【凍結】1st Saga バタフライエフェクト   作:ジュネープ

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エージェント。それはバタフライエフェクトによって運命を翻弄された者達

エージェント。それは運命から見捨てられた者達

エージェント。それは運命によって心が壊された者達

エージェント・・・・それは「主人公」になり得た者達

バタフライエフェクトを発動・・・彼の脳内に語りかけるとしよう

物語で消えるはずだった命

物語で少しは生存できた命

一つのイレギュラーで全ては「書き換わる」


バタフライエフェクトは人々の意思


ACT:3

アンドリューが退出したのを見届けた私は、内線を使い使用人に連絡を取った。

 

「何かご用意でしょうか?」

「後藤さん。明日アンドリューさんと食事に出かけようと思ってのですが、近くに良い店はないですか?」

「すいません。わたくしの知る限りで食事をとられるとなると、電車に乗るか山を越えるかしかありませんが・・・」

 

肝心なことを失念していた。最初に聡子さんが言っていた「限界集落」という単語。そんな所で定食屋でもやっていたら赤字になるのは必至だ。

しかし、彼に対して私から食事に誘った手前、無かったことにするのは些か気が引ける。

さてどうしたものかと考えていると使用人がこんな提案をしてくれた。

 

「光雄様がよろしいならばわたくしが作った料理を振る舞うことが可能ですよ?料理のジャンルを言っていただければ腕によりをかけて作られせもらいますが、如何ですか?」

「いつもの業務に加えてこんな我儘を聞いていただいて本当に有難うございます。ではジャンクフードをお願いしてもよろしいですか?私、実は大のフライドポテトジャンキーでして・・・」

 

私がそういうと、彼はハハハと笑い「いえいえ、私が作った物を美味しそうに食べるのはとても好感が持てます。明日は、楽しみにしていてください。腕によりをかけてジャンクフードと最高のフライドポテトを作って差し上げます」と言った。

 

「ではそれでお願いします。」と言って内線を切ると丁度今回の報告書が送信されて来た。

内容は私がHUDでみたものと相違ないようなので、プリントアウトして、ファイリングした。

これで今日の業務が終わり、私は帽子を被り「リライター」を後にした。

 

 

 

休日と言うこともあり、この日は9時に起床した。食堂に行くと、聡子さんがいた。彼女は新聞紙をコーヒー片手に眺めていてそれは1枚の現代日本画のようだった。「おはようございます」と声をかけると彼女は私に気付いて「おはよう」と返事をしてくれた。

 

「すいません。後藤さんを探してるのですが、何処にいるかご存知ですか?」

「あぁ、後藤なら2時間前に車で食材の買い出しに出掛けたわよ。多分もうそろそろ帰ってくると思うけど・・・」

 

そんな事を彼女が言っていると「ただいま戻りました」と声が聞こえてきた。どうやら、読みは当たったようだ。

 

「光雄様。下準備は終わっているので、後は、出して欲しい時間帯に言ってもらえれば直ぐにお出し出来ます。」

「光雄さんも、中々いい責任者になっているようで嬉しいわ。流石潜在能力が高かっただけのことはあるわね」

「そう言えば聡子さん。昨日も言ってましたが潜在能力をどうやって測っていたのですか?」

 

彼女にそれを聞いたら一言「秘密よ」と返された。釈然としないが私は12時に料理を「リライター」の「食堂」に運んでもらうように言って、私は地下に向かった。今日は休日なので私服で降りて行き「仮眠室」をノックして入室した。そこには彼の姿はなく、基地内を探していたら「TR」・・・「トレーニングルーム」からくぐもった音が聞こえて来た。

中に入ってみるとそこでは、彼がライフルを構えてひたすらにターゲットを撃ち抜いていく光景がそこにあった。私が入って来た気配を感じたのか、かれは小さく会釈すると訓練を再開した。

銃なんてこの国にいる限りは一生縁のないものだと思っていたが、これから先のことを考えると、訓練する必要があると思い至り、近くに「GUN」と書かれた備え付けのタッチパネルを見つけてそこに歩を進めた。

端末には「銃一覧」と書かれたもアイコンの下に「ハンドガン」「アサルトライフル」「サブマシンガン」という風に銃の種類が羅列されていた。

私は「ハンドガン」を選択して、日本の警察が持っていたような気がする拳銃「ニューナンプM60」を選択した。すると、私の方向に向かって、壁・・・引き出しのようになっていた所から選択したハンドガンがはめ込まれてる状態で排出された。

