気が付いたら前世のアニメの第一部のボスでした〜かませ犬にならないために〜   作:弥生零

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開戦

 我が国の領土を侵すだけに留まらず、来賓者(らいひんしゃ)の護衛の殺害、王の暗殺を企だて実行に移すなど、マヌスの蛮行は目に余る領域に達している。

 

 我が国は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──誠に残念である。

 

 そう締めくくられた書状を、上司とマヌスの再暗部──『蠱毒(こどく)』は胡乱(うろん)な瞳で眺めていた。

 

「……え、これだけですか?」

 

 困惑すら滲ませた声音で、仮面の女がそう口にした。

 

 神を名乗る男の暗殺任務失敗。

 

 その結果に対して『蠱毒』の面々はスペンサーを嘲笑さえしていた。任務を遂行できない無能など、好敵手ですらない。人類最強の座を求めるには大きく力が不足しているのだと、彼らはスペンサーを徹底的に見下していた。

 

 しかしその一方で、神を名乗る男への警戒心は増している。曲がりなりにもスペンサーは『蠱毒』の一員であり、それを下した神を名乗る男に対して標的認定を下したのだ。スペンサーを見下すことと、神を名乗る男に対して警戒心を抱くことは、彼らの中で矛盾しない。

 

 暗殺任務失敗。

 それが意味するところは、スペンサーから情報が漏れる可能性があるということである。なのでスペンサーから情報が漏れぬよう彼を自死させるべく、上司はスペンサーに仕込んでいた『ある術式』を起動させようとしたのだが──それは不発に終わった。

 

「……神を名乗る男は、なにを考えている?」

 

 当然、上司は最大級の警戒網を敷くことを余儀なくされる。

 

 元々、あらゆる意味でマヌスとスペンサーには繋がりが見えないように上司は作戦を敷いていた。突然表舞台に上がり、調子に乗っているようにすら見える小国の王の殺害を目論む勢力は決して少なくない。つまり、黒幕の特定は非常に困難なのだ。

 

 加えて、スペンサーという『殺し屋』としても名が通っている男を今回の任務に起用したことからも、黒幕を絞り込むことは不可能に近い。極端な話、コネクションがあって依頼金さえ積めれば送り込める人間だからだ。

 

 スペンサーに"奥の手"として仕込んだ『地の術式』という異質な部分とて、それだけでマヌスが黒幕であると特定することは不可能である。

 

 それこそマヌスの実情をある程度知り得ていれば話は変わるだろうが、唯一国交のあった魔術大国でさえマヌスの実情はほとんど知らないというのが現実だ。なので、普通に考えればスペンサーが敗北したとしても問題はなかった。スペンサー本人を消す段取りまで整えていたのだから。

 

 だが当然ながら、スペンサー本人が口を割ればマヌスの存在は容易く露呈(ろてい)する。

 蠱毒の人間は総じてプライド高く、実力も相応のものを誇っている。なにより、人類最強以外には負け知らずな連中だ。その人類最強に対しても、人類最強自身が無益な殺生を好まない性格なせいで真の実力差を理解できていない面がある。

 

 だからこそ、蠱毒の面々は"挫折"というものを知らない。そしてそれは軌道に乗り続ければ本調子が続くが──もしも心が折れてしまえば、非常に脆いことをも意味する。

 

 とはいえ仮に情報が割れても、証拠はない。そして証拠がないことの証明を求めるために神を名乗る男がこの国への訪問を請求するのであれば、丸腰の相手に人類最強を含む蠱毒を総動員して最小限の被害で抹殺することだってできるだろう。

 

 だが、向こうも暗殺者を放ってくるなどの対応をとられると非常に面倒極まりない。もしかすると、直接的に武力行使に出てくる可能性だってある。なので数日の間、上司は神を名乗る男の国の周囲に監視を放ちつつ、切り札である人類最強を側に配置して過ごしていたのだが──

 

