<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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しばらく投稿頻度は週一位になります。


PV70万突破してました。
これも皆さんのおかげ、そしてデンドロとシャンフロのおかげでございます。
ありがとうございます。


【赤星回蠍 リボルブランタン】

 □■黄河西部・岩盤地帯

 

 

『おらあっ!』 

 

 

 

 一番速く動いたのは、サンラク。

 AGIの一点に限れば<超級>を超える彼にとって、誰より先に動くのは当然。

 毒のシャワーを避けつつ、加速によって威力を増した攻撃を当てる意図がある。

 サンラクは、ほとんど遠距離攻撃手段を持たない。

 そこらの矢や弾丸など、それよりも速く動けるサンラクにはあまり持つ意味がない。

 魔法攻撃にしても、MPが低いサンラクではマジックアイテムをまともに使いこなせない。

 そもそも、光魔法でもなければサンラクの方がやはり早く、正確だ。(雷魔法は、制御が困難ゆえに、余波でも簡単に死ぬサンラクは使えない)

 普段は、遠距離攻撃持ちの恋人がいたというのもある。

 だが、それでいい。

 それでも、十分に早く、到達する。

 だがそれは。

 

 

『疾っ!』

 

 

 ーー超越者に、先を越された。

 

 

 迅羽の<超級エンブリオ>、【星天到達 テナガ・アシナガ】。

 速度と射程を能力特性としているこの<エンブリオ>は、魔法職である彼女に戦闘系超級職を超える速度を会与える。

 そう、魔法職である彼女に、だ。

 純粋な速度では、わずかにサンラクに劣るものの、両手に張り付けた無数の符から放たれた無数の熱戦が、サンラクの双剣よりも速く【リボルブランタン】を捕らえる。

 その一つ一つが、牽制ではない、致命の攻撃。

 当たれば、亜竜であろうとひとたまりもないだろう。

 しかし。

 

 

 

『――――』

『ハッ、かてえナ』

 

 

 

 

 

 【リボルブランタン】は、健在だった。

 上級の<マスター>程度であれば、ハチの巣になっているであろう熱線を浴びて、それでもなお表面の装甲が焦げ付く程度。

 本体には、さほどのダメージも入ってはいない。

 

 もとより、耐久型の純竜クラスのモンスターが■■■■■で変異したもの。

 耐久力だけで言えば、神話級<UBM>に迫る。

 

 

 

『――』

 

 

 【リボルブランタン】は、更に毒液をまき散らす。

 サンラク達は、それぞれ避けるが、地面に触れた瞬間、地面が消えた(・・・)

 

 

 

「酸性の溶解毒っぽいねえ。服だけ溶かす毒もあるのかな?」

『……オレ(アンデッド)対策だろうナ。普通の毒は効かねえシ』

 

 

 尾から撒かれる毒をよけつつ、ついでに迅羽の攻撃もよけなくてはならない。

 サンラクにとっては、やりづらい状況だった。

 

 

『おイ』

『うん?』

『――ちゃんと避けろヨ?』

 

 

 

 サンラクには、見えた。

 いつの間にか地面にまき散らされている符と。

 歯をむき出しにして嗤う、迅羽の顔を。

 

 

 

 

『《真火真灯爆龍覇》』

 

 

 

 スキル宣言と同時、あたりに散らばった符が一斉に起動。

 それによって、【リボルブランタン】を中心にして、極大の火柱が立ち上った。

 赤色の火柱に覆われて、【リボルブランタン】の姿は見えない。

 

 

「今の、超級職の奥義?ヤッた、ヤッちゃった?」

『そうだナ。チャージに時間はかかるけどナ』

 

 

 

 

『いや、まだだ!』

『《ファイア》』

 

 

 サンラクが違和感に気付くと同時に。

 先ほどの火柱と同等の圧力の光線が、迅羽に向けて、発射された。

 

 

 迅羽の生死はわからない。

 

 

 わかるのは、「敵の状態」。

 【リボルブランタン】は無傷だった。

 そして、赤いオーラ(・・・・・・)を纏っていた。

 【リボルブランタン】の赤い発光体が一つ、砕けて散った。

 それと同時に、赤いオーラも消失する。

 

