<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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間に合った……。
違うユニバースに触発された、シャンフロ三周年記念、五話連続投降まであと一日……。
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頑張ります。


地を進む狼、相対するは天翔ける蛇 其の十

 □【闘士】サンラク

 

 

『やばいやばい時間がない……』

 

 

 サンラクは、【ロウファン】二体を相手に既に二十分近く戦闘を続けていた。

 その結果は、両者ともに無傷。

 サンラクがつけた傷はすべて、《双狼一体》によって修復されている。

 【ロウファン】はサンラクに対して一度も有効打を与えられていない。

 《狼王咆哮》は、《暴徒の血潮》によって無効化されている。

 骨体による物理攻撃は、《配水の陣》で空中に逃げればどうとでもなる。

 また、霊体の呪怨系状態異常スキルである、《狼王瘴気》も触れられていないので発動しない。

 本来であれば、空中戦では自在に浮遊できる霊体のほうに分があったはずだが、そうはなっていない。

 なぜか、霊体がある程度の高度まで上昇すると、追うのを止めてしまうからだ。

 

 

 (距離に制限があるパターン。これまでの行動から考えて、射程は十メートルってとこか)

 

 

 サンラクの推測通り、《双狼一体》には、有効射程十メテルという弱点がある。

 そもそも、もとになった《人騎一体》は騎獣と主の接触が前提であったので、いくらかましにはなっている。(なお、《人騎一体》はSPやMPも回復するが、《双狼一体》にこの効果はない)

 その射程の短さゆえに、最初はとらえられず、《回遊》の効果もあって、サンラクはすでに霊体が射程を無視したとしてもとらえられない速度に達している。

 だが。

 

 

『っ!もう時間がねえ!《暴徒の血潮(ライオットブラッド)》!』

 

 

 サンラクは考える。

 《回遊する蛇神》を考慮に入れたとしても、時間がたてばたつほど、不利になっているのは自分だと。

 そう、スキルの制限を背負っているのはサンラクも同じ。

 第三形態で獲得した《暴徒の血潮》には、いくつかの制限がある。

 一つ目は、ストック制であること。

 スキル使用に必要なアンプルが三つしかなく、そのストックは二十四時間に一つしか回復しない。

 二つ目は、時間制限があること。

 アンプル一つにつき、十分間しか効果がない。

 たった今サンラクは二本目を使い切り、三本目を使用した。

 そして、あと十分もすれば完全にストックが尽き、《暴徒の血潮》は解除される。

 【健常のカメオ】があっても、長くはもたないだろう。

 そもそもあれは判定の基準が緩いから、単発式の呪いぐらいにしか使えない、とサンラクはティックからも言われている。

 あたりを見回しながら、サンラクは思考を巡らせる。

 

 

(プランB、無理!周りに霞が全然ない!都市部に近いからか?)

 

 

 プランB--「<アクシデントサークル>に巻き込んじゃえ大作戦」は周囲に魔力の霞があまりないことから、不可能と判断する。

 プランA--「一直線大作戦」も何度か試みているのだが、どうやらそちらは読まれているようで、対応されてしまう。

 

 

『あっやべ』

「WOOOOOON」

 

 

 だが、均衡が崩れる時が来た。

 サンラクが、足場にした結界の上で足を滑らせたのだ。

 それは、二十分以上の気が抜けない戦闘による疲労ゆえか。

 《回遊》の速度に、サンラクが対応できなくなったためか。

 あるいはMPポーションの服用も含めた複数のことに、思考を割いていたからか。

 いずれにせよ、ちょうどそこに骨体の牙が迫ってくる。

 

 

(あー、これは無理かな)

 

 

 いまさら、武器を《瞬間装備》しても間に合わない。

 【ブローチ】で一度は防げるだろうが、体当たりと咀嚼の両方は防げない。

 サンラクは、間に合わないと判断し、それは事実だった。

 サンラクの行動は間に合わない。

 ーーサンラクは(・・・・・)

 

 

「WOOOOOOOOOON!」

『え?』

 

 

 サンラクが噛み千切られる刹那、骨体に炎の弾丸が命中した。

 炎弾は一発にとどまらず、何発も、骨体の頭部に命中した。

 サンラクは骨体がひるんだ隙に《配水の陣》を起動、【ロウファン】から距離を取る。

 

 

(漁夫の利狙い?いや、もしかして、これは、まさか)

 

 

 サンラクは魔弾を放った者が誰かを察した。

 ただし。

 

 

『--全弾命中。ただし即修復されました』

「了解しました。このまま狙撃を続けます。ステラさんも、観測をお願いします」

「んぐんぐっ、無茶言わないでよ!飲んでも飲んでもさっきから回復追いつかないんだけど!」

 

 

 間に合った者たちの声は、さすがにサンラクには聞こえなかった。

 

 

 □とある<エンブリオ>について

 

 

 斎賀玲の<エンブリオ>、その銘を【追火蛇姫 キヨヒメ】という。

 この<エンブリオ>の能力特性は、追尾と追撃。

 現在第二形態にまで進化しているこの<エンブリオ>は、二つのスキルを持つ。

 一つ目は、《追い焦がれる想い(フレア・ストーカー)》。

 スコープをのぞきこむことで、指定した相手の位置を突き止めることや、相手の様子を見ることができる。(指定できる相手は、彼女が見た生物に限られる)