使い方は分からなくて不安だったが、取扱説明書も付属していたのでとても助かった。「GUNBOX」と命名したそれの横に「AMMO」と書かれたパネルがあったので、説明書に記載されている口径弾を5ケース程出して射撃の練習を行った。基本的な姿勢も説明書に載っていたので何とか行うことが出来た。

私の理想は片手でカッコよく目標を撃ち抜くことだが、現状姿勢制御も満足にできていない私が言っても絵空事の様に思えてくる。

 

トレーニングを終えた私は使い終わった銃を「GUNBOX」の「返却」と書かれている所に入れて、アンドリューの方に目を向けた。彼はアサルトライフルを構えたまま呼吸を荒くし、今にも過呼吸で倒れそうになっていた。それを見た私は彼を刺激しないように優しく「アンドリューさん?大丈夫か?」と声を掛けると、一瞬ビクッとして、「大丈夫」と返答した。

 

「もうすぐ12時になるから・・・ご飯を食べよう。ここの近辺に良い店はなかったから、使用人に作らせることにしたが・・・大丈夫そうか?」

「・・・あぁ、すまん、少しフラッシュバックしていたようだ・・・そうだな。飯を食おう」

 

そう言って彼は魂の抜けたような足取りで武器を返却しに行って、私と合流した後、一緒に「地下食堂」に向かった

 

 

ーーーーーーーーー

Side:アンドリュー・フェルト

 

はぁ、はぁ、はぁ・・・小隊長・・・

 

死臭漂うあの街での死は必然だったかもしれない

 

 

「お前ら、小隊長は戦死した・・・これよりタンゴ小隊の最高階級である俺が小隊長となり、お前らを指揮する!メイン目標であるラクーン市民の救出は変わらない!いいか!お前ら?!」

 

「「「了解です!隊長」」」

 

付き従ってくれた仲間を死なせまいと努力したあの日の事を忘れることはできない。

 

『バタフライエフェクトはいつもすぐそばに』

 

 

 

「っはぁ!はぁ!はぁ!・・・・」

 

最悪な目覚めだ。空きっ腹にあの夢のせいで気分が悪くなった。俺はできるだけあの夢を思い出さないようにしようと「トレーニングルーム」に向かった。「組織」の基地は全てが同じレイアウトで作られているため、一度配置を覚えれば楽なもんだ。違いといえば名前ぐらいで、中国なら「白澤」ロシアなら「コサック」という具合にそれぞれ独自の名称を使っているが、自分の銃に名前をつけるのと一緒で基本的には『国名 + 支部』で呼ばれている。

「トレーニングルーム」で俺が使っているのは昨日の作戦で使った武器「CQB-R」とたっぷりの弾をオーダーして射撃を行った。俺自信、トレーニングする度に「仮想的」を思い浮かべて行うので今回は「感染者」を仮想的とした。

出てきた奴らの脳をダブルタップで、無駄なく効率良く撃ち込んでいく。

訓練に集中していると扉が開く音が聞こえた。多分司令官だろう。しかし今日は休日だと言っていたから今の立場は一緒だ。軍隊にいた時の上司はそんなのお構いなしのクソ野郎だったが、「組織」はそこらへんもきちんと明確に記載しているから俺としてはこれが性に合っている。

司令官・・・・奴の挨拶に軽く返事をした俺はトレーニングに集中していたが、奴の存在が気になり出した。チラチラと横目で見てみると訓練に使う銃で悩んでいるみたいだ。

 

(新米司令官様は得意武器すらも無いのかよ)

 

そう思っていたが、おもむろに一つの項目をタッチして、銃が出てきた。どうやらニューナンプを使うつもりらしい。日本の警察官が装備している武器というのは知っているが、任務の特性上複数人の敵を相手に立ち回らなくてはいけない場面が多々あるのでリボルバーはあまり好きになれない。それにこの武器は威力が小さすぎるから「エージェント」でも使う奴を見たことがない・・・司令官クラスの奴なら護身用に持ってる可能性はあるが。

奴は銃に触るの自体初めてなのか付属の説明書を見ながら恐る恐る発砲した。正直見てるこっちが怖くなってくる扱い方だ。

 

「おっと、行けないな。集中集中」

 

気を取り直して射撃を行う。

 

ドド

ドド

ドド

ドド

ドド

 

残弾数が残り半分になる。それでも俺は感染者を射殺する。

 

ドド

ドド

ドド

ドド

ドド

ガチャっ

 

リロードして奴らを撃つ、撃つ、撃つ。それを繰り返していくうちに俺の体が無重力状態に陥っている感覚に襲われて、目の前が暗くなった

 

 

 

 

『バタフライエフェクトはいつも唐突に』

 

『「物語」の主人公になれたかも知れない分岐』

 