「……誠に残念であるだと? どういうことだ? 分かるか、人類最強?」

「自分では把握しかねる。あの男の精神性は、人間の域を逸していた。それこそ、神々に連なる存在なのかもしれない。あくまでも人間でしかない自分で、あの男の真意を推し量るのは困難極まる」

「……」

 

 誠に残念である。

 ……いや、それだけ? というのが上司の気持ちだった。

 

 王に暗殺者が向けられて「誠に残念である」などという反論のみで終えるのはどういうことなのかと上司の脳内が疑問で埋め尽くされる。

 

「スペンサー氏を倒した点は評価に値しますが……単純に、臆病風に吹かれたんじゃないですか。マヌスは大陸最強国家ですからね。スペンサー氏一人を倒したところで、どうなるんだって話ですよ。国を相手にするとなると、話は別ですから」

「……なるほど」

 

 確かに一理ある、と上司は仮面の女の言葉に頷いた。

 

「いや、その結論は性急にすぎる。あの男はそのようなタマではない。強気な反論がない理由を考えるなら、それはスペンサーや我々があの男にとっては大きな障害ではないと認識しているのだと考えるべきだ。あの男の実力は決して侮っていいものではなく、ましてや臆病風に吹かれるなどあり得ないだろう」

「過大評価しすぎですよ人類最強氏。ていうか人類最強氏が抱いた人物像から察するに、ある程度以上にプライド高い人物でしょう? 障害でもないと認識したとしても、ある程度強気な反論くらいはするでしょう。スペンサー氏を倒す実力はあるようなので標的としては認識してるし、問題ないでしょう?」

「それなー。人類最強、あんたがビビってるだけじゃない?」

「違うな、お前たちが過小評価をしすぎている。実物を目にしていないからと、相手を軽んじるのは──」

「言いたいことは分かりますがね人類最強氏。慎重になりすぎて行動に移せないなら、それはそれで意味がないんですよ。今ある情報を正しく認識し、予測を立てるなら──」

 

 蠱毒の会話を横耳に入れつつも、上司は思考を巡らせる。

 

 マヌスは非常に強大な国家だ。それこそ、大陸全土を見渡してもマヌス以上に強大な戦力を有した国は存在しない。単純な広範囲殲滅力で言えば魔術大国の方に軍配があがるだろうが、マヌスが国の核として埋め込んでいる結界は特級魔術であろうと防げるし、特級魔術さえ防げば人類最強が術者を葬るだけで完遂する。

 

 軍事力という一点において、マヌスに匹敵する国家あるいは勢力など、この大陸に存在しない。冒険者組合が国を相手に冒険者の権利を保護するため動く際の虎の子たる"噂の少年"とて、大陸最強格の域は出ないだろう。冒険者が必要とされるのは主に小国であることを考えると、大陸有数の強者が関の山か。

 

 流石に三つの大国が同盟を結んでマヌスの相手をするなら話は変わるだろうが、そんな未来はあり得ない。それぞれの趣向や価値観が異なりすぎて、まとまることなど不可能としか言えないからだ。

 

 確かに冷静に考えれば、マヌスが黒幕だと分かったところで正面から喧嘩を売れる存在など皆無に近い。威信のために抗議くらいはするだろうが、それでも大国とて表立っての戦争は避けるように動くだろう。威信を掲げた結果、国が滅びましたでは意味がない。

 

 王が第一に考えるべきは、国の存続。神を名乗る男が個人ならば話は変わったかもしれないが、王であるからこそ様々な制約がつきまとう。王は国民たちの命を預かる立場であり、国民たちの責任を背負う立場の者を指すのだから。

 

(……所詮は自称、か。神ではない)

 

 神々とは災害である──そんな文献を目にしたことがある自分は、必要以上に警戒していたのかもしれないと上司は思う。

 

(この程度の抗議しか送ることのできない弱小国家。ならば、更に強気に出ても問題ないだろう)

 

 神の力を全てこちらに渡せ、そうすれば命は助けてやる。

 

 流石に表現が直接的すぎるため変更の余地は多くあるが、それでもこの方向性で問題ないかもしれない。最初から物理的に動いても構わないといえば構わないが、無益な殺戮など不要だ。目的のための殺戮は許容するが、殺戮を目的とすることは信条に反する。

