立花光雄
1998年9月28日 23:00
ラクーン高校
薄暗い空間に複数人の足音が木霊する。音の発生源にいる彼等の息遣いは緊張とストレスから来る閉塞感で浅くなっており、AK-47を構えてた中年太りの男に至っては目線が泳いでおり落ち着きが見られない。
そんな様子を隣で見ていたアジア人風の顔立ちをした男性はため息を吐くと我が子に諭すかのような口調で話しかけた。
「ミツオ。何もこんなに気を張らなくていいんだぜ?此処には戦闘慣れしている俺らがいるんだからな」
「・・・・分かってます。深夜の学校というのは慣れないものでして・・ハハ」
自嘲するかのように言って笑った男性が私、立花光雄だ。
自身の膝は小刻みに震え、それと連動するかのように銃口の先も照準が定まらず動いている。
「味方に誤射する気か?そんな状態だったらこの銃を仕舞えよ。威力は下がるがグロックを貸してやるから」
先程から会話している彼、バークは呆れた口調で私に自身の腰に装着されているホルスターごと押し付けた。自身の持っているAK-47に急ごしらえで付けたロープを襷掛けの様にして、銃本体を背中部分に当たるように調整した後バークから借り受けたホルスターを腰に装着した。
彼から借り受けた銃はG19と呼ばれる物だ。日本の基地で大量の銃火器を使用して訓練していたのが功を成し残弾数の確認、セーフティの確認、構えの確認をスムーズに行う事ができた。
「・・・日本人のくせに随分と手慣れてるな?」
「ハハハ、恥ずかしながら私は大の銃好きでして・・・よく海外ツアーで射撃演習場に通うくらいには使いこなす事はできますよ。日本では役に立たないと思ってましたが、今回に限っては良い方に傾いたようです」
バークに怪しまれた私は咄嗟に出た言葉でシラを切った。訝しみながらも納得したように頷いた彼は鋭い目線を校舎の隅から隅まで舐め回すように向けた。
私達がいる場所は市唯一の高校である『ラクーン高校』の二階の廊下だ。ここに到着した際にあった高校の館内図を見ながら私達は2つのチームに分けて探索を行う事にした。高校は一階が職員室と各種レクリエーションルーム。2階部分が各学年の教室で、1階と2階に連絡通路が隣の体育館に続いている作りになっている。
隊長であるアンドリューとラクーン警察の若手刑事であるロイ、ジミーのチームは一階の探索。残りのバークとダイゴ、そしてわたし、立花光雄は2階を探索する事になった。
「ここを拠点化する為に時間を使い過ぎてはU.B.C.Sの生き残りが徐々に数を減らしてしまう。だから効率よく二手に分かれて探索をしよう」
アンドリューのその言葉に誰も反抗することなく私達は校舎を探索しているが時々聞こえる何かが衝突する音、引きずる音が電力供給が不安定な為に不規則に付いたり消えたりする灯りの音が人気のないガランとした校舎を一層不気味にさせている。
日本人だけかもしれないが『学校』と『深夜』のワードに対して恐怖感を覚える人が一定数存在しており私もそのうちの1人だと強く自覚している。
1983年。私が小学5年生の掃除当番で遅くまで残っていた私は帰り際、急な尿意に襲われた。急いで用を足して帰ろうとした時、今まで一度だって考えたこともないような混沌とした内容が頭の中にふと現れた。形容し難い内容で言語で表現しろと言われても表現することの出来ない内容は、あまりに唐突に現れた。混乱している私の視界が思考と同時多発的にグニャリと歪むと何処の国の言語ともつかない言葉が頭に直接響き渡った。意味のわからない恐怖に駆られて私は一目散に帰宅した。
その出来事があってから社会人となった今でも夜の校舎に行く度に震えが止まらなくなる。
「ダイゴ。今からこの教室のクリアリングを行う。援護を頼むぞ?ミツオは俺たちの後ろを守ってくれ」
「OK分かった」
「わかりました」
そう言って教室に入ったバークは敵を確認したのか1発の銃弾を発射した。その一瞬後に「クリア」という声が聞こえてきて私も教室に入った。
「高校生が役に立つものを持ってるとは思わないが使えそうなものを探すぞ」
ダイゴの言ったセリフに急かされるようにして私はバークが射殺した遺体に両手を合わせると体を弄った。
「・・・?何かありました。どうやら手帳のようですが・・・すいません崩した英文は苦手でして誰か代読してもらえないでしょうか?」
「分かった。じゃあ俺が読む」
そう言って私に手を差し出してきたバークに手帳を渡すと彼は遺体となった女生徒の手記を読み始めた。
ーーーーーー
「母親はゾンビになった」ってジェーンが言っていたけど嘘も大概にしてほしいわ。だいたいゾンビなんて空想上の生き物であって実際に存在するには可笑しいもの。
いくら彼女の母親がアークレイ山中で野犬に襲われて行方不明だとしても、そんな嘘を言う子じゃないと思っていたんだけどなぁ。
学校中の男子や女子もジェーンを馬鹿にしているけどニックだけは真面目に取り合っているみたいね。何か面白いことが起きそうな予感がするわ!
