<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

135 / 137
世界の終わり、遊戯の始まり 其の二十

□【修羅王】サンラク

 

 

 

 爪を生やした奇怪な<マスター>をデスペナルティにして。

 

 

『ルスト、モルド、大丈夫か?』

『問題ない――』

『問題大ありだよ!ダメージが大きすぎてオルトロスが稼働してないんだから』

 

 

 ま、そうだろうな。

 さっきまで赤くなっていた機体が蒼くなってるし。

 思うに、限界まで機体を強化するタイプのスキルだったんだろう。

 それが切れた今、もう彼らには戦う力が残っていない。

 遠目に見えたが、レイやカッツォも消耗がひどく、戦える状態ではない。

 つまり。

 

 

『最後は、俺とペンシルゴンの一騎打ちってわけか』

 

 

 

 別に構わない。

 魔王や邪神の単独討伐は別ゲー幾度となく経験している。

 だがしかし、問題がある。

 

 

 

『あいつ、どこにいるんだ?』

 

 

 

 いまだにアーサー・ペンシルゴンは姿を見せない。

 手駒の大半は多くの<マスター>によって討伐されたはずだ。

 だというのに、いまだに出てくる気配がない。

 むしろ、俺達の前に出てきて囮になったり、罠にはめてくるのが奴のやり方。

 ここまでアナグマみたいに潜っているのは、奴らしくない。

 

 

『やつ、らしく?』

 

 

 

 思えば、色々とおかしかった。

 例えば、街の外にいたアンデッドに街を攻め込ませていた。

 しかし、それもおかしい。

 少なくとも人の体に寄生型のアンデッドを仕込んで爆発させ、混乱を煽りつつ本命の伝説級アンデッドをぶつけるくらいのことはやってしかるべきだ。

 それが、中途半端なことばかりしているせいで、ティアンの犠牲者はほとんど出ていない。

 避難誘導が順調に言っていたことを考えれば、犠牲者ゼロの可能性すらある。

 まるで、ティアンの殺害が目的ではないかのような。

 ティアンには死んでほしくない(・・・・・・・・)とでもいうかのような。

 

 

 

『…………』

 

 

 

 彼女がNPCを気にかけたのはたった一度。

 『シャングリラ・フロンティア』というゲームにおいて、セツナというNPCに対して異常なほどに執着していた。

 だが、あくまでもそれは例外的。

 シャンフロであっても、他のNPCを気にかけることはなかったはず。

 それ以外のNPCは容赦なく弾丸や爆弾のように使い捨てる生き方をしている。

 だというのに、関わりすらない無数のNPCを気にかけるのだろうか。

 前提が違うのか?

 

 

 

【サンラク君、聞こえますか?】

 

 

 

 【テレパシーカフス】を通じてレイの思念が流れ込んでくる。

 連絡を取れるようにと、彼女から持たされていたものだ。

 あまり使うことはなかったが、ここに来て役に立つとはな。

 

 

 

【レイ、どうかした?大丈夫?】

【キヨヒメが大破しました】

【そっか……あとは俺に任せて】

 

 

 

 俺と違い、レイはキヨヒメのことを娘のように思っている。

 俺も彼女にあわせて接しているが、デンドロのAIは優秀なので、案外と見抜かれているのかもしれない。

 

 

【はい、それはそうなのですが……ペンシルゴンさんのことなんですが】

【何かわかったの?】

【ええと、もしかしたら私、彼女の居場所を見つけられたかもしれません】

【え?】

 

 

 

 レイのジョブは魔力式狙撃銃特化超級職である【魔撃王】。

 魔力を銃器に込め、遠距離狙撃を行うという戦術を主としており、スキル傾向としては二種類。

 一つは、運用。

 魔力式銃器を運用するためのスキルや、銃器の威力、精度などを上げるスキル。

 そしてもう一つは、探知。

 遠距離狙撃に特化しており、魔力弾が追尾して視界に入っていない相手ですらも攻撃できるように眼に頼らない索敵能力が必要になる。

 要するに――レイは魔力探知のスキルを有している。

 

 

【それで、ペンシルゴンの位置がわかるのか?】

【おそらくは。避難所にもいない、10万オーバーの魔力の持ち主がずっと一か所に潜伏してるんです。まず間違いなく黒かと】

『…………』

 

 

 

 

 六桁であれば少なくとも魔法系の超級職であるのは間違いない。

 ペンシルゴンもアンデッドを運用する都合上、MPやSPはかなり高かったはず。

 おそらく、俺達が刺客を討伐したことで、高いMPを持っているのが、一人しか残らなかったんだろう。

 前に「怨念式のアンデッドを使うから、あんまり魔力は消費しないんだよね」とか言ってた気がする。

 怨念がなんなのかは知らん。

 多分マスクデータなんだろう。

 

 

 

『わかった、じゃあ行ってくるよ』

【はい、サンラク君、お気をつけて】

 

 

 

 もはや、俺以外に期待できる戦力はいない。

 相手はあのペンシルゴンだ。

 まだ手駒を仕掛けている可能性もあるし、罠を仕組んでいるのも間違いないだろう。

 だが、行かねばならない。

 アイツに好き放題させるのは、悪友として我慢ならない。

 それに。

 

 

【レイ】

【はい?】

【今日はごめん。いろいろ落ち着いたら、またデートしよう】

【へにゅっ!】

 

 

 

 きっと向こうで、顔を真っ赤にしているんだろうな。

 よし、目標ができたな。

 この騒動を終わらせて、あとでレイと、キヨヒメの三人でまたこの都市を回る。

 

 

 

『行ってきます』

『行ってらっしゃい』

 

 

 

 ゲームでもリアルでも幾度となく交わしてきた言葉を送り合って。

 俺は、屋根の上へと飛びあがる。

 目指すは――魔王城だ。

 

 

 To be continued.

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。