<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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ちょっと視点変わります。


世界の終わり、遊戯の始まり 其の八

 □防覇内部

 

 

 サンラクが高度千メテルの場所で戦闘を行っているちょうどそのころ。

 

 

 

『何なんだ、こいつは』

『ハハハハハハハ!』

 

 

 

 街中に、ミサイルが飛び回っている。

 ミサイルではなく、厳密には一人の人間である。

 

 

 彼のプレイヤーネームはエッグマンという。

 ペンシルゴンに雇われ、黄河でのテロを起こす騒動に加わった。

 今、一つのミサイルとして飛び回りながら、あちらこちらを爆破し続けている。

 

 

(《看破》で見た。やつのジョブは【砲弾王(キング・オブ・ミサイル)】。鉄砲玉(・・・)系統の超級職だ)

 

 

 銃弾を放つ【銃士】や砲撃を見舞う【砲手】などとは違う。

 自身が砲弾のように特攻するジョブ。

 ドライフでのみ就ける職業だが、就いているものは少ない。

 【鉄砲玉】のスキルは《ラスト・スパート》という固有スキルのみ。

 効果は、「自身が身に着けた機械系の装備やアイテムを全て消費して自爆する」というもの。

 

 

 これが問題だった。

 機械は、デンドロにおいて直すことが難しい。

 整備士系統などのスキルも、古くなった部品を新しいものに取り換えているだけであって、回復魔法のように無から有を出せるわけではない。(【器神】など、例外はあるが)

 

 

 つまり、死ぬことのない<マスター>としてもデメリットが大きいスキルだった。

 さらにいえば、【鉄砲玉】をメインジョブにすると《ラスト・スパート》以外の固有スキルが一切使えなくなる。(《ラスト・スタンド》などの汎用スキルは使うことができるが)

 特攻することだけを望まれた、鉄砲玉にふさわしい職業ではあるが、あまりにも使いづらいジョブであり、誰も使おうとする人間はいなかった。

 

 

 

(この俺を除けば、だがなあ)

 

 

 エッグマンの<エンブリオ>は【不和弾道 ゾンビ】という。

 その特性は、置換と修復。

 TYPE:ルール・ウェポンに含まれるゾンビのスキルは三つ。

 第一のスキル、《スーサイド・スレイブ》はエッグマン自身の体をミサイルへと置換する。

 ミサイルは飛翔し、爆発する。

 【砲弾王】のスキルで火力を引き上げられていることもあって、一撃の威力は魔法系超級職の奥義に迫る。

 だが、厄介なのはそこではない。

 

 

 

 そしてエッグマンという<マスター>の根幹である第二のスキルは、《ゾンビ・アタック》。

 自傷ダメージに限り、完全回復するというスキルである。

 逆に言えば他者からつけられた傷は治せないが、傷を負わされる前に自爆する彼には全く関係のないことだった。

 

 

 

 さらに、とある効果を有したゾンビの必殺スキルを使うことによって、彼のビルドは完成する。

 つまるところ、魔法系超級職に匹敵する不死身の化け物が突撃してくるということだ。

 

 

 

『こんなヤバいのは久々かもなあ』

 

 

 

 ソウダカッツォとて、今までPKとして様々な相手と戦ってきたという自負がある。

 その中には、同じ準<超級>や、超級職、さらには<超級>もいた。

 そんな彼の経験が告げている。

 規格外に過ぎる存在である“無限連鎖”や“暗黒心”などの<超級>を除けば最上位であると断言できる。

 

 

 さらに、ソウケツのスキルで相手のスキルを見ているソウダカッツォにはそれだけではないということもわかっている。 

 

 

(こいつのビルド、こいつだけじゃ成立してない(・・・・・・・・・・・・・)。まだ何かタネがある)

 

 

 

 《四神慧眼》で解析できるのは、ソウケツのカメラアイで見た相手のみ。

 エッグマンをサポートしているものが視界に入っていなければ対処は出来ない。

 今ソウダカッツォに出来るのは、スキルで加速してエッグマンを追跡しながら攻撃をすることだけ。

 相手は速度型の準<超級>らしく超音速機動で動いているが、超音速機動ならばソウケツでラーニングしたスキルを使えばソウダカッツォにも可能である。

 まあ、「蒼炎のブースターで三次元起動を行う手合い」や「超超音速機動をやってくる鳥頭」などにはさすがに通用しないが。

 閑話休題。

 

 

