<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
□■防覇内部
『《ミサイル・ランチャー》、《レーザー・シューター》』
ミサイルの爆撃とレーザーが殺到する。
それは、機械仕掛けの赤い鳥。
ブースターを吹かし、火器をむき出しにして、見えざる怪物を睨む。
『えっと、邪魔をしてすみません』
『死にそうだったから援護に回った』
『ちょっ!』
「なるほど、的確な判断ね」
実際、客観的に見てもうAGAUは詰んでいる。
単独で、勝てる見込みはほとんどない。
あるいは、エッグマンとの戦いにおける消耗がなければ、とも思うが、それを考えても今更無意味な話である。
『あ、いいんだ……』
『文句言うならこいつもデスペナすればいいだけの話だった』
『「…………」』
声で、AGAUも周囲の状況を察する。
機体の中にいるのは、二人。
”双宿双飛”の名を司る【高位操縦士】ルストと、【高位通信士】モルドである。
AGAUも、この二人のことは知っている。
”闘争都市”デリラにおいての大会で、サンラクと戦っているところを観ていたからだ。
(でも、あっさりサンラクに負けてたような?)
AGAUの目には、ルストがさほど強いとは思えない。
複数の機体をうまく使いこなすことで、様々な状況に対応できる<マスター>だったと記憶している。
だが、使用した機体のすべてをサンラクに真っ向から破られていたはずだ。
本人の操縦技術はともかく、戦力としては高いとは言えない。
それは仕方がないだろう。
MPに特化したビルドとはいえ、彼女のMPには限りがある。
ゆえに、闘技場において、彼女一人で戦う分には【高位操縦士】の強化を加味しても純竜クラス程度の戦闘力しか持たない。
プレイヤースキルが突出しているゆえに、並みの<マスター>なら十分屠れる。
あるいは、プレイヤースキル次第では彼女一人で準<超級>すら倒しうる。
だが、ルストと真っ向から渡り合えるプレイヤースキルを持ち、準<超級>のスペックを持つサンラクには通じなかった。
彼女自身は、準<超級>には届かない。
ゆえに、AGAUよりも、それを破ったキリューよりも、戦闘能力では劣っている。
ただしそれは。
「ルスト、あれ、出せるよ」
「了解、【赤人天火】で隙作ってその間に換装する」
「了解」
『《レッグ・ガトリング》、《ブレイズ・ブレイド》』
脚部からガトリング砲を展開し、翼が赤熱する。
『《ブースト・アーマー》』
そして、もう一つ。
機体を赤熱させる、攻勢防御スキルを発動。
ルスト一人では、MPが足りず維持ができなかったスキル。
同乗者であるモルドのMPをもってしても、なお足りない。
しかして、ここにはもう一つ、エネルギーの供給源がある。
モルドの<エンブリオ>であるオルトロスは、動力炉のエンブリオ。
先々期文明の動力と同様、接続した機械にMPを供給することができ、超級職並みのMPを要する兵装であろうと、この機体なら行使できる。
『AAAAAAAAAAAAAAA!』
獣のように、あるいは獣そのものとして吠えながら、キリューは飛び掛かる。
AGIは二万オーバー。
《操縦》などのスキルで強化したルスト達よりも、遥かに速い。
プレイヤースキルでも対処できないAGIの差に、【赤人天火】は回避しきれず。
タイガポエットの装甲が、焼け溶けて、キリューにダメージが伝播した。
『GUA!』
タイガポエットの装甲は、耐久型超級職に匹敵するほどの強度を誇る。
対して、【赤人天火】へのダメージはさほどない。
キリューの戦術の要である《死屍累々》は直接攻撃することで発生する。
銃弾や、魔法攻撃など、範囲は広いが、攻撃の余波などには適用されない。
熱波により爪撃が届かなければ、機動力・火力特化と言えど純竜クラスの機体にダメージはほとんど与えられない。
費やしている魔力量の差である。
モルドの<エンブリオ>、オルトロスによる魔力供給によって運用できる魔力は超級職に匹敵する。
あえて言おう。
上級どまりというのは、あくまでもルスト一人であればの話。
”双宿双飛”は準<超級>に到達している。
◇
