイオコーポレーション」に勤めていました。」

「そうよね、実は私は資材を投じてこの屋敷の地下に大規模施設を作ったのよ。そこの総責任者として光雄さんには勤めてもらいます。」

 

「大規模施設?何故そんなものを・・・」

私が問いかけようとすると彼女は曖昧な笑みで「契約書にサインをしないとここから先は話すことができないわ」と言った。元より藁にもすがる思いでここに来た私に文句などあるはずもなく出された契約書にサインをした。

 

「では、詳しい話をいたしますので、ついてきて下さい」

そう言うと聡子さんは私を書斎に案内して行った。

 

まるでシャーロックホームズの世界に迷い込んだかのような感覚に陥る。私の目の前には大きな洋館にふさわしい書斎が広がっており、目に見える範囲でも軽く百冊は超えてるのではないかと感じる書籍量、更には蔵書の検索に使うのか、古めかしい2000年代前期のPCとその横に今となってはあまり見かけなくなったタイプライターがカウンターの上に置かれていた。しかし、それらは長く使っていないのか、埃が積もっている。

それらの光景に目を向けていた私を裏腹に、聡子さんは優雅な動きで本棚を縫うように歩き、私は少し慌てて彼女について行った。彼女から30センチ離れた位置を維持して移動しているとふと彼女は書斎の一角で立ち止まり、訝しむ私を横目に言った。「今から行う事をよく覚えて下さいね」

 

そう言うと彼女は一冊の本に手を掛けた。コナン・ドイル著「バスカヴィル家の犬」だ。その本を本棚の奥に押し込むと何かのスイッチが切り替わる音がした。何かとんでもない事が起こる期待と不安、二つの感情の発露を自分自身で感じた私は必死に平常心を保つように心がけた。しかし、私の行いは5秒後に無駄になった。

 

彼女が本を押し込んだ本棚が自動ドアのように違和感なく地面に下がって行ったのだ。目の前には一つの鉄製の扉が現れた。

 

「この様に奥に押し込むと扉が現れる様になってます。後、光雄さんの静脈情報を扉に登録するので此方にいらして下さい」

 

彼女に言われた事に反応して体は扉の情報登録端末に向かって歩いていく。

田舎とは言えこんな大きな屋敷の内部にこんなミステリアスな仕掛けを作るのはどれほどの私財を投じたのか、私の働く十条家は財閥系の家柄なのか、色々と疑問が溢れ出て正常な思考力を奪っていった。

 

「これで、静脈登録は完了しました。次回からは私が行った手順と扉の静脈チェッカーを経てこの先に入る事ができます」

「あのーこんな厳重な仕掛けを施した場所に案内して何をしてもらいたいのでしょうか?」

 

そう私が言うと、彼女は柔和な笑みを浮かべて一言「あなたの持ち場に着いたら説明します」

と言い放って扉をくぐり抜け、地下に降りていった。私は警戒を最大限に保ちながら彼女の後を慎重について行った。

 

映画館場内の階段の様に薄らと明かりのついた階段を下りる事5分、私の目の前に地面が出現した。

左右の壁の隅から光を照らしているので80年代によくやっていたSF映画の宇宙船の通路みたいだと思った。彼女は降りた後も歩調を緩めることはせずスタスタと歩いていく。道中「NR」や「MR」「GR」などのプレートが掲げられた部屋があった。予想外の広さに私と彼女以外の職員がいるだろうと当たりをつけ、歩いていると、彼女がふと立ち止まった。

 

「ここがあなたの持ち場になります。」

 

そう言って彼女が通路の脇に移動すると他の扉とは違う、入り口にあった静脈チェッカーと同じ機器の置かれた扉があった。プレートを見てみると「OR」と書かれた文字の下に小さく「Operation Room」と書かれていた。

彼女を見ると部屋に入れと言わんばかりに頷いているので、私は意を決して室内に入った。

 

「っ!・・・・これは、何というか・・・その」

「フフっどうですか?ここが今日からあなたの職場になる場所です。残念ながら名前はまだ無いので自分で好きなように名付けて結構ですよ」

 

FAXと印刷機。それとPCがあるのは普通だと思う。モニター数をデュアルどころか初っ端からトリプルモニターにしているのは目を瞑ろう。しかし私の席の前。と言っても十メートル以上は離れているが、そこには都会のテレビ広告でしか見たことのない画面が世界地図と地球を映しているのは、意味がわからない。株取引の拠点を作るのかと疑問に思ったが取り敢えず彼女に聴くことがいちばんの近道だと思い

 

「先程私を総責任者にするとおっしゃいましたが、業務の説明をお願いします」

 