 

(方向性は決まった)

 

 結局、世の中は力が全てだ。

 

 財力。権力。武力。

 力の形は様々だが、平和だのなんだのを語ったところで、力が無ければ意味がない。それが……この世界の無情な現実だ。

 

 だからこそ──上司は全ての国に対して声明を出すことに決めた。

 

(帝国と魔術大国には、既に『神の力』が存在しないことは把握済み。ならば残る仮想敵は、エクエス王国のみだ)

 

 神を名乗る男は敵たり得ない。

 神の力を保有していない魔術大国とドラコ帝国に対しては、この声明はなんの意味も為さないので敵対することはない。ならば残る大国はエクエス王国のみであり、一国が相手なら反抗されたところで余力を残して勝てる。

 

(騎士団長には人類最強をぶつける。エクエス王国の騎士団と宮廷魔術師はそれなりに厄介だろうが、『地の術式』さえ行使可能な蠱毒に勝てぬ道理はなし)

 

 懸念事項は神を名乗る男とエクエス王国が結託して抵抗してくることだったが、神を名乗る男に単騎でこちらに歯向かう気概がないならば無視して構わないだろう。

 

 なにより『地の術式』を有する蠱毒の実力は、既に大陸有数の強者の枠に収まっていない。今代の大陸最強格はどれもこれも歴代最強故に届かないが、過去の時代であれば間違いなく大陸最強格を名乗れたであろうだけの実力を備えている。

 

 実質的には、歴代最高の人類最強と歴代の人類最強を保有しているに近いのだ、今のマヌスは。

 

「──時は満ちた、ということか」

 

 今の人類最強であれば『氷の魔女』『龍帝』『騎士団長』の全てを同時に相手しても、勝利を収めることは可能だろう。だが、念には念をということで上司は機を伺っていた。

 

「伝令を放つぞ。これよりマヌスは、進軍体制に移る」

 

 そしてその機とは、今この瞬間に他ならない。

 

「神を名乗る男の消極性は理解した。もはや我らの敵たり得る存在は、エクエス王国のみ。そのエクエス王国とて、お前たちならば容易く陥落できるだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マヌスより、各国に通達する。

 速やかに国交を解放し、そして──

 

 ◆◆◆

 

「……くくく」

 

 右手で顔面を覆いながら、俺は獰猛(どうもう)な笑みを浮かべていた。

 

(そうくると思っていたぞ、上司とやら)

 

 俺の殺害などという直接的かつ大胆すぎる作戦を、性急にとってきたような男だ。そんな男が、殺されそうになったにも関わらずろくな反論もしてこない相手を前にして調子に乗らないわけがない。

 

(舞台は整った)

 

 あえて下手に出ることで、調子に乗らせた相手のナメくさった態度をもって大義名分を得る。前世においてある意味では戦略兵器とされるそれを、俺は持ち出したのである。

 

(連中の目的が『神の力』にあり、人類最強が大陸を巡る過程で俺と遭遇した以上、マヌスが大陸全土の『神の力』を求めていたのは明白。つまり遅かれ早かれ連中は、『神の力』を保有している国とぶつかる未来にあった。複数の国を同時に相手するかどうかは別として、な)

 

 各地に散らばっているという性質上、国が『神の力』を保有しているという例は幾らか存在する。それは魔術大国然り、今はまだ接触していないエクエス王国然りだ。

 

 尤も、『神の力』を『神の力』として正しく認識している国は少ない。それこそ魔術大国なんかは「漬物かなんかと思っていた」という悲惨な具合である。

 先のマヌスの声明の意味を、『神の力』を認識しているエクエス王国はよく理解できただろうが、他の国はそうでもないだろう。他の国からすれば、マヌスはよく分からない声明文を出すだけ出して武力行使に移る理不尽な侵略者に他ならない。

 

(それらの国から『神の力』を得るためには、何かしらの手段を持って接触する必要がある。そして、マヌスは大陸最強の国だ。基本的に、どの国を相手にしても武力による圧力をかけられる)