『主人公の宿敵になれたかもしれない分岐』

 

『運命は定められてない、いつでも変えられる。脆い物』

 

『もし、運命を変えられるなら・・・』

 

 

 

 

 

『あなたはどうしたい?』

 

 

 

「アンドリューさん?大丈夫か?」

 

真っ暗な空間からトレーニングルームに意識が戻った俺は「大丈夫」と答えるのに精一杯だった。

 

「もうすぐ12時になるから・・・ご飯を食べよう。ここの近辺に良い店はなかったから、使用人に作らせることにしたが・・・大丈夫そうか?」

「・・・あぁ、すまん、少しフラッシュバックしていたようだ・・・そうだな。飯を食おう」

 

さっきの声は何だったんだろうか・・・もしそれがあの惨劇の事と関係あるのなら大変じゃないか。と俺は考えながら、奴について行った。

 

 

 

「食堂」・・・奴が言うには「地下食堂」らしいが、どうでもいい。そこで出された料理はアメリカのジャンクフードだ。フライドチキンにハンバーガー、オニオンリングに大量のフライドポテト。

至れり尽くせりの高カロリーの山に俺と奴はがっついてか30分以内に全て食べることができた。

満腹に膨れ上がった腹を休ませるために椅子に寄りかかっていると、俺と同じ体制の奴が語りかけてきた。

 

「さっきは大丈夫だったか?なんだかおかしいぞ?」

 

どうやら俺は心配されていたみたいだ。新米司令官に心配されるようじゃ「エージェント」失格だ・・・・しかし、今日。奴は新米司令官としてじゃなく。1人の人間として俺と向き合ってることが何となく理解できた。

 

「大丈夫じゃない。正直な話、あの島に行ってから昔の事を思い出す・・・小隊長を失ったあの日の事を・・・」

「私で良ければ話してくれないか?口に出すことでストレスはだいぶ軽減されるからな」

 

奴の言葉に甘えて俺は昔話を始めた

 

ーーーーーーー

 

アンタは俺の経歴を見ている筈だからUBCSにいた事も知ってるよな?その時に投入された最初で最後の作戦・・・「オペレーション・ラクーンシティ」に参加するために俺達隊員は輸送ヘリで運ばれて、あの地獄に降り立った。俺はタンゴ小隊第2分隊長として参加していたが、事前情報も無い状態で投入されたお陰でどうなったと思う?・・・投入された隊員は200名以上いたはずだ。だけど、そいつらの大半は初日のうちで奴らの仲間入りだ。

2日目の昼過ぎ頃。第1分隊の唯一の生き残りの小隊長と俺ら第2分隊で市民が籠城している建物付近に接近していた。

2日目だから、少し気が緩んでいたんだろう・・・小隊長は突然現れた長い爪を持つ生物兵器に喉を切り裂かれて死んだ・・・それから、俺は現状最高指揮権を持ってると言う理由で第2分隊どころかタンゴ小隊の小隊長になってしまった。いちよう補足しとくが、1小隊につき16人を4つの分隊に分けているんだ。既に第1分隊は全滅俺らの分隊を除いて他の分隊の生死は無線が壊れたのが原因で不明。そんな絶望的な状況だった・・・・・

 

ーーーーーー

ラクーンシティ

 

 

尊い犠牲が出たが、それでも、任務を遂行しなければいけない。分隊員のメディック担当のバーク・スペクターが扉の左手に陣取った。反対側にはマークスマン担当のジミー・キャンベラがライフルをハンドガンに持ち替えて、サイレンサーを取り付けた。俺が手信号を送ると通信担当のダイゴ・フローレンスが扉を蹴破って突入した。それに続くようにバークとジミーが入り、最後に俺が背後の敵を警戒しつつ建物に入った。

 

「UBCSだ!生存者はいないか?!生存者は声を上げろ!上げないで近づく奴は感染者とみなして射殺する!」

 

俺がそう言うと、建物内部の奥の部屋から「私は生存者だ!部屋には13名の市民を匿っている!」と聞こえてきたので、ジミーとダイゴを建物周辺の警戒にまわし、俺とバークで声のした方に向かった。

 

「助かった!外の奴らを倒したのはアンタらか?俺はラクーン市警特殊部隊所属のマイケル・ウォレスだ」

「俺らはUBCS。アンブレラの要請により、昨晩からラクーンシティに投入された救出部隊だ。この中に感染している者や、奴らに噛まれた者はいないか?」

 

俺がそう言うとマイケルが「それは無い。俺が念入りにチェックしといたから大丈夫だ」と言ったので俺は、レシーバーで周囲の警戒をしているジミー以外のメンバーを集結させた。