と、私が言うと彼女は和かな顔を更に笑みで深めて私を見つめた。その顔は彼女の妖艶な雰囲気と相まってどこか恐ろしげな雰囲気が漂っていた。

 

 

 

 

 

世界には争いが満ちている。それは小学生でもわかる事よ。

 

そんな世界は幾度となく破滅の危機に陥った。

未知の病原菌でヨーロッパ大陸は滅びかけた。

とある独裁者は特定の人種を根絶する為に戦争を起こした。

ある国は人類の発展の為に作られた原子力を兵器に転用した・・・・・・

滅亡の危機に瀕した時は、ほんの、ほんの小さなきっかけが、大きなうねりになって世界の滅亡を回避して来た。だけど、それは偶然ではなく必然で、誰かが裏で操作しないと大きな破滅のうねりを打ち消すことは不可能なのよ。世界には大きなうねりに対抗する為に必ず対になる存在があるのよ。

 

テンプル騎士団とアサシン教団

 

独裁者と民主国家

 

魔女と魔法少女

 

共産主義と資本主義

 

人間という生き物は現状維持を嫌うのか、対抗しようとする。だから、全ては「対」によって成り立っていると言えるわ。

貴方が小学生の時にクラスには一人は居たはずよ。先生に反抗ばかりしてるヤンチャな子が。そう、それが教室という空間の「対」になる。

この対の存在が教室の中とか、小さいものだったらまだ良い。でも将来的にその子が独裁者になったら?そんな時に「私達」の存在が必要になる。

「私達」は世界中にいる。そんな私達は今日に至るまで様々な活動をして来たわ。古くは、アサシン教団の資金援助で最近だと「ワルプルギスの夜」の際に、市民の被害を最小限にとどめたわよ。まぁ、「実際に起きた知らない歴史的事件の事例」を言ったところで、説得力もないのは承知してます。だけど、貴方が働く場所は「そうゆう所」なのです。

 

 

彼女から長い話を聞いた私はなんとも言えない気持ちになっていた。聞いたこともない組織や事象をポンポン出され、今の私に言えることはこれが精一杯だった。

 

「聡子さんの言ってることは後々理解していくよう努力します。端的に言って私に何をして欲しいのですか?」

 

私の質問に聡子さんは待ってましたとばかり口を開いた。

 

「今回事例として出した事は一件を除いて国外で行われていた事です。実は日本には「私達」の拠点と言えるものがありませんでした。今までは中国大陸の管轄として問題なく機能していたのですが「ワルプルギスの夜」が起こった際、気付くのが遅れて後手に回ってしまいました。それで、何人もの少女達の人生を狂わせてしまったので、反省して「私達」は新たな拠点を日本に作る事にしたのです。」

 

そういうと彼女は一旦息を整えて続けて言った。

 

「光雄さんの主な業務は日本で起こった。又は日本から始まった「対」の事象の調整及び解決になります。」

「分かりました。しかし、その業務を私一人で行うのは些か手が足りないのでは無いですか?」

「それについては問題ありません、何も光雄さんが直接現地に行くのではなく、世界中にいるエージェントとデータリンクして、光雄さんはここで指揮を取れば良いのです」

 

彼女は私に指揮官になれと言っているようだ。しかし、私には指揮する才能などある筈もない。会社に出社し続けるだけの人生が嫌でフリーランスになった様な半分自由人な私の何を見込んだのか知らないが、彼女の瞳を見てると確固たる意志によって決められている雰囲気を感じた。

 

「何故私に?指揮官なんていくらでも居るでしょう?契約書にサインを書いた限りはきちんと業務を行いますが・・・人選を誤ったのではないですか?」

「光雄さんのいうことも最もですね。実は私達には「能力を数値化する機械」を保有しているのです。それによると光雄さんの指揮官としての潜在能力は上位に入ります。」

「「上位に入る」・・・ですか、上位に入る人なんて、そこら辺に沢山いるでしょう?きっと他に要因があるはずです。」

 

私がそう返すと彼女は鳩が豆鉄砲食らったかのような顔をした後にクスクスと上品な笑いを浮かべてこう言い放った。

 

「ええ、光雄さんの言うとおり光雄さんよりも高い能力の人は沢山います。しかし、ほとんどの人さ「私達」にはお誘いできないのです。」

「何故でしょうか?」

「それは「野心」の数値が比例して高いからです。「私達」の指揮官になる方には指揮官としての潜在能力と低い野心の二つを兼ね揃えてなければいけないのよ。」

 

