<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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世界の終わり、遊戯の始まり 其の十五

 ■□防覇

 

 

 巨大化し、どの建造物より巨大になったキリューには、すべての敵が見えていた。

 自分を見て、恐れおののくティアンや<マスター>が見えていた。

 自分より矮小なれど、四つの目を向ける機械神が見えていた。

 他のアンデッドを掃討しながら、こちらにも注意を払う、鎧と狙撃銃をみにつけた女が見えていた。

 狙撃銃の女に忍び寄る、人の形をした、人でもアンデッドでもないナニカが見えていた。

 獲物を見つけたとでも言いたげな顔をした、和装のパーティーが見えていた。

 先ほど片足をもがれたにも関わらず、未だ諦めの悪いヒーローが見えていた。

 巨大なアンデッドと戦闘を繰り広げる、鳥面の怪人が見えていた。

 そして、自分の正面に立つ、機械の巨神が見えていた。

 

 

 ただし、先刻までとは様子が違う。

 シルエットこそ同じだが、容貌も、内包するエネルギー量も先程までとは別物。

 

 

 蒼で構成されていた全身から、その色が消えていく。

 否、塗装が落ちていく。

 内部の熱量に耐えきれず、コーティングがはがれていく。 

 ああ、もとよりこの機体はそう言う仕組みだ。

 【酷死無蒼】とはーー酷い死をもたらす機械仕掛けの神であり。

 蒼を無くした(・・・・・・)存在でもある。

 

 

 薄皮一枚の下にあるのは、赤であり紅。

 膨大な熱量によって作られた色であり、ルストを象徴する色。

 動力炉を、機体を損壊寸前まで稼働させ、文字通り全身全霊を発揮する《紅苦死無双》により、紅き巨神が降臨する。

 

 

 

『《■■■》』

『《ブラスト・スラスター》』

 

 

 キリューは、すべてを消し飛ばす防御不可の爪を振りかざし。

 ルストは、彼女の翼を展開した。

 

 

 紅く輝く炎が、彼女の背後から噴出し、上空へと退避する。

 もとより、【酷死無蒼】のコンセプトとは、そういうものだ。

 空中戦、防御、バリアによる海中戦闘、火器による対多数戦闘・殲滅……あらゆる事象に対応した、完全万能戦闘機。

 モルドが考えただけあって、そこには一切の死角はない。

 しいて言うなら、自爆寸前で動いている仕様上、長期戦は出来ないが、問題ない。

 <Infinite Dendrogram>の機械は長期戦向けではないし。

 そもそも、この機体であれば、長期戦になる前に片が付くのだから。

 

 

 

『《コバルト・レーザー》』

 

 

 

 先程とは違う、コバルトイオンのような、赤色のレーザーが放たれる。

 違うのは、色のみではない。

 威力も、本数も、先程よりはるかに高く、多い。

 巨大な虎に着弾し、肉体を穿つ。

 

 

 なれど、それは虎にさほどのダメージも与えてはいない。

 第二形態とは違い、すべてのHPを削り切らなければキリューは倒せない。

 ゆえに、貫通系の攻撃はさほど意味がない。

 

 

 

 よって突き進む。

 今の彼女の爪は、最強の矛。

 空間ごと消し飛ばす爪は、当たりさえすればバリアも熱波も神話級金属であろうと一切無関係に消し飛ばす。

爪が通る先にいる生命を、建造物を、地面を、空気を。

 すべてを消失させながら繰り出される爪は。

 

 

「A」

『やはり、こうなる』

 

 

 

 【酷死無蒼】には、当たらなかった。

 

 

 

 キリューには捉えられない、届かない。

 AGIでは劣っているはずの、超音速で飛び回る【酷死無蒼】には、爪も牙も当たるはずがない。

 【レッドへリング】の足場も、身の丈二十メートルを超えた今の体格では使うことができない。

 そもそも、今の彼女には肉体の操作権がないのだからなおさらだ。

 

 

 であればとキリューは思考を切り替える。

 【レッドへリング】を足場としてではなく、飛び道具として飛翔させる。

 しかして、それも悪手である。

 

『《コバルト・レーザー》』

 

 

 

 マニュアル制御によるレーザーが、紅い飛翔体を全て貫き撃ち落とす。

 神話級のステータスを持ったキリューはともかく、伝説級武具程度なら、十分に撃ちぬける。

 これが、【酷死無蒼】の恐ろしさ。

 あらゆる環境に、敵に対応できる対応力と、古代伝説級相当のスペックを有している。

 ここにもし、マジンギアという商品を産み出したMr.フランクリンがこの機体を見れば、一つの言葉を以て表現しただろう。

 すなわち、<竜王級マジンギア>と。

 