23日
ここの所物騒な事件が多いけどいったいこの街はどうしたと言うのかしら?ジェーンとニックも最近顔を出してないし・・・もしかしてゾンビって本当にいたの?
26日
避難していたらお婆さんに噛まれた。もしかして私、ゾンビになっちゃうのかな?嫌だよ。まだ死にたくないよ。まだボーイフレンドも出来てないのに死ぬなんて絶対に嫌!! |
---|
ーーーーーー
「結果がこの有様じゃあボーイフレンドも出来っこないな」
バークの感想に続きジミーも肩をすくめて同意のジェスチャーをした。
「少なくともこんな事になる以前から暴徒の様な人はいたみたいですね。私でも実際にゾンビのような暴徒が現れたら精神疾患を疑いますし・・・」
「確かにな。俺の親父が言ってたが日本には『悪鬼』というモンスターがいるらしいな。それとこの感染者って何か似てるな」
「・・・厳密に言うなら悪鬼はモンスターと言うよりデーモンと同じような存在ですけどね・・・今の状況が昔の人々が考えた空想上の生物と酷似しているのは偶然なのか故意なのか・・・謎が深まるばかりです」
嘘だ。実際には私は2011年のアドミンで訓練という名のVR空間サバイバルをしている身。当然アンブレラとそれに関係する事件は大雑把に・・・一般人でも知っている事を知識として持っている為、VR空間で彼等コンピュータが作り出した存在と喋っているとしても心に少しばかりの罪悪感が芽生えてしまう。
教室をテンポよく探索して2階を全て確認し終わった私達はアンドリューに無線通信を行った。
バイオハザード下のラクーンシティではアンブレラ社が事件の隠蔽のために無線などの通信機器に対して妨害電波を放っている事実を当時の人々は知らない。仮に知っていたとしたらアンブレラと関わりのある人物か、裏方に回っている特殊部隊ぐらいだろう。繋がるにしてもラクーン市内の近くを通った無線車かヘリなどの通信機器を積んでいる車ぐらいだ。
そんな状況下で問題なく無線通信を行うことのできる人々がU.B.C.Sの隊員だ。アンブレラから支給された無線機器は特定の妨害電波をブロックする機能が実装されており部隊間での通信を行うことができる。最もその事実を彼等U.B.C.Sの下っ端隊員が知る機会など事件当時は無かったのだから如何に彼等がアンブレラから信用されてなかったのかが分かる。
「こちらバークだ。分隊長応答を願う。こちらバークだ。分隊長応答を願う」
『・・・こちらアンドリュー。どうした?』
「2階部分の探索は終了した。今からそちらに向かう。そちらの状況はどうか?」
『こちらも一階部分の探索は完了した。これより体育館に向かう。大量の暴徒がいる事を考慮して体育館前で集合だ。くれぐれも近くで大きな音を出さないでくれ。以上』
「全員聞いたな?今から俺達は体育館に向かう。暴徒の数が少ないのは下の方も一緒らしい。いくぞ」
パークの一声で私達は2階校舎から渡り廊下を使って体育館に向かった。廊下を進むにつれて周りに散乱している物は増え、それに比例するように血痕の量も増えていった。嫌な予感のした私は無意識のうちに持ってる銃をアサルトライフルに変更して残弾数の確認を行なった。
ダイゴとバークも何かを感じたのか周囲に鋭い目線を向けつつ銃の残弾数の確認を一瞬で行った。その動作は一寸の狂いも無く美しく洗礼されていた。
体育館に繋がる扉の前に到着した私達は無線を使いアンドリューと通信を行った。
「こちらバーク。目標建築物の扉前についた。」
『こちらアンドリュー。了解だ。俺の秒読みに合わせて同時にアプローチを仕掛ける』
「・・・了解」
無線機越しからアンドリューのカウントダウンが周囲に物が散乱している廊下に木霊する。秒数が短くなるにつれて私の鼓動も心なしか小刻みに刻まれていく。言いようのない不安感に駆られて私の前方にいる2人に目を向けると彼等の目線は探索している時と変わらない目線でただ前を眺めていた。
