<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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久しぶりの更新になってしまい申し訳ありません……。


世界の終わり、遊戯の始まり 其の十七

 □■防覇・とある建物内部

 

 

「……予想以上だったね、これは」

 

 

 【死将軍】アーサー・ペンシルゴンは、手元にある魔導カメラの映像を見ながら、一人ごちた。

 はっきりいえば、手駒の多くが落とされている現状は彼女の想定の範囲内である。

 【功夫仙】も、【砲弾王】も、【地獄王】も、彼女がこの時のためにかき集めた有力な<マスター>が既にデスペナルティになっている。

 それだけではなく”五虎将”も二体が落とされている。

 生物を操作することに特化したアンデッドと、溶岩樹形をモチーフにしたアンデッド。

 いずれも【死将軍】の《死霊強化》でステータスが倍加していることを考えれば、伝説級以上の怪物であると考えて間違いない。

 それが、倒されている。

 

 

「思ったより速いし、しかもほとんどサンラク君達が倒してるじゃん……」

 

 

 

 彼女がよく知っているプレイヤーであるサンラク、ソウダカッツォ、AGAU、ルスト、モルド。

 この五名が基本的に暴れて、ペンシルゴン側の戦力も撃破している。

 他の<マスター>は、大半が“五虎将”やペンシルゴンの配下である<マスター>によって討たれている。

 

 

 

 まあ、もちろん手駒はある。

 

 

「……何これ?」

 

 

 ペンシルゴンは、予想外の事態に戸惑うような声を上げた。

 普段はカリスマモデルとして常に完璧な表情は、引きつっていた。

 街を壊し、人にあだなす者達。

 その中に、ペンシルゴンが一切関与していない(・・・・・・・・・)者がいたのだから。

 

 

 ◇

 

 

 □■防覇屋外

 

 

 

 サイガ-0。

 魔力狙撃銃運用特化超級職、【魔撃王】に就いている準<超級>であり、レジェンダリアにおいては遠距離戦最強格の準<超級>と呼ばれている。

 最強格、と呼ばれているのは【召喚姫】とどちらが遠距離戦において最強であるかが判明していないためだが……逆に言えば遠距離戦に限定すれば【召喚姫】以外は、国家に所属する<超級>であろうと敵ではない。

 そんな彼女は、アンデッドの大群をキヨヒメとともに撃破したのち、【功夫仙】を撃破したサンラクの援護に回ろうとしていた。

 直後、サンラクは溶岩樹形のアンデッドと戦い始めた。

 本来、キヨヒメの能力なら容易く倒せる相手である。

 耐性や防御力に秀でた相手に対して、《恋獄降下》で炎熱耐性へのデバフをかけられるキヨヒメは天敵だ。

 実際、耐久に特化したモンスターであろうと、彼女はそうして屠っている。

 

 

 だがしかし、彼女はその戦闘に参加していない。

 参加できないのだ。

 現在進行形で、全く別の相手と戦っているから。

 

 

「うーん、おじさんのポケットなモンスターがもう何回もやられちゃってるねえ。やれやれ、とんでもないモンスターを隠し持ってるんだねえ?兜合わせじゃ勝てる気がしないなあ」

 

 

サイガ‐0が戦っている相手、それは人間の女性だった。

 人間の女性の姿をしていた。

 しかして、彼女が従えている異形のキメラよりもはるかに。

 彼女の方が、ずっと恐ろしい。

 両手や、服の下に見える口腔も、聞くに堪えない下劣な言葉(下ネタ)もそうだが。

 何より、恐ろしいのはその目だ。

 戦闘が開始してからずっと何を考えているのかもわからない視線を向けてきた。

 どろどろのどす黒い何かを煮詰めたような、悍ましい視線がサイガ‐0を突き刺してくる。

 

 

 

 相手が超音速機動で動き回りながら、モンスターを繰り出してくる魔物使いであるという場合、サイガ-0にとっては対策しづらい相手となる。

 彼女のビルドは、追尾と追撃に秀でており、遠距離から攻撃を加えるに秀でている。

 距離を詰め、近接戦闘と中距離からの魔法攻撃を仕掛けてこられれば、サイガ‐0にとっては不利となる。

 

