<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
□陽務楽郎
「……しんどい」
あれから、真夏の炎天下、大声で叫びながら走り回った俺は、フラフラになりながら、公園のベンチに座り込んでいた。
あー、走った後の炭酸は格別だあ!
しかし、最近、高校時代と比べて体力というか回復力が落ちている気がする。
武田氏にも、俺のやり方は「十代だからできる」みたいなこと言われてた気がするし。
あと付け加えるとまあ、最近は、夜更かしする理由がゲーム以外で増えて……いや、何でもない。
「どうしたもんかな」
とりあえず、今日一日デンドロができないわけで。
他のクソゲーをやるか、別のことをするかの二択なわけだが。
幕末と……クソゲーではないけどネフホロは誘いがかかってたしなあ。
でも、今は幕末もネフホロも大きなイベントはないはずだし。
「……掲示板か、公式の世界観設定でも見るか」
今は、他にできることがあるわけでもないし。
さーて、まずは公式のホームページを……。
うわ何これ。
設定量多すぎません?
時間が溶けていく音がするんだけど。
◇◇◇
□【闘牛士】サンラク
デスぺナから二十四時間後、俺はアムニールの〈光輝の広場〉でログインしていた。
二十四時間の間に、デンドロの情報を整理したり、家事をしたり、玲とまったり過ごしたり、玲と……いや、ここから先は語るまい。
デンドロでは、ログイン地点を最後に登録したセーブポイントか、ログアウト地点から選ぶことができる。
ただし、デスペナルティによる強制ログアウト後のログインだけは例外だ。
選択肢が最後にセーブしたセーブポイント一択になってしまう。
デスペナルティというのは、そういう意味もあるのかもしれない。
というか、リスポン地点が固定されてるの、このゲームだとまずくない?
PKへのペナルティが発生しないから、リスキルし放題ってことでしょ?
やっぱデンドロはクソだわ。
『とりあえず、ステラのとこ行くか』
あれ?どっちだったけ?
えーと、マップマップ。
「ちょっと、どこに行くつもりなのよ」
『え?』
「パパ曰く、「あんたの反応が三日前に途絶えた。多分死んでるからセーブポイントまで迎えに行って来い」ってさ」
『え?そんなんわかるもんなの?』
発信機でもつけてたの?
あるいは光魔法とやらで見てたとか?
「あたしにはよくわからないけど、【テレパシーカフス】のテレパシー魔法を
『マジかよ。すげえな』
そんなことを話しているうちに、昨日とは同じところにやってきた。
そのまま壁、のように見える入口を抜けて以前と同様、工房に入る。
「よう、サンラク、三日ぶりだな」
『お久しぶりです、ティックの旦那』
「ちょっと、あんた、その呼び方止めなさいよ!」
あんまり騒ぐなよ。
耳に響くだろ。
「フハハハハ、いいじゃねえか、ステラ。こりゃ傑作だ、フハハハハハ」
だが、ティックは特に気を悪くした様子もなく、むしろなぜか嬉しそうだった。
……なんか、俺知らないところでフラグ踏んだ?
まあいいか。
「そういや、なにがあった?上位純竜とでも出くわしたか?」
『出くわしたことは出くわしたんですが、それが死因ってわけじゃないんですよ。【ロウファン】っていうモンスターにやられまして』
「--ほう」
突如、ティックから放たれる気配が変わる。
それまでとは明らかに違う、莫大な威圧感が発せられる。
何かフラグを踏んだとしか思えない反応だ。
「なるほどなあ、ちょうどお前と出くわしたってわけか」
「『……え?』」
言葉の意味がよくわからない、俺とステラに対して。
「<UBM>、【霊骨狼狼 ロウファン】は、最近まで俺が保管してたのさ。逃げられたけどな」
『「…………はあ?」』
今度こそ、理解不能なことを言ってきたのだった。
◇
「というか、お前ら”ロウファン”って名前に心当たりはねえのか?俺が言うのもなんだが、かなり有名なはずだぞ?」
「え?パパ、父さん、ロウファンって
『どのロウファン?』
「……サンラク、あんたまさか知らないの?”神殺の六”のことを?」
『……今初めて聞いた』
「ええ……」
おい、なんでそんな、やばい奴がやばい発言をしたみたいな目で俺を見るんだ。
仕方ないだろ。
デンドロを始めて、というか始まってまだ一週間もたってねえんだぞ。
そんな過去の設定とか知らねえよ。
デスぺナ中に、公式サイト見たけど、そんな細かいことは書いてなかったし。
「<マスター>だし、その辺はしょうがねえだろ。それよりサンラクに訊きたいんだが」
『……なんですか』
「あいつと闘ってみてどう思った?」
どう思った、か。
『まあ正直、強かったです。あの時の俺では、どうやっても勝てないっていうくらいに強かった』
圧倒的な力の差があった。
こちらの攻撃はまともな傷をつけられず、対してあいつは一蹴りで俺の脚を吹き飛ばして、勝負を決めた。
速度さえ、あいつのほうが勝っていたかもしれない。
『けど』
「けど?」
『--次は、負けません。あいつは、俺が倒します』
ありのままを宣言した。
ティックは、無言のまま俺のほうに歩み寄り。
「フハハハハハ!言うねえ!いいぞ、いい!」
バシバシと俺の背中をたたいて来た。
ちょっと!