両者は、互角だった。
虎の爪は、熱波によって当たらずとも、余波によって装甲は破断する。
もとより、機動力に秀でた機体ゆえ、耐久力には期待できない。
むしろ、今のキリューを相手に表面の装甲のダメージのみでとどめているルストの操縦技術と読みが異常ともいえる。
加えて、【赤人天火】の火器もまた、キリューの装甲をはぎ取っていった。
戦況は、ほぼ互角となっている。
「まずいね」
戦況はほぼ互角だが、互角ではまずい。
そもそも、陸上戦闘に秀でた相手に対して完封できるのが遠距離攻撃・飛行能力特化の【赤人天火】である。
どういうわけか、キリューは空中での戦闘も問題なく行えており、飛行能力がさほどアドバンテージになっていない。
特典武具か、あるいはオーダーメイドか。
赤色の足場を形成し、空中機動を可能にしている。
足場は、攻撃にも使えるらしく、じわじわと装甲を削られ続けている。
もはや余裕はなく。
ゆえに、
『《デュアル・コネクト》』
アイテムボックスにある機械と、オルトロスを即座に接続するスキル。
クールタイムは一時間であり、もう二度とこの戦闘では使えない。
だが、それでいい。
なぜなら、これから使う機体は、後先を考える必要はない。
ここで使えば、それ以降の余力が残らないから。
そして何より、他の機体を使う必要がない程に、今装着した機体が最強だから。
モルドは、もう一つ切り札を切る。
『《
それは、オルトロスが持つ必殺スキル。
その効果は、MP供給量の一時的なブースト。
これを使った理由はひとつ。
彼と彼女の
『やるよ、ルスト』
『わかってる』
『『【酷死無蒼】ーー起動』』
『START UP』
最強の機体が、動き出す。
怒りに満ちたキリューには、敵を判断する能力はない。
怒りが収まるまで、あるいは敵の姿がなくなるまで、一方的に壊し続けるのみである。
自分に一矢報いた、小さい人と、それ以上に甚大なダメージを与えた巨大な鳥、そして急に出現した謎の人型。
どちらを優先するかは、わかり切っている。
より受けたダメージが大きかった方を選択。
金属でできているようだが、関係ない。
すでに、キリューの攻撃を妨げていた熱波は消えている。
エネルギーが切れたのか、あるいは他の理由があるのか。
直撃すれば神話級金属であろうと、今の彼女なら容易く切り裂き、内部の<マスター>を殺傷できる。
「ああ、やっぱりそういうタイプだよね」
がきり、と、当てる直前に爪が止まった。
キリューが止めたのではなく、寸前ではばまれた。
キリューの爪は、機体に届いていない。
半透明の、
『《アダプテーション・バリア》、異常なし』
『《コバルト・レーザー》』
そして、機械の反撃が始まる。
青白いレーザーが射出され、特化超級職並みの装甲を持つキリューにダメージを与えていく。
超音速で動く彼女といえど、隠形に秀でた<エンブリオ>があれど、攻撃を受けた瞬間に光速のカウンターを見舞われれば、当然対処などできない。
そこで初めて、怒りに包まれたキリューの思考が、わずかに敵を知覚し、認識した。
先ほどまで赤い鳥だったはずの敵が姿を変えて、否、機体を変更している。
それは、青い機械仕掛けの人型だった。
だが、通常のマジンギアとも異なる姿をしていた。
まず、大きすぎる。
体高は十五メートルを超えており、マジンギアとは比べ物にならない。
スーパーロボットとでもいう方がまだ近いだろう。
肩に二本のサブアームが取り付けられており、背部にはスラスターが取り付けられている。
両腕にはブレードが、脚部と胸部にはセントリーガンとミサイルサイロが見えている。
速度、超音速。
防御力、
火力、オプション過多。
エネルギー消費、甚大。
銘を、【酷死無蒼】。
ルストが必殺スキルで形作り、モルドが設計と動力を担う、二人のすべてを詰め込んだモノ。
この世界における唯一の、真の意味でのスーパーロボット。
「行くよ、モルド」
「了解、ルスト」
”双宿双飛”ルストとモルドが操縦する、
To be continued.
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