 

「状況を説明する。昨晩この街に降下した我々は、既に戦力の半分を喪失し、部隊は壊滅的被害を被ってる可能性がある。しかし、そんな状況でも救出用のヘリは定期的に来る。俺らはそこに向かうが、ここで問題がある。」

 

俺がそう言うと、周囲で聞いていた感の鋭い市民は申し訳なさそうにしていた。

 

「非戦闘員が我々よりも多いので、緯度速度の低下及び、カバーが出来ない。特殊部隊のマイケルがいるとはいえ、こちらの兵力は5人。あちらは下手したら万単位だ。それに、一度に乗れる人数に制限のあるヘリには往復してもらう必要がある。待機してる間の防衛にもリスクが付いてくるのはナンセンスだ。そこで俺らは空からの脱出じゃなくて、陸路からの脱出にしようと思う。その為には大人数を収容できる「足」が必要だ。」

 

ここで話を切り上げて周囲を見れば全員がいい乗り物はないかと思案していた。

 

「これは提案なんだがいいかな?我々特殊部隊が出動した時に乗っていた車両はどうだ?あれなら防弾性能もあるしここの人数分は何とか入りきれると思うが?」

「それは名案だ。して、その車両はどこにあるんだ?」

 

そう言って俺は地図を広げた。

マイケルは「ここらへんにあるはずだ」と言って指差した所は現在地点から1キロ離れた幹線道路付近だった。

 

「俺はこの車を運転していたからわかる。ここに鍵がある」

 

そう言って地図の上に鍵を出したマイケルを見つめた俺は簡単な作戦を考えて実行に移すことにした。

 

「よし、では、俺とマイケル、それとダイゴの3人で車両をとりに行く。残りは建物周辺の警戒及び市民の確保を行ってくれ。何か異論はあるか?・・・・無いな、始めるぞ」

 

そう言って俺とマイケル、ダイゴは店を出た。

 

 

9月29日 13時12分

俺、マイケル、ダイゴの順に輸送車のある地点に向けて進んでいた。

しかし、道路は所々事故を起こしている場所や、住民か警察が封鎖したのか、バリケードが設置されていた。

 

「マイケル。このバリケードはあんたらが設置したのか?だとしたら迷惑極まりない・・・」

「違うぞ。俺らが設営したバリケードは幹線道路だけだ。こんな路地裏まで手が回るわけない。」

「あんたら警察組織は何をしていたんだ?」

 

マイケルとダイゴの受け答えに俺が警察を小ばかにしたように言うと「俺たちだって一昨日まではまともに機能していたんだ・・・」といった。

 

どうやら、俺たちU,B,C,Sが空と地上からラクーンシティに入った前日に、ラクーン市警は幹線道路に大規模な防衛線を構築していたらしい。

 

「俺たちSWATにも召集がかかって全員で防衛戦に参加したよ・・・何両ものパトカーに、ヘリからの援護・・・あの時その場にいた全員は思ったはず「勝った」とね」

 

そう言う彼の顔には影が差していた。「もういい」といって彼の型を叩くと彼は、絞り出すように言い放った

 

「アントン・・・ロズ・・・ケイト・・お前らの分まで生きてやる!」

「すまんな・・・嫌なことを思い出させてしまって・・・その・・・お前らの事をバカにしたように言って悪かった」

「いいんだ・・・どんな理由があれ、この町をこんな姿にしてしまった俺たち警察にも責任がある・・」

 

俺が謝るとマイケルはそれに答え、場の雰囲気はしんみりとしたものになった。それでも周囲の警戒と移動スピードを緩めないのは彼らがプロであることを己で理解している他にない。

しかし彼らとて人間。戦場ではモチベーションの維持が命に関わることを知っている。

 

「分隊長にマイケル。この作戦が終わったら一緒に飲もうじゃないか!ジミーとバークもさそってよ!。俺の兄貴か酒バーを経営しているからそこで記憶をなくすまでたらふく飲もう!酒と一緒に食べる日本のつまみは最高だぞ?」

「おう!それはいい考えだ。その時は俺のおごりだから、少しは遠慮しろよ?」

 

ダイゴがモチベーションを上げるために言った言葉に俺も乗っかり、その意図を理解したマイケルも「隊長殿の、懐を飢えたアライグマの腹と一緒にしてやる!」と良い。場のテンションはさっきよりはマシになった・・・・・マイケルの冗談は全く笑えなかったが・・・

 

路地裏のバリケードを迂回しつつ移動している俺は、マイケルに聞いた。

 

