<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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五月七日十七時十六分、いくらか加筆しました。


地を進む狼、相対するは天翔ける蛇 其の三

 □陽務楽郎

 

 

「……しんどい」

 

 

 あれから、真夏の炎天下、大声で叫びながら走り回った俺は、フラフラになりながら、公園のベンチに座り込んでいた。

 あー、走った後の炭酸は格別だあ!

 しかし、最近、高校時代と比べて体力というか回復力が落ちている気がする。

 武田氏にも、俺のやり方は「十代だからできる」みたいなこと言われてた気がするし。

 あと付け加えるとまあ、最近は、夜更かしする理由がゲーム以外で増えて……いや、何でもない。

 

 

「どうしたもんかな」

 

 

 とりあえず、今日一日デンドロができないわけで。

 他のクソゲーをやるか、別のことをするかの二択なわけだが。

 幕末と……クソゲーではないけどネフホロは誘いがかかってたしなあ。

 でも、今は幕末もネフホロも大きなイベントはないはずだし。

 

 

「……掲示板か、公式の世界観設定でも見るか」

 

 

 今は、他にできることがあるわけでもないし。

 さーて、まずは公式のホームページを……。

 うわ何これ。

 設定量多すぎません?

 時間が溶けていく音がするんだけど。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □【闘牛士】サンラク

 

 

 デスぺナから二十四時間後、俺はアムニールの〈光輝の広場〉でログインしていた。

 二十四時間の間に、デンドロの情報を整理したり、家事をしたり、玲とまったり過ごしたり、玲と……いや、ここから先は語るまい。

 デンドロでは、ログイン地点を最後に登録したセーブポイントか、ログアウト地点から選ぶことができる。

 ただし、デスペナルティによる強制ログアウト後のログインだけは例外だ。

 選択肢が最後にセーブしたセーブポイント一択になってしまう。

 デスペナルティというのは、そういう意味もあるのかもしれない。

 というか、リスポン地点が固定されてるの、このゲームだとまずくない?

 PKへのペナルティが発生しないから、リスキルし放題ってことでしょ?

 やっぱデンドロはクソだわ。

 

 

『とりあえず、ステラのとこ行くか』

 

 

 あれ?どっちだったけ?

 えーと、マップマップ。

 

 

「ちょっと、どこに行くつもりなのよ」

『え?』

「パパ曰く、「あんたの反応が三日前に途絶えた。多分死んでるからセーブポイントまで迎えに行って来い」ってさ」

『え?そんなんわかるもんなの?』

 

 

 発信機でもつけてたの?

 あるいは光魔法とやらで見てたとか?

 

 

「あたしにはよくわからないけど、【テレパシーカフス】のテレパシー魔法を逆探知(・・・)するそうよ」

『マジかよ。すげえな』

 

 

 そんなことを話しているうちに、昨日とは同じところにやってきた。

 そのまま壁、のように見える入口を抜けて以前と同様、工房に入る。

 

 

「よう、サンラク、三日ぶりだな」

『お久しぶりです、ティックの旦那』

「ちょっと、あんた、その呼び方止めなさいよ!」

 

 

 あんまり騒ぐなよ。

 耳に響くだろ。

 

 

「フハハハハ、いいじゃねえか、ステラ。こりゃ傑作だ、フハハハハハ」

 

 

 だが、ティックは特に気を悪くした様子もなく、むしろなぜか嬉しそうだった。

 ……なんか、俺知らないところでフラグ踏んだ?

 まあいいか。

 

 

「そういや、なにがあった?上位純竜とでも出くわしたか?」

『出くわしたことは出くわしたんですが、それが死因ってわけじゃないんですよ。【ロウファン】っていうモンスターにやられまして』

「--ほう」

 

 

 突如、ティックから放たれる気配が変わる。

 それまでとは明らかに違う、莫大な威圧感が発せられる。

 何かフラグを踏んだとしか思えない反応だ。

 

 

「なるほどなあ、ちょうどお前と出くわしたってわけか」

「『……え?』」

 

 

 言葉の意味がよくわからない、俺とステラに対して。

 

 

「<UBM>、【霊骨狼狼 ロウファン】は、最近まで俺が保管してたのさ。逃げられたけどな」

『「…………はあ?」』

 

 

 今度こそ、理解不能なことを言ってきたのだった。

 

 

 ◇ 

 

 

「というか、お前ら”ロウファン”って名前に心当たりはねえのか?俺が言うのもなんだが、かなり有名なはずだぞ?」

「え?パパ、父さん、ロウファンってあの(・・)ロウファンなの?」

『どのロウファン?』

「……サンラク、あんたまさか知らないの?”神殺の六”のことを?」

『……今初めて聞いた』

「ええ……」

 

 

 おい、なんでそんな、やばい奴がやばい発言をしたみたいな目で俺を見るんだ。

 仕方ないだろ。 

 デンドロを始めて、というか始まってまだ一週間もたってねえんだぞ。

 そんな過去の設定とか知らねえよ。

 デスぺナ中に、公式サイト見たけど、そんな細かいことは書いてなかったし。

 

 

「<マスター>だし、その辺はしょうがねえだろ。それよりサンラクに訊きたいんだが」

『……なんですか』

「あいつと闘ってみてどう思った?」

 