 

 

 キリューは、空中へと跳躍しながら、もう一度爪を振るう。

 ルストは、それにも問題ないと判断する。

 陸でしか戦えない今の彼女は脅威にならない。

 余裕をもって回避しようとして。

 

 

『!』

 

 

 

 機体がバランスを崩す。

 それは、エンジンなどの不備によるものではない。

 機体の周囲の空気が消し飛び、真空と化したことによる余波。

 熱気を吹かして飛び回るという、飛行機などと変わらない技術で飛んでいる以上、周りの空気の状態に影響を受ける。

 

 

 

 そこを、獣は見逃さない。

 数万のSTRをもって、跳躍。

 高度を落とした【酷死無蒼】の高さまで飛び上がり、爪を振るおうとして。

 

 

 

「《蒼星(シリウス)》」

 

 

 

 普通なら、不可能だ。

 真空状態の空間と、普通の空気が占める空間。

 そのような不安定な環境で、ブースターを吹かして飛び回るのはまず不可能。

 

 

 だが、AGAUはその常識にはとらわれない。

 【酷死無蒼】とタイガポエットの軌道から、気流を読み、真空空間を把握し、直感のままに体を動かし。

 彼女の足で、捉えて。

 タイガポエットの左顔面を吹き飛ばした。

 

 

 

「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」

 

 

 

 激昂した、いな激昂が増したキリューは絶爪を振るって、AGAUの胴体を消し飛ばす。

 回復手段を失った彼女には、デスペナルティ以外にはない。

 肺が潰れて、言葉を発することもできない。

 ただ。

 彼女の視線は、遠くで敵を見据える、最愛の人を見ていた。

 

 

(あとは、頼むわ)

 

 

 微笑みを浮かべて、光の塵になった。

 

 

 

 ◇

 

 

 火力特化の必殺スキルを食らってもなお、キリューは止まらない。

 陥没した左顔面は修復されている。

 移動にも、攻撃にも一切の支障なし。

 

 

 だが、劣勢である。

 傷自体は修復できるが、HPは回復していない。

 むしろ、修復するためにさらに体力を消費するため、HPは既に最大時の半分を切っている。

 終末殲滅形態とはそういうものだ。

 命尽きるまで、ただひたすらにみずからの暴力性に従ってあらゆるものを粉砕し尽くす。

 だから止まらない。 

 

 

 

 【酷死無蒼】は、地に降り立った。

 空気を消し飛ばすという離れ業を実行して見せた以上、もう空に逃げる戦術は通用しないから。

 何より。

 

 

「いけるよね?モルド」

「もちろん」

 

 

 彼らなら陸上でも虎に勝てると確信しているから。

 【酷死無蒼】の手には、二本の剣が握られている。

 金属の柄と、青い刃。

 光熱を以て、相手を両断する武装、《アズール・カリバー》。

 

 

「GA!」

『ふっ』

 

 

 

 虎の爪が、余波で真空を作り、装甲をわずかに削る。

 赤き巨神は、その刃をもって虎の両手を切り飛ばす。

 とどめを刺そうとして踏み込んだところで、

 

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」

 

 

 空間を断つ牙で、右腕を砕かれる。

 左腕の刃で、首を落とす。

 必殺スキルに勝るとも劣らない攻撃が、HPを急速に削っていく。

 相手が神話級の域にあろうとも、熱量の刃は物理防御を無視して熔断する。

 

 

 なれど、獣は止まらない。

 首だけを繋いで、なおも突貫を続けようとする。

 その突進を止めるすべは、ルスト達にはなく。

 

 

 

「終わりだ」

 

 

 

 だからこそ、カウンターが決まる。 

 

 

 背中にあった【酷死無蒼】の翼が、変形していく。

 双翼が重なり、上部にエネルギーが集中していく。

 ああ、それは最大威力の大砲であり、牙。

 通常の兵装ではどうにもならないものを、滅するための最後の切り札。

 爆発するまで(・・・・・・)動力炉を稼働させ、すべてのエネルギーを一撃にこめる技。

 この名をつけたのは、鳥が竜に由来するものだからか。

 あるいは、怪鳥(・・)を落とす存在であるという決意表明か。

 

 

 

「《ドラゴニック・スフィア》」

 

 

 

 膨大な熱量をとどめ、圧縮した球を、射出して。

 前進した虎に直撃。

 大爆発を引き起こした。

 

 

 

To be continued.




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