<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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日刊三十一位、二万UA、評価1000突破など、いつの間にか達成してました。
ありがとうございます。
ストックが最早ないので、これからは三日に一回ほどを目途にやっていくつもりです。
これからもよろしくお願いします。



地を進む狼、相対するは天翔ける蛇 其の六

□【闘牛士】サンラク

 

 

『……なんともまあ』

 

 

 俺はティックから事の真相を聞かされ、何とも言えない気持ちになっていた。

 話を聞く間は、レベル上げができなかったって言うのが一番俺の中ではでかいのである。

 酸が地面に落ちる音とメタルなスライムを溶かす音がうるさくて、聞こえなくなるんだよなあ。

 しかも、何か空気的にスキップできないっぽいし。

 聞いてはいたんだが、なんというか攻略の手掛かりになりそうな情報はいくつかあった気がするし、まあいいか。

 気になることもあったし、聞いておくか。

 

 

『あの』

「なんだ?」

『さっき、昔のほうが今より強いって言ってたじゃないですか。でも、人間の時負けた相手に、負けてなかったんですよね?【ロウファン】は』

 

 

 ティックの話では、【超騎兵】がどの程度持ったかどうかはわからないらしいが、アンデッドとなった以上、敗北し、死亡したことには疑いはない。

 いや、【ロウファン】の強みは、あの修復能力にある。

 だとすると。

 

 

「ロウファンが、生きてた時なら、俺はあいつを封印できなかっただろうな。おそらく、アンデッドになったことで、ジョブスキルが失われ、AGIをはじめとしたステータスも落ちたんだろう。加えて、まず間違いなく技術も落ちていやがるな」

 

 

 淡々と語るティックの目は、奇妙だった。

 悲しみと、懐かしさと、落胆と、様々な感情が混ざり合った複雑な目。

 見ていると、正直違和感がある。

 いや、その表現もおかしいか。

 まるで、普通のものを、色眼鏡で見てしまっているから変に映るような、そんな感覚があるのだ。

 もともと、ティアンたちに対して感じていたことではあるが。

 

 

 それともう一つ。

 考えねばならないことがある。

 アンデッドには、二種類の分類がある。

 前世の影響を受けている奴と、受けてないやつだ。

 前者は、往々にして強力なアンデッドであることが多い。

 生前の記憶や技術があったり。

 アンデッドになる前からあったスキルを使ってきたり。

 まあ、おそらく雑魚アンデッドにまで背景を用意するのがコストパフォーマンス的に無理があるということなんだろうけど。

 しかし、強力であるはずの【ロウファン】は今のところそのような様子はない。

 ティックから聞いた話もそうだし、掲示板から得た情報もそうだ。

 俺以外にも、それなりの人数のプレイヤーが、アムニール周辺で奴に遭遇。

 その多くが、デスペナルティになっているらしい。

 

 

『そんな目撃情報なんですが、気になることはあります』

 

 

 

 一部の例外は、あってすぐ逃げた手合いらしい。

 ……思えば、あいつ俺に対しても、積極的ではなかった。

 俺を敵とも、餌ともみなしていない。

 ただ、煩わしい羽虫を追い払うかのような態度だった。

 俺やプレイヤーには興味を示さず、【スピンドル】なる<UBM>や【メイル・ハイドラゴン】には、むしろ好戦的だった。

 その違いは、おそらく。

 

 

『強い奴にしか、奴は興味を示していない』

「正解だ」

 

 

 俺の仮説を、ティックは肯定した。

 結局、その日はかなりレベルが上がり、カンスト目前というところまで上昇した。

 そこでルナティックが、今日はここでやめておこう、と言い出したので狩りは終了となった。

 リアルの問題もあるので、俺は一度ログアウトすることにした。

 

 

 □【神器造】ルナティック

 

 

 サンラクがログアウトした直後、彼はしばらくそこにたたずんでいた。

 サンラクのレベルアップはうまくいっている。

 メタル系のスライムの経験値の多さに加えて、彼がサンラクに経験値ブーストのアイテムを使っていたからだ。

 それを切らしてしまったのが、切り上げた理由である。

 ちなみに経験値ブーストのアイテムは値が張るが、メタル系スライムの値段に比べれば、誤差の範疇だ。

 パワーレベリングは、本来技術の向上を妨げるので、やらないほうがいいのだが、サンラクに限っていえば問題ない、とティックは考えていた。

 さすがにイオリやケインのように【神】に届くほどの技量ではないが、現時点で既に戦闘系超級職の域に達している。

 槍と双剣では、比較が難しいが、武器の扱いではかつての、全盛期のロウファンを上回っているだろうと、ルナティックは考えた。

 

 