 

 だから連中の懸念事項である()が大した反抗を見せなければ、あとはエクエス王国くらいしかマヌスの敵としての最低条件を満たしていない。そしてエクエス王国だけが相手なら、マヌスはなにも気にすることなく戦争を引き起こして勝利を収めることができる。

 

(これにより、現在の大陸における悪役は完全にマヌスになった。そしてそれはマヌスが全国に対して声明を出したことで、誰もが知る常識と化している)

 

 俺が欲する大義名分は、大陸全てが把握していなければ意味を成さない。

 なぜなら、天下統一とは大陸全てを俺が良い意味で支配することだからだ。そしてマヌスは俺の描いた通り、大陸全てに対してクソみたいな声明を出してくれたのだ。

 

 つまり。

 

(俺の有する大義の証明者は、他ならぬ大陸に存在する国家全て。民意を得た俺に、もはやお前たちを潰すことへの概念的障害はほとんど存在しない──)

 

 さあ、始めようじゃないか大陸最強国家マヌス。そして人類最強よ。

 

(ジル)の有する全てをもってして、お前たちを叩き潰してやろう)

 

 お前たちを叩き潰すことで、俺は天下統一の足掛かりとし……神々との決戦のための(かて)としよう。

 

(マヌスを打ち破りなおかつ攻撃的ではない俺が、諸外国に対して訪問するのは簡単になるはず。そうして訪問した際に、まだ入手できていない『神の力』をいただくとしよう。国宝として飾られている場合もあるだろうから、交渉材料の選定も同時に──)

 

 内心でそう思考を巡らせながら。

 俺は宣戦布告を叩きつけるべく、机の引き出しから羊皮紙を取り出した。

 

 ◆◆◆

 

「……敵戦力は」

「動いたのは神を名乗る男と、他数名ですね」

「……それだけ、か?」

「はい。それだけです」

 

 その言葉に、上司は嘆息をこぼす。

 

「一時は稀代の策士かと思ったが──どうやら、稀代の道化らしい」

 

 突然の宣戦布告を受けた時、先の消極的な姿勢はこちらを釣るためのフェイクだったのかと上司は歯噛みしたが、どうやらそういうわけでもないらしい。

 

「動員されたのが、たかだかその程度の戦力とはな」

 

 確かに突出した個を前にすれば、有象無象は役に立たない。

 だが、人類最強を頂点とした総勢八名の『蠱毒』はもちろんのこと、残りの戦闘鬼兵も決して有象無象ではない。スペンサーの抜けた穴を埋めた次席の人間はもちろんのこと、上位十名は大陸有数の強者の実力を有しているのだから。

 

「とはいえ、個人の戦力には眼を見張るものがあるのは事実。予定通り、神を名乗る男には人類最強をぶつける」

 

 ──そして『蠱毒』から残りの数名をぶつける戦力を動員し、それ以外は見せしめとして敵国を攻め滅ぼしに向かえ。

 

 上司の言葉にそれぞれが頷き、彼らはその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(神を名乗る男には人類最強をぶつける、ね)

 

 とある青年は胸中でそう呟き、アホくせえと笑った。

 

(俺がそいつを殺したあと、人類最強も殺してしまえば俺が人類最強だ)

 

 青年は、序列十位の戦闘鬼兵である。

 本来ならば蠱毒にしか支給されない『地の術式』を封印した水晶玉をその背中に埋め込まれた状態で、彼は地を駆けていた。

 

(見つけた、銀髪の男──!!)

 

 獰猛な笑みを貼り付けて、青年は標的に向かって強襲する。背中に埋め込まれた『地の術式』が起動し、彼の全身が炎と化した。

 

(自らの肉体を自然現象にする『地の術式』! 実体があるとは言い難い俺を、止めることなんざ不可能!)