「今はどのあたりにいるんだ?」

「現在、レッドストーン駅近辺の裏路地にいる。目的地の「パークストリート」まで残り200メートルといったところだ」

「一つ疑問なんだが、輸送車は大きいから路地裏を通り抜けることは出来ないから、幹線道路からそのまま市民のいる建物まで移動しないといけない訳だ。さっき、あんたが言った「俺らが設置したバリケードは幹線道路だけだ」。つまり移動できなのではないか?」

 

俺がそういうと彼は、悲しげに言った。

 

「俺が現場から退去するときにバリケードを倒して奴らが流れ込んだ所を確認している。だから、あんたが思うような心配はないと思うぞ。仮にあったとしても大した重量の障害物でもないだろう・・・その時は運転手以外の2人で撤去すればいいんだよ」

「わかった。輸送車が見える距離に近づいたらそれぞれの役割に徹してくれ。ダイゴは幹線道路付近に展開した部隊がいたはずだ・・・確かケベック小隊とオスカー小隊、リマ小隊だった筈。無線の周波数を変えながら3小隊に連絡を取ってくれ、マイケルはダイゴと一緒のそばについて周辺の警戒を行ってくれ。俺は道中にある障害物の撤去を行う。」

「了解」

「OK」

ダイゴとマイケルの返事を確認すると俺たちは、歩を進めた。

 

目的地付近についたら、それぞれが指示した通りの行動を開始し、俺も単独で感染者にばれないように障害物の撤去を始めた。

撤去を開始して40分。目的地までの道にあった障害物の撤去を完了させて、ダイゴ達がいる場所に戻った。

 

「隊長!返信がありました。オスカー小隊の生き残りが現在幹線道路付近で潜伏中らしいです。他の小隊からの応答はなかったので恐らく全滅でしょう」

「よくやった。ダイゴ。無線の周波数を教えてくれ、そちらに連絡をする」

 

そういって、ダイゴから周波数を聞き出した俺は、無線に語り掛けた。

 

「こちらはタンゴ小隊小隊長のアンドリュー・フェルトだ。オスカー小隊、返信を求む」

「・・・・こちらオスカー小隊、第4分隊、分隊長のミカエル・マクリーンだ・・・・俺の記憶ではお前は、俺と同じ分隊長だったと思うが?」

「小隊長は目の前で死んだ・・・今は指揮を引き継いで小隊長になっている」

「OK、小隊長殿。今のオスカー小隊の生き残りは多分俺だけだろう。今から指揮権をそちらに譲渡して、タンゴ小隊に編入する。」

「了解だ。ミカエルは、俺らが輸送車に乗り込んだのを確認したら、こちらと合流してくれ・・・戦力が増えて助かった」

 

そういうと通信を切り、ダイゴとマイケルに向き合った。

 

「障害物はどうだった?」

「大丈夫だ。すべて排除した。それより二人とも、よくやってくれたな」

「お蔭様で。頼もしい特殊部隊員に守られて、安心して取り組むことが出来たよ」

 

マイケルの質問に答えてダイゴが話した。緊張感も程よく。即席チームとは思えないほどの連携を見せている。いつもは、個人戦闘になるU,B,C,Sと現地の特殊部隊員、立場も教養も違う彼らがこうなった原因がこの地獄だというのは皮肉なものだ。この瞬間がたとえ一時の結束だとしても誰一人として生涯忘れることはないだろう。

 

輸送車に向かった俺達は、道中立ちはだかっている感染者を射殺して進んだ。

 

「俺は運転席に乗ります。助手席には隊長が、後部にはダイゴさんとこれから合流するミカエルさんが乗って下さい!」

「了解した!」

 

俺が返答した後、先行していたダイゴが勢いよく後部扉を開いた。すると三体の「特殊部隊員」の感染者がダイゴに襲い掛かってきた。

 

「ダイゴ!・・・クソ!射線が・・おい、マイケル!お前の位置からなら撃てるはずだ!急げ!」

 

俺がそういってもマイケルは微動だにせず、目を見開いたまま固まっていたが、口をかすかに開けて「嘘だろ・・・アントン・・ロズ・・・ケイト・・」と微かに呟いた。

 

「クソ!隊長!こいつらを何とかしてくれ!」

 

そう言って、1体を射殺したダイゴは残る2体と攻防を繰り広げていた。

 

(ちくしょう!下手したらダイゴに当たってしまう・・こうなったら引きはがすしかない!)

