<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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世界の終わり、遊戯の始まり 其の七

 □【修羅王】サンラク

 

 

『うーん、結局どうなってるんだろうな?』

 

 

 

 あの【符】人間は倒したけど、地面にいる配下が動いているはず。

 《配水の陣》で駆け下りながら、視線を落として現状を把握しようとする。

 

 

『ふん、どうやら倒せたらしいな』

 

 

 ペンシルゴンが放ったであろうと予想できるアンデッドの群れは、玲をはじめとした<マスター>によって粉砕されている。

 なんというか、レトロゲーの無双ゲーを見ているようだった。

 徐々にエネミーが減っているのを、神様視点から眺めていられる。

 

 

『レイは、いるな』

 

 

 

 街全体を見渡して、超音速で動いているものは限られる。

 その一つが、レイだ。

 <エンブリオ>のスキルによって速度を上げながら、銃撃によってアンデッドを倒していく。

 何体か、かなり大きい純竜クラスと思われるモンスターが混ざっており、それの対処に回っているようだった。

 

 

『うん?』

 

 

 空から見て、防覇での脅威に対処している<マスター>はかなりの人数がいる。

 いるのだが、その数が減っている。

 加速度的に、人が減っている。

 だというのに、減らしているものが誰なのか、俺の動体視力でも感知できない。

 

 

『何が、どうなっているんだ?』

 

 

 答えるものは、いない。

 

 

 

 □■防覇・避難所

 

 

 話は、サンラクが水流影との戦闘を開始する前に遡る。

 

 

「うう、一体どうなっているんでしょう」

 

 

 避難所の中で、一人の女性がつぶやいた。

 彼女の手の甲には、虎の紋章があった。

 彼女は<マスター>だった。

 

 

「ペンシルゴンさんとも連絡が取れませんし、デスぺナにはなってないし、ログインしているみたいなんですけど」

 

 

 フレンド機能で、知り合いがまだいることを突き止める。

 

 

 

「せっかくですし、探しに行きましょうかね。といっても、見つける方法なんてないんですけど」

 

 

 彼女は、索敵能力の類は有していない。

 キリューのビルドは、ほとんどペンシルゴンの指示によるものだ。

 街丸ごと滅ぼした(・・・・・・・・)日に、出会ってから彼女はずっとキリューを導いてくれている。

 すべては、彼女が戦力として活用するためだったが、キリューは知らない。

 彼女は、自身の詳細を理解していない。

 無理解こそが、キリューの本質であるがゆえに。

 

 

「おい、何なんだ!」

「はい?」

「鎧連れてふらふらと、それはあんたの<エンブリオ>だろ!」

「通行と避難誘導の邪魔なんだよ!」

「あ、はあ、すみません」

 

 

 実際、知らなかったのだがキリューと彼女の傍にいる「鎧」は通行の邪魔になっていた。

 とくに「鎧」をなぜかキリューだけが認識できないこともあって、「鎧」が露骨に避難誘導の道をふさいでしまっていた。

 それこそ、焦る<マスター>やティアンにしてみれば、悪意を持っているようにも感じられてしまう。

 まさか、「自分の<エンブリオ>を認識できないパーソナル」などとは普通考えないのだから。

 

 

「うん?」

「どうかしたのかよ?」

「いやこの鎧、ちょっと色が変わったような」

「気のせいだろ」

 

 

 <マスター>の片方が、

 

 

「すみません、ちょっと友達を探していまして。進路を妨害する意図はなかったのですが」

「ん、ああそうだったのか。

 

 

 その瞬間、爆炎が上がった。

 テロリスト側の攻撃か、あるいは防衛しようとする者達の反撃によるものか。

 それを判断するすべはキリュー達には存在しなかったし。

 重要ではない。

 

 

 こつん、と瓦礫の一つがキリューの頭部に命中した。

 しかして、

 

 

 プツン、と切れた音がした。

 精神的なものではない。

 物理的なものだ。

 鎧にまとわりついていた鎖がちぎれるのを周囲にいた<マスター>は見た。

 

【Form Shift-ーTiger Drive】

 

 

 同時に、鎧はその形を変えていく。

 何の変哲もない西洋鎧から、身の丈三メテルを超える大鎧に。

 縞のような文様と、肉を引き裂くことに特化したような爪のついた手甲。

 まるで、虎のような鎧だった。

 

 

「あ、あれ?」

「さっきの女どこに行った?」

 

 

 しかして、彼女の姿を二人の<マスター>の前から消えていた。

 

 

「え?」

 

 

 一人の<マスター>の首が、宙を待った。

 

 

「お、おいなんで」

 

 

 そしてもう一人の<マスター>も胴体を吹き飛ばされてデスペナルティになる。

 

 

「ど、どこからだ!」

「上にいた<マスター>の攻撃か!」

 

 

 <マスター>たちはざわつき始める。

 テロリストたちによる攻撃なのではないかとその場にいた<マスター>たちが判断する。

 間違ってはいない。

 彼女は、ペンシルゴンによって用意された、最大戦力である。

 

 

 幾千幾万の死者の軍勢と爆弾を操る【死将軍】アーサー・ペンシルゴンより。

 

 

 黄河で幾度も準<超級>を破ってきた【功夫仙】水流影よりも。

 

 

 キリューは、強いと彼女達に判断されている。

 それは、かつて一度だけ、彼女が力を振るった結果が。

 

 

 

「え、あ」

「ぐぶっ」

 

 

 その場にいた<マスター>たちは次々とデスペナルティになっていった。

 どこかからわからない爪撃によって首を刎ねられ、胴体を分断され、頭部を潰される。

 しかし、デスペナされた者達は、誰一人として理解していない。

 どこの誰が、攻撃をしてきたのかを。

 

 

 それも当然。

 彼女こそは、都市一つ滅ぼした正体不明の指名手配犯。

 都市にいた幾千幾万の住人を皆殺しにして、家屋を全てなぎ倒し、その場にいた誰にも正体を暴かれなかったもの。

 彼女は、キリュー。

 「人間範疇生物(・・・・・・)を二十四時間以内に(・・・・・・・・・)一万回殺傷する(・・・・・・・)」ことを条件に転職できる職業、【地獄王】についたもの。

 

 

 

 キリューが、我慢の限界を超えて、激発した状態。

 周囲の脅威となる生物を皆殺しにしようと判断した姿。

 

 

 アーサー・ペンシルゴンが、古代伝説級(・・・・・)<UBM>相当であると、判断した怪物である。

 




・【地獄王】
 短期間での大量虐殺を条件とした超級職。
 近接戦を条件にちまちま殺さないといけなかった【殺人王】とは、また別のむずかしさがある。
 ティアンでは、【覇王】か魔法系超級職くらいしか就ける人がいなかった模様。

・【■■■■ ■■■■■■■】
 到達形態:Ⅵ
 キリューの<エンブリオ>。
 ペンシルゴンも、キリュー自身も、その詳細は誰も知らない。
 
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