 また、スキルの対象に指定した相手を、キヨヒメの撃った弾丸が当たるまで追尾しつづける。

 ただし、一度相手を指定すれば、最低一週間は相手を切り替えることができない。

 ……本来は、サンラクを絶対に逃さないためのスキルなので、それで十分ともいえるが。

 先ほどまで、サンラクを対象に発動していたが、たった今、対象を【ロウファン】へと切り替えた。

 

 

 二つ目は、《燻る情火(ディレイ・ボム)》。

 魔力式銃器としてのスキルであり、MPをあらかじめチャージして、火属性魔法の弾丸を作り、ストックするスキル。

 ただし、弾丸を作るのには最低でも一分間のチャージが必要である。

 チャージしている間は、弾丸の発射はできない。

 また、キヨヒメはこれ以外の攻撃スキルがないので、ストックが尽きてしまえば銃器としては使い物にならなくなる。

 ただし、弾道距離に応じて、弾丸の威力が上昇する効果もある。

 

 

 時間という制限を設けることで、出力を上げる<エンブリオ>である。

 それは、サイガ‐0、否、斎賀玲という人物像を<エンブリオ>が解析した結果だ。

 自分の願い(初恋)をかなえるために、異常なまでに時間をかける、その在り方。

 恋心によって突き動かされ、時に住所特定などといった、手段も選ばないその精神性。

 なにより、かつては現実で抱いていた、サンラクに追いつかなくてはならないという危機感(・・・)

 それらの総合的な結果が、キヨヒメというモノ。

 「どれだけ時間をかけても、追いかけ続ければ、いつか必ず目的を果たせる(勝てる)」という特性の、TYPE:メイデンwithアームズの<エンブリオ>である。

 

 

「こちらに来てるわね……」

 

 

 光学探査を使うステラは、【ロウファン】が自分たちの方向に走ってきていることを察知した。

 ついでに言えば、霊体が地面に潜っていることも潜る瞬間を見たため察知しており、それも伝えている。

 

「……幻術か何かで、足止めできませんか?」

「無理よ。あいつら目で見てるんじゃなく、あたしたちの発する怨念を追ってるんだもの」

『質問。先ほどレベル上げで使われていた【ジェム】は使えないのですか?』

 

 

 自身も、【ジェム】に近いスキルを持つキヨヒメが質問する。

 最近まで、利害が一致したため南方の狩場でレベル上げを行っていた三人(?)だったが、その時ステラはよく攻撃手段としてジェムを使っていた。

 

 

「もう、攻撃系のジェムは使い切ったわ……」

『了解。使えないようですね』

「……それどっちの意味?」

 

 

 狙撃銃に暴言を吐かれ、ステラは少し不機嫌になる。

 

 

「あの、ステラさん、先ほどまで移動に使っていたモンスターは?」

「あんた《看破》持ってないの?あの子無理しすぎて、【混乱】、【恐怖】、【衰弱】、【疲労】、【飢餓】……制限系や精神系の状態異常山盛りだし、HPもほとんどないのよ?どのみち逃げ切れないわ」

 

 

 幻術を見せて無理やり走らせてきたのはステラなので、キヨヒメは内心『どの口が言ってるんだろう』と思ったが口には出さなかった。

 そんな余裕もないと、わかっているから。

 

 

「まずい!」

 

 

 すでに、骨体が目の前に迫っていた。

 せめて、ティアンであり、リスポーンができないステラだけは守ろうとレイはその小さな体を抱きかかえる。

 しかし、彼女の行動は無意味であり、いまさら回避も間に合わず。

 

 

『危ない危ない。ギリギリセーフ』

 

 

 --彼の行動は、間に合った。

 レイは気づく。

 奇妙な浮遊感と、しかして守られているという安心感に。

 誰かが、自分を抱きかかえて、回避したのだということに。

 そして、その誰かは。

 

 

『大丈夫か、()?』

 

 

 サイガ‐0はようやく理解する。

 彼がレイをお姫様抱っこしていることを。

 自分でも、脈拍が上がっていくのが、レイには理解できた。

 

 

「ら、らく、サンラク君!」

『おう。早速で悪いが、状況はわかるか?』

「ひゃ、はい!……あの、【ロウファン】というモンスターを倒すんですよね?」

『そういうことだ。さっさと終わらせて、うちに帰ろうぜ』

「はい!」

 

 

 既に二人の目は、前を向いている。

 前方に立ちはだかる、高い壁を見すえている。

 

 

『そういうわけだ。クソわんこ。いいか、冥途の土産に聞いておけ』

 

 

 

 サンラクと、サイガ‐0は宣言する。

 

 

「『お前(貴方)達は、俺達(私達)が倒す』」

 

 

 自分達が、終わらせるのだと。

 

 

 To be continued




ステラ「あたしは?」

・キヨヒメ
モチーフを思いついた時、筆者が「これだ、これしかない」となったエンブリオ。当初は純アームズの予定だったが、いろいろ考えて今の形に。
安珍清姫ってどの程度の知名度何でしょうね。
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