<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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ぎりぎり月二回投稿を維持できました。
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世界の終わり、遊戯の始まり 其の四

 □【修羅王】サンラク

 

 

 

『あいつを探しても無駄だよ』

『……なぜそう思うんですか?』

『うーん。経験則だからとしか』

 

 

 

 幾度となく、あの外道とはぶつかり合ってきた。

 ゲームの種類も、状況もさまざまだったが、だからこそあいつの傾向がわかる。

 あいつの戦闘スタイルは、簡潔に言えば「魔王」だ。

 様々なトラップを潜り抜けて、ラスボスであるあいつにたどり着く。

 あいつは、策を弄し、デバフをかけて弱った蛮勇を仕留めるということをやってくる。

 まあ、RPGと違うのは、あいつ自身が自爆トラップだったりすることなんだけどね。

 それは一番厄介かもしれない。

 街中で自爆されると、どれだけの被害が出るかわかったものではないからな。

 

 

 ともかく、あいつは準備が整うまでは表に出てこない。

 安全圏から、この都市の様子を観察しているはずだ。 

 で、下手にペンシルゴンを倒そうとすると、奴と奴の手駒による挟撃が怖い。

 つまり。

 

 

『あいつより先に、まずあいつの手駒を全部潰す』

 

 

 因みに、ペンシルゴンをデスぺナすることは決定事項だ。

 あいつは一回デスぺナになっておいた方がいいよ。

 ”嬲り殺し”なんて通り名をつけられるくらいに、彼女は殺しすぎている。

 そして、今回NPCどころか都市を丸ごと壊しかねないレベルのことをやろうとしている。

 それを黙って見過ごすのと、この状況を打破してペンシルゴンを切り刻むのと、どっちが楽しいか。

 そもそもが、レイとのお祭りデートを邪魔されたのだ。

 当然ぶっ飛ばさない道理がない。

 

 

『サンラク君、あそこですね。ーーキヨヒメ』

『……了解。《燻る情火(ディレイ・ボム)》、発射』

 

 

 

 

 □■防覇上空五〇〇メテル

 

 レイの持つ、蛇を模した狙撃銃から次々と魔力を帯びた弾丸が射出されていく。

 それら五十を超える弾丸がすべて、【魔撃王】のスキルによって追尾され、ただ一点へと飛翔する。

 キヨヒメの基本スキルである《燻る情火》は飛翔距離に比例して威力を増す。

 さらにいえば、【魔撃王】のパッシブスキルである《魔弾威力強化》はスキルレベルEXである。

 これらの相乗効果によって、今回は一発一発が上級魔法職の奥義、《クリムゾン・スフィア》に等しいか上回るほどの威力にまで達している。

 

 

 それが、空中に浮いていた、とある一体の人物へと飛来する。

 サンラクには、見えていない。

 他の<マスター>にも見えていない。

 《気配操作》をはじめとした複数のスキルを使い、姿と気配を消しているからだ。

 だが、レイにだけは感じ取れる。

 

 

 空中で、《気配操作》効果を持ったアイテムなどを使っていたそれを捕らえたのは、ある装備と【魔撃王】のスキルによるもの。

 それこそは、彼女が所有する特典武具の効果。

 銘を、【千網開械 ミーヌス・ドラコーン】という。

 そのスキルの特性は、探知無効化無効(・・・・・・・)

 《隠蔽》などのありとあらゆる隠れ潜むものを暴くスキル。

 敵の魔力を感知する【魔撃王】のパッシブスキル《コア・マーキング》と組み合わせれば、隠蔽特化の超級職でもその身を潜め続けることは困難だ。

 それ故に、装備のほぼすべてを隠蔽に割いていた、件の人物もまた例外ではない。

 五十発の、《クリムゾン・スフィア》相当の攻撃が命中する。

 

 

『…………?』

『疑問。命中したはずなのに』

 

 

 そこにいたのは、珍妙な人型だった。

 全身に【符】を纏っている。

 【符】の一部が、肩から生えて翼を形作っている。

 そして、無傷だった。

 

 

『そんな……!』

 

 

 超級職に匹敵するほどの火力。

 それを耐えたタネは、すぐにわかった。

 人型の周囲には、青いバリアのようなものがまとわりついている。

 それで、炎弾を防いだのだろう。

 