カウンドダウンがゼロになった瞬間、前方にいたバークとダイゴが扉を蹴破り室内に突入した。バークは右側の通路を。ダイゴは左側の通路に目線をつけた瞬間二つのマズルフラッシュと同時に弾丸が発射された。
一階の扉から侵入したアンドリュー、ロイ、ジミーのチームも同様に銃声が聞こえた事から私は一回を見下ろすことのできる位置に陣取って眼下に目を向けた。
「?!・・・・これは?!」
「どうした?!日本人!」
一階の踊り場では100は下らないだろう感染者の大群がアンドリューチームに向かって殺到していた。3人は的確な射撃で1発の銃弾で1体から2体の感染者を倒している事から射撃センスは本物だろう。しかし、どんなに優れた技術を持ってしても数が圧倒的に多い感染者に徐々に距離を詰められている。
「バークさん!私は一階のアンドリューさん達を援護します!」
「おいおい。何でまた・・・?!っ。許可する」
最初は反対の姿勢で話しかけたバークは一階にチラリと目線を向けて私の意見に賛同した。
バークからの了承を得た私はアサルトライフルを構えて1発づつ銃のトリガーを引いた。が、私の所持しているアサルトライフルの残弾数はとても少なく、加えて緊張感からくる銃身のブレにより4発発射して1体の感染者しか倒せなかった。
(このままだとアンドリューさん達がやられる!何か・・・何かないか?!)
半ばパニックになった私は咄嗟に思いついた事を良く考えもせずに一階にいる彼等に向けて叫んだ。
「アンドリューさん!!!手榴弾を使ってください!!このままでは押し切られてしまいます!!」
その言葉が無事に届いたのかアンドリューとジミーは持っている手榴弾を全て投擲した。その5秒後に強い振動と破裂音が響き渡り密集していた60近くの感染者を吹き飛ばす事に成功した。
「よし!!!・・・っうぉぉぉぉ!!」
喜びも束の間、投げた手榴弾が2階部分の通路を固定していた柱を吹き飛ばしてしまい通路が崩落。左右に展開していたバークとダイゴ諸共一階に落下した。
一瞬の出来事の中で唯一幸運だった事は、一階の感染者の大半を手榴弾で倒していた事と、崩落箇所周辺にいた感染者は崩落した通路によって押し潰された事ぐらいだ。
落ちて意識が朦朧とする体に鞭打って自身の状態の確認後、一緒に落下して目を回しているバークとダイゴを必死に揺さぶった。
「バークさん!!ダイゴさん!!早く目を覚ましてください!!バークさん!!」
「ぅぅぅ・・・クソが!お前のせいだぞ日本人。」
「このツケは酒バーで返してもらうぞ・・・」
意識を覚醒して直ぐに自身の状態について把握した彼等は私に向かって悪態をついた。必死に銃を撃っている彼等ではなく室内戦闘に不慣れな私が口出すことではなかった。それについて彼等に謝罪をして、銃声の量が先ほどよりも格段に減った室内に目線を向けた。
「これは・・・・ウップ!!」
「そりゃあグレネードを大量に投擲したらこうなる。日本人はつくづくこの手の事に耐性がないな」
「私を日本人代表の様に言うのは止めてくれませんか?普通の人なら当たり前の反応ですよ・・」
死屍累々の様相を呈している空間で吐き気を催した私は呆れたように言葉を言い放ったバークに反論をした。
「バーク!ダイゴ!ミツオ!いつまで喋ってるつもりだ?!暴徒はまだいるんだ!黙って撃ち続けろ!!」
その場で座り込むようにして話していた私達に向けて叱咤したアンドリューは先程とペースを変える事なく的確に頭を撃ち抜いていた。
その光景を見て自身の行う事を思い出した私達はその場で伏せて銃を地面に設置した瞬間、三つのマズルフラッシュが追加で暗い場所を照らし出した。
残った感染者の掃討に大した時間を要すること無く無事に終えて私達は体育館の中央に円陣を描くようにして座り込んだ。
「・・・俺からの報告は以上だ。ダイゴ、ミツオ相異ないな?」
パークがアンドリューに話した事は私達が見てきた事を的確に捉えており文句など言える物では無かった。
ダイゴは目を軽くつぶって沈黙を貫き、私は無言でコクリと頷いた。
