<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
さすがに更新が途切れると思いますが、これからもよろしくお願いします。
感想、お気に入り登録、誤字報告など大変ありがたく思っています。
追記
《ラスト・スタンド》周辺のもろもろを修正。
■【霊骨狼狼 ロウファン】について
【ロウファン】の素体となった、ロウファンという男は、レジェンダリア北部……王国との国境近くの小さな集落に生を受けた。
彼らは人狼種の亜人であり、集落で暮らす、他の人々もそうであった。
両親を早くに亡くし、残されたものは、生まれたばかりの妹と、もう一つ。
両親が番犬として飼っていた、一体の狼型のテイムモンスターであった。
ロウファンは生きていくため、そして妹を養うため、彼は身一つで、否、身二つで成り上がることを決意した。
……そうでなければ、この集落で生きていくことはできないと知っていたから。
彼は、アムニールまで出稼ぎに行き、ジョブに就き、冒険者となった。
才能があったのか、彼は頭角を現していった。
誰ともパーティを組まないこともあって、ロウファンを疎むものも多かったが、それでも彼はそれすら乗り越えた。
◇
そうして、狩りをしてレベルを上げ、技を磨き、闘技場で決闘をして金を稼ぎ、稼いだ金を仕送りする。
そんな生活を数年ほど続けたのち、彼らは大きく変わった。
騎兵系統超級職ーー【超騎兵】の座に就いたのである。
同時期に、テイムモンスターも【ハイエンド・ハウリングウルフ】、最上位純竜クラスモンスターへと成り上がっていた。
そうして、彼は【妖精女王】の目に留まり、国に仕える立場となった。
その後、彼はルナティック達とともに、”神殺の六”として様々な仕事をこなし、生涯金銭に困らず生きていけるほどの金銭を手に入れた。
その時、彼は軍を退役し、妹をアムニールに呼んだ。
ロウファンの妹は生まれつき病弱だったが、心根の優しい少女だった。
妹に心配をかけたくなかったがために、今までほとんどあっていなかったが、もう働く必要すらなくなった今なら、問題ないと考えた。
だから、彼らはそのまま、幸せに暮らせるはずだった。
はずだったのだ。
ーーロウファンの妹が、自らの意志で行方をくらませるまでは。
ロウファンは、妹の失踪を知った時、彼女が何のために、どこに行ったのかわかってしまった。
彼女は。
「……ふざけるな」
故郷に帰ったのだ。
「ふざけるなあ!」
--山の神、【螺神盤 スピンドル】の生贄になるために。
そう、それを防ぐことこそが、ロウファンの目的。
親もなく、体の弱い彼女が、間違いなく真っ先に生贄にされるとわかっていたから。
だから金を稼いで、仕送りをし、定期的に様子を見に行った。
「妹を殺したら、金はやらない」というメッセージを集落の者たちに伝えた。
そして、満を持して妹をようやくアムニールに迎えたというのに。
「絶対、死なせねえ」
「WOON」
彼女の部屋には、彼女宛の手紙が残されていた。
内容は、「生贄として、集落の子供を差し出すことが決まった。代わってやってはくれないか」というものだった。
ロウファンは、彼女宛の手紙を読むのはプライバシーの侵害だし、危険物が入っているわけでもないから、検閲しなくてもいいだろう、と考えていた過去の自分を殴りたかった。
彼は考えた。
彼女が自分の意志で動いている以上、彼女を止めることはできない。
ならば、【スピンドル】を殺すしかない。
ロウファンは、一人ではどうにもならないと考え、誰かの力を借りようと思った。
しかし、誰も手を貸してはくれなかった。
【妖精女王】や【泥将軍】ルーピッドは、「国を守る立場として、王国との国境の防壁として利用できる、【スピンドル】は討伐できない」「生贄は、国のための必要な犠牲だ」と、冷たく言い放った。
