<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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お久しぶりです。
申し訳ないです。


世界の終わり、遊戯の始まり 其の十二

 □■長城都市・防覇

 

 

<Infinite Dendrogram>の特性の一つは、自由度の高さである。

 グラフィック、システム、すべてがあらゆる既存のゲームを超越している。

 それらはゲームとしては確かに優れた点だが、ことAGAUにとっては必ずしもプラスに働かない。

 

 

 AGAUの得意とする格闘ゲームとはまるで違うからだ。

 格ゲーとは、基本的にゲーム上のリソースは同じだ。

 使えるキャラクターも、それらのスペックも互いに同じ。

 だから、違いは何を選び、スペックをどれだけ引き出せるのかという二点に尽きる。

 さらに言えば、キャラクターの数が限られる格ゲーでは、基本的にどのキャラクターが何ができるかということが分かり切っている。

 プロゲーマー同士であれば、情報の差はほとんどないと言っていい。

 

 

「……さて、どうしたものかな」

 

 

 彼女の能力の一端については、理解している。

 隠蔽に特化した<エンブリオ>、もしくはジョブ。

 そしてもう一つ、推測できることがある。

 それは、彼女が受けてきたダメージによるもの。

 【神壊僧】は元々耐久特化の超級職であり、奥義の代償として防御力が下がっていても、彼女にここまでのダメージを与えられるものはそういない。

 攻撃力に特化した【破壊王】や、ステータスに特化した【殺人姫】なら可能なのかもしれないが、いずれもこの場にはいない<マスター>が就いている以上、その可能性もない。

 

 

 

 では、これはいかなる道理によるものか。

 <エンブリオ>か、あるいは特典武具か。

 

 

 

(いや、多分これはジョブかな?以前流行した野伏ビルドに近い。<エンブリオ>がその補助をしている隠蔽・ステータス上昇効果のスキルを有しているといったところか)

 

 

 

 彼女の推測は概ね正しい。

 彼女の<エンブリオ>は融合した<マスター>のステータスを引き上げ、光学とスキルによる探知を妨げる。

 そこから奇襲を加えるという戦術であることも、間違っていない。

 

 

(それに、攻撃力を引き上げてるって感じでもないね。傷口を見る感じ、ただダメージを受けたわけじゃなくて、不自然にちぎれている。貫通力を上げるか、防御や耐性を消している)

 

 

 

 これも正しい。

 彼女は知らないが、キリューの就いている【地獄王】という職業の効果である。

 

 

 

 ■とある超級職について

 

 

 

 職業、その中でも超級職は特異なものが多いと言われている。

 【勇者】、【聖女】のような特殊な血統を持つものだけが至るもの。

 

 

 何かしらの系統などに紐づけされている下級職、上級職と異なる、何にも属さない超級職も珍しくない。

 

 

 その中に、通称犯罪者系統と呼ばれるものがある。

 下級職や上級職があるわけでもなく、重ねた罪過によっていたる職業。

 純粋な犯罪歴を積み上げて到達する、【犯罪王】。

 近接武器による殺人数で至る、【殺人王】。

 脱獄を重ねることで転職できる、【脱獄王】。

 そして、【地獄王】もそんな犯罪者系統超級職の一つ。

 

 

 

 【地獄王】とは、虐殺特化超級職である。

 一日以内に一万人(・・・・・・・・)を殺害するという条件ゆえに、【殺人王】とは違い、範囲攻撃での虐殺を前提としている。

 それこそ、キリュー以前についていたものは魔法系の超級職である場合が多かった。

 広域殲滅攻撃のコストになりうるHP・MP・SPに特化したジョブである。

 そんな【地獄王】のスキルは奥義と最終奥義の二つのみ。

 

 

 パッシブ型の奥義である《死屍累々》は「殺人数に応じた防御力、耐性を無視する」というもの。

 

 

 キリューも普段は、適当にマシンガンなどを掃射して対象を掃討するという運用をしている。

 だが、鎧を身にまとった結果、彼女のスタイルは完成する。

 光学とスキルの二重迷彩によってとらえられず、伝説級<UBM>に匹敵するステータスを持つがゆえに、並みの範囲攻撃では倒せず。

 そんな規格外の化け物が、誕生したのである。

  

 

 

 ◇

 

 

 

 分析を終えたが、やることは変わらない。

 

 

 それから、一分間の攻防は。

 超音速の二人にとっては、文字通り千を超える交錯をもって行われた。

 AGAUが飛び回り、牽制し、選択肢を与え、仕掛け、罠を張る。

 虎は、それに対応して爪を振るう。

 【神壊僧】の一撃は、物理的衝撃と炎熱を以て確実に装甲を削り取る。

 

 

 

「ぐ、う」

 

 

 

 しかして、無事ではない。

 ダメージが全身に走っており、回復もできない。

 右足がちぎれており、左足一本でかろうじて立っている状態だ。

 むしろ、ここまでキリューを追い詰めたことが、異常とすらいえる。

 

 

 

『OOOOOOOOOOOOOOOO』

 

 

 彼女の目の前には、虎を思わせる鎧があった。

 不可視、スキルでの探知不可能の虎が、その姿を現していた。

 幾度となく表面をあぶられたことで、光学・スキル迷彩がはがれている。

 リソースをステータスなどに割いた結果、隠蔽効果は表面にしかなかったのだ。

 あるいは、どこかの超級ガードナーのように隠蔽に特化していれば、こんなことにはならなかっただろう。

 

 

 なぜ、不可視だった相手に攻撃を当てられたのか。

 それは、もはやAGAU自身もわかっていない。

 立ち回り、直感、経験、その複合によって彼女はキリューを追い詰めた。

 だがそれも、不利を覆すには至らなかった。

 

 

 

(空中機動を確保する装備まで持ってるとは思わなかったな、陸上戦特化だとばかり思ってた)

 

 

 本来、三次元起動によって普通の<マスター>に対しては有利をとれるはずだった。

 だがしかし、キリューの周りに展開された赤色の物体が、足場となって空中戦を可能にしている。

 特典武具か、あるいはオーダーメイドの装備か。

 鎧に装備枠の大半を割いていることを考えると、アクセサリーの類か。

 

 

(しかたがない、これはもう詰みだな)

 

 

 

『手を貸そうか?』

 

 

 はるか上空から、声がした。

 

 

 To be continued.




これから録画したシャンフロ一話観てきます。
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