<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
これからもよろしくお願いします。
□【闘牛士】サンラク
ティックに連れられて、俺はアムニールを出た。
そうして、ティックの有する小型陸上船ーー彼自作の【三界船舶】に乗っている。
陸上、空中、海上
『ところで、これからどこへ行くんですか?』
「ん?ああ、もう使われなくなった廃鉱山だよ」
曰く、すでに鉱山を取りつくした廃鉱山に、経験値効率の良いモンスターがいるらしい。
廃鉱山ゆえに、人が寄り付かないため、いわば穴場となっているんだとか。
ありがたいなあ、こういうの。
一番いいのは、レイを誘うことだったんだが、まあ仕方ないよな。
秘密の狩場だし。
◇
「着いたぜ」
言われておりたのは、坑道の入り口だった。
いや、ほんとにすごいよな。
空中にバリア展開してその上を進むって、しかも強度は船一隻が乗ってるだけあって、かなり高い。
これなら水上でも問題なく動けるだろうな。
『しかし、ほんとに人が来ないんですね』
狩場というのなら、プレイヤーはともかく、高レベルのティアンとかが来そうなもんだが。
しかし、今現在周囲には一人も人がいない。
というか、モンスターの気配すらない。
「まあ、ここは俺の山だからな」
『なるほど……は?』
今なんて言った?
「だから、この山は俺が買い取ったんだよ。鉱石をあらかた取りつくした後だったから、そこまで高くなかったけどな」
『……ちなみにいくらぐらいで?』
「うん?そうだなーー」
ティックの口から出た金額を聞いて、思った。
デンドロの生産系ってやべーな。
◇
『これは?』
鉱山から入ってすぐのところにある、モノを見て、俺は正直戸惑いを隠せなかった。
「ああ、<マスター>にはあんまりなじみがねえか?レジェンダリアにはめったにないしな」
『いや、見たことはあるんですけど……』
魔法と亜人のいるメルヘンな国で、こんなもん出すかね。
俺の目の前にあるのは、
正直、びっくりである。
機械の国ドライフなら分かるんだけどさ、よりにもよって空飛ぶ箒や、
「地属性魔法を使った魔法エレベーターだな。結構作るのも大変だったんだぜ?」
……何でも魔法付ければいいとか思ってないか?
チュートリアルが最たるものだが、いろいろ雑だぞ、デンドロの運営。
チーン(エレベーターが開くときの音)
あ、こっちでも、そんな音するんだ、エレベーター。
◇◇◇
『なにこれ』
エレベーターで降りて、着いた場所。
そこの光景を一言でいうなら、金属。
色とりどりの金属がそこにはあった。
銀色、銀色、銀色、銅色、黒鉄色、金色、銀色、銀色、銀色、銅色、瑠璃色、銀色、銀色……。
え、なにこれ、廃鉱山だよね。
なんでこんなにたくさん金属があんの?
おかしくない?
「おい、触るなよ?」
『え?』
鉱石を拾い集めようとした俺に対して、ティックが警告する。
その警告と同時、俺がちょうどつかもうとした金属塊が、俺の手を
まるで、水でも掴むかのように、するりと抜けてしまった。
『っ!』
「よく見てみな」
ティックがそういって、ルーペのようなものを差し出してくる。
言われて使ってみると。
【ブロンズ・スライム】、【シルバー・スライム】、【ファイアレジスト・メタルスライム】、【ライトニングレジスト・メタルスライム】……。
え、なにこいつらもしかして。
『ここにいるのは、全部金属スライムなのか?』
「そうだぜ。まあ、大半のやつは攻撃する気もねえし、ごく一部の例外も俺たちの付けてる隠蔽効果のアクセサリーで、気づけねえよ」
あ、工房を出る前に貸してもらったバッジは、そういう効果があったのか。
スライムたちは、そのほとんどが身動き一つせず、俺たちの気配に気づく様子はない。
この分だと、他の人間がスキル等を使って、俺たちの存在や所在に気付くこともないだろうな。
「知らねえかもしれんが、金属系のスライムは素材や経験値が豊富なんだ」
『いえ、知ってます』
しかし、そういう経験値多いメタルなスライムは素早くて逃げ足速いってのがお約束だが、そんな様子もない。
バッジの効果か、あるいはそういう仕様なのか。