「そうか・・・俺達のチームが見てきた光景もそちらと大差なかった。体育館に暴徒が集まっていたのは避難の為だろう。・・・・本来ならこれで話は終わるが、ミツオ。この光景とさっきの戦闘で何か言う事はないか?」
周囲を見渡すと先ほどまで目を瞑っていたダイゴ含め全員が私に目線を向けていた。
(これは下手な事を言えないな・・・)
彼等はアンブレラに雇われた傭兵部隊。今は友好的でも答え方次第で如何様にも態度を変えるだろう。少しの間の沈黙の後、絞り出すように言ったセリフはシンプルな物だった。
「ほんとに・・・申し訳ありませんでした・・」
10秒程度頭を深々と下げて姿勢を戻して視線をアンドリュー達に向けた。彼等は暫くの間沈黙を保っていたが、パークがおもむろに近づいて来た。
何をするのか?と言う疑問を抱いたと同時に私の頬に強い衝撃が加えられた事で初めて殴られたと理解した。
「・・・取り敢えずこれで勘弁してやる。次同じようなことがあったら鉛玉をぶち込むから覚悟しとけよ?」
「・・・俺は辞めとくぜ。昔の自分を見てるみたいで嫌になるからな」
「バークさん・・・ダイゴさん。本当にすいませんでした」
「まぁ、あれだ。死ぬリスクが高かった2人がいいなら俺から何も言う事はない・・・ん?」
頬を軽く掻いて話していたアンドリューは何処かから聞こえて来る鈍重な音に気づき目線を鋭くした。
「どうやら暴徒が残ってるみたいだな・・・総員!警戒!」
その一言によって今までの空気が嘘のように四散して円陣の外側に体をむけて臨戦体制を構築した。
「この音は・・・全員上だ!!」
ロイの鋭い言葉で全員の意識が体育館の上に向いたと同時に天井が崩れ去って『ナニカ』が落ちて来た。『ナニカ』は私達の円陣の中央付近に落下してきたので私達は円を広げる形で後ろ向きに回避した。
「おいおい・・・なんだよこれは!」
ジミーが言ったこの言葉は全員が思っていた事だ。
トカゲのような印象を与える四足の足と人間の脳みそを外部に晒したかのような醜悪な生物。
(リッカーか・・・初めてのB.O.Wで緊張するな)
このVR空間で初めてとなるB.O.Wとの遭遇。あまりにリアルに、生々しく映る兵器は本来なら感じることのない威圧感を私に与えた。
アンドリュー達U.B.C.Sにとって初めて見るB.O.Wなのだろう。彼等の目は恐怖と不快感に支配され、異形の生物を言葉もなくただ見つめてるだけだった。
「おい!何をやっている?!早く撃て!!」
そんな中、いち早く声を上げたのはただ1人で今まで生き残っていたロイだった。彼の声で意識を取り戻したかのような反応をした彼等は一斉に射撃を開始した。
円陣の中央部分に落下した為に銃口から逃れることができずにリッカーは一瞬の内に生命活動を停止した。
「何なんだ・・・この化け物は」
「分からない・・・ただ、この町ではこんな奴は沢山いると思う。確証はないけどな」
「・・・ロイ。こんな化け物がいるなら俺らにも教えてくれれば良かったものの・・・」
「こんな状況で考える余裕がなかったんだ。これぐらいは見逃して欲しいね」
「こんな状況だ。警官だって修羅場を潜り抜けるだけでも精一杯のはずだ。他にどんな化け物を見たか教えてくれ」
「そんなに知ってるわけじゃないが」という前置きから語られたのはケルベロスとハンターらしき特徴のB.O.Wだった。それらの化け物がどれほどの脅威を持っているのか細かく説明してくれた。それに対してU.B.C.Sの面々は二つの反応に分かれた。悪態を吐いくか、事態の深刻さを理解して動揺するかだ。
アンドリューとバークは後者の方だったがジミーとダイゴは2人揃って同じ悪態を吐いていた。
私はそれを黙って見ているとふと思い出した
(そう言えば13時に総司令と面談を行うと言っていたけど今は何時だろう)
そう思いHUDに表示されている現実世界の時刻を見ると12:15分と表示されていた。このシチュエーションを楽しみたいところだがこればかりはどうしようも無いので中断しようとした。
