<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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ストックゼロのまま月曜を迎えます。
さすがに更新が途切れると思いますが、これからもよろしくお願いします。
感想、お気に入り登録、誤字報告など大変ありがたく思っています。

追記
《ラスト・スタンド》周辺のもろもろを修正。




地を進む狼、相対するは天翔ける蛇 其の五

 ■【霊骨狼狼 ロウファン】について

 

 

 【ロウファン】の素体となった、ロウファンという男は、レジェンダリア北部……王国との国境近くの小さな集落に生を受けた。

 彼らは人狼種の亜人であり、集落で暮らす、他の人々もそうであった。

 両親を早くに亡くし、残されたものは、生まれたばかりの妹と、もう一つ。

 両親が番犬として飼っていた、一体の狼型のテイムモンスターであった。

 ロウファンは生きていくため、そして妹を養うため、彼は身一つで、否、身二つで成り上がることを決意した。

 ……そうでなければ、この集落で生きていくことはできないと知っていたから。

 彼は、アムニールまで出稼ぎに行き、ジョブに就き、冒険者となった。

 才能があったのか、彼は頭角を現していった。

 誰ともパーティを組まないこともあって、ロウファンを疎むものも多かったが、それでも彼はそれすら乗り越えた。

 

 

 ◇

 

 

 そうして、狩りをしてレベルを上げ、技を磨き、闘技場で決闘をして金を稼ぎ、稼いだ金を仕送りする。

 そんな生活を数年ほど続けたのち、彼らは大きく変わった。

 騎兵系統超級職ーー【超騎兵】の座に就いたのである。

 同時期に、テイムモンスターも【ハイエンド・ハウリングウルフ】、最上位純竜クラスモンスターへと成り上がっていた。

 そうして、彼は【妖精女王】の目に留まり、国に仕える立場となった。

 その後、彼はルナティック達とともに、”神殺の六”として様々な仕事をこなし、生涯金銭に困らず生きていけるほどの金銭を手に入れた。

 その時、彼は軍を退役し、妹をアムニールに呼んだ。

 ロウファンの妹は生まれつき病弱だったが、心根の優しい少女だった。

 妹に心配をかけたくなかったがために、今までほとんどあっていなかったが、もう働く必要すらなくなった今なら、問題ないと考えた。

 だから、彼らはそのまま、幸せに暮らせるはずだった。

 はずだったのだ。

 

 

 

 

 

 ーーロウファンの妹が、自らの意志で行方をくらませるまでは。

 ロウファンは、妹の失踪を知った時、彼女が何のために、どこに行ったのかわかってしまった。

 彼女は。

 

 

「……ふざけるな」

 

 

 故郷に帰ったのだ。

 

 

「ふざけるなあ!」

 

 

 --山の神、【螺神盤 スピンドル】の生贄になるために。

 そう、それを防ぐことこそが、ロウファンの目的。

 親もなく、体の弱い彼女が、間違いなく真っ先に生贄にされるとわかっていたから。

 だから金を稼いで、仕送りをし、定期的に様子を見に行った。

 「妹を殺したら、金はやらない」というメッセージを集落の者たちに伝えた。

 そして、満を持して妹をようやくアムニールに迎えたというのに。

 

 

「絶対、死なせねえ」

「WOON」

 

 

 彼女の部屋には、彼女宛の手紙が残されていた。

 内容は、「生贄として、集落の子供を差し出すことが決まった。代わってやってはくれないか」というものだった。

 ロウファンは、彼女宛の手紙を読むのはプライバシーの侵害だし、危険物が入っているわけでもないから、検閲しなくてもいいだろう、と考えていた過去の自分を殴りたかった。

 彼は考えた。

 彼女が自分の意志で動いている以上、彼女を止めることはできない。

 ならば、【スピンドル】を殺すしかない。

 ロウファンは、一人ではどうにもならないと考え、誰かの力を借りようと思った。

 しかし、誰も手を貸してはくれなかった。

 【妖精女王】や【泥将軍】ルーピッドは、「国を守る立場として、王国との国境の防壁として利用できる、【スピンドル】は討伐できない」「生贄は、国のための必要な犠牲だ」と、冷たく言い放った。

 【幻姫】サン・ラクイラと【神器造】ルナティックは、ちょうど折悪く、国から任務を受けて動いており、連絡が取れなかった。

 【杖神】ケイン・フルフルと【修羅王】イオリ・アキツキに至っては、それぞれ、神話級<UBM>討伐直後にレジェンダリアを出奔しており、どこにいるかさえわからない。

 