 

そう考えて駆け出した。俺の耳にドン、パンとライフルとハンドガンの2種類の銃声が聞こえてきた。

 

銃声の発生源はマイケルのライフルからだったが、彼はハンドガンを構えている様子は無い。じゃあ誰が・・周囲を見たらひとりの男がハンドガンを無造作に弄りながら近づいてきた。

 

「全く・・・勝負所で自分の腕を信じずに何が小隊長だよ。アン」

「・・・ミカエルか、助かった。」

 

ベレー帽をかぶった金髪の男がそこにいた。彼こそがミカエル・マクレーン。オスカー小隊(暫定)唯一の生き残りだ。

 

「とりあえず輸送車を確保した。急いで乗り込むぞ!マイケル!!」

 

俺はマイケルに発破をかけて運転席に乗らせると車両を建物に、向かわせた。その間、マイケルは俺に謝罪の言葉を言ったが「それはダイゴに言え。」とぶっきらぼうに返事した。

 

建物付近に近づいたら建物内から市民を護衛する形で、ジミーとバークが出てきた。車が止まると後部扉が開いて、市民が乗り込んて行くのが振動で分かる。後ろからドン、ドンと強くたたいた音を確認した俺は、「出せ」と一言呟いた。ゆらゆらと揺れる車内の中、俺とマイケルは黙っていたが、沈黙に耐えかねたのかマイケルが話し出した。

 

「俺は、元々褒められた警官ではなかったんだ。S,T,A,R,Sが壊滅して親友のエンリコが殉職したと聞かされるまでは、不良警官といわれていたんだ。だけど新しく編成するS,W,A,Tの隊員募集の所内告知を見たときに思ったんだ。」エンリコが救おうとした命を俺が救ってやる」って」

 

そこまで言うと彼は、ため息を吐いて続けた

 

「勤務態度も改めて、クソ忌々しい所長にも頼んだ。それに俺が特殊部隊に入るのを手助けしてくれた友達もいたんだよ・・・それが、アントン、ロズ、ケイトだ。あいつら、俺が心配だからって理由で特殊部隊に入ったんだぜ?バカみたいだよ。あの運命の日、俺を逃がしてくれたあいつらのお陰様で今ここにいるんだ。本当に生き残るべきは俺じゃなくてあいつらみたいな善人が生きるべきなんだ・・なんで・・・・」

 

そう言い切ると彼は、静かに涙を流した。

 

「お前が、そいつらにどんな感情を抱いているかなんて知らない。でも、善人であったお前の友人がお前を生かすために己を犠牲にしたんだろ?・・・善人に貰った命。大事に使う事だな」

 

俺はそういうと、彼とは反対方向に体を向けて浅い眠りについた。彼のみっともない姿を見ないように・・・・

 

 

9月29日 18時16分

 

 

「隊長さん。そろそろ起きたらどうだ?」

 

声が聞こえて目を覚ましたおれは、マイケルに体を揺さぶられていることに気づき、その手を払いのけた。ぼやける視界を前に向ければU,B,C,Sの装甲車や輸送トラックがひっきりなりに行き来していた。アメリカ陸軍所属らしき車両も時々通っており、俺たちはあの地獄から生還したことを理解した。

 

「ここに来てどれくらいの時間がたったんだ?」

「いや、ついてエンジンを切ったばかりだよ。部下の皆さんを車両から出したらどうだ?」

 

そういわれて俺は、急いで無線で「到着した。全員出ていいぞ。」というと後部扉が開いた音がしたので、俺も下車した。

降りた俺たちを迎えたのは、周囲をぐるりと取り囲む陸軍とU,B,C,Sの隊員たちだった。

 

「せっかくあそこから脱出したというのに・・随分な歓待だな」

 

『諸君らは感染している可能性がある。よって君たちを隔離する。』

 

そういうと周囲にいる兵士がジリジリとにじり寄ってきた。

 

「近寄るんじゃねえ!」

「これ以上来たらぶち殺すぞ!」

「おいお前ら!一回黙れ!・・・無駄な抵抗はしない!そちらの意思に従う。」

 

叫ぶダイゴとジミーを黙らせて抵抗の意思はないことを示して、兵士たちに付いていった。道中マイケルとラクーンの市民は別の所へ連れていかれ、俺らU,B,C,Sだけ別の場所に案内された。

 

 

案内された場所は見た感じ「前線指令室」のような場所で、U,B,C,Sの幹部制服を着た奴と陸軍の将校の2人が中央にある大きなテーブルの上にラクーンシティ市街の地図を広げ、展開しているであろう部隊に指示を出している。「ご命令通り、つれてきました」そう言って案内の兵が立ち去ると、将校二人が俺らを一瞥して、陸軍将校が口を開いた

 