(そういえば説明には中断に関する記述がなかった・・・どうすれば)
「シチュエーション中断」
取り敢えず声に出してみる事にした。すると体育館の風景が徐々に殺風景な部屋へと遷移していき目の前にいたアンドリュー達もその場から消え失せた。
『使用者の意思によりシチュエーションを中断します。戦闘評価、当時の経過報告を確かめたい場合は端末にアクセスしてください』
どこからともなく聞こえてくるアナウンスが先程までのリアルな描写が仮想空間で起きた事だと私に言っているようだった。
10秒程度その場に立ち尽くしていた私は出口付近にある端末にアクセスして中断した際の評価を見る事にした。
『仮想空間No.1235使用者のターミナル使用を認識・・・・接触した人物を検索・・・レポートと接触人物の当該ケースでの行動、経歴、を出力します・・・・使用者の管理レベルが支部司令であることを確認しました。事件詳細報告も合わせて出力します』
無機質な女性のアナウンスがして20秒後に端末上部からUSBメモリらしき物が突出した。
一瞬何の事か理解できなかったが支給された端末下部にUSBの差込口があることを思い出して物は試しとそれと結合してみた。
『情報のエクスポート中です・・・・完了しました。』
3秒もかからず端末内に入ったレポートを見てみると以下のような文が記載されていた。
ーーーーーー
レポート | ||
---|---|---|
当レポートは現実に基づいた実際のケースを仮想空間で再現した際に記載者が行った行動を分析する物になっています。 | ||
所属 | 日本支部基地司令 | 立花光雄(Mitsuo Tatibana) |
総合評価項目 | ||
当項目は限りなく実戦に近い状況下で行った際に記載者が行った行動や戦闘に関する評価をS.A.B.Cの4段階±にランク付けした項目です。 | ||
例 | ||
S | エージェントとして高難易度の任務に投入可能(例:「対」レオン・S・ケネディ、アルバート・ウェスカー) | |
A | エージェントとして通常任務に投入可能(例:U.S.S、ネイビーシールズ、S.T.A.R.S) | |
B | エージェントとしての一通りの技量が身に付いている(例:U.B.C.S、S.W.A.T) | |
C | 警察組織程度 | |
現在のランク | C- | |
作戦行動 | ||
当項目は作戦中の「対」との接触や記載者の攻撃手段に関する評価を個別ランク付けで評価します。 | ||
射撃技能 | B | |
エージェントとしての最低限の射撃能力を所持しています。しかし、排除対象と断定してからの行動に一定のタイムラグと複数の排除対象との戦闘では射撃ミスを引き起こしているを確認。以後注意が必要です。 | ||
体力 | C- | |
一般市民と同程度の体力しかないので一回の訓練時に10キロのランニングを行ってください | ||
隠密 | B- | |
エージェントとしての隠密能力は必要最低限備えていますが、ミスが目立ちます。作戦成功率を大きく下げる要因になりかねないので要練習。 | ||
コミュニケーション | B+ | |
一般人の中に紛れ込む事が出来るレベルの能力を持っています。 | ||
「対」接触可能性行動 | C- | |
「対」に近い存在に深く接触する行為はエージェントとして教わった事の基本が出来ていません。再教育プログラムの受講をお勧めします。 | ||
心理的評価 | ||
この項目では記載者の行動に伴う心理的な変化を記録、分析して客観的に評価した項目です。 | ||
不測の事態 | B+ | |
作戦投入に問題ない精神状態です。 | ||
アンモラルな行動 | C | |
エージェントとして作戦行動に重大な障害になり得ます。 | ||
平常心の維持 | A- | |
歴戦のエージェント並みです。しかし、アンモラルな行動を取った際に脳波に著しい乱れが確認されているので更なる訓練を必要とします。 | ||
総評 | ||