 

 結局彼にできたのは、騎獣とともに、駆け付けることだけだった。

 そうして。

 この上なく、急いで。

 バフスキルをありったけかけて。

 騎獣にも「ポーション」を振りかけながら急いだ。

 騎獣である、【ハイエンド・ハウリングウルフ】もまた、幼い家族のために全力で走った。

 誰よりも速く、レジェンダリア最速のスピードで駆け付けた彼等が見たものは。

 

 

「……あ」

 

 

 ちょうど最後の生贄が、妹が、食い殺された瞬間だった。

 

 

『ウマカッタ』

『ソウダナ』

『泣キ叫ブ顔ト声ガ、楽シカッタ』

 

 

 そんな戯言を口にする、円盤の声が遠くから聞こえた。

 

 

「殺してやる!」

「WOOOOOOOOOOOON!」

 

 

 一人と一頭は、山の神に戦いを挑んだ。

 ジョブスキルを、最上位のモンスターとしての力を、戦いの果て得た特典武具をはじめとした装備やアイテムを、すべてこの戦いに投じた。

 ……そのわずか一分後、戦いは、決着した。

 【超騎兵】の座が、空位に戻るという形で。

 

 

 しかし、ロウファンは、そこでは終わらなかった。

 それは、いくつかの鍵が起こした出来事だった。

 

 

 一つ目の鍵は、()

 ロウファンの就いている【超騎兵】には、HP回復効果のあるジョブスキルがあった。

 そのスキルを生かすために、回復する前に傷痍系状態異常等で死ぬことを防ぐために、彼は【殿兵】というジョブに就き、《ラスト・スタンド》というスキルを取得していた。

 

 

 《地形回転》で一人と一頭のブローチを砕かれて、敗北を確信し。 

 《生命回転》で、破裂して死ぬ刹那、《ラスト・スタンド》が発動。

 彼はせめて最後の家族を守ろうとして、【ハイエンド・ハウリングウルフ】を《解放》した。

 しかしながら、解放されたモンスターもまた、《空間回転》によって、死亡した。

 死後、ドロップアイテムとして【全身骨格(・・・・)】を残して。

 それは、ありえないはずだった。

 テイムモンスターは、ドロップアイテムにはならない。

 【ハイエンド・ハウリングウルフ】の力量を考えれば、野にあれば<UBM>に認定されてもおかしくない。

 解放された直後に死んだがゆえに起こった、運命のいたずらともいえる偶然。

 

 

 二つ目は、怨念。

 【スピンドル】の周囲には、多くの怨念があった。

 かつて、食い殺された、数多の子供たちの怨念。

 子供たちを救うためか、あるいは己の力を試すためか、【スピンドル】に敗れた武芸者の怨念。

 何より、目の前で家族を殺されたことで生まれた、新鮮な怨念。

 これらが、骨格に宿り、アンデッドと化した。

 

 

 そして三つ目は、世界(・・)だった。

 この世界の管理者が、その特異性から、ソレを<UBM>として認定。

 【霊骨狼狼 ロウファン】が誕生したのである。

 

 

 ◇◆

 

 

 それから、事情をルナティックが知ったのは【霊骨狼狼 ロウファン】が誕生してから一週間後のことである。

 彼は急いでそこまで足を運び、【ロウファン】を封印して、帰還した。

 放置しておけば、負けるのは【ロウファン】のほうだとわかっていたから。

 それから二十年間、ルナティックはかつての仲間を封じ続けた。

 そして今、【ロウファン】は解き放たれた。

 

 

 ◇◆

 

 

 山の神に蹂躙された、人の怨念と、獣の骨で作られたモンスター、それが【ロウファン】である。

 そんな【ロウファン】の目的は、強者打破である。

 自分たちをあざ笑い、踏みにじり、殺した存在と同じような、圧倒的強者を倒すために、【ロウファン】は、彼を動かす怨念たちの総意として動き続ける。

 ゆえに、【ロウファン】の関心は、近くにある最も強い気配に向いていた。

 すなわち、レジェンダリア最強の人類、【妖精女王】。

 彼女を、圧倒的強者への「復讐」を求めて、【ロウファン】はアムニールへ入ろうとしていた。

 

 

 To be continued

 

 

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