 

『無傷だなんて』

『悲観することないよ、レイ』

『そうですか?』

 

 

 

 人型は、攻撃をバリアで防いだ。

 おそらくは、海属性のスキルだろうとあたりをつける。

 先ほどの水流を作り出したのも、間違いなく奴だろうとも。

 それはともかく。

 

 

『バリアでわざわざ防ぐのは、バリアで防がないとダメージを受けると言っているようなもんだよ』

 

 

 東方の職業はよく知らないが、デンドロの魔法職は基本的に鈍足、紙耐久、高火力の三拍子だ。

 攻撃をまともに当てれば、確実に倒せる。

 そして、そう考えたのはサンラクだけではない。

 長距離攻撃ができる<エンブリオ>を持った<マスター>たちが次々と攻撃を始めている。

 魔法射程を延長するテリトリーや、貫通能力を持ったミサイルを発射するアームズなどだ。

 彼らは、純粋に祭りを楽しみに来ていた<マスター>たちである。

 楽しんでいた空気に水を差された。

 彼らの怒りは、外の飛んでる魔法職に向かう。

 その中の一つが、バリアを突き破り。

 人型を、貫いた。

 

 

 中身は、空洞だった。

 散った符が、すぐに元に戻る。

 何事もなかったかのように。

 直後、氷槍を、ミサイルを打ち上げたあたりに連射し始めた。

 氷槍が落ちた後、そこからポリゴンが立ち上る。

 

 

『……何でしょうか、あれは』

『多分、<エンブリオ>のスキルだとは思うけどね。遠距離攻撃も厳しいか』

 

 

 もとより、相手もほぼ間違いなく魔法系の超級職。

 遠距離の打ち合いは、あまり分がよくないだろうとサンラクは思考し、打開策を考えた。

 

 

 

『レイ、街に向かっているアンデッドを頼んでもいい?』

 

 

 

 街に到達しかかっている、アンデッドの大群。

 だが、そこに向かっている戦力は心もとない。

 柵を今にも突破されそうというところまで来ている。

 どうやら、上空の敵と、民間人への避難誘導に兵力が割かれ過ぎており、アンデッドにまで手が回っていないらしい。

 それの対処を、サンラクはレイにお願いした。

 サイガ‐0という<マスター>の強みはただの遠距離狙撃のみではない。

 ストックに限りはあるが、それ次第では広域殲滅も可能である。

 まして、アンデッドは本来炎熱に弱いとされている。

 彼女の得意分野には間違いないだろう。

 少なくとも、個人戦闘に特化しているサンラクにはできないことだ。

 レイにも、そこに異論はない。

 ただ疑問はある。

 

 

『サンラク君はどうするんですか?』

『んー』

 

 

 では、サンラクは何をするのか。

 

 

『ちょっと、空中戦(・・・)を仕掛けて、仕留めてくるよ』

 

 

 

 敵手のいる五〇〇メテル先まで行って来ると、その上であの<マスター>を倒すと、そう宣言した。

 そもそも、近づけるのかどうかもわからない。

 加えて、近づいたとして、無敵のように見える敵手を倒せるのかどうかも不明だ。

 多数の攻撃手段を持つサンラクだが、その中に通じる攻撃がなければ、他のマスターのように水葬(・・)されるだろう。

 それをわかったうえで、サンラクは『俺ならば勝てる』と判断していた。

 

 

 レイもまた、そのことに気付いていた。

 ならば、ゲームのフレンドとして、あるいはリアルの恋人として。

 自分がすべきことなど、決まっている。

 

 

『サンラク君、アンデッドを掃討しながら、たどり着けるように援護します』

『……ありがとう。任せた』

 

 

 

 誤射を全く恐れていない返答。

 レイならば、それはあり得ないだろうとサンラクは信じているのだ。

 

 

『さあ、やってやろうじゃないの!魔王退治の前哨戦!』

 

 

 サンラクは、言葉で心を高ぶらせながら、上へと進み始める。

 それに気づいた、上空の人型は。

 

 

『トゥー、トゥー』

 

 

 鼻歌交じりに、氷弾と水流を飛ばして迎撃を始めた。

 

 

 To be continued

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