ティックは、アイテムボックスから液体の入ったガラスのビンをいくつか取り出して、渡した。
「その中には、酸が入ってる。金属系のスライムは魔法に強いから、酸で殺すしかねえ奴が多いのさ。固定ダメージは、大体コストがかかりすぎるからなあ」
『なるほど。でも、いいんですか』
「いいんだよ。もともとルーピッドに頼まれてわざわざ地下数千メテルまで掘ったんだ。メタル系のスライムをテイムしたいとか言ってな」
その当の本人も、逝っちまいやがったしな、とティックはどこか寂しそうにつぶやいた。
その話を聞いて、気になったことは二つ。
正確にはどうでもいいことと、重要なことが一つずつ。
どうでもいいことは、「降りるのに時間がかかってるとは思ってたが、まさか数キロも潜ってたのか」ということ。
まあ、こちらは別にいい。
大事なのは、もう一つのほうだ。
『ちょっと聞きたいんですけど』
「なんだ?」
酸をスライムどもに撒きながら、俺は尋ねる。
おっ、本当にスライムなんだな。
おお、レベルがどんどん上がってる。
いや、そうじゃなくて。
『旦那と、ロウファンは”神殺の六”っていう仲間だったんですよね?ロウファンってどんな人だったんですか?』
俺が気になったのは、それだ。
ロウファンは、話を聞く限りは人間だったのだろう。
だが、俺の前に現れた【ロウファン】はどう考えても人間ではない。
スケルトンタイプのアンデッドだとしても、生前の姿が、人間のそれではないはずだ。
骨格からして元々、四足歩行の動物だったはずだ。
あくまで聞きかじった知識だが、人間の定義は二足歩行であることと、道具の使用。
肉や皮がついていたとしても、あの前足では、どちらも不可能だろう。
「…………」
俺の質問に対して、ティックは押し黙っている。
うーん、亡くなった仲間のことだし、思うところがあって躊躇するのはわかるけども。
正直こういう回想イベントは、サクッと巻いてほしいっていう気持ちもあるんだよな。
「……お前は」
何とかティックが口に出した、最初の一言は。
「お前は、【ロウファン】を強い、といったな?」
『はい』
「……昔のロウファンは、今より強かった」
まじかよ。
あれより強いってやばすぎるだろ、”神殺の六”。
「あいつは、まっすぐで不器用な奴でよ、だから全部あいつらだけで解決しようとして、結果的に死んじまった」
実直な性格、か。
あれ、今何か……。
「俺がそれを知って駆け付けた時、すでにアンデッド……<UBM>になっちまってた」
やはり、死後アンデッドと化した結果らしい。
「【超騎兵】のジョブについててな、あの狼野郎、かつてはレジェンダリア最速なんて言われてたこともあったぐらいだ。強かったぜ」
騎兵系統、となると、あの骨格はロウファン本人ではなく、騎獣の骨格か?
確か、ごくまれにモンスターのドロップアイテムに全身骨格や全身遺骸が出ることがあるらしいって、ペンシルゴンがチャットで言ってたな。
本人の遺体はどうなったのかっていう疑問はあるけど。
お、このドロップアイテムスゲー。
「あ、そのドロップアイテムは、俺によこせよ」
『……了解です』
だめかあ。
まあ、レベルアップのためにここにきてるわけだし、こいつも生産職だからなあ。
「そんな顔すんなよ。ちゃんとお前の武器の素材にするからよ」
『ありがとうございます!』
いやーマジでぱねえっすわティックの旦那!
あざーすっ!
To be continued
余談。
時々、ティックがサンラクの表情を読んだような言動をするのは、表情の読めない亜人(ロウファン含む)などとの付き合いで磨いた観察眼によるものです。
・【三界船舶】
ティックの作品の一つ。
陸・空・海のいずれの移動も可能な小型船。
加えて、形態を変化させることで、地下や海中も移動が可能。
大砲などの武装も積んでおり、純竜クラスなら勝てるぐらいの火力に加え、陸上、水上、空中に限り最大亜音速での移動も可能。
欠点としては、装備する際の要求レベルとDEXが異常に高いこと。
万能型ゆえにMPの消費が激しいこと。
そして、形態変化はパーツを入れ替えることで行われるため使わないパーツをしまうアイテムボックスを船内に入れている。
つまり、アイテムボックスにしまえないことである。