【幻姫】サン・ラクイラと【神器造】ルナティックは、ちょうど折悪く、国から任務を受けて動いており、連絡が取れなかった。
【杖神】ケイン・フルフルと【修羅王】イオリ・アキツキに至っては、それぞれ、神話級<UBM>討伐直後にレジェンダリアを出奔しており、どこにいるかさえわからない。
結局彼にできたのは、騎獣とともに、駆け付けることだけだった。
そうして。
この上なく、急いで。
バフスキルをありったけかけて。
騎獣にも「ポーション」を振りかけながら急いだ。
騎獣である、【ハイエンド・ハウリングウルフ】もまた、幼い家族のために全力で走った。
誰よりも速く、レジェンダリア最速のスピードで駆け付けた彼等が見たものは。
「……あ」
ちょうど最後の生贄が、妹が、食い殺された瞬間だった。
『ウマカッタ』
『ソウダナ』
『泣キ叫ブ顔ト声ガ、楽シカッタ』
そんな戯言を口にする、円盤の声が遠くから聞こえた。
「殺してやる!」
「WOOOOOOOOOOOON!」
一人と一頭は、山の神に戦いを挑んだ。
ジョブスキルを、最上位のモンスターとしての力を、戦いの果て得た特典武具をはじめとした装備やアイテムを、すべてこの戦いに投じた。
……そのわずか一分後、戦いは、決着した。
【超騎兵】の座が、空位に戻るという形で。
しかし、ロウファンは、そこでは終わらなかった。
それは、いくつかの鍵が起こした出来事だった。
一つ目の鍵は、
ロウファンの就いている【超騎兵】には、HP回復効果のあるジョブスキルがあった。
そのスキルを生かすために、回復する前に傷痍系状態異常等で死ぬことを防ぐために、彼は【殿兵】というジョブに就き、《ラスト・スタンド》というスキルを取得していた。
《地形回転》で一人と一頭のブローチを砕かれて、敗北を確信し。
《生命回転》で、破裂して死ぬ刹那、《ラスト・スタンド》が発動。
彼はせめて最後の家族を守ろうとして、【ハイエンド・ハウリングウルフ】を《解放》した。
しかしながら、解放されたモンスターもまた、《空間回転》によって、死亡した。
死後、ドロップアイテムとして【
それは、ありえないはずだった。
テイムモンスターは、ドロップアイテムにはならない。
【ハイエンド・ハウリングウルフ】の力量を考えれば、野にあれば<UBM>に認定されてもおかしくない。
解放された直後に死んだがゆえに起こった、運命のいたずらともいえる偶然。
二つ目は、怨念。
【スピンドル】の周囲には、多くの怨念があった。
かつて、食い殺された、数多の子供たちの怨念。
子供たちを救うためか、あるいは己の力を試すためか、【スピンドル】に敗れた武芸者の怨念。
何より、目の前で家族を殺されたことで生まれた、新鮮な怨念。
これらが、骨格に宿り、アンデッドと化した。
そして三つ目は、
この世界の管理者が、その特異性から、ソレを<UBM>として認定。
【霊骨狼狼 ロウファン】が誕生したのである。
◇◆
それから、事情をルナティックが知ったのは【霊骨狼狼 ロウファン】が誕生してから一週間後のことである。
彼は急いでそこまで足を運び、【ロウファン】を封印して、帰還した。
放置しておけば、負けるのは【ロウファン】のほうだとわかっていたから。
それから二十年間、ルナティックはかつての仲間を封じ続けた。
そして今、【ロウファン】は解き放たれた。
◇◆
山の神に蹂躙された、人の怨念と、獣の骨で作られたモンスター、それが【ロウファン】である。
そんな【ロウファン】の目的は、強者打破である。
自分たちをあざ笑い、踏みにじり、殺した存在と同じような、圧倒的強者を倒すために、【ロウファン】は、彼を動かす怨念たちの総意として動き続ける。
ゆえに、【ロウファン】の関心は、近くにある最も強い気配に向いていた。
すなわち、レジェンダリア最強の人類、【妖精女王】。
彼女を、圧倒的強者への「復讐」を求めて、【ロウファン】はアムニールへ入ろうとしていた。
To be continued