【凍結】1st Saga バタフライエフェクト   作:ジュネープ

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ACT:4

セミの泣き声が煩い猛暑も日が経つにつれて程よい暑さになってきた頃。私は1人「OR」内のPCと向かいあって、指を動かしていた。現時刻は11時58分と表示されているのを確認するや否やタイピングのスピードと脳内の情報処理能力をフルに使って作業を行なった。額から沿って顎まで移動した汗がポタリと落ちたのと同時に私はため息と一緒に呟いた。

 

「何とか間に合った・・・・」

 

そう言って私はチェアにもたれ掛かるようにして放心した。今の状態になったのはほんの数時間前、午前8時の朝食を食べ終わった時だった。

 

 

 

 

私は始業までの短い時間を情報収集に費やす為に新聞を眺めていた。

 

「あら、光雄さん。新聞を見るなんて珍しいわね」

「聡子さん、おはようございます。私もここの責任者になったわけですから、日本の情勢を見た方が良いと判断したんですよ。」

 

そう言って新聞紙に目を向け直して今日の記事を眺めていた。

 

『スラブ共和国、連合軍の軍事介入』

・本日正午、突如としてアメリカ、ロシアを主軸とする連合軍がスラブ共和国に軍事介入した。

経緯は不明ながら同国は反政府組織との内戦状態に陥っており、バイオ兵器所持の疑いがかけられているのが介入のきっかけになった可能性が高い。連合軍の介入により、スラブ共和国大統領ベリコバ氏が大統領を辞任。

一連の騒動に余波を受け、アメリカ大統領、アダム・ベンフォード氏は「バイオ兵器の所有は世界の秩序を崩壊させるだけでなく、環境にも悪影響だ」と述べており、アメリカ世論はこの言葉に賛成派と反対派で分かれて激しい論争を繰り広げている。その影響で本日の日経平均株価は前日比851円60銭(4.5%)安の18,065円41銭で取引を終え、不安定な値動きが続いている。

 

『アーガス社期待の新作MMORPGコードネームを New Worldと表明』

・前年度株主総会にて発表された新作MMORPGのコードネームが公開された。同社の広報担当に問い合わせを行なったが、「コードネーム以外に公表できることはないが、発売されると世界に革命が起きる」と述べており、今後に期待したい。同社の株価は次期作成時点でも値上がりしており、同社の株価は発表翌日の時点で高値引けとなり、終値は前日比7.5%(2880円)高の4万1500円。当日安値(4万170円)が前日高値(3万9040円)を1130円も上回る結果となった。正式名称が発表されるまで同社の業績は右肩上がりとなる可能性がある。今後の発展に期待したい

 

 

世界情勢は不安定なのに日本はゲームソフト1本でこんなに盛り上がるとは、1ヶ月前のあの事件に介入した時と比べるとなんと平和なことか・・・・

 

「あ、言い忘れていた事があったわ。実は「組織」は年に2回前期と後期の報告書を提出しないといけないの。貴方は前期分の報告書を作成する必要が無いから、今回は後期の物になるわ。その報告書の提出が・・・・・今日の12時なのよ」

 

彼女の言葉を聞いた私は時計をチェックした。

時刻は8時45分。タイムリミットまで残り3時間15分だった。

 

冒頭に戻る

 

 

「リライター」の椅子で寛いでいると、アラーム音と共に大画面に「通信申請:タイ支部」と表示された。私は身嗜みを整え「許可」と書かれたボタンを押した。

 

「初めまして・・・私はタイ支部「ガルーダ」のパークリックという者だ。いきなりの通信で済まないな」

「お初にお目にかかります。日本支部「リライター」の立花光雄です。本日はどのようなご用件で連絡したのでしょうか?」

 

大画面に表示されているバークリックは精悍な顔立ちでありながら何処かおどおどした印象を与える不思議な人物だ。

 

「君は「リライター」の責任者になって数ヶ月が過ぎたと本部から報告を受けてね。「組織」では、着任してから数ヶ月から数年は試用期間として新人の働きぶりを調査官が監視するんだ。君の場合は、最短の数ヶ月での本登録らしいよ?私だって本登録には数年もかかったのに・・・」

「え?・・・今までは試用期間だったのですか?」

 

私がそう聞くと「あぁ、そうだよ」と彼は言った。

 

「組織では本登録を行う新人用の研修コースがあってね・・・それをクリアすると君は晴れて正式採用となるよ。因みに給料も今より良くなるから嬉しい事だらけだ」

「因みに研修は何処で行うのですか?」

 

私が一番気になる事を聞いたら彼はにこりと笑ってこう言った

 

「東南アジアのブルネイという国を知っているかい?そこの隣国に当たる国「クダンカン」の「アジア方面総司令部」で行われるんだよ。期間は最低でも2年、長くて5年だ。何か質問はあるかな?」

「長くて5年・・・ですか。参考までにお聞きしますが、バークリックさんは何年かかりましたか?」

 

私の質問に彼は苦笑いを浮かべながらこう言った

 

「そうだね・・・私の場合は不器用だから期間ギリギリの5年もかかってしまったんだ。でも君なら短い期間で負わされる事ができるような感じがするよ」

「・・・・・」

 

下手したら5年間も日本から離れないといけない事に頭が混乱していると彼はこう言って通信を閉じた

 

「出発は明日の13時に総司令部からの迎えが来るはずだよ。それについての命令書は今日中に届くはずだから、急いで準備した方が良いかもね。それと、君がいない間は私が日本支部を兼任する事になっているよ。光雄さんの健闘を祈るよ」