 

 燃やし尽くしてやる、と息巻く青年。

 そして──

 

 

 

 

 

「くだらん、な」

 

 

 

 

 

 ──突如青年の頭上から、大瀑布が襲い掛かる。

 一瞬の予備動作も、前兆もない一撃。咄嗟に術を解除したが、炎の大半は鎮火していた。肉体を炎に変換していた青年にとって、それは甚大なダメージ。

 

「……ほう。私の無詠唱による超級魔術の一撃を、耐えはするか」

 

 だが、敗北を喫した訳ではない。

 次いで雷へと肉体を変換させた青年は、そのまま雷速で男へと突撃して、

 

「それなりに素早いが、貴様自身の動体視力がまるで追いついていないようだな」

 

 突撃して、目視できない速度で首を掴まれた。振り解こうと力を込めた青年の意思によって雷鳴が轟き大地が削れるが、男は気にした様子もなく薄い笑みを浮かべる。

 

「どうした、自らを雷に変換したのであろう? 他にも多くの用途があるのではないか? 世界そのものを変換しようとするものが大半の『天の術式』とは異なり、自分自身を変換させるのが『地の術式』の特徴なのか、はたまた私が遭遇した二つの『地の術式』がたまたまそうなのか……中々に興味深──」

 

 自らを風に変換する。透明と化した己を目視することはできやしない──はずなのに、そもそも振りほどくことができない。実体がないはずの肉体を、男は人智を超越した剛力で掴んでいる。

 

「炎、雷そして風か。すると残るは水と土か? 基本属性であるそれらへの肉体変化。それが貴様の術式といったところか」

 

 何故、何故、何故、何故、何故──!?

 

 あり得ない、あってはならないと青年は更にもがく。

 この身は最強に至るのだと、青年は更なる力を求める。

 

 常に死線に身を置いていて、本当の意味で敗北を知らぬ青年に、男に対する恐怖心や絶望の類は一切存在しない。

 

 スペンサーが本当の意味で折れたのは、あくまでも同業者であるキーランに敗北を喫し、畳み掛けるかのように連敗してしまったという点が大きいのだ。仮に初見でジルと遭遇して敗北しても、スペンサーは絶望こそすれ本当の意味で折れることはなかっただろう。

 

 その辺は、戦闘者ではない上司には推し量ることができない部分である。

 

「貴様も運がない。あらゆる意味で、貴様の肉体は私による支配を受け付けやすい。杜撰(ずさん)な『神の力』の操作と供給はもちろんのこと、杜撰な属性変化も同様よ。私以上の術師、『氷の魔女』が相手でも貴様は同じ末路を辿ったであろうよ」

 

 さて、と男が笑みを深める。

 深めて、言った。

 

「私に対して殺意を向ける相手を、生かす理由などあるまい。死ね」

 

 ゴキリ、と鈍い音が響く。いつのまにか実体に戻っていた青年をそのまま投げ捨てて、男──ジルは冷然とした雰囲気を纏って口を開いた。

 

「……恐怖や絶望がなく、戦うことを至上とする。そして地の術式、か」

 

 ◆◆◆

 

 そして、戦争は始まった。

 大陸全土がマヌスの声明に震撼し、それを打ち破るかのように堂々と反論を示したとある小国。そしてその小国はドラコ帝国との御前試合で勝利を収め、最近勢力図を伸ばしている国。

 

 マヌスによる一強時代が始まるのか、それともこれまで通りの日常が繰り返されるかの二者択一。マヌスの勝利であろうと多くの者は予測を立てているが、しかしマヌスの戦力を削るくらいは成し遂げてくれるかもしれない。そしてそうなれば、自分たちが生き残る道を探すこととて可能だろう。

 

 大陸中の誰もが、その戦争の動向を注目することとなった。

 

「……はあ。私も行きたかったわね」

「グレイシー。あなたは外では見た目通り非力な存在だ。ここで待機するのが正しい采配です」

「分かっているわよ。ソフィアは付いていかないのね?」

「人類最強とやらがこの国に現れた場合の、防衛の任務を任されました。確実に、屠ってみせます」

「なるほどね。確かに、人類最強とやらが相手だと他の子たちじゃ荷が重いかしら」

 


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