射撃技術だけを行なっているようなので体力作りトレーニングを行ってください。精神状態に関しては倫理に反する行動の枷を外すように常日頃から意識すると良いでしょう。それが出来るようになれば精神の切り替えを行えるようにする訓練を行ってください。 |
ーーーーーーーー
「体力づくりの必要があるなこれは・・・」
レポートの結果を見ながらそう呟いた私はこの組織・・・アドミンのトップと面談する為にこの施設から退出した。
この基地は訓練室だけでも恐ろしい規模を誇っており移動だけで一苦労だ。そんなところで働いている職員達の足は施設内にある専用ビークルか、定期運行しているリニアーのどちらかが大多数を占めていると昨日案内してくれたヤンさんから聞いていた。
なので、訓練室を出た私が最初に行う行動は司令室に繋がる、又は近くまで移動する手段を探す事だった。
「どこにあるかな・・・これか?」
仮想訓練室の側にゴーカートの様な形状をしたビークルがあった。私はそのビークルに乗り込むと本来ならハンドルがある部分に取り付けられているディスプレイが起動した。
『目的地を選択してください』
「地図?・・・これをタッチすればいいのか?」
機械音声とともに表示された画面はこの基地を簡略化したマップだった。マップの横に移動できる場所が表示されているがその数があまりにも多い。
どうしたものかと考えてると移動出来る場所の上に検索欄がある事に気づいた。
「司令官室と打ち込んで・・・あった。」
表示された『司令官室』と書かれた欄をタッチすれば『司令官室に移動しますか?所要時間は20分です。』という表示と共に『はい』『いいえ』という項目が表示された。
迷わずに『はい』をクリックするとガゴッという音と共にこのビークルが動き出した。
移動スピードは大体時速25キロ程で進んでいるにもかかわらず振動が全く無い。
「移動中にダウンロードしたファイルを見るか」
そう1人呟くと私はデバイスを起動して『ラクーン事件』と書かれたファイルを観覧した。
ーーーーーーー
ラクーン事件 | ||
---|---|---|
概要 | 1998年5月11日の研究所でのバイオハザード発生から10月2日の弾道ミサイルを用いた滅菌作戦までの期間発生した一連の事件。
| |
組織の対応 | ||
1998/1/20 | エージェントをアンブレラ社本社及び全支部に投入。 | |
1998/5/10 | 投入したエージェントよりバイオハザードの兆候を報告。アメリカ支部【フリーダム】はラクーン市内に追加で長期作戦要員5名投入。 | |
1998/7/20 | 組織司令官より新規の『対』と『敵性対』の発生を各支部に伝達。 | |
1998/7/23 | 『対』の所属する警察組織が作戦を開始。長期作戦要員1人を対応に向かわせる。
| |
1998/7/24 | 新たに『対』2名と『敵性対』が作戦を開始。長期作戦要員1人を追加で投入。 | |
1998/7/29 | ラクーン市内下水処理場にてバイオハザード発生の可能性を【フリーダム】が組織に報告。
| |
1998/9/6 | 組織司令官より新規の『対』の発生を各支部に伝達。 | |
1998/9/23 | ラクーン市内でアウトブレイク発生。組織は長期作戦要員の潜入を続行。 | |
1998/9/28 | 長期作戦要員3名に撤退指示
| |
1998/10/2 | 『対』全員のラクーン市内脱出を確認。全長期作戦要員に撤退指示。
|
当該ケースにおける接触者の経歴 | ||
---|---|---|
アンドリュー・フェルト | ||