 

『《彼方伸びし手、踏みし足(テナガ・アシナガ)》』

 

 

 

 一つの宣言。

 【リボルブランタン】の赤いオーラが再展開。

 同時に、発光体がもう一つ、更に砕け散る。

 さらに。

 

 

『チャージ』

 

 

 尾に、再び赤い光がともる。

 

 

『ファイア』

『射線はもう見切ってる!』

 

 

 サンラクは、超音速機動で回避。

 光線をよけきる。

 

 

(さっきより細い?)

 

 

『これでも、HP三十万超えてるんだがナ、あっさり【ブローチ】まで削られタ』

「【尸解仙】は耐久型魔法職だからねえ。それあっさりとイカせちゃうんだあ」

『お前は一回黙ろうな、そして死ね』

「やあん辛辣う」

 

 

 鋏が、発光する。

 先ほどまでと同じような、赤い光で。

 まるで、レーザーを撃とうとしているような。

 

 

『退避――!』

 

 

 

 

 

 古代伝説級<UBM>との戦いは、まだ終わらない。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 【赤星回蠍 リボルブランタン】。

 

 

 【ロックライク・スコーピオン】の変異体であり、なおかつジャバウォックの■■■■によって<UBM>となったこのモンスター。

 

 その特性は、岩を喰らい回復する【ロックライク・スコーピオン】と同様、蓄積である。

 【リボルブランタン】は三つ、固有の性質を兼ね備えていた。

 

 

 一つ、《回蠍調合》。

 今まで取り込んできた鉱物などをもとにして、その場で毒物を合成する。

 そして合成したそれを、尾から噴射するスキル。

 毒に強いアンデッドの迅羽を見て、アンデッドであろうと関係なく倒せる溶解毒をまき散らした。

 速度型でも回避できない毒霧にしなかったのは、それでは薄まるため効果が薄いと判断した結果だが、それ故に回避されるか、防御されるかしてしまっている。

 二つ、《回蠍閃光》。

 二つある鋏から、レーザーを発射するスキル。

 超音速機動でも避けることは出来ない光速の砲撃。

 だが、これにも欠点がある。

 発動が些か遅く、撃ち終わる前に対応されてしまう。

 

 

 そして、最大の脅威が、第三にして【リボルブランタン】最強のスキル。

 

 

 名を、《回蠍転環》。

 尾の周囲にある、赤い発光体(ストック)を消費して発動する。

 効果は二つ。

 一つは、全周防御結界。

 赤いオーラ―を身にまとうことで機能する。

 一度限り、いかなる攻撃のダメージでも吸うことができる。

 例えばそれが、超級職の奥義であろうと、<超級エンブリオ>の必殺スキルであろうと、吸収できない攻撃はない。

 

 

 

 そして、もう一つは、カウンター(・・・・)

 吸収したダメージを、《回蠍閃光》同様、赤色のレーザーへと変換して、尾から撃ち放つ。

 そして、その威力はダメージに比例している。

 

 

 《爆龍覇》によるダメージは、古代伝説級であっても、燃やし尽くすほどのものだった。

 それゆえに、そのカウンターは迅羽を殺すほどの威力だった。

 

 《彼方伸びし手、踏みし足》によって、急所を引きちぎられたダメージは、ダメージとしては軽微であるため、威力は低かった。

 

 

 毒をまき散らし、レーザーで掃討し、致命の一撃を防ぎ、返す刀で殺す。

 どれか一つでも、<UBM>としては、強力なスキル。

 だが、それも無理なし。

 【リボルブランタン】は、数百年の時を経る、蠍の支配者。

 

 

 古代伝説級、最上位のモンスターなのだから。

 

 

 To be continued




光、毒、カウンター。
意図してなかったけど某主人公みたいになりました。

https://ncode.syosetu.com/n9871hf/


小説家になろうにて、新作を投稿してます。
職業ものの異世界ファンタジーです。
良ければ、見ていってほしいです!

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