「とはいえ、あいつらの強みはそこじゃなかった」

 

 

 ”狼王”の強みは、騎乗や槍などの技術や、超級職として積み上げた、高いレベルやステータス……などではない。

 彼らの真価は、両者に結ばれた絆だった。

 それがない今、おそらく人でなくなった【ロウファン】ならサンラクでも勝てる。

 あるいは、他の<マスター>でも勝てるかもしれない。

 あるいは、【妖精女王】や【弓神】、【双神】、【蟲将軍】といった、ティアンが討伐するのかもしれない。

 それでもいいと、ルナティックは思う。

 彼は、【ロウファン】の行動原理を理解している。

 いまだ健在の【スピンドル】のいる北ではなく、このアムニールにとどまっている時点で、攻撃対象が「圧倒的強者」にすり替わってるのだろう、と。

 かつての彼の精神は、すでに残っていない。

 自然発生の……特に怨念式のアンデッドにはよくあることだ。

 

 

「誰でもいい。だから、早く」

 

 

 --終わらせてやってくれ。

 そう思いながら、彼は、転移魔法のマジックアイテムを起動する。

 使用者の魔力を消費する上に、使用者以外は転移できない代物であり、サンラクといるときは使えなかったが、一人でアムニールに帰る分には問題がない。

 

 

「ただいま」

 

 

 工房に戻ったティックは、あたりを見渡したが、ステラは帰ってきていないようだった。

 ただ、机の上に一通の手紙が置いてあるだけだった。

 彼女に着けている【テレパシーカフス】から逆探知すると、南方の、レベル上げがしやすい狩場に行っていることがわかった。

 どうして、とは思わなかった。

 

 

「お前にゃ無理だって、あれほど言ってるのにな」

 

 

 そんな苦笑がこぼれる。

 レベルを上げ、超級職へ至ろうと無理をする娘を止めたいと思ったし、実際に諫めもした。

 それは幻術師系統への適性が妻ーー先代の【幻姫】よりも劣っていたというのもあるし、純粋に父親として、危ないことをしてほしくないという気持ちもあった。

 しかし。

 

 

「俺がサンラクに声をかけたせいで焦ってるのか」

 

 

 見込みのあるものに対して武具を作り、それをただで渡すという行為は彼にとってさほど珍しいことではない。

 ロウファンをはじめとした仲間はもちろん、多くの武芸者相手にルナティックはそんなことをやっている。

 もっとも、最近自身を訪ねてきた人馬種と牛頭種と鬼人種のハーフの二人組に対して、「お前らに武器を持つ資格はねえ」と突っぱねたように、相手を多少選びはするが。

 だが、ステラにすら教えなかった狩場を教えてレベルアップに協力するなど、特別扱いしていることが、焦りのきっかけになっているのかもしれなかった。

 手紙を、手に取った。

 

 

「なるほど」

 

 

 そこには、【ロウファン】を賞金首として認定したことが書いてあった。

 誰であっても、誰かが【ロウファン】を終わらせるのは、もはや確定しつつあった。

 

 

 □陽務楽郎

 

 

 ログアウトすると、ちょうど玲はインしたままだったので、栄養を補給しつつ、端末で情報を集める。

 シャンフロではそこまで積極的に情報収集していなかったが、デンドロはまだ情報も碌にないうえに、何よりクソゲーだ。

 情報を得ておかないと、何が起こるかわからないからなあ。

 まあ、情報を得ていても、何が起こるのかわからんのがクソゲーだからな。

 一番わかりやすいのは幕末だな。

 初心者をリスキルしまくるために、プレイヤーが結託して、和気あいあいとしているかのように擬態してるのやばすぎるんだよなあ。

 実際、京ティメットはあっさり騙されてたわけだし。

 ああ、そういえばこの間もまた、ランカーごと爆散させたからブチギレてたなあ。

 菓子パンとライオットブラッドがおいしいなあ!

 閑話休題。

 ふむふむ、「アルター王国にて宗教団体<月世の会>本部、設立」、ペンシルゴンが言ってたやつだな。

 レジェンダリア国内のほうが、優先度高いよな。

 他には、「レジェンダリアにて児童慈善団体クラン<YLNT倶楽部>設立、同志求む!」「アムニールにて乱□パーティやります。イキたい人大歓迎!」……本当に、うちの国変態多いよな。

 ほかほか、もっとちゃんとした、真面目な記事はないのか?

 お、これはまじめな記事だな。

 ふむふむ「アムニール周辺の<UBM>討伐隊、参加者募集!」か。

 なるほどなるほど真面目だ真面目、実にいい!

 

 

 ……うん?

 えーと。

 

 

「……これ、まずくね?」

 

 

 To be continued

 

 

 

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