<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
□■霊都アムニール周辺・狩場
「なんで、なんでこんなことに?」
シンカーは、そんなことしか言えなかった。
確実に殺したはずだ。
木っ端微塵、どころか欠片が残らぬほどに焼き尽くしたはずだ。
だが現実はどうだ。
突如現れた第二形態とでもいうべきモノによって、リーダーであるキングが殺され。
既に動き出した骨の狼に、MUとガッツが噛み殺された。
こんな不死身の化け物、勝てるはずがない。
こんな理不尽なゲーム、誰も攻略できるはずがない。
「--あ」
次の瞬間、骨の狼に跳ね飛ばされて、シンカーもまたデスペナルティになった。
(やってられるか、こんなクソゲー)
そんなことを、思いながら。
◇◆
『マジでかあ』
サンラクは、それしか言えない。
シンカーやキングのように、訳が分からないゆえの困惑、ではない。
訳が分かっているからこその、感想だ。
『あいつら、二体で一体のパターンかあ。片方潰しても、すぐ再生する奴』
当初、彼は見た目、というか骨格から完全に騎獣がメインだと思っていた。
しかし、それは間違いであることにようやく気付いた。
騎兵であるロウファンと、その騎獣、双方の成れの果てであるのだと、考えた。
『霊体、骨体とでも呼ぶべきなのかね』
彼の、現在の推測は正しい。
高位のアンデッドほど、過去、生前の影響を受けやすい。
精神系状態異常【恐怖】を与える、《狼王咆哮》は【ハイエンド・ハウリングウルフ】の持っていたスキルがもとになっている。
しかし、【霊骨狼狼 ロウファン】には、もう一つだけ、生前に影響を受けたスキルがある。
それこそが、【ロウファン】の不死身の要である、《双狼一体》。
【超騎兵】のパッシブ奥義である、《人騎一体》に影響を受けたスキルである。
【メイル・ハイドラゴン】との戦いで砕かれ、そして先程のキングから受けた聖属性魔法攻撃では、灰も残らぬほどに消し飛ばされた。
それでも、瞬く間に骨体を修復できた破格のスキルだ。
ゆえに、骨体のみ破壊しても、倒せないのである。
……弱体化したように見えるので、今回も含めて攻撃されることも多々あったが。
『さて、まあ、能力が大体わかったところで、やりますか』
いまだレベルは三桁にも達しておらず。
ステータスは、最も高いAGIでさえ、【ロウファン】には遠く及ばない。
『となると、検証すべきは、
こちらに向かってくる、骨体を《配水の陣》を足場にして、空中に逃れる。
すぐ霊体がサンラクを追って、浮遊するが、その動きは遅い。
ただし遅いといっても、骨体と比較しての話である。
サンラクよりは速い。
その体が、サンラクに触れる刹那。
『触んな!』
《瞬間装備》した、銀色の十字剣【シルバー・ブレット】を、霊体に向かって振るった。
聖属性が付与された剣は、霊体型のアンデッドにとっては弱点であり、斬り裂いてダメージを与える。
「WO、WOOOOOOOOON!」
『さて、どう出るかな?』
サンラクが検証したかったのは、『ひょっとして霊体が本体で、こちらを潰せば勝てるのではないか』という仮説だ。
果たしてその仮説は。
「WOON」
『ダメか……』
即座に修復した霊体を見て、その仮説は間違っていると理解した。
それと同時に、サンラクの持っていた【シルバー・ブレット】が砕け散る。
それは、《脱装者》の効果による爆散とは違う。
そもそも、《脱装者》には、武器破壊の効果はない。
これは単純に、終わっただけ。
【シルバー・ブレット】という剣の耐久値を、使い切っただけの話である。
◇◇◇
□三時間前・【闘士】サンラク
「ほらよ、これがお前の剣だ」
そういって、ルナティックが渡したのは、三本の十字剣。
いずれも白銀色であり、どこか神聖な雰囲気があった。
『これは、聖属性のマジックアイテムですか?』
「ただのマジックアイテムじゃねえぞ。属性付与の剣だ」
『どう違うので?』
「普通のマジックアイテムは、MPを流し込むことで魔法を発生させる。これはな、物理攻撃のダメージを属性攻撃として判定させる」
『ほう……』
え、なにそれ。
ぶっ壊れアイテムでは?