 

私は混乱をどうにか落ち着けて「総司令部」(と言ってもさっき知ったばかりだが)とやらからメールを受信していないかフォルダを開いたら1通のメールが入っている事に気づいた。

 

 

『命令書』

 

立花光雄は、翌日13時に指定の場所で待機する事。尚、護衛にエージェント「ヨルン・ミン」を向わせる。以下に場所のデータとエージェントプロフィールを添付する。

ーーーーーーー

NAME:ヨルン・ミン

AGE: 25歳

SEX:男性

SKILL:狙撃、話術、隠密、格闘術、人身掌握

CAREER

キラット国出身。1986年に当時の国王の側近として仕えていたが、1988年、反乱により両親と死別。2002年反政府組織で活動を開始。反政府組織に見捨てられ、軍に囚われている所を自力で脱出。後に政府軍、反政府組織問わず襲撃を繰り返していた所を「組織」にスカウトされ、今に至る

 

ーーーーーーー

 

 

 

キラット国は、私が13歳の時に大規模な反乱が起きたとテレビで報道されていた記憶がある。最もその話題自体、直ぐに芸能人のスキャンダルで掻き消えることになったが・・・・。

 

今回はエージェントと一緒に行動する。今までの屋内で指揮を取っていた時とは違うので、私は武器と関節の動きを最大限阻害しない防具を申請した。

本来なら防具は安全を考慮してガチガチに固めたいが、それをしたら私の体力が持たない事は自分で分かっている。それを考慮しての軽装防具だが、それで良かったのか私には分からない

 

「組織」にはきちんとした休憩時間がある。12時から13時までの1時間だ。その時間は制服姿だとしても何をしても良い時間となってるらしい。だから、私はその規則に則り行動を開始した。

 

ここの責任者になって新しくできた趣味がある。私はそれを行いに「オペレーションルーム」(以降司令室と表記)から退出して「トレーニングルーム」に入室した。

 

GUNBOXから適当な銃を取り出して、弾を数箱取り出す。そう、私の趣味は、射撃だ。日本では基本的に銃器の使用は許されていないので、「組織」の武器弾薬使用無制限の方針には、とても感謝している。アンドリューと一緒にトレーニングしてから私はそれに没頭するようになり、今では動く標的全てにダブルタップでヘッドショットを当てる事ができる。

 

今回使う銃はサブマシンガンと呼ばれる種別の「MP5」だ。毎回銃を選ぶ際には適当に選択したり、見た目で決めたりするが、今回は後者で選択した。

出てくる標的を撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。

 

これを行なっていると過去の嫌な事全てを考えずに済むので、とても嬉しい。

 

銃を撃って気づいたら1時間近く経っていることに気付いた。休憩時間が終わりそうなので、返却ボックスに返した私は少し早歩きで司令室に向かった。

 

席についた私はPCを操作して日本全国にいる「エージェント」からの報告を見ていた。

 

ここの責任者になったとしても、やる事が前回の様な戦闘指揮だけでは無い。「組織」が認定する「対」は、私のような「責任者」が世界各地で報告された人物の調査を行い、候補に上がった人物を上に送信、受理されたら新しい「対」として登録される。なので、戦闘以外は日本市民のプライバシーを覗いて「対」の候補探しに勤しむのだ。

最初の業務の時は勝手が分からず関係ない人の見てはいけない物を見てしまったりしたが、回数を重ねるごとに操作に慣れて今では自分の手足のように操る事ができる。最も、その業務は今日で一旦停止して引き継がないといけないが。

 

今回報告にあったのは埼玉県秩父市在住の「宿海仁太」16歳。高校受験に失敗し、引きこもり生活を送っている事を除いて至って普通の16歳の少年だ。しかし、「エージェント」からの報告書にはこう書かれている。

 

 

ーーーーーーー

NAME:宿海仁太

AGE:16歳

SEX:男性

CAREER

1995年生まれ。幼い頃に仲の良かった親友を事故で亡くした過去を持つ。

高校受験に失敗して引きこもり生活を送っていたが、最近何も無いところに向かって喋っているのを確認。様々な機器で測定した結果、何かしらのエネルギー体と会話をしている事が判明。何時からこの能力があったのかは不明だが「対」としての登録要請を求む

 

 

ーーーーーーー

 

何かしらの「エネルギー体」と会話をする少年というのはとても興味がそそられるが、仮にその能力が一過性の場合、又は霊能者の類の場合は「対」の登録要請をする事が出来ない。

霊能者というのは世界中で数え切れないぐらいいるらしく、初期の段階では「組織」も霊能者を登録していたが、事態が進むにつれて登録条件を変更したらしい。

「エージェント」の報告では、エネルギー体とら記述されていたが、かなりの確率でそれに該当すると私の感覚が告げている。しかし感覚で決めるのはあまり褒められた事ではない。現地のエージェントに「「対」の報告は見送る。しかし、継続的に対象の監視を行い、レポートにして提出するように」と書いた文をエージェントに送信した。

気付けば定時の18時になっていることに気づいた私は、司令室から退出した。急いで荷物を纏めないといけないからだ。と言っても部屋には私服が6〜8着程度しかなく、20分もかからずに終わった。その後直ぐに就寝した。翌日に備えて




次回からは研修編になります。「クダンカン」という国と2011年というワードでピンときた方は相当なファンだと思います
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