・U.B.C.Sタンゴ小隊第二分隊分隊長。「オペレーション・ラクーンシティ」にて搭乗ヘリが墜落後、付近に降下した分隊員バーク・スペクターと行動を開始。その後分隊員全員とラクーン市警所属の刑事ロイ・キングと共に行動を共にする。U.B.C.S本隊との通信が途絶した事に疑念を抱き分隊員と共に拠点構築を目的にラクーン高校へ向かう。その後の探索で発見した数人の高校生の護衛をロイ・キングに任せて生存者探索を行い、高校に誘導した。 9月27日。武装した市民数名と共に高校内に避難していた市民数名をラクーン市内から脱出。 9月29日。タンゴ小隊小隊長ロバート・タイソンの死亡と同時にタンゴ小隊臨時小隊長となる。その後市民を匿っていたラクーン市警警察S.W.A.Tのマイケル・ウォレスと共にラクーン市内を一度脱出。その後再度ラクーン市内に戻り生存者救出を続けた。 アンブレラ社が倒産する際に組織にスカウトされ現在はエージェントとして活躍している。 | ||
バーク・スペクター | ||
・U.B.C.Sタンゴ小隊第二分隊衛生兵。「オペレーション・ラクーンシティ」にて投入当初からアンドリュー・フェルトと行動していた。ラクーン高校の拠点化の提案を行い生存者のセーフハウス構築の大きな要因となった。 アンブレラ社が倒産する際にNGO団体「テラセイブ」に所属。 | ||
ジミー・キャンベラ | ||
・U.B.C.Sタンゴ小隊第二分隊狙撃兵。「オペレーション・ラクーンシティ」にてアンドリュー・フェルトと合流するまでの間、同分隊員のダイゴ・フローレンスと共に行動を共にした。 アンブレラ社が倒産した後結成されたB.S.A.Aの初期メンバー。通常オリジナルイレブンの1人となってバイオハザードと対峙している。 | ||
ダイゴ・フローレンス | ||
・U.B.C.Sタンゴ小隊第二分隊通信兵。「オペレーション・ラクーンシティ」にてアンドリュー・フェルトと合流するまでの間、同分隊員のジミー・キャンベラに同行した。 アンブレラ社が倒産後、以前から親交のあったジミー・キャンベラのB.S.A.A入隊の勧誘を断り傭兵となって各地を転戦している。 | ||
ロイ・キング | ||
・ラクーン市警刑事課所属。ラクーンシティ壊滅事件最初期から行動していた。警官隊と共に行動していたがメインストリート爆破作戦の際、爆発に巻き込まれて行方不明扱いとなった。U.B.C.Sタンゴ小隊第二分隊員に発見されるまで市内の住宅地下室で潜伏していた。 U.B.C.Sタンゴ小隊第二分隊分隊長であるアンドリュー・フェルトにセーフハウス化した拠点の防衛を自ら志願して多数の市民を匿った。その後武装化した市民数名を指揮して市内から脱出。 ラクーンシティ壊滅事件後はルイジアナ州ダルウェイ警察署の警部として転属された。 |
事件詳細報告 | ||
---|---|---|
この項目は機密レベル2に該当します。支部司令以上のみが閲覧できる項目です。 | ||
注) 本報告書は当時指揮していたアメリカ支部【フリーダム】基地司令及び潜入していたエージェント、政府機関や加害組織が保持していた情報を元に記載。 | ||
・当事件は1998年5月に発生。原因は生物兵器の管理体制の不備によるものであり人為的に発生したものではなかった。その状況を利用して生物兵器の実践記録を取ろうと画策したのが「敵性対」である当時ラクーン市警特殊部隊S.T.A.R.Sのブラボーチーム隊長であるアルバート・ウェスカー。彼の思惑は上手く行き実験データを得る事に成功。更に事件後、S.T.A.R.S生存者による告発の揉み消しをラクーン市内の有力者が行った事により情報は隠蔽された。 そんな中アンブレラ社内の派閥争いによって生じた2度目のバイオハザードがラクーン市内地下の秘密研究所内で発生。アンブレラ社はウィルスの封じ込めに失敗してラクーン市内でアウトブレイクが発生した。ラクーン市警は初期の段階から対策を行おうとしたが当時アンブレラ社と癒着していた警察署長ブライアン・アイアンズによる妨害工作により指揮系統の乱れや初期動作の遅れが発生。数日でラクーン市警の行政機能が停止した。 事態を深刻に見たアンブレラ上層部はU.B.C.SとU.S.Sの投入を決定しラクーン市民の救出に動いた。しかし、一部U.B.C.S隊員とU.S.Sには生物兵器の実践記録を取る様にと指示を受けていた事もあり救出作戦事態を阻害する事が散見した。 一方アメリカ政府はアンブレラ社との癒着の証拠を隠蔽する為に州兵の出動を認可。ラクーンシティ周辺を封鎖した。ラクーン市内の死者が増えていく中アメリカ政府は弾道ミサイルによる滅菌作戦を敢行して癒着の証拠隠滅を図った。 |