割とマジで魔法職が死ぬやつじゃん。
加えて、ケツァルコアトルのスキルと組み合わせれば……悪だくみができそうだ。
「それ、一度使ったら、壊れるぞ」
『え?』
「使用可能なレベルを下げるのに四苦八苦してなあ。低レベル用に装備を作るとかしたこともなかったから、結果として耐久値が犠牲になっちまった」
……悪かったですね、低レベルで。
とはいえ、確かにこれらは低レベルのやつらが使うような武器でもないのだろう。
まさに、使い捨ての【
三本とはいえ、あいつに大きなダメージを与えられる、素晴らしい武器だ。
『何から何まで、ありがとうございます』
「いいってことよ。その代り、あいつを倒して、またいろいろ話聞かせてくれや」
『わかってますよ。俺が、あいつを倒します』
「……そうかい」
そう言った直後、アナウンスが流れる。
【クエスト【討伐ーー【霊骨狼狼 ロウファン】 難易度:八】が発生しました】
【クエスト詳細はクエスト画面をご確認ください】
このタイミングでアナウンス来るのかー。
まあ、いいけどね。
◇◇◇
□■アムニール南部
さて、一本目は砕けてしまい、残った【シルバー・ブレット】はあと二本。
「WOOOOOON」
『おい、何だその目は』
二体の狼の、目つきが変わる。
キングに向けていたのと同じ、怨念のこもった目つき。
今までは、敵としてすら認識されていなかっ
ーー今はもう、殺すべき、
『っ!』
「WOOOOOOOOOON!」
骨体によって、《狼王咆哮》が発動する。
【恐怖】にり患すれば、サンラクは満足に動けなくなり、【ロウファン】に勝つことは、ほぼ間違いなく、不可能となる。
--罹患すれば。
『お披露目だぜ!《
サンラクが、第三形態で獲得した<エンブリオ>のスキルを使用する。
それはつけていた、最後のアクセサリー、【命脈注射】によるもの。
それは、首輪であり、三本のアンプルがついている。
アンプルには、紅い液体が入っている。
《暴徒の血潮》の効果は、動作に制限を与える状態異常の一時的な無効化だ。
『どうやら、効果はないみたいだなあ!』
「WOOOOOOOOOOOOOOOON!」
追いかけてくる、【ロウファン】に対して、挑発しながら距離を取る。
(まずいな。マジでやばい)
サンラクには、言葉ほどの余裕がない。
既に、サンラクは《双狼一体》のカラクリを看破している。
両方を同時に倒さない限り、永遠に修復し続けるスキルである、と。
サンラクの推測は、正しい。
《双狼一体》の効果は、『一方の損壊状況を基準に、もう一方の体を修復する』というもの。
つまり、片方を傷つけても、HPを全損させたとしても、もう片方が無事ならば即座に修復される。
(俺一人だけじゃ、手が足りねえ)
どちらかを倒しても、即座に修復されるならば、同時に二体を倒すしかないという結論になる。
そしてそれは、範囲攻撃の類も、数をそろえる手段も持たない、サンラクには不可能なことなのだ。
サンラク、個人では。
□■某所・???
「急いでください!早く!」
「無茶言わないでよ!あたし、【従魔師】じゃあるまいし、竜車の扱いなんてわからないわよ!」
「じゃあなんで運用できてるんですか!」
「幻覚見せて無理やり動かしてるのよ!」
To be continued
最後、一体何テラと何インちゃんなんだ……。
余談
《双狼一体》
わかりやすく言うと、《猫八色》の劣化版。
優れている部分も二つある。
一つ、修復速度がはるかに速い。
二つ、片方が物理無効。本編では、霊体が地面に潜り、日光で焼かれる骨体を修復しながらしのぐのが日中のスタンス。キングを襲ったのも、地下から地上に出ただけ。
ちなみに、このスキル一つ欠点はありますが、それは追々、というか次回。
《人騎一体》
【超騎兵】のパッシブ奥義。
これのやばいのは、シルバーとかヘルモーズみたいな機械でも騎乗してれば普通に修復できること。
弱点としては、騎乗していないとき、つまり体が離れると解除されてしまう。
《地形回転》で落馬……もとい落狼してしまったのがロウファンの敗因。
余談
《魔神の領域》
【神器造】のパッシブ奥義。
効果は、『全魔法属性の完全適性を獲得する』。
マスターにとっては、ぶっちゃけ意味ない。
ただティックの場合、地属性以外はそこまで適性高くなかったうえに、天地海以外の属性の適性が皆無だったので、だいぶ助かってる。