 ともあれ、長時間《四神慧眼》で相手を観察してきたソウダカッツォには相手の特性と弱点を看破できていた。

 

 

(あいつ、自分で自分をコントロールできない)

 

 

 そもそも、鉄砲玉系統は自分で動けない。

 支配して、指示された枠の中で動き回る存在。

 そして、その鉄砲玉系統とシナジーがある彼の<エンブリオ>もまた誰かに操作されなければ機能しない。

 エッグマンに出来るのは、自爆と再生だけなのだ。

 ミサイルを飛ばし、誘導している存在を発見し、討伐しない限りはエッグマンもどうにもできない。

 

 

 自由気ままに移動を続けているエッグマンが、ソウケツの方を向いた。

 

 

『邪魔なんだよお!』

『しまっ』

 

 

 

 単純な話だ。

 ずっと超音速で付きまとってくる相手。

 ソレを殺そう、と狙われている側が判断するのは自然な発想である。

 

 

『これは、無理だなあ』

 

 

 

 ソウダカッツォとエッグマンに速度差はほとんどない。

 それはエッグマンがソウダカッツォを振り切れないということではあるが、逆もまた然りである。

 エッグマンの自爆攻撃をかわす手段がない。

 逆に、耐久力で耐えきることもできない。

 ソウケツの装甲は特別硬いわけではなく、超級職の奥義相当の爆撃を耐えきる術はない。

 あるいは【装甲操縦士】や【鎧巨人】などのスキルを使用して耐久に特化すれば耐えきれるかもしれないが、それはそれで機動力を失いタコ殴りになってしまうだけだ。

 

 

『けれど』

 

 

 ソウダカッツォは、全てを諦めたわけではない。

 装備をハンドガンから、単発式のロケットランチャーに持ち替える。

 一撃の火力としては、彼が有する火力の中で最大級のそれを、エッグマンにぶつける。

 飛来するミサイルが、自爆する直前でカウンターを当てて壊しきれば、彼の勝ちだ。

 

 

『ハハハハハハ!』

『はっ』

 

 

 もとより、タイミングを読み切ってのカウンターは、プロゲーマー魚臣慧としての十八番である。

 今日初めて見る相手であり、成功確率ははっきり言って非常に低い。

 

 

 そもそも、カウンターというのは後の先、つまるところ先に準備を済ませて放つからこそ成立する。

 予想外の攻撃に対して、手を伸ばしてもそれはせいぜいで悪あがきにしかならない。

 そうだったとしても、それでもなお倒して見せるとソウダカッツォは――魚臣慧は、吠える。

 

 

 

『やってやるよ』

 

 

 格上ともいえる相手に、ジャイアントキリングとなりえる引き金をひこうとして。

 

 

「うん、やっぱりいいね」

 

 

 そして、どちらにも見えなかった。

 ミサイルを蹴り飛ばした彼女が、見えていなかった。

 いずれも超音速の世界に存在していたはずなのに。

 いつの間にかコマ落としのように、ヒーロー(・・・・)がいた。

 星を象ったゴーグル、風にはためくマント、そして蒼い炎を吹き出すブーツ。

 アメコミのヒーローのような姿を、彼女(・・)のことを、ソウダカッツォはよく見て知っている。

 

 

 気づけなかったのだが、別に、彼らが油断していたわけではない。

 単純に彼女が、【凶星天衣 ミーティア(・・・・・)】という特典武具で、転移してきたというだけの話である。

 

 

 

「来ちゃった!」

『ああうん、ありがとう、AGAU』

 

 

 

 ヒーローが、【神壊僧】AGAUがそこにいた。

 

 

 

『あぶねえええええええええええ』

「あれ、生きてる?」

『多分、何かしらのスキルだね』

 

 

 蹴り飛ばされたはずのエッグマンは、無傷だった。

 まだ見れていない必殺スキルを含めた、何かしらで防御あるいは回復しているのだろうと考える。

 <エンブリオ>の通常スキルは、自傷ダメージのみ。

 つまり、仕切り直しということだ。

 

 

「ケイ、これはどういう相手かわかる?」

『二人一組、もう一人指揮している奴がいる』

「そっち、お願いできる?」

『任された』

 

 

 交わした言葉は少なく、されど長い付き合いゆえにそれで充分。

 機人と英雄は、別の方向へと駆け出した。

 この都市を、理不尽な暴力から守るため。

 そして、ゲーマーとして、己の限界に挑戦するために。

 

 

 To be continued




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