<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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先日、日刊ランキング21位とかだったらしいです。
ありがとうございます。
これからも応援よろしくお願いします。


地を進む狼、相対するは天翔ける蛇 其の七

 □陽務楽郎

 

 

「というわけで、俺は【ロウファン】の討伐隊に参加するつもりなんだけど、玲も良かったら一緒にどう?」

 

 

 掲示板で募集の案内を見た後、玲がログアウトしてきたのでそれについて説明し、玲を誘った。

 別に討伐隊に必ず参加する、というわけではない。

 これはあくまでも保険だ。

 討伐隊が行動を起こすまでには、まだしばらくある。

 逆を言えば、期間を設けるほどの大規模な討伐隊だ。

 加えて、合計レベルが五十以上というラインを設けているので、質もそう低くはないだろう。

 【ロウファン】が討伐される可能性は高い。

 となると、取るべき選択肢は限られてくる。

 討伐隊に参加するか。

 討伐隊が本格的に動く前に、【ロウファン】を探し出して殺すか。

 後者を選びつつ、探すのに失敗した時のための、最後の保険として、討伐隊に参加の打診だけはしておいたのだ。

 

 

「ごめんなさい。参加したいのはやまやまなんですが、難しいかもしれません」

「マジで?」

 

 

 何でも、割と遠方まで狩りに行ったらしく、短期間では戻れるかどうかわからないそうだ。

 行きは、同行者がマジックアイテムを使っていったらしいが、帰りには使えないらしい。

 普通、帰りにだけ使えるのが相場だと思うんだが、まあそういうこともあるだろう。

 

 

「なるべく早く、移動しますので」

「うん、わかった。玲のこと、信じて待ってるから」

「ふきゅっ!」

「玲?」

 

 

 また顔色がやばいけど、大丈夫か?

 

 

「いえ、大丈夫、です」

「そう?」

「大丈夫です。ーー必ず(・・)追いつきます(・・・・・・)から」

「あっ、はい」

 

 

 何か、すごい迫力だ。

 一瞬とはいえ、こないだの修羅場と、同等レベルだったぞ。

 俺とゲームをするのを、本当に楽しみにしてくれているらしい。

 なら、俺もやるべきこともやるだけだ。

 

 

 □【闘士】サンラク

 

 

『そういう事情で、急いでレベル上げしないといけなくなりました、旦那』

「なるほどなあ、わかったぜ」

 

 

 鉱山の地下数千メートル、スライムの巣窟にログインした俺は、ティックに事情を説明した。

 

 

「そういうことなら、俺は戻るぜ」

『え?』

「さっさとお前の武器を作らなきゃならねえんでな。ここでぼんやりしてるわけにもいかねえ」

『ありがとうございます』

「気にすんな。素材はメインとして、スライムのドロップメインを使うしな」

 

 

 期待が重い……。

 ドロップアイテムまで回してくれるって、本当にティックにとっては利益ゼロなのでは?

 

 

 ◇

 

 

 ティックは、すぐに転移のマジックアイテムで工房に戻った。

 ……正直、俺もあれで移動できたら楽だったんだがな。

 なんでも、彼しか転移できない仕様らしく、また特殊装備品の類も大きすぎて運べないので、俺との移動には使えなかったらしい。

 あと、強酸だけではなく、経験値をブーストしてくれる使い捨てアイテムもくれた。

 ほんとに至れり尽くせりだな。

 そうまでして【ロウファン】を俺に倒してほしいのか。

 俺の、クソゲー仕込みの技術を見込んでのことか。

 あるいは……他に何らかの目的があるのか。

 ……まあ、どっちでもいいや。

 レベル上げの時間だぜ!

 

 

 ◇

 

 

 いやー上がった上がった。

 二職目に【闘士】を選んだんだが、割ともうカンスト寸前だ。

 やべーよメタルなスライム。

 これ、もしかして最速でカンストできるのでは?

 《装備拡張》をはじめとした闘士系統のスキルや、武器系のスキルも取得した。

 装備スロットが増えるのは、俺にとっては非常にありがたい。

 おまけに【闘牛士】のスキルも全部使えるし。

 

 

「とはいえ、この辺が潮時かな」

 

 

 こちらの時間で三日間ほど、この狩場でレベル上げをしてきた。

 びっくりするぐらいレベルが上がってきたし、これならいけるかもしれない。

 後は、ティックの武器を受け取るだけかな。

 いったんログアウトして、またアムニールにログインすればいいか。

 そうして俺は、いったんログアウトしてからティックのもとに向かい、準備を整えた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □【闘士】サンラク

 

 

 さて、ログインしたはいいが、待ち合わせ場所はどこだったかな。

 えーと、マップマップ。

 デンドロのマップは、プレイヤー自身が歩いて埋めるか、あるいは地図を買って埋めるらしい。

 ただし、例外的に首都の地図だけは最初から与えられている。

 ……まあ、ティックの工房、民家ってことになってるっぽいけど。

 お、あそこに人が集まってるっぽいな。

 大体三十人ってところかな。

 あれが討伐隊かあ。

 結局、レベル上げとかしてたら、探す余裕なかったというね。

 

 

「みんな、よろしく!俺がパーティーリーダーのキングだ」

 

 

 参加者たちの前に現れたのは、魔術師の服装をした、二枚目の男。

 ……まあ、キャラメイクできるから大体のやつは、二枚目なんだけどね。

 例外は、俺含めた不審者みたいな外見のやつなんだが……そういえば、結構いるよなレジェンダリア。

 こないだも、緑色の服着て仮面付けてる不審者とか、半裸のレスラー風の男とか、半裸のフィガロとか見かけたし。

 

 

「今日は、集まってくれてどうもありがとう!」

 

 

 キングの後ろには、三人の人間がいる。

 キングと同じく、魔術師風の格好をした、長い髪の女。

 生産職と思しき、つなぎを着て眼鏡をかけた女。

 いかにも司祭風の見た目をした、おそらくは支援職の男。

 キングの取り巻きっていうか、仲間かな?

 この四人が、俺達への募集をかけた感じか?

 その後、キングは後ろに控える三人を紹介した。

 名前は、それぞれMU、シンカー、ガッツというらしい。

 

 

「それでは、こうして集まってもらった理由を説明しよう!集まったほうが、お互いのためになるからさ!」

 

 

 どういうこと?

 と一瞬おもったが、どうも話を聞くと納得のできる理由だった。

 どうも、メンバーの一人である【指揮官】ガッツの<エンブリオ>に由来するらしい。

 彼の<エンブリオ>の固有スキルは、パーティー枠の拡張なのだとか。

 俺は知らなかったが、支援系スキルの多くはパーティーメンバーと自分にしか使えないらしい。

 なるほど、いかにも支援職らしい恰好をしているだけはある。

 

 

「ほかのメンバーも、多数とパーティを組むことで、価値を見出せるビルドのメンバーなんだよ!」

 

 

 なるほど。

 単体では強くない、四人だけでもそこまで強くないメンバーだから、あるいはだからこそ、こうして募集を呼び掛けたわけだ。

 これは心強い。

 いまだに俺たちは、ステータスが圧倒的に不足してるからな。

 そういう支援職や、支援系の<エンブリオ>の存在はありがたい。

 まあ、合計レベル五十以上が参加できるラインらしいから、まだこの集団は比較的ましだろうけどな。

 

 

「作戦といえるものは特にない!僕たちが君たちを強化するから、あとはパーティー単位なり、個人なり好きに動いてくれていい!」

 

 

 うーん。

 意外と指示そのものは適当だな。

 誰か指揮役が必要なんだが、まあでも初対面の相手を下手に動かそうとするより、好きにやらせたほうがまだましってのはわかる。

 俺も、そのほうが動きやすいし。

 

 

「そこの不思議な鳥頭さん、ちょっといいかな?」

『なんでしょう?』

「良かったら、このアクセサリーはいかが?」

 

 

 声をかけてきたのは、つなぎの服を着た眼鏡の女。

 名前はえーと、シンナーじゃなくて、シンカーだったか。

 はなはだ失礼な物言いだが、アクセサリー?

 言われてみてみると、彼女が持っているのは、黒と赤の二色で構成された、首輪だった。

 何というか、すごい色だな。

 

 

『これはどういう効果で?』

「HPが回復するよ。あと、ステータスも上がる」

 

 

 周りを見ると、どうやら俺以外にも勧めていたらしく、何人かが首輪をつけていた。

 ただまあ。

 

 

『すいません。俺、もうアクセサリー埋まっちゃってるんで』

「え?そうなんだ……。じゃあ、こっちのマントはどうかな?アクセサリーと全く同じ効果が」

『すいません。<エンブリオ>の固有スキルの関係で、防具付けられないんですよ』

「……ええ?あ、そういう……」

 

 

 おい、ちょっと待て何に納得したんだあんた。

 確かに<エンブリオ>は、<マスター>のパーソナルを反映しているのかもしれないけどさ。

 別に俺、露出狂とかじゃないからな?

 そんな「納得したけどそれはそれとしてうわあ……」みたいな顔で、距離をとるんじゃありません!

 

 

「ま、いいけどな」

 

 

 HP自動回復とステータスアップは便利だが、正直俺にはあまり意味がない。

 加えて、アクセサリーは、ティックにもらったものが複数あるから変えようがないのだ。

 高レベルの《看破》のついた、モノクル。

 聖属性による与ダメージを引き上げる効果のある、指輪。

 そして、値段が怖くて聞けない二つのアクセサリー。

 状態異常を確実に防ぐ代わり、確率判定で壊れる【健常のカメオ】。

 致命ダメージを確実に防ぐ代わり、確率判定で壊れる【救命のブローチ】。

 はっきり言ってトンでもアイテムすぎる。

 使い捨てのアイテムばっかりで、期待が重い!

 

 

「見えてきたね」

 

 

 キングは、見た目通り魔術師らしく、後方に陣取っている。

 よく見ると、キングも、シンカーがさっき勧めてきたアクセサリーをつけている。

 あれは、ブレスレットか?

 逆に、シンカーや、あとの二人はつけていないようだが。

 と、それどころじゃないな。

 

 

「WOOON」

「ようやく会えたな、クソワンコ」

 

 

 悠然と、自然体で歩いてきた【ロウファン】が、俺の目に映っている。

 見せてやるよ。

 あの時とは、俺は何もかもが違うってことを。

 レベルやステータスも。

 お前に関する情報も。

 そして、<エンブリオ>も。

 

 

「リベンジマッチだ!」

「WOOOOOOOOOOOON!」

 

 

 俺と、【霊骨狼狼 ロウファン】の、最後の戦いが、始まった。

 

 

 To be continued

 




モブマスターの設定考えるの、かなりしんどいけどちょっと楽しいですね。
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