そう言われて私は納得した。そもそも「サンバイオコーポレーション」に入社したのも出世の為ではなく、集団面接で友達の付き添いで受けたら合格しただけなのだから大企業を数年で辞めたのも頷けるし、それが「野心が低かったから」と言われても説得力が増すものだ。最近だと大企業アンブレラ社が長い裁判の末に倒産した煽りを受けて、他の産業が不景気になった時に私は人を騙して、金を稼ごうとは思わなかった。自分で思うのもなんだが聖人君主とは私の様な人を指すのではないかと錯覚する事はしばしばあった。

 

「そうだったんですね、ありがとうございます。では立花光雄、謹んで総責任者を拝命いたします」

「こちらこそ、ありがとうございます。光雄さんの私室は地下と地上の二箇所に作りましたので、そちらに案内しますね。今日は遠路遥々来ていただいて、それに、突拍子もない様な話を聞いてお疲れでしょう。使用人が夕食をご用意してる頃合いだと思うので地上に戻りましょうか」

 

そう言って「OR」から出ようとした彼女の背に私は「この場所の名前を考えたので今言っていいですか?」と問いかけると彼女は興味深げな瞳で「いいわよ」と頷いた。

 

「この職場の名前は「リライター」です。」

 

「リライター・・ですか。何となく理由は察する事はできますが光雄さんの口からお聞きしてもよろしいですか?」

「バタフライエフェクト・・バタフライ効果とも呼ばれる表現をご存知でしょうか?大雑把に言うと何か小さなきっかけが起こる起こらない場合の世界は大分違うという意味です。この組織は様々な「対」の何方かに肩入れして世界滅亡の筋書きから救う。まるで書き換える者<リライター>だと思ったのでこの名前にしました」

 

そう言うと彼女はにっこりと微笑んで、付いてきなさいと言わんばかりに部屋を出て行った。私も追従する形で地上に上がると書斎は暗くなっており、書斎の窓から優しい光が辺りを照らしていた。外を見ると上空には満点の星空が広がっていた。

都会暮らしに慣れて星空とは無縁の生活を何十年も送って来た彼からしたら、この空はとても力強く、それでいて都会から出る光よりも優しさのある光のように思えた。

 

 

案内された部屋は今まで見た部屋よりも(比較的)こじんまりとした部屋でテーブルに3人分の食事が並べられていた。味噌汁、豚肉の野菜炒め、白米・・この屋敷に不釣り合いな至って庶民的な料理だが、私は初日疲れからなのか、ペロリとご飯を平らげ、お代わりを要求した。その様子を見ていた彼女はクスクスと笑って、使用人におかわりを持ってくるように言った。使用人の(案件メッセージを書いた人なら後藤さんのはず)後藤さんは最初のじっとりとした目線が嘘のように、優しげな目で食事を出して、彼女と楽しんで食事をしていた。最初に見たロボットのような動きは変わらないが・・・

 

食後に出されたお茶を飲んで寛いでいる時に私は職員について聞いた。

 

「聡子さん。ひとつお聞きしたいのですが、あの施設には私以外に何人の職員がいますか?出来れば明日あたりに連絡を入れてオリエンテーションを行いたいと思っているのですが」

「すいません。重要な事を言い忘れてましたね。あの施設には特定の職員は光雄さん以外いません。この施設は日本に来たエージェントの拠点として使用するつもりです。エージェントは特定の拠点にいる訳ではなく、一般人として日常生活を送っているのよ。例えば、主婦や警察官にサラリーマン・・・小中高校生もいるわよ?」

「・・・・小中高校生もですか・・と言う事はあれですか?此処は来訪したエージェントとの打ち合わせ兼司令部兼補給施設ということですか?」

 

私は無言で肯く彼女を見て明日の業務が得体の知れない物に変化していくように感じられた。

 

「あら?光雄さん目がトロントしていますよ?後藤。光雄さんを寝室に案内してあげて」

 

彼女が私を見て使用人に声をかけると私は案内されるまま私の私室に連れて行かれた。

「こちらが光雄様の私室になります。」そう言って使用人は頭を下げて、そそくさと退出した。案内された部屋は、まるで高級ホテルを小さくしたような内装で居心地の悪さを感じたが、これから此処で暮らしていく内に慣れるだろうと割り切って風呂に入った。

15分ぐらいで風呂場から出た私は備え付けのドライヤーで髪を乾かして部屋着に着替え終えた。

時計を見たら夜の10時になっており、明日の業務に備えて布団に入った。

それから、5分もたたない内に私の意識は夢の中へと旅立った。




滅茶苦茶遅い投稿頻度となる予定です。根本的な世界観については次の話で出す予定です。今はオリジナル作品ですが、考えによっては何かの作品の世界をベースにするかもです。
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