「ようこそ、U,B,C,Sの諸君。この度のラクーンでの市民救出に感謝する。」

「ナック大佐、彼らは当たり前のことを行っただけですよ。それに奴らは元々犯罪者やロクデナシの集まり。礼には及ばんよ」

 

陸軍の将校・・・ナック大佐の感謝に顔が綻びかけていた隊員一同は、アンブレラ側から派遣されたであろう幹部の発言によって険悪な雰囲気に包まれていた。

 

「まぁ、確かに俺らはどうしょうもないクズの集まりだ、それは認める。だけどそのクズよりも約に立ってないであろうあんたは、何なんだ?」

 

隊員達の間でクスクスと笑い声が聞こえた。それに顔を真っ赤にした幹部は、俺らに詰め寄ろうとしたところをナック大佐に止められた。

 

「ハハハ!・・・まぁ彼らのいう事も最もだ。後ろでウジウジしているよりも現場が重要だからな・・・・そうは思わんかね?・・フェデリコ君」

「・・・確かにそうですね。彼らが行った功績は一見の価値がある。しかし、これを評価するのは、今ではないことも分かっているかね?アンドリュー君?」

 

アンブレラ幹部・・・フェデリコの物言いに何か良からぬ気配を感じたものの、とりあえず相槌を打った。

 

「物分かりがよくて結構。そんな君たちに追加の任務を与えよう。よく聞くように」

「おい!ちょっと待てよ!帰ってきて直ぐに出撃?納得できるか!大体今回の作戦だって、アンタラ上の連中が事前情報をよこさなかったか「よせ!ジミー!!」」

 

俺はクソやろうとは言え上司に口答えしたジミーを黙らせて言った。

 

「作戦を聞かせてください」

 

 

 

 

今回も前回と同様に市民の救出を行ってもらう。前回と違うところは、これに時間制限が付くという点だ。

現日時、9月29日19時30分から52時間後に戦術兵器を用いた滅菌作戦を行う可能性が非常に高い。諸君らには、タイムリミットまで出来るだけ市民の救出を行ってもらう。補足だが、現時点で全滅が確認されているオスカー小隊第4分隊分隊長のミカエル・マクレーンはタンゴ小隊に加われ、以上だ。

 

「戦術兵器だと?!正気か?」と興奮した様子のバーク

 

「タンゴ小隊・・了解だ・・・知らん部隊よりはいい」冷静顔がムカつくミカエル

 

「マジかよ・・・」絶望的な表情のダイゴ

 

「俺たちは捨て駒かよ」憤っているジミー

 

そして俺は

 

 

 

 

 

 

「・・・・」何も感じることが出来なかった。

 

 

 

ラクーンシティに向かうヘリの中、ジミーとダイゴが俺を見てコソコソとしゃべっていた

「なぁ分隊長何かおかしくないか?」

「しょうがないだろ?安心してまた地獄に逆戻りだから仕方ないんじゃねぇの?」

 

 

確かにそのセリフは正解に近いが、俺が今の感情に囚われている原因は「仲間を失いたくない」それが心の奥底にあるからだ。

 

作戦初日から、小隊は半壊状態。

 

助けるべき市民を感染者の目の前で見捨てたときの罪悪感

 

見捨てた市民の絶望に染まり切った表情。

 

そして、「小隊長の死」

 

小隊長は皆の親父だった。かれは、どん底に落ちた俺にとって唯一頼りになる存在だった。そんな彼が死んだ時に俺の心は死んだ。

それが限界だったのかもしれない。限界を隠して行動していたが、唐突にガタが来てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、アンドリューはその・・亡くなった小隊長を慕っていたんだね」

「そりゃぁ、もう。本当の親父のように慕っていたさ」

 

 

新人司令官の奴にここまで話すと奴は、こういった。

 

「戦場でどんな思いをするかなんて俺には分からないよ。でも一つだけ言える事がある。それは「死は平等に訪れる」という事だ。当たり前のことを力説するのは気が引けるけど、この当たり前を人は忘れてしまうんだよ。アンドリューの話を聞いている限り、その「当たり前」を見失っているような気がしたんだ。」

「「死は平等に訪れる」・・・か。確かにそうだな。心に留めていた事を誰かに話したからか、とてもすっきりした。ありがとう。司令官殿」

「俺は話とほんの少しのアドバイスをしただけだよ。それと「司令官」っていうのはやめてくれないか?プライベートの時は名前で呼んでほしい」

 

「そうか・・OK分かったよ光雄・・・・これでいいか?それじゃあフェアじゃないから、俺のことを「アン」と呼んでもいいぜ」

「ああ、アン。話は戻るけ途中で辞めたけ話はどうなったんだ?」

 

