<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
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□陽務楽郎
「というわけで、俺は【ロウファン】の討伐隊に参加するつもりなんだけど、玲も良かったら一緒にどう?」
掲示板で募集の案内を見た後、玲がログアウトしてきたのでそれについて説明し、玲を誘った。
別に討伐隊に必ず参加する、というわけではない。
これはあくまでも保険だ。
討伐隊が行動を起こすまでには、まだしばらくある。
逆を言えば、期間を設けるほどの大規模な討伐隊だ。
加えて、合計レベルが五十以上というラインを設けているので、質もそう低くはないだろう。
【ロウファン】が討伐される可能性は高い。
となると、取るべき選択肢は限られてくる。
討伐隊に参加するか。
討伐隊が本格的に動く前に、【ロウファン】を探し出して殺すか。
後者を選びつつ、探すのに失敗した時のための、最後の保険として、討伐隊に参加の打診だけはしておいたのだ。
「ごめんなさい。参加したいのはやまやまなんですが、難しいかもしれません」
「マジで?」
何でも、割と遠方まで狩りに行ったらしく、短期間では戻れるかどうかわからないそうだ。
行きは、同行者がマジックアイテムを使っていったらしいが、帰りには使えないらしい。
普通、帰りにだけ使えるのが相場だと思うんだが、まあそういうこともあるだろう。
「なるべく早く、移動しますので」
「うん、わかった。玲のこと、信じて待ってるから」
「ふきゅっ!」
「玲?」
また顔色がやばいけど、大丈夫か?
「いえ、大丈夫、です」
「そう?」
「大丈夫です。ーー
「あっ、はい」
何か、すごい迫力だ。
一瞬とはいえ、こないだの修羅場と、同等レベルだったぞ。
俺とゲームをするのを、本当に楽しみにしてくれているらしい。
なら、俺もやるべきこともやるだけだ。
□【闘士】サンラク
『そういう事情で、急いでレベル上げしないといけなくなりました、旦那』
「なるほどなあ、わかったぜ」
鉱山の地下数千メートル、スライムの巣窟にログインした俺は、ティックに事情を説明した。
「そういうことなら、俺は戻るぜ」
『え?』
「さっさとお前の武器を作らなきゃならねえんでな。ここでぼんやりしてるわけにもいかねえ」
『ありがとうございます』
「気にすんな。素材はメインとして、スライムのドロップメインを使うしな」
期待が重い……。
ドロップアイテムまで回してくれるって、本当にティックにとっては利益ゼロなのでは?
◇
ティックは、すぐに転移のマジックアイテムで工房に戻った。
……正直、俺もあれで移動できたら楽だったんだがな。
なんでも、彼しか転移できない仕様らしく、また特殊装備品の類も大きすぎて運べないので、俺との移動には使えなかったらしい。
あと、強酸だけではなく、経験値をブーストしてくれる使い捨てアイテムもくれた。
ほんとに至れり尽くせりだな。
そうまでして【ロウファン】を俺に倒してほしいのか。
俺の、クソゲー仕込みの技術を見込んでのことか。
あるいは……他に何らかの目的があるのか。
……まあ、どっちでもいいや。
レベル上げの時間だぜ!
◇
いやー上がった上がった。
二職目に【闘士】を選んだんだが、割ともうカンスト寸前だ。
やべーよメタルなスライム。
これ、もしかして最速でカンストできるのでは?
《装備拡張》をはじめとした闘士系統のスキルや、武器系のスキルも取得した。
装備スロットが増えるのは、俺にとっては非常にありがたい。
おまけに【闘牛士】のスキルも全部使えるし。
「とはいえ、この辺が潮時かな」
こちらの時間で三日間ほど、この狩場でレベル上げをしてきた。
びっくりするぐらいレベルが上がってきたし、これならいけるかもしれない。
後は、ティックの武器を受け取るだけかな。
いったんログアウトして、またアムニールにログインすればいいか。
そうして俺は、いったんログアウトしてからティックのもとに向かい、準備を整えた。
◇◇◇
□【闘士】サンラク
さて、ログインしたはいいが、待ち合わせ場所はどこだったかな。
えーと、マップマップ。
デンドロのマップは、プレイヤー自身が歩いて埋めるか、あるいは地図を買って埋めるらしい。
ただし、例外的に首都の地図だけは最初から与えられている。
……まあ、ティックの工房、民家ってことになってるっぽいけど。
お、あそこに人が集まってるっぽいな。
大体三十人ってところかな。
あれが討伐隊かあ。
結局、レベル上げとかしてたら、探す余裕なかったというね。
「みんな、よろしく!俺がパーティーリーダーのキングだ」
参加者たちの前に現れたのは、魔術師の服装をした、二枚目の男。
……まあ、キャラメイクできるから大体のやつは、二枚目なんだけどね。
例外は、俺含めた不審者みたいな外見のやつなんだが……そういえば、結構いるよなレジェンダリア。
こないだも、緑色の服着て仮面付けてる不審者とか、半裸のレスラー風の男とか、半裸のフィガロとか見かけたし。
「今日は、集まってくれてどうもありがとう!」
キングの後ろには、三人の人間がいる。
キングと同じく、魔術師風の格好をした、長い髪の女。
生産職と思しき、つなぎを着て眼鏡をかけた女。
いかにも司祭風の見た目をした、おそらくは支援職の男。
キングの取り巻きっていうか、仲間かな?
この四人が、俺達への募集をかけた感じか?
その後、キングは後ろに控える三人を紹介した。
名前は、それぞれMU、シンカー、ガッツというらしい。
「それでは、こうして集まってもらった理由を説明しよう!集まったほうが、お互いのためになるからさ!」
どういうこと?
と一瞬おもったが、どうも話を聞くと納得のできる理由だった。
どうも、メンバーの一人である【指揮官】ガッツの<エンブリオ>に由来するらしい。
彼の<エンブリオ>の固有スキルは、パーティー枠の拡張なのだとか。
俺は知らなかったが、支援系スキルの多くはパーティーメンバーと自分にしか使えないらしい。
なるほど、いかにも支援職らしい恰好をしているだけはある。
「ほかのメンバーも、多数とパーティを組むことで、価値を見出せるビルドのメンバーなんだよ!」
なるほど。
単体では強くない、四人だけでもそこまで強くないメンバーだから、あるいはだからこそ、こうして募集を呼び掛けたわけだ。
これは心強い。
いまだに俺たちは、ステータスが圧倒的に不足してるからな。
そういう支援職や、支援系の<エンブリオ>の存在はありがたい。
まあ、合計レベル五十以上が参加できるラインらしいから、まだこの集団は比較的ましだろうけどな。
「作戦といえるものは特にない!僕たちが君たちを強化するから、あとはパーティー単位なり、個人なり好きに動いてくれていい!」
うーん。
意外と指示そのものは適当だな。
誰か指揮役が必要なんだが、まあでも初対面の相手を下手に動かそうとするより、好きにやらせたほうがまだましってのはわかる。
俺も、そのほうが動きやすいし。
「そこの不思議な鳥頭さん、ちょっといいかな?」
『なんでしょう?』
「良かったら、このアクセサリーはいかが?」
声をかけてきたのは、つなぎの服を着た眼鏡の女。
名前はえーと、シンナーじゃなくて、シンカーだったか。
はなはだ失礼な物言いだが、アクセサリー?
言われてみてみると、彼女が持っているのは、黒と赤の二色で構成された、首輪だった。
何というか、すごい色だな。
『これはどういう効果で?』
「HPが回復するよ。あと、ステータスも上がる」
周りを見ると、どうやら俺以外にも勧めていたらしく、何人かが首輪をつけていた。
ただまあ。
『すいません。俺、もうアクセサリー埋まっちゃってるんで』
「え?そうなんだ……。じゃあ、こっちのマントはどうかな?アクセサリーと全く同じ効果が」
『すいません。<エンブリオ>の固有スキルの関係で、防具付けられないんですよ』
「……ええ?あ、そういう……」
おい、ちょっと待て何に納得したんだあんた。
確かに<エンブリオ>は、<マスター>のパーソナルを反映しているのかもしれないけどさ。
別に俺、露出狂とかじゃないからな?
そんな「納得したけどそれはそれとしてうわあ……」みたいな顔で、距離をとるんじゃありません!
「ま、いいけどな」
HP自動回復とステータスアップは便利だが、正直俺にはあまり意味がない。
加えて、アクセサリーは、ティックにもらったものが複数あるから変えようがないのだ。
高レベルの《看破》のついた、モノクル。
聖属性による与ダメージを引き上げる効果のある、指輪。
そして、値段が怖くて聞けない二つのアクセサリー。
状態異常を確実に防ぐ代わり、確率判定で壊れる【健常のカメオ】。
致命ダメージを確実に防ぐ代わり、確率判定で壊れる【救命のブローチ】。
はっきり言ってトンでもアイテムすぎる。
使い捨てのアイテムばっかりで、期待が重い!
「見えてきたね」
キングは、見た目通り魔術師らしく、後方に陣取っている。
よく見ると、キングも、シンカーがさっき勧めてきたアクセサリーをつけている。
あれは、ブレスレットか?
逆に、シンカーや、あとの二人はつけていないようだが。
と、それどころじゃないな。
「WOOON」
「ようやく会えたな、クソワンコ」
悠然と、自然体で歩いてきた【ロウファン】が、俺の目に映っている。
見せてやるよ。
あの時とは、俺は何もかもが違うってことを。
レベルやステータスも。
お前に関する情報も。
そして、<エンブリオ>も。
「リベンジマッチだ!」
「WOOOOOOOOOOOON!」
俺と、【霊骨狼狼 ロウファン】の、最後の戦いが、始まった。
To be continued
モブマスターの設定考えるの、かなりしんどいけどちょっと楽しいですね。