<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
■とある<エンブリオ>について
【怨霊変換 ディストピア】。
TYPE:レギオン・テリトリーに分類される<エンブリオ>である。
その能力は本体である結界に怨念を蓄積し、変換することで
事前に準備が必要であるものの、ハマればトップクラスの火力を出せるこの<エンブリオ>を<マスター>であるペンシルゴンは心の底から気に入っていた。
コストが他者の負の感情によって生まれる怨念、という点も含めて、である。
必殺スキルである《
怨念を変換し、自爆アンデッドを生み出す力。
ただし、異なる点もある。
コストの支払い方が違う。
〈エンブリオ〉本体の結界が発動時に破壊され、ディストピアが蓄えていた怨念を
必要な分だけ消費していた既存のスキルとは比べ物にならない威力を発揮することは容易に想像がつく。
そんなあり様に、ペンシルゴン本人でさえ苦笑を禁じえなかった。
そして、もう一つ。
《世界ノ終ワリ》には他のスキルにない仕様があった。
ペンシルゴンは、それも含めて「実に自分らしい」と笑った。
「これだけのコストを払うのであれば、きっととんでもない威力になるだろう」とも。
そして今。
アーサー・ペンシルゴンはこれまで一度も使ってこなかった必殺スキルを解禁する。
果たして、その効果は。
□【修羅王】サンラク
『どうなってる?』
ペンシルゴンの首を刎ねた。
奴の体が、
だというのに、聞こえた声はまさしくペンシルゴンのもの。
声のしたほうを見ると、一体のスピリットが俺のほうを向いてにんまりと笑い、左手の文様を見せてくる。
人間ならざる肉体であっても、それが<
『どういうタネだ?』
「《継承髑髏》って言ってね。配下にランダムで魂を移せるスキルなんだ」
『ご親切にどうもっ』
「ここで言っとかないという機会ないかなって思ってね。ちなみにこの体を壊してもまたすぐ別の体に憑依するよ。もうすぐそれはできなくなるケド」
『……?』
奴は今、《
つまるところ、<エンブリオ>の必殺スキル。
正真正銘、奴の切り札。
奴の声でしゃべっていたアンデッド、その一体を残してアンデッドが消えうせ、黒い瘴気に変わる。
変化はそれにとどまらない。
残った一体のアンデッドに、黒い瘴気が吸い寄せられて――一つの塊を形成する。
それは無機質に床の上に鎮座しており、なのに生物のごとく脈動していて。
一つの繭のように見えた。
『なんだ、これ』
【双狼牙剣】を振るうも、俺のSTRでは傷一つつかない。
【修羅王】に就いてからもレベルを上げてきたことで、五桁に達している俺のSTRで、だ。
『繭』と呼ぶべきそれには歯が立たなかった。
であれば、この防御力が本質なのかと言われればそうではあるまい。
『デカくなってる、膨れ上がってるのかこれ。風船みたいだな』
『へえ、外側からはそういう風に見えてるんだ。面白いね』
ペンシルゴンと会話をしつつも、ルナティックに打ってもらった属性武器を順番に試していく。
聖属性の武器も含めて試してみたが、全く割れる気配がない。
というか、今更ながら割るのもまずいんじゃないか?
破壊できなければ爆発するし、破壊したらしたで暴発する、くらいのクソギミックはありそうだ。
そう考えて、一度武器をアイテムボックスにしまう。
『必殺スキルは、<エンブリオ>の集大成……』
どこかで聞いた言葉を口にする。
ディストピアの能力特性は怨念変換と自爆モンスターの生成。
それが示すのは、ひどくシンプルで馬鹿げた結論だった。
『自爆モンスターとの融合合体スキル……っ』
『正解』
普段とは違う声音。
されど、そこにこもった悪意は、間違いなく彼女のソレであり。
俺の発言が真実である、と告げていた。
『《世界ノ終ワリ》はいくつかのコストを払うことで、自爆モンスターの出力を上げることができる。まず<エンブリオ>の破壊。宣言と同時に本体が破壊され、内包する怨念が全部アンデッドに変換される』
<エンブリオ>の破壊と、ストックの全消費。
いずれもスキルの出力を上げるうえでは定番と言っていい。
そして、さらにもう一つ。
『そしてできたモンスターを私と融合させて自爆するのが、私の必殺スキル。どう、理解できたかな?』
『一つ言っていいか?』
『どうぞ?』
『お前やっぱり性格終わってるだろ』
こんなものが必殺スキルとして発現する時点で人格が破綻しているとしか思えない。
まあ出会った時からわかりきっていたことではあるのだが。
必殺スキルは、<エンブリオ>の集大成ともいえる技。
特に大きなコストを用意しなくても、超級職の奥義相当の威力を発揮することもあり得る。
キヨヒメなどが一番わかりやすい。
であれば、事前にストックした怨念をすべて使いきり。
<エンブリオ>の破壊をコストにして。
さらに、<マスター>の安全すら一切考慮しない。
そんな必殺スキルがあるとしたらいったいどれほどの威力になるのか。
『サンラク君』
『なんだよ』
『私も過去に使ったことがないから正確なことは言えないけどさ。今回の必殺スキル、概算でどれくらいの威力になるかはわかってるんだよね』
『聞いていいか』
少しだけ、嫌な予感を覚えたまま俺は尋ねる。
ペンシルゴンは、『繭』の内側で笑った。
あるいは、嗤った。
『最低でもこの都市の半分—―下手したら全部吹っ飛ぶくらいかな』
そんな、最悪の情報を伝えてきた。
心底楽しそうな声色で。
To be continued.
更新再開を祝うコメントが多くて、とてもうれしかったです。
ありがとうございます。
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これからも頑張ります。