アンの顔はトレーニングルームにいたときよりも、清々しく憑き物がおちた顔をしていた。彼の言ったことに嘘はないのであろう。

 

「ええ・・と、確か、ジミーとダイゴが俺の前で俺の事を話していた時だよな。あいつらの話で現実の世界に戻った俺は二人に鉄拳を落として、それを見ていた他のメンバーは大笑いしていたな。もう一回戻った後は、特にこれといったことはなく市民を救出を行って、帰還したよ。帰還後はダイゴの兄貴が経営しているサンフランシスコの酒バーでマイケルも一緒に飲みまくったなぁ・・・どうした?不満そうな顔をして・・・言っておくが俺は物語の主人公みたいに行く先々で問題が起こるなんて事は絶対にない。」

 

「そんなんだったら命が幾つあっても足りねぇよ」といって笑うアンの顔は40過ぎというのに無邪気な子供の様だった

 




食堂の表記が二箇所あるとややこしいので、基地内部の食堂に「地下」と付けました。

多分今作品で一番長い話でした。こんだけ話を書いてストーリー上3日しか経ってないんですよ。ヤバイ
ミカエル・マクレーンとマイケル・ウォレスはオリジナルバイオ3のOPに映ったキャラという設定です。(0:52ぐらいで撃ちまくっている隊員の右後ろにいる隊員がマイケルで、1:08で「Die!」と叫んで手りゅう弾を投げたのがミカエルです)
https://youtu.be/J00jQZA9OEM
いちよう今回出てきたSWATとU,B,C,Sの情報を載せますね・・・・今更ですが今後ここに書いているキャラ情報を使いまわします。




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NAME:バーク・スペクター
AGE:30歳(現在)
SEX:男性
SKILL:医療技術、サバイバル能力
CAREER
アメリカテネシー州出身。幼少期から物覚えが良かったのが影響して両親の強い勧めで26歳で外科医になる。
28歳の時に、脳死判定を受けた身寄りのいない患者の臓器を売りさばいて殺害していたことが発覚して終身刑になったがアンブレラにスカウトされてU,B,C,Sに入隊。ラクーン事件の後はNGO団体「テラセイブ」に所属してその手腕を振るっている。

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NAME:ジミー・キャンベラ
AGE:45歳
SEX:男性
SKILL:射撃スキル、サバイバル能力、格闘術
CAREER
オーストラリアシドニー出身。ダイゴとともに各地を渡り歩いていた傭兵であり、実戦経験をアンブレラに買われU,B,C,Sに入隊。ラクーン事件後は打倒アンブレラを掲げ、BSAAのオリジナルイレブンの一人となっている。

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NAME:ダイゴ・フローレンス
AGE:35歳
SEX:男性
SKILL:無線操作、格闘術、頑丈、隠密、剣術、サバイバル能力
CAREER
アメリカサンフランシスコ出身。幼いころに、両親との喧嘩で家出。そのままジミーに拾われて各地の戦場を転々とする生活を送っていた。ジミーと一緒にU,B,C,Sに入隊。ラクーン事件後は一人傭兵に戻り各地を転々としている。
補足;兄との兄弟仲は至って良好

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NAME:ミカエル・マクレーン
AGE:36歳
SEX:男性
SKILL:狙撃スキル、隠密、体術、サバイバル能力
CAREER
イギリスロンドン出身。16歳の頃から麻薬シンジゲートの暗殺者として活動。
ある暗殺任務に失敗して、警察に自首。100人を超える人物を殺害していることが判明して、死刑宣告を受けた。しかし、アンブレラの取引に応じU,B,C,Sのオスカー小隊第4分隊分隊長としてラクーン事件に参加、事件後は、ダイゴとともに各地を転々としている。
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NAME:マイケル・ウォレス
AGE:34歳
SEX:男性
SKILL;運転技術、射撃スキル、格闘術、隠密、サバイバル能力
CAREER
アメリカニューヨーク出身。ニューヨーク市警で勤務していたが、問題行動を起こし数か月でラクーン市警に転属になった。転属先でも問題を起こしていたが、市民からは慕われいた。諸事情によりSWATの運転手として配属された矢先に起こったラクーン事件の際に、防衛戦に参加していたSWAT隊員の唯一の生き残りとなり、U,B,C,Sの残存部隊とともに市民を救出。事件後に、それらが評価され、「エージェント」となった。

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次回から新章に突入します。出来るだけ時系列を2011年に絞り込んで探していますが・・・なかなか見つかりませんね

それと、ブラックラグーンを書こうとしたのですが、時代背景が1990年代後半という事を知ったので、消しました・・・・
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