ーーーーーーー
『目的地に到着しました。』
「もう着いたのか・・・」
資料を読んでいると唐突に聞こえた案内音声とその後に来たビークルが停止すると発生する独特の感覚で私は今の状況を理解した。
ビークルから降りて少し離れるとピピっという音を出して何処かへと移動していった。
「ここが司令官か・・・・身だしなみは・・・よし、行くか」
基地内の通常の自動ドアより少し材質が硬そうな扉の前に立つとドアを3回ノックした。
『だれかな?』
「本日13時より行われる面談の予定で参りました。立花光雄です」
『・・・入室を許可する』
インターホン越しの会話の直後にドアが自動的に開き部屋の中が見えた。
目の前には更に扉がありその横に四角形の箱が置かれていた。戸惑いながら入室すると背後の扉が閉まり辺りは沈黙に包まれた。
「これは・・・・どうすれば・・・」
『私が見えないのですか?早く前に進んでください』
「っ?!・・・箱が・・・喋った?!」
『私に言わせればあなた方は肉の塊が喋ってる様に見えるのですよ。私は基地司令の警備及び秘書を務めているガーディアンです。』
信じ難い事に箱のような形状をした物体・・・ロボットは私とノータイムで話す事のできるSFじみた物だった。今の時代では到底再現できない技術を目の当たりにしてその物体に興味を持っているとロボットもといガーディアンが急かす様に言った。
『司令官は目の前の部屋で待っています。貴方が上司に対して失礼な態度を取りたいのでしたらそのままで結構ですよ?』
「あ、すいません。急いで行きます」
脳が一杯一杯になりながらなんとか言った言葉の後に扉の前まで歩を進めて入室した。
まず目を引いたのはシックな作りの机だ。それ以外は殺風景な室内で地下だというのに窓から光が入ってくる。椅子を窓と対面する様に回している基地司令らしき人物。椅子が大きすぎて姿形は見えないがおそらくそうだろうとアタリをつけた人物がそのままの状態で話しかけた。
「待っていたよ立花君。この基地は楽しめたかね?」
(訓練室での事を言っているのか?)
「えぇ。現実に今起こっている事だと錯覚する程の内容でしたよ。」
「フッそれはなりよりだ」
そう言って椅子を私に向けて回すことで初めてその全貌を見る事ができた。
美女だがどこか違和感がある。そんな印象を抱くような容姿だった。
肌の色が白色人種のような印象を抱くがそれよりも白い・・・所謂アルビノという病気にかかった動物並みに白いのが違和感の原因か?違う
瞳の色が通常ではありえない虹色だからか?違う
座っている状態で繰り出される細かな所作から伝わる上品さか?違う
(もっと根本的な何かが違う・・・何なんだ?)
私を見ている彼女、司令官は私をただじっと見つめており私自身を私と同じ様に観察し出した。
1分程度の時間が経過しておもむろに彼女が口を開いた。
「初めて見た人は困惑するだろう。そしてその困惑の原因に辿り着ける人は今まで生きてきて1人もいない。今後のコミュニケーションの為に私の正体について話すが。『私は人間ではない』」
やっと物語を進めることが出来ます・・・。
ラクーン高校で拾った日記に記載されていた登場人物のジェーンとニックはバイオハザードのラジオドラマで登場した人です。「アンブレラ社」のことを「アンブレラ製薬」と言ったり所々痒い作品でしたが興味がある方は下記のリンクからどうぞ。
https://youtube.com/playlist?list=PLC442C3D5C988F487
誤字脱字の報告。表現がおかしい箇所の報告も大歓迎です。
初めて表形式で記載しましたが正直めんどくさかったです(笑)