<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
感想が百を超えてました。ありがとうございます。
そして、シャンフロ三周年、本当に本当におめでとうございます!
□【闘士】サンラク
さて、ここで【ロウファン】に立ち向かういかれたメンバーを紹介するぜ!
まず俺、装甲と羞恥心を捨てて機動力に特化したビルドと、あと二回しか使えない大ダメージ聖属性斬撃が持ち味だ。
次、【狙撃手】サイガ‐0。
ジョブ自体は事前に聞いてたし、今の攻撃と看破したステータスで<エンブリオ>がどんなものかも代替把握した。
近接戦だと力を発揮できない、典型的な後衛特化だな。
ただ、その分攻撃力はかなりのものだった。
そして、【高位幻術師】ステラ。
なんでこいつここにいるの?感がすごいが、レベルも高いらしいし、役に立たないってこともないだろう。
今は、がっちりと俺の首にしがみついている。
やはり置いてきたほうがいいのでは?
あ、やばい。
「WOOOOOOOOOON!」
さっきから使ってる【恐怖】のスキルだ。
俺は《暴徒の血潮》で無効化し、レイは俺がとっさに着けた【健常のカメオ】で耐える。
あ、【カメオ】が壊れた。
ステラは?あっ《看破》したけど無事みたいだ、良かった。
……たぶん、レベルが高いからだろうな。
「「WOOOOON!」」
ほう、やっぱり骨体だけで通じないと判断すると両方出てくるのか。
もう、陽が沈んで夜になったっていうのもあるんだろうけど、好都合だな。
あれが狙える。
たった今思いついたプランA´を使えば、やれるかもしれない。
『玲、それからついでにステラ』
「は、はい!」
「ついでに!」
お願いしてみよう。
『俺があの黒紫を倒す。だから、二人にはあの骨を任せたい』
「わかりました。任せてください」
「やってやるわ!」
よっし言質はとった。
じゃあ、始めるか。
プランA´ーー「天翔ける蛇大作戦」を!
『じゃあさ、
「「え?」」
俺は、ステラを背負い、レイを抱えたまま走り出した。
『ほらほらほらあああああ、追いつけるもんなら追いついてみろお!』
「いやあああああああああ!」
「『…………』」
「「WOOOOOOOOOON!」」
さて、ここからが本番だ。
□■アムニール南部・狩場
【ロウファン】は怒っていた。
目の前に立ちはだかる敵、奇妙な覆面をつけた半裸の人間を仕留められないことに腹が立っていた。
銃を構えた女や、獣人の魔法職など問題ではない。
今まで一度もいなかった。
<UBM>になってから、何のダメージも与えられなかった相手などこれまでいなかった。
目覚めたとき眼前にいた自分より格上の<UBM>でさえ、かすり傷ぐらいはつけられた。
自分を封じた超級職のドワーフには、纏った防具の上から深手を負わせた。
だというのに、目の前の人間に対しては一ポイントたりともダメージを与えられずにいる。
速度はもはや彼等よりも速く、亜音速を超えて超音速の域に達しようとしている。
AGIが生前より落ちており、騎兵系統の強化スキルも失った、亜音速どまりの今の【ロウファン】では追いつけない。
それを、【ロウファン】は許容できない。
なぜなら、それが【霊骨狼狼 ロウファン】というモノの在り方だったから。
強者に殺されていった、武芸者の無念。
山の神に弄ばれた、子供たちの嘆き。
そして家族と自分達の命を奪われ、絶望と憎悪を抱えたまま死んでいった一人と一頭。
圧倒的強者に蹂躙され、それを憎む者達の成れの果てだったから。
「「WOOOOOOOON!」」
かといって、唯一の遠距離攻撃手段である《狼王咆哮》は奴には効かない。
ついでに言えば、他の二人にも効かない。
それはわかっている。
【ロウファン】は少ない理性を集めて、どうやってこいつを倒そうかと考えて。
目の前に何も持たずに現れた、鳥頭の男を見た。
「「WOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!」」
『はっ、よく吠える』
男は、一直線に、こちらに走ってきた。
--愚か。
【ロウファン】は、そう判断する。
自分に直接ぶつかってくれるのならば好都合。
あるいは、また霊体を斬り裂いた剣を使うのかもしれなかったが、両方が斬られなければどうとでもなるし、そもそもあの程度のダメージでは致命傷にはならない。
そうして、【ロウファン】の骨体が彼に衝突しようとして。
『《配水の陣》、起動』
「「WO?」」
ーー目の前から消えた。
サンラクは、ぶつかる刹那《配水の陣》を起動して足場を形成、直角に跳びあがったのである。
『ほらほらあ、どうしたあ!遅いなあ!』