 

 どう思った、か。

 

 

『まあ正直、強かったです。あの時の俺では、どうやっても勝てないっていうくらいに強かった』

 

 

 圧倒的な力の差があった。

 こちらの攻撃はまともな傷をつけられず、対してあいつは一蹴りで俺の脚を吹き飛ばして、勝負を決めた。

 速度さえ、あいつのほうが勝っていたかもしれない。

 

 

『けど』

「けど?」

『--次は、負けません。あいつは、俺が倒します』

 

 

 ありのままを宣言した。

 ティックは、無言のまま俺のほうに歩み寄り。

 

 

「フハハハハハ!言うねえ!いいぞ、いい!」

 

 

 バシバシと俺の背中をたたいて来た。

 ちょっと!

 叩かれて俺のHP減ってるんだけど!

 

 

「そうかい。なら、俺が手伝ってやるよ」

『……まじですか?』

「ああ。俺はあいつを殺そうとは思わねえ。だが、誰かがあいつを終わらせるってのならそれを手伝うことはできる」

『さっきから思ってたんですけど、生前のお知り合いで?』

 

 

 どう見てもアンデッドだったからな。

 この妙なリアリティがあるデンドロのことだ。

 おそらく、アンデッドにも生前がある。

 

 

「ああ。昔はつるんでたのさ」

「父さんと”狼王”ロウファンは、神話級<UBM>を討った伝説のパーティ”神殺の六”のメンバーだったのよ!」

『ほーん』

「反応薄っ!」

 

 

 いやだって、神話級<UBM>ってどの程度の強さかわからんし。

 【ロウファン】とどっちが強いんだ?

 いや、【ロウファン】と同格のやつが五人いて、それで倒せたんだとしたらそれはやばいな。

 

 

「厳密には違うけどな。【泥将軍(ルーピッド)】のジョブスキルや、他のメンバーのスタイルの問題で、パーティーは組めねえから、チームって言ったほうが近いだろう」

 

 

 待て待て、ルーピッドって誰だ。

 今思い出したけど、前はイオリとか言ってたし、混乱してきたぞ。

 

 

「ま、とりあえず行くぞサンラク。ステラは留守番な」

『行くって、闘技場ですか?』

「いいや、違う。その逆だ」

 

 

 逆ってどういうことだ?

 決闘、戦闘の反対って、教会とか?

 王国にはあると鉛筆から聞いてるけど、それ以外の国にもあるのか?

 

 

「俺のおすすめの、秘密の狩場に行くぞ。レベル上げだ」

『……なるほど』

 

 

 これはありがたい。

 いいね、そういう格差大好き!

 

 

 ◇

 

 

 □<陽月の工房>・一階内部

 

 

「はあ」

 

 

 留守番を任されたステラは、ため息を吐いた。

 二人はつい先程、ステラさえも知らない秘密の狩場へといってしまった。

 ステラにしてみれば、不本意だった。

 彼女にとって、ルナティックが閉じ込めていた<UBM>ーーステラは名称を今日まで知らなかったーーは、越えねばならない壁であり、目的達成のための手段だった。

 幻術師系統超級職【幻姫】の条件の一つである、強敵撃破の達成のためには【ロウファン】の存在はうってつけである。

 

 

「あたしに倒せるとは、倒せるようになるとは、パパは思ってないんだろうなあ」 

 

 

 彼女が、母親(・・)の後を継ぎたいといった時、父は反対した。

 --お前じゃ足りねえ。

 それはきっとおおげさなモノではなく、本心からのものだったのだろう。

 誰よりも、”幻兎”と謳われた、彼女のことを知っているから。

 自分の娘のことをよく知っているから。

 ほぼ間違いなく、その過程で命を落とすだろうとわかっているから。

 

 

「どうすればいいんだろう」

 

 

 彼女自身も、自分の非才を感じていた。

 彼女の母は自分の年齢の時はすでに超級職だったのに対して、自分は二十歳でありながら、未だ三〇〇にも届いていない。

 そうして、彼女が一人で出口のない悩みを抱えていたところに。

 

 

「反応途絶ポイントは、ここですか」

 

 

 そこに、何かが入り込んできた。

 

 

「っ!」

 

 

 とっさに《瞬間装備》した杖を構えたが、時すでに遅かった。

 相手は武器をこちらに向けていた。

 魔法を使うより早く、撃たれるだろう。

 

 

「貴方は、彼と一緒にいたティアンですね。お聞きしたいことがあります」

 

 

 蛇を思わせる、深緑の魔力式狙撃銃を突き付けて、魔術師風の格好をした銀髪の女性が問うた。

 

 

「サンラク君は、今どこにいるんですか?」

 

 

 愛する男を探す追跡者(ストーカー)が、サンラクへと迫っていた。

 

 

 To be continued




すいません。
マジでストックがやばいので、多分明日には間に合わないと思います。
ごめんなさい。
なるべく早く更新いたします。


余談。
”幻兎”【幻姫】
ルナティックの嫁であり、ステラの母。
ドワーフの父と獣人の母を持った結果、合法ロりうさ耳獣人が誕生した。
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