叩かれて俺のHP減ってるんだけど!
「そうかい。なら、俺が手伝ってやるよ」
『……まじですか?』
「ああ。俺はあいつを殺そうとは思わねえ。だが、誰かがあいつを終わらせるってのならそれを手伝うことはできる」
『さっきから思ってたんですけど、生前のお知り合いで?』
どう見てもアンデッドだったからな。
この妙なリアリティがあるデンドロのことだ。
おそらく、アンデッドにも生前がある。
「ああ。昔はつるんでたのさ」
「父さんと”狼王”ロウファンは、神話級<UBM>を討った伝説のパーティ”神殺の六”のメンバーだったのよ!」
『ほーん』
「反応薄っ!」
いやだって、神話級<UBM>ってどの程度の強さかわからんし。
【ロウファン】とどっちが強いんだ?
いや、【ロウファン】と同格のやつが五人いて、それで倒せたんだとしたらそれはやばいな。
「厳密には違うけどな。【
待て待て、ルーピッドって誰だ。
今思い出したけど、前はイオリとか言ってたし、混乱してきたぞ。
「ま、とりあえず行くぞサンラク。ステラは留守番な」
『行くって、闘技場ですか?』
「いいや、違う。その逆だ」
逆ってどういうことだ?
決闘、戦闘の反対って、教会とか?
王国にはあると鉛筆から聞いてるけど、それ以外の国にもあるのか?
「俺のおすすめの、秘密の狩場に行くぞ。レベル上げだ」
『……なるほど』
これはありがたい。
いいね、そういう格差大好き!
◇
□<陽月の工房>・一階内部
「はあ」
留守番を任されたステラは、ため息を吐いた。
二人はつい先程、ステラさえも知らない秘密の狩場へといってしまった。
ステラにしてみれば、不本意だった。
彼女にとって、ルナティックが閉じ込めていた<UBM>ーーステラは名称を今日まで知らなかったーーは、越えねばならない壁であり、目的達成のための手段だった。
幻術師系統超級職【幻姫】の条件の一つである、強敵撃破の達成のためには【ロウファン】の存在はうってつけである。
「あたしに倒せるとは、倒せるようになるとは、パパは思ってないんだろうなあ」
彼女が、
--お前じゃ足りねえ。
それはきっとおおげさなモノではなく、本心からのものだったのだろう。
誰よりも、”幻兎”と謳われた、彼女のことを知っているから。
自分の娘のことをよく知っているから。
ほぼ間違いなく、その過程で命を落とすだろうとわかっているから。
「どうすればいいんだろう」
彼女自身も、自分の非才を感じていた。
彼女の母は自分の年齢の時はすでに超級職だったのに対して、自分は二十歳でありながら、未だ三〇〇にも届いていない。
そうして、彼女が一人で出口のない悩みを抱えていたところに。
「反応途絶ポイントは、ここですか」
そこに、何かが入り込んできた。
「っ!」
とっさに《瞬間装備》した杖を構えたが、時すでに遅かった。
相手は武器をこちらに向けていた。
魔法を使うより早く、撃たれるだろう。
「貴方は、彼と一緒にいたティアンですね。お聞きしたいことがあります」
蛇を思わせる、深緑の魔力式狙撃銃を突き付けて、魔術師風の格好をした銀髪の女性が問うた。
「サンラク君は、今どこにいるんですか?」
愛する男を探す
To be continued
すいません。
マジでストックがやばいので、多分明日には間に合わないと思います。
ごめんなさい。
なるべく早く更新いたします。
余談。
”幻兎”【幻姫】
ルナティックの嫁であり、ステラの母。
ドワーフの父と獣人の母を持った結果、合法ロりうさ耳獣人が誕生した。