「WOOOOOON!」
挑発に激高し、霊体が浮き上がる。
だが、直後動きが止まる。
上空十メテルーー《双狼一体》の効果範囲ギリギリに達したためだ。
上空をにらみながら、その場から動かない。
たとえ怨念によって突き動かされる怪物であっても、その一線だけは違えない。
あるいは生前の怨念で生まれたからこそ、生前の絆を守ろうとするのか。
--しかしその在り方は、致命的な隙だった。
『ここら辺が限界かな』
その声は、【ロウファン】には聞こえなかった。
あまりに遠すぎて、聞こえなかった。
彼は音速に近いスピードで、【ロウファン】の上空を駆け上がった。
多少酸素が薄くなっても、毒ガスも通さない【蛇眼鳥面】と、レベルアップや【闘牛士】
--高度一万メテルでも、かろうじてギリギリ、問題はない。
四十秒程度でたどり着いた。
そして、サンラクは。
『そこで待ってろ、すぐに行く』
《配水の陣》を起動しながら、駆け下りた。
自由落下に任せても空気抵抗を無視できる《回遊》の効果を考えれば、超音速に達する。
ましてや、もともと超音速に近いものが、さらに駆け下りれば一体どうなるのか。
--音をはるか彼方に置き去りにする、
「WOOOO……」
これはまずい、と判断した霊体は横か下に逃げようとした。
その瞬間、下で爆炎が上がった。
「WOOOO、OOOOON!」
「WOOO!」
やったのは、サンラクによって遠くに移動させられた、サイガ‐0とキヨヒメ。
やられたのは、【ロウファン】の骨体。
遠距離から飛来した炎弾は、地球ならありえない角度で骨体に命中し、その足を、頭部を、砕いていく。
《双狼一体》の効果で即修復されるが、その間にも次々と爆破され、追いつかない。
その中には、先ほどの弾丸より威力の高いものも混じっている。
是非もなし、今の彼女が放つ弾丸には、一分間以上チャージした、高威力の弾丸も混じっている。
最低で一分、しかしMPがもつ限り上限はない。
《
「WOOOOOON」
霊体は、迷う。
骨体が足の損傷で動けない以上、横に動けば射程から外れ、半身を見殺しにすることになる。
かといって、炎弾が飛来する下に逃げるのも、自殺行為に等しい。
『終わりだな』
そして、迷って止まることこそが、この状況での最悪手である。
既にサンラクがすぐ真上まで来ている。
その手には、【シルバー・ブレット】が握られている。
物理ダメージを聖属性攻撃に変換するこの武器は、落下による運動エネルギーさえも、変換する。
その威力は、計り知れない。
「WOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!」
『ぶったぎれろおおおおおおおおおおおお!』
十字の聖剣が、振った衝撃と握力で破損した。
サンラクが、燃え盛る大地に着地し、炎熱と落下ダメージで【救命のブローチ】が砕け散った。
【ロウファン】の霊体は斬撃で真っ二つになった。
そしてーー
◇◆◇
「WO、O、ON」
聖属性の斬撃と、数多の炎弾を受けて、それでもなお【ロウファン】は生き残っていた。
HPは最大値の一割もない。
サンラクによる斬撃で、体積の大半を消し飛ばされた霊体と、ほぼすべてが焼け焦げた骨の塊が落ちているのみ。
それでも、【ロウファン】は終わらない。
《双狼一体》以外にもアンデッドとしてごくわずかではあるが修復能力を持っている。
これでHPが回復し、体積が戻れば、今度こそ圧倒的強者の気配がする、アムニールへ向かおうと考えた。
『あぶねえ。ステラが【ジェム】でステータスアップと属性防御の魔法かけてくれなかったら死んでたな』
しかし、その思考は一人の男によって妨げられる。
男ーーサンラクは《瞬間装備》した最後の【シルバー・ブレット】を持っている。
ここまで戦った強敵であり、生存能力に特化したアンデッド。
ゆえに、生き残る可能性を、サンラクは見逃さなかった。
『今度こそ、終わりだ!』
サンラクは、骨の塊を、遠くに蹴り飛ばし。
白銀の聖剣を彼は振るう。
最後の聖剣が、霊体とともに砕け散り。
「キヨヒメ!」
『了解』
最後の《燻る情火》が【ロウファン】の骨体を完全に焼き尽くした。
「「WOO、WO、WON……」」
そうして、銀の弾丸と、赤い弾丸が、最後のHPを削りきり。
【霊骨狼狼 ロウファン】は、本当に、今度こそ消滅した。
ほんの少しの怨念さえも、残さずに。
強者への怒りに燃えた怨念の怪物は、皮肉にも、自分達よりはるかに弱い者達が力を合わせることによって、討伐された。
あるいは、それは、ロウファンが成し遂げたかった事に、少しだけ似ていたのかもしれなかった。
To be continued