 

 

(AGIなら私が勝っているはずなのですが……)

 

 

 相手は、AGIのみではなくSTRを使って、反動で移動している。

 サイガ-0には、それができない。

 <エンブリオ>でサンラクのAGIをコピーすることはできてもAGIが三桁どまり。

 ゆえにAGIではわずかに勝っているにも関わらず、速度では劣っている。

 

 

 反動で彼女の肉体にダメージが入っているはずだが、消耗は感じさせない。

 もしかすると再生力の高いモンスターの細胞を埋め込んでいるのかもしれない。

 速度、筋力、耐久力のすべてが超級職に近い。

 

 

 (錬金術人体改造理論……噂には聞いていましたが、机上の空論どまりだったはず。まさか、実現したものがいたとはね)

 

 

 ◇

 

 

 最強のビルドは<Infinite Dendrogram>においてよく議論されてきた。

 ガードナー獣戦士理論、ジェム生成貯蔵連打理論などがそれにあたる。

 もっとも、オンリーワンの超級職や<超級エンブリオ>などによって流行したのちに廃れていったのだが。

 だがしかし、その下には無数の理論未満のビルドがある。

 廃れる以前に、流行りすらしなかったビルド。

 その中の一つが、“錬金術人体改造理論”。

 【錬金術師】、【医師】、【命術師】などのスキルで肉体を改造するというもの。

  錬金術師系統が使う毒物やモンスターなどを使いながら、弱点となりえる本体も前衛上級職以上のステータスで戦う。

 ここまで聞けば、誰もが夢の理論だと思うだろう。

 そう、いくつか致命的な問題があった。

 

 

 まず、素材。

 人体を強化するためのモンスターの素材は高価である。

 少なくとも、前衛上級職と渡り合うには波の素材では到底足りず、純竜級モンスターの素材が大量に必要になる。

 前提となる前衛上級職並みのステータスを手にいれるためのコストパフォーマンスが悪すぎる。

 それこそ、前衛上級職になって毒物を買い集めて放り投げたほうが効率的、というくらい。

 

 

 第二に、ジョブとしての問題。

 上級職までのスキルではそこまで大幅な人体改造は出来ない。

 できたとしても、肉体が耐えられずに寿命で死ぬ。

 とはいえ、これは超級職や人体改造に特化した<エンブリオ>であれば解決できる問題でもある。

 

 

 そして何よりも、第三の問題。

 膨大な素材を用意し、スキルレベルの問題をクリアし。

 そこまでやってもなお、これら二つの問題を超える、致命的な欠陥がこの二つのビルドにはあった。

 それは、そこまで手間暇かけて改造を施したとしても――<マスター>であれば、死ねば元に戻ってしまうということだ。

 極論、パワードスーツなどで強化する方がよほど効率的である。

 後に現れるモンスター製造に特化した<超級>も、「そんな無駄なことするくらいなら普通に強いモンスター作って蹂躙した方が早いよねえ」とこぼしている。

 付け加えればほとんど広まっていないがゆえに発覚していないが、肉体が変質することへの違和感に大抵の人間が耐えられないという問題もあった。

 

 

 だがしかし、【生命王】アンダーマテリアルにはそれが可能である。

 <エンブリオ>を活かした商売によって築いた富で、無尽蔵に素材を集め。

 錬金術師系統から派生した超級職である【生命王】についたことで無茶な改造が可能になり。

 今のビルドが完成してから一度たりともデスペナルティになっていないので、元に戻ったことはない。

 何より、自分の肉体を作り変えることへの違和感など、彼女は感じないし何とも思わない。

 

 

 ゆえに、今サイガー0が相対しているのは。

 前衛超級職に準ずるステータスを持ち。

 錬金術で作り上げた純竜クラスのキメラを無数に率いており。

 何よりも、無数の手札を行使する。

 サイガ‐0にとって、最も厄介な敵が、そこにいた。

 

 

 

 

 

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