<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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世界の終わり、遊戯の始まり 其の三

 □【修羅王】サンラク

 

 

 

『これが、後夜祭かあ』

「あと、の規模ではないですよねえ」

「……群衆。この人込みは、少々辛いものがあります」

 

 

 確かに、親子三人歩いているだけでも普通に人とぶつかりそうになってる。

 というか、本来ならば既にぶつかっている。

 ぞろぞろと歩いているティアン達は、まず鎧を身に着けてないレイや、蛇系の亜人みたいな見た目をしたキヨヒメという二人の美女美少女に目を奪われる。

 そして、その直後に俺を見て「やっべ」という顔をして去っていく。

 おいおい、何だその態度は。

 ただちょっと、蛇眼の鳥面をして、半裸で、触手を腰から生やして、首輪をつけて、なおかつさらに特典武具を複数装備しているだけじゃないか。

 いや、普通に変態だったわ。

 あと特典武具複数持ってたら、それは怖いわ。

 <マスター>でも、カッツォみたいに一つも持ってないやつの方が多い。

 カッツォみたいに。

 大事なことなので、二回言いました。

 何を言われても、これを言っておけばとりあえずはダメージを与えられる。

 

 

「そういえば、サンラク君は他の方とは回らないんですか?」

『……レイ、もしかして俺があいつらと祭りに行く仲だと思ってる?』

 

 

 いやまあ、彼女に対しては二人のことを「友人」としか説明してないもんなあ。

 彼女にしてみれば、友人というのは確かにお祭りを回るものだろう。

 ええと、あの、高校時代のえま、さんだっけ、とかね。

 ただ、俺とあいつらの関係は一般的な友人の枠からは少しずれている。

 あいつらと俺は一緒にいるとき、常に互いに攻撃されるか、攻撃すべきか、誰を盾にするかの三つの要素を考え続けているんだ。

 友人と回るにしても、あいつらはないという話。

 そもそも。

 

 

『……彼女放置して友達と祭り行くのは違うだろ』

「んひょっ」

「……瀕死。母上が瀕死になっています、あと私も尊すぎて死にそうです」

 

 

 おっと、レイがまたフリーズしかけてる。

 まあ、人込みの中にいるだけあってすぐに復活してくれたけど。

 復活しなくても、最悪おんぶしてたけどね。

 鎧つけてないのであれば、運ぶのもそんなに負担じゃないし。

 重量はともかく、でかくなりすぎるから多分運べないと思う。

 

 

 そういえば、この後夜祭をこうやってレイとまわっているわけだが、普通に知り合いに出会ったり見かけたりする事は度々あった。

 カッツォとか、夏目氏……ナツメグの二人に遭遇したり、ルスモルコンビと出会ったり。

 あるいは、秋津茜とその仲間たちと出会ったり。

 京ティメットは、いなかったな。

 別行動らしい。

 まあ、ペンシルゴンとは回っているのかもしれないね。

 いたら幕末の話でもしようと思っていたんだけどね。

 先日、新たに開発した広域殲滅クラスター爆弾式天誅についての感想が聞きたかったんだよね。

 チャットだと、「覚えてろよ……」しか言わないからなあ。

 閑話休題。

 そういえば、ペンシルゴンと京極の姿は見てないな。

 ログイン自体はしているみたいだけど。

 あ、ディプスロも見てない。

 あいつも、ログインはしてるんだよな。

 いつ何をしてくるのか不安ではあるんだけど。

 まあほら、杞憂に終わる可能性もあるからね。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「……美味」

「おいしいですね」

『確かに美味い』

 

 

 海鮮と肉の串焼きを食べながら、人込みの中を歩く。

 あっちこっちでジョブスキルと技巧を組み合わせた大道芸が見られたりしてなかなか面白い。

 ああいうの、模倣出来たらまた幅が広がるのかもしれないね。

 もう夜が近い。

 陽が沈みかけていて、それは朱色になっている。

 うむ、うまいうまい。

 何の魚かよくわかってないまま買ったけど、たぶんマグロかな?

 そんな気がする。

 以前父親が持って帰ってくる量を間違って、マグロを一匹まるごと持って帰ってきたときがあってじゃな。

 そういえば、少し前に斎賀家と陽務家で合同食事会が行われた時も、マグロが出たんだよな。

 斎賀家と陽務家の繋がりを考えると、無理もないんだけど。

 因みに、母が虫料理を用意しようとしていたので、それは父と妹と協力して阻止した。

 ひどい戦いだったよ。

 やっぱり、戦闘はゲームの中だけにしておきたいよな。

 

 そんな風に、思ったからでもないのだろうが。

 

 

『――?』

「サンラク君?」

 

 

 妙な違和感を、覚えた。

 視界に、何か引っかかった。

 あちこちに、紙のようなものが舞っていたのだ。

 何だろう、紙吹雪かな?

 いや、これは。

 

 

 

『……【符】?』

 

 

 先日会った迅羽も使っていた、消費型のアイテム。

 【道士】など特定のジョブに就くものが、魔法を行使する際に使用するアイテムだ。

 それが……これ程広範囲に?

 どうやって?

 いや違う。

 問題です、魔法を発動するためのアイテムが広域にばらまかれるとしたら、何のためでしょうか。

 答え。広範囲に魔法を起動するためです。

 

 

『レイ、キヨヒメ』

 

 

 俺が、ふたりに警告しようとした瞬間。

 

 

『《真河真濤ーー水龍覇》』

「っ!」

 

 

 

 

 そんなスキル宣言と同時に、水流が発生する。

 詳細に言うなら、水の竜巻。

 水流というより、水龍と言ったほうがいいかもしれない。

 水の流れは、そのまま家屋に突っ込み、街並みを縦横無尽に破壊していく。

 おそらく、規模とスキル名からして【尸解仙】の奥義である《爆龍覇》と同格。

 これをやったのは超級職と見ていい。

 幸い、こちらには飛んでこなかった。

 パニックが起きている。

 

 

 

『サンラク君……』

 

 

 

 すでに、【エンネア・タンク】を身にまとい、【キヨヒメ】を手にした完全武装のレイが声をかける。

 

 

『これは、一体』

『レイ。あれを見て』

『……感知。あれは、よもや』

 

 

 街の外、街を覆っている長城とは別に存在する柵。

 その向こう側に、無数の何かがいた。

 それらには、熱はなかった。

 それらは、生命反応を示さなかった。

 それらは、生者ではないが動いていた。

 それらは、全てアンデッドだった。

 

 

 

 ◇

 

 

『トゥー、トゥー、トゥトゥー』

 

 

 鼻歌を歌いながら、一人の人物が下を見下ろしていた。

 全身に【符】を張り付け、肌の露出はほとんどない。

 そんな奇妙な人型が、街を見ていた。

 人型の引き起こした洪水によって、家屋が崩れ、パニックに陥った人が逃げ惑うさまを。

 感情はおろか、パーツすら見えない顔を向けていた。

 ただ、声音を聞けばどこか達成感が滲んでいたことに気づけたかもしれない。

 まるで、『一仕事終えた』とでも言わんばかりに。

 

 

『さて、仕込み(・・・)は済ませたな』

 

 

 

『あとは、ペンシルゴンたちに任せよう』

 

 

 人型の体を覆う【符】の一部が変形して、翼のようになり。

 ゆっくりと人型は移動を開始した。

 

 

 ◇

 

 

「まずは、一手目」

 

 

 

「《水龍覇》と、二千体(・・・)のアンデッドによる圧殺。しのげるかな?」

 

 

 

 舞台の裏で、外道が嗤っていた。

 

 

 

 To